普通の勇者とハーレム勇者

リョウタ

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6章 勇者と、魔族と、王女様

幕間 〜アリアンの相談事〜 

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♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


「うむ……確か、オーティスの部屋は此処だった筈だな」

部屋の前に到着したアリアンは、ノックの返事を確認すると礼儀を正して入室する……ユリウスの部屋に入る時みたいな乱暴な入り方はしない。

中に居たオーティスも、この時間にアリアンが来る事は予め聴いていた為、彼女の訪問に驚きは見せなかった。
彼女の訪問で趣味の魔道具作成を中断する。



「──オーティス、実は少し相談したい事があるのだが……良いだろうか?」

「うむ、紅の騎士よ……少しなら構わん……だが心せよ?我の中に巣食う魔物が……いつ暴れだすか分からぬ故」

「ははは、相変わらず頭のおかしいやつだ!」

「……汝にだけは言われたくないぞ?」

部屋の中央付近にある机の上には、あらゆる道具や消耗品が乱雑に置かれている。
我が家かと言いたい所だが、この部屋を好きにして良いと前もって許可を貰ってる以上、オーティスは責められない……とは言え普通なら少しは遠慮するだろう。

此処だけの話になるが、王国三大戦力は三人とも曲者揃いだが、その中ではアリアンが一番まともだったりする。

特に作法を学んだ事のないアリアンだが剣聖就任の際、決まりとして【ルクレツィア家】の養子となり、それから少し作法を意識する様になったらしい。

実は人間関係以外は完璧なのである。


そんなアリアンはその惨状を見ても意に返すことなく、散らかったその机を挟んだ対面ソファーへ腰を下ろした。
それに続くように、オーティスは何も言わずアリアンの座った反対側に腰を落とす。

オーティスはアリアンから相談事など初めてで、どういった内容なのか好奇心を抱いていた。

そして、アリアンの相談事とは──


「──実は孝志の事で相談があるのだが」

オーティスとしては以外な事に人間関係だった。


「ん?孝志か……汝が人の事で相談とは……実に珍しい……良いぞ、何でも聞くが良い、悩める少女よ」

「オーティス、その口調には突っ込んだ方が良いか?」

「………無しで頼む」

「わかった」

既にオーティスは無茶苦茶やり難く感じている。
アリアンのコミュ障もやり難い1つだが、人間関係について聞かれた所で、色々特殊な性格の自分にその悩みが解決出来るとは思えないからだ。


「しかし……思った以上にちゃんとした相談で……我は驚いたぞ?──それで?……レジェンドブレイバー孝志が……どうしたのだ?」

アリアンはさっき無しと言われたので、レジェンドブレイバーには突っ込まず話を続ける。素直だ。


「その……何というか、非常に言い難いんだが、師として、孝志にどう接して良いのか本当に分からなくてな……」

「……うむ……上手くいってないのであるな?」

ここでアリアンはバツが悪そうに笑う。
彼女なりに孝志の件では真剣に悩んでいる。

そしてその気持ちはオーティスにも十分伝わっており、気を引き締めて相談を聞く事にした。


「私なりに愛情を持って接してるつもりなんだが……どうやら、何をやっても彼を怖がらせてしまう様なんだ。それがどうにも辛くて……私は……その……弟子を取るのが初めてだから……なぁ、どうすれば怖がらせずに師弟関係を深められるのだろうか?」

