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5章 明かされる真実と『狂』の襲撃者
アルマスの失態
しおりを挟む「じゃあ、おばあちゃんはその悪魔の復活を阻止する為に、デルラット深穴って場所に行ってるんすか?」
アレクセイから孝志は事細かな詳細を教えて貰っていた。
弘子が何処へなんの目的で向かったのかを。
怪物の強さも教えて貰っていたが、これまで怪物じみた者達を散々見てきた孝志にはイマイチパッとしなかった。
だが、以前この世界に住んでいたアルマスは、孝志と違い青ざめる。
「デ、デルラットの怪物ですか…?だ、大丈夫でしょうか?──もし、復活を許してしまったら、この世界がとんでもない事になりますよ」
「そんなにヤバいのか?」
割と他人事だった孝志も、アルマスのリアクションを見て少し不安な気持ちになってしまう。
そして、アルマスからの返答でその不安は一気に加速する。
「──はい……この世界に来て、マスターは沢山の強者達と出会って来ましたよね?馬車で共に行動していたユリウス、オーティスもそうですし、女神アリアンさんにも出会いました。……そうですね……簡単に言いますと、女神であるアリアンさんと同レベルの相手だと考えて下さい」
「……!!??」
この時、孝志の中に電流が走った。予想を超える衝撃とは正にこの事だろう。
孝志は身体を震わせながらこう思った。
『アリアンさんと同レベルってヤバくない!?」……と。
孝志にとってアリアンが二人居るなど、恐怖でしかない。
そして、もし万が一にアリアン二人に挟まれたりしたら……
孝志は有り得ない想像を勝手に行い、気を失いそうになるのだった。
そして勝手な被害妄想で青ざめている孝志を見てアルマスが心配そうに声をかける。
「大丈夫ですか?!……マスター、女神様はアリアンという狂人を演じてますが、アレは間違いなく演技です。……なんであの様なイカれた演技をされてるかは謎ですが、女神様は孝志が思っている様な人物ではありませんよ?」
孝志の隣に寄り添う様に座ってたアルマスは、宥める様に彼の背中を摩りながら語る。
「わかってる……わかってるんだがよぉ……震えが止まらねぇんだよ…!」
孝志はガクガク身体を震わせる。
アルマスはそんな孝志の震えを止める為に背中を優しく撫で続けた。
「ま、マスター…!か、可哀想に……ううぅ……」
アルマスは孝志を不憫に思うあまり、ついには泣き出す始末である。
──それと一つ勘違いしないで欲しいが、孝志はアリアンを嫌っている訳ではない。ただ怖いだけなのである。
そして、そんな二人の姿をアレクセイはジトッとした眼差しで見つめる。
アレクセイにとって既に孝志は弘子の孫という事もあり、大切な存在の一つであるのは間違い無いのだが、ここまで深いノリには流石について行けなかった。
そして何より、二人の話している事は【全てを知っている】アレクセイにとって、なにを勘違いしているのかと思う所であった。
「あんたら、さっきから何を言ってるのん?」
「……?」
顔を上げ、アレクセイを見る松本孝志。
隣に座るアルマスも同じ様にアレクセイに体を向けた。
そして次に発せられたアレクセイの言葉で、二人は驚愕に目を見開くのだった。
「あのアリアンとか言う騎士は、女神様じゃないわよ?」
「……ふえぇ?」
目を見開きながら可愛らしい声を上げるのはアルマス。
孝志の方は目を見開いたままジッと動かなくなってしまった。
「──あ、アレクセイ!?なんでそんな事がわかるの?!」
予想だにしないことを聞いた事により、いつもの様な丁寧語がなりを潜めてしまうアルマス。
「いや~ね?私達って、アルマスを【あっちの世界】に送った後、結構ティファレト様と交流が有ったのよぉ?それでティファレト様がいまどんな人間の姿をしているのか知っているんだけれど、もっとまともな人間よ~?」
「………ま、マジすか?」
このマジすか発言は孝志では無く、アルマスのものだ。
ザイスの一件で、アルマスの中ではアリアン=女神様だと凝り固まっていた為、衝撃のあまり孝志が普段使う様な口調になっていた。
そして孝志はと言うと、オカマが【あっちの世界】と口にした事で違う世界を想像していた。
アリアンが女神では無いと知り、少し心にゆとりが生まれていたのだ。
そして直ぐにアルマスを殺意の篭った目で睨む。
「……アルマスさんよぉ………自信満々で言ってくれたよなぁ?アリアンさんが女神だって……どう落とし前つける気だ?おおん?!無駄に精神が追い詰められたじゃね~かよ!」
孝志は顔をアルマスに近付けて詰め寄る。
孝志の顔が目の前にあるが、女神と確信していた人物が的外れで申し訳ない気持ちと恥ずかしい気持ちが同時に生まれたアルマスに、それを喜ぶ余裕なんてない。
とりあえずは目の前の孝志には謝っておこうと手を合わせた。
そして心を込めて謝罪の言葉を口にする。
「………ゆ、許してヒヤシンス☆」
──この後、アルマスは孝志から強烈なチョップをお見舞いされる。
そして孝志が初めて女性に手を挙げた瞬間でもあったが、彼の中に後悔はなかった。
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