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6章 勇者と、魔族と、王女様
アレクセイについて
しおりを挟む──アルベルト曰く、王国の結界が破壊されたという。
明らかに大変そうな話題なので、改めて詳しい話を聞こうとしたら割とガチ目な場を設けられてしまった。
現在、城主であるおばあちゃん達も普段は使わないような広めな部屋に居る。
そして中央には会議室に置いてあるような大きい丸型のテーブルが備られてあり、そのテーブルを──俺、アルマス、おばあちゃん、アレクセイさん、アリアンさん、オーティスさん、それとアッシュを含めた十魔衆四名が囲む。
数にして十人程だ。
部屋に入りきらない巨体のハルートと、いろいろあって身動き取れないミーシャ以外が全員この場に集結した事になる。
アレクセイさんも怪我をおして参加する様だ。
そんなアレクセイさんが進行も務めてくれる。
「──じゃあ、話を進めていくわよぉ~うふん……えぇ~と、アルベルトだったかしらぁ?十魔衆の第二位の割に能力は……と言った感じかしらねぇ?」
挑発的はアレクセイの物言いに、一瞬、ムッとするアルベルト。
しかし、ある事に気が付くと、前のめりとなり、食い入るような格好でアレクセイを見た。
「あの……もしかして、貴方は美貌の魔王・アレクセイ=ベルゼバブ様じゃないでしょうか?」
「……昔の話よん。今はただのアレクセイ=ベルゼバブに過ぎないわ」
「……お、おお……健在だったのですね……お、恐れいります」
アルベルトは椅子から立ち上がり深々と礼をした。
これは孝志に見せたように膝を折った忠義の礼ではなく、敬意を表する礼だ。
歴代魔王の中でも魔王テレサ、初代魔王に続く最強の魔王として君臨していたアレクセイは、魔王領の至る所に肖像画や像が設置されている程の有名人だ。
加えて、見た目も美しい為、そのビジュアルと相まって歴代魔王の中で一番の人気を誇っているのだ。
普段の彼からは想像もつかないだろう。
そんなアレクセイとアルベルトのやり取りを聴いていた他の十魔衆達もそれぞれ違った反応をみせた。
「あっ!絵で見た事あるこの人っ!……え?何百年前の魔王っしょ?てか若くない?イケメンすぎんだけど、うわやばっ、ちょう有名人にあった系?」
「……お、おお……似ているとは思っておりましたが、まさか御本人でしたか!しかし、あのアレクセイ様とこうして会える日がこようとは、拙者も嬉しく思います」
二人ともアルベルトに続くように賛辞と尊敬を言動で表したが、アッシュだけは睨み付けるようにアレクセイを観ていた。
「っけ、歴代魔王かよ……くそっ!それが分かってたらよぉ、俺も最初っから魔神具を使ったのによぉ」
「おい!アッシュ!この馬鹿者!口を慎まんかっ!アレクセイ様に対して失礼だぞ!?」
「…なぁにが失礼だよ。俺の認めた魔王はテレサ様だけだからよぉ、昔の魔王なんて知らねぇよ」
「アッシュ……貴様……」
「うはっ、アッシュ相変わらずパない。こんな時なのに全然ブレないとかメンタル鬼やばっ」
「うむ。少し見習わせて貰いたいでござるな」
今度は軽口を始めたミイルフとサイラムに何か苦言をアルベルトが口にしようとした所で、アレクセイが場を納めようと手を叩いた。
「はいはいそこまでよぉ?今は言い争ってる場合じゃないでしょ?」
「失礼しました、アレクセイ様」
「それじゃ席に着きなさい。ミイルフとサイラムといったかしら?貴方達もよ」
三人は静かに椅子に座った。
因みにアッシュはずっと座りっぱなしである。
三人とも促されるまま着席するも、このとき三人はある疑問を抱くのであった。
『『『なんでおねぇ口調なんだ?』』』
それもその筈だ。
アレクセイについて記載された本、魔王領歴史の教科書にもアレクセイについてはこう記載されているのだ──
魔王アレクセイ=ベルゼバブは、実に男らしい魔王だと。
「──では会議をとり行うわねぇ?」
アレクセイについては一先ず置いといて、この仕切り直しの言葉でアッシュを含めた十魔衆は気を引き締めるのであった。
──そんなやり取りを観ていた孝志は、さも当たり前のように自身の隣に座っているアルマスに耳打ちをした。
「──アレクセイさんって凄い人なんだな」
「ええ、歴代魔王でも最強だったそうですよ。今はテレサっていう泥棒猫に最強の座をかっさられた様ですが」
「泥棒猫って……あんまそう言う事を言うな」
「じゃあマスターは、魔王テレサと私、どっちが可愛いと思いますか?」
「テレサ」
「ほらやっぱり泥棒猫……くっ、しかも即答っ!」
アルマスは悔しさのあまり唇を強く噛み締めるのだった。
そしてそれを観て楽しそうに笑う孝志。
「はは、ざまぁみろ!!」
「くっ……悔しい……でも好き♡」
「何でやねん」
──そして、少し離れた席でオーティス達はこんな会話を繰り広げていた。
「なぁアリアン嬢」
「どうした、オーティス?」
「魔王アレクセイ……知っているか?」
「いや、話を聞く限り魔族の間では有名らしいが、我れら人間には出回ってない情報だ」
「そうであろうな……何百年前の魔王など、わざわざ言い伝える必要は無いであろうな……しかし……生きていたとなれば、話は別でなかろうか?」
「そう警戒するなオーティス。アレクセイとは個人的に話をしたが、我々に敵意は無さそうだ」
「なら安心だが……それよりも……魔族……それも十魔衆と席を並べて作戦会議とは……」
「ははは、人生何が有るか分からないものだなっ!」
「全くだ……師も、そう思いませんか?」
オーティスは隣の弘子に話しかけた。
話を振られた当の本人は、何の事かと言いたげな顔で人違いですアピールをする。
「さ、さっきも言ったと思うけど、た、たた、多分勘違いよ、私は弘子じゃないわっ!しかも私は貴方の師になった覚えは全くこれっぽっちも一切無くってよ!」
「そんな筈は……ッ!──いや、そういう事ですね……我とした事が……失念しておりました」
「わ、解ってくれたかしら?」
「貴方の名前は……弘子にあらず……【深淵を纏い、運命に抗いし漆黒の美覇帝】……でありましたね」
「やめろッ!私の黒歴史ッ!」
「黒歴史……また新たなる言葉が……流石です師匠……いや、深淵を──」
「もう良いわよっ!わかったからっ!二回もその名で呼ばないで!!……うぅ……何でも良いけど……でもお願い、孝志ちゃんの前でその名前は口にしないで……」
「分かりました……レジェンド・オブ・ホープ・ザ・デストロイヤー・イン・ヒロコ」
「ぐがぁぁぁッッ!!!!二つ目の黒歴史がぁぁッッ!!だから会いたく無かったのよぉ!!」」
「はははは、弘子殿は愉快だな!」
「あのぉ~……人間サイドのみなさぁん?」
「「「「「ん?」」」」」
「そろそろ真面目に会議して貰えるかしら?」
五人の人間達はアレクセイに注意されてしまった。
孝志以外は全員大人である。
「ごめん」
「すみません」
「悪かったわ」
「申し訳ない」
「すまぬ……」
謝るその様は、まるで先生に怒られた子供だ。
……彼らはもう少し魔族側を見習うべきだろう。
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