「う、うむ……割と汝、ピュアなのだな」

「私は真剣なのだ、茶化すと決闘を申し込むぞ?」

「茶化してなど居ない!我だって真剣に言っている!……第一、剣士が魔法使いに決闘を挑むとは……何という鬼畜……冗談は程々にしたまえよ」

「……?……冗談……?」

「そうだった、汝は冗談が嫌いであったな……とりあえず……決闘の話は流したまえ」

「わかった」

「うむ……素直なのは良いが……ハッキリ申すと、汝のそんなところに原因があると我は思うぞ?」

「?????????」

「全くピンとこないとは……悲しきかな」

このままでは堂々巡りな為、オーティスは思考を巡らせ色々と模索してみた。


「うむ……訓練中のコミュニケーションはどうだ?」

「おっ!それはバッチリだ!休憩して居る時には『休憩して居るのか?』と話し掛けて居るし、限界まで疲れている様に見えた時には『もう限界か?』と確認もとっている」

「そうなのか……では訓練は大丈夫そうだな」

「私もそう思う……ただ……」

「ん?ただ?……次の言葉を聴かせたまえ」

「私が気遣いで声を掛けてるつもりでも、何故かそれすらも孝志は怖がってしまうんだ……」

「ぬ?……それは……良くわからぬな?……言い方には問題無いのだろう?」

「ああ、それは問題ない。我ながらパーフェクトなコミュニケーションだと思う」

「パーフェクトなコミュニケーション?汝が?…………いや、ま、まぁ良い……だが怖がられてしまってるのだろう?」

「そうなんだ……う~ん……じゃあ、嫌われているのかな……」

「……う……む……」

オーティスは泣きそうなアリアンを観て、これは思ったより深刻だと顎に手をあてて考え込む。

アリアンの話を聞く限り、彼女に非がある様には聞こえ無かった。
ならもしかすると、孝志はアリアンへ対する苦手意識が強いかも知れない……オーティスはそう考え至った。

なので、一つの提案を持ちかける事にした。


「──紅の騎士よ……それならば一度、我に孝志を預けて観ぬか?」

「……え?な、なんでだ?」

「うむ……指導者の立場になってブレイバーを観れば……なにか解る事が出てくるかもしれん……どうだ?……少しの間ブレイバーを──」

「そ、それは、い、嫌だ!」

アリアンはこの申し出を力強くキッパリと断った。


「──何故だ?」

「だって、オーティスに預けてしまったら、孝志そっちが良いと言うに決まってるじゃないか……私は怖がられているのだから……」

「いや、流石に其処までは……」

「それに、人の弟子を盗るのはルール違反だぞ!──第一、オーティスには【アンジェリカ】と言う立派な弟子が居るじゃないか……私の孝志を盗らないでくれ……」

「別に盗ったりしないが──しかし……う……む……アンジェリカか……アンジェリカ……ね」

「どうしたのだ?」

アンジェリカ……その名前が出た途端、オーティスも苦い表情を浮かべ始めた。


「──実は、最近彼女と上手く行ってなくてな……今年で14才になるんだが……最近は反抗するし……それに目が合うとそっぽを向かれてしまうのだよ。何故か理由は解らぬがどうやら嫌われてしまったようだ……実の娘のように可愛がってただけに……少し寂しいのだよ……」

今度は逆にオーティスが悩みを打ち明ける。

しかしアリアンには、アンジェリカと呼ばれる少女の態度が悪くなった理由が解ったようだ。


「いや、それはただの反抗期だろ?」

「え?反抗期?」

「そうだぞ。14才だろ?年齢的にもドンピシャじゃないか」

「で、では、我が修行以外で勉強などを教えても『そんなの知ってるし!』と怒って来るのは……反抗期なのか?」

「オーティス、反抗期だ」

「で、ではでは、我が誕生日に贈り物をしても『全然嬉しく無いしっ!』と言われたりするのも……?」

「オーティス、それも反抗期だ」

「…………それでは……我と目が合うと、顔を真っ赤にするほど怒ってソッポを向いてしまうのは……?」

「オーティス、それは思春期だ」

「ではでは!我の口調がキモイと言って来るのもっ!?」

「オーティス、それは本気だ」

「……ここは反抗期であって欲しかった……!」

しかし、アリアンの話を聞いてオーティスはホッと胸を撫で下ろした。


「…………そんな事より……おまえアレだな?私が孝志との仲で苦しんでいるのに、弟子との仲良し自慢とかふざけてるのか?」

「いや、真剣な悩みなのだよ!」

「……まぁ良い……今度話す時、アンジェリカが反抗期だと言うテイで接してみろ。印象が随分変わる筈だ」

「……おお、そうか……では城に帰ったら早速そうしよう!……紅の騎士アリアンよ……彼女との関係で最近はずっと悩んでいたのだよ……心から感謝する」

「ふっ、気にするな………………いや待て?」

「どうしたのだ?」

「私が相談を持ち掛けたのに、なんで聞く側のお前が悩みを解決しているのだ?」

アリアンは尖った眼差しでオーティスを睨み付ける。


「……いや、待てそう睨むなアリアンよ……だが、そうなると孝志も反抗期か思春期では無いのか?」

「違うな……アレは……私に怯えている目だ……うん……アレは……怯えてる目……すん」

「アリアン嬢……少し涙目だが……大丈夫か?」

「大丈夫では無いっ!私は弟子が出来たら、一緒にピクニックとかしたいと思っていたのだ!……それなのに」

「……な、悩ましい話だな……だが、そんな関係は師弟というより……騎士団の上下関係に近いのでは?」

「上下関係か……というより、私にとってアイツは可愛げのある弟みたいなものだからな」

「まさかの其方方面だったか……しかし、弟か。ではその気持ちをぶつけみてはどうだろうか?」

「気持ちをぶつける……?」

「そうだ……弟の様に可愛がっているなら……その想いを真剣に伝えれば……ブレイバーのハートにも届くかも知れぬぞ?」

「そ、そうかな?」

「どうかは解らぬが……ものは試しだぞ?」


「……そうだな……そうだな!──そうだそうだ、モノは試しだっ!ありがとうオーティス!お前は変な奴だが相談に来て良かったぞ!」

「一言余計であるぞ?」

「すまんすまん──じゃあ、私の想いを今からぶちまけに行くっ!」

「……ふふ……頑張りたまえよ?」

「ああっ!……では──さっそく孝志を私の弟にしてくる!!」

「え?弟にする?なんで?」

それだけ言い残すとアリアンは部屋を飛び出し、疾風の如く速さで孝志の部屋へと向かう。

……だがしかし、アリアンの最後の台詞を聴いたオーティスは、言い様のない不安に駆られるのだった。


─────────


「孝志ッッ!!」

「ひぃあッ!?な、なんですか!アリアンさんっ!!」

「孝志ッ!今日からお前は……私の弟だぁっ!!いいなっ!」

「…………え?……アリアンさんがお姉さん……?」

「そうだっ!!わははっ!これから宜しくな!弟よ!」

「いやぁあぁぁぁッッッ!!!そんな絶対嫌あぁぁッッ!!!───ガクッ」

孝志はあまりの恐怖に意識を失った。


「………………え?」



──────────


──その後、アリアンはオーティスの部屋へと戻って来た。


「オーティスッッ!!!話が違うじゃないかぁッッ!!!全然受け入れて貰えなかったぞっ!!」

「…………そうだろうな」

「何故だっ!!?」

「…………はぁ~」







アリアンの苦悩はまだまだ続く。



果たして、彼女の想いが孝志へ届く日は訪れるのだろうか……?





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