普通の勇者とハーレム勇者

リョウタ

文字の大きさ
125 / 217
6章 勇者と、魔族と、王女様

王国救援作戦②

しおりを挟む




「──それで主人、救援作戦についてですが、前もっていくつかお伝えしたい事があります……宜しいですか?」

「……お、おぉう(あんま解ってないから俺に話振るなや)」

良くわかってない孝志が適当に頷きながら返事をすると、アルベルトは王国の状況を説明し始めた。


「現在、王国の三ヶ所で魔族と人間との戦闘が行われている様なのですが、王国側が交戦している相手が厄介です」

今語っているのは昨日まで自身の仲間だった組織の情報だが、アルベルトは躊躇いなく開示した。
それも厄介な相手とまで言ってしまうほどの清々しい裏切りっぷりに、流石の孝志も苦笑いである。


「敵の数は七名と人数自体は少ないのですが、彼ら全員、カルマの親衛隊と呼ばれるかなりの強者達です」

孝志を含む人間側はカルマ親衛隊と言われてもいまいちピンとこなかったが、彼らをよく知る十魔衆達は反応を見せる。
その中でもミイルフは思わず声を上げてしまうほど驚いていた。


「ふぁっ!?デジマ!?アイツらが出てきてんの?それってヤバくない?」

「……その親衛隊とは強いのか?」

アリアンからの問い掛けに、アルベルトは腕を組みながら静かに頷いた。
取り敢えず、この会議の参加者は天敵だった剣聖アリアンも味方と判断する様だ。


「ああ、このカルマ親衛隊は七人で構成された少数精鋭だが、我々魔王軍では【十魔衆もどき】と呼ばれている。我ら十魔衆に欠員が出た場合は、この七人の内の誰かが十魔衆へ昇格する事になるだろう……それ程の力をそれぞれ有しているのだ」

「……そうか」

(この前倒したザイスって奴より弱いのか……雑魚だな──しかし)

自分にとっては雑魚でも、三大戦力の抜けた王国からすれば危険な存在となる筈だ。
そう考えたアリアンは決して安心する事は無かった。


また、ここで静かだったサイラムが言葉を繋げる。


「左様。そして、十魔衆候補で有りますが故に、実力も我ら十魔衆に匹敵するでござる。一対一では余程相性が悪く無ければ我らが敗戦する事はござらんが、二体を同時に相手とするなら、拙者の様な下位序列の十魔衆だと厳しいでしょうな」

これを聞いてオーティスも話に加わった。


「……それほどの強者か……アリアン嬢……急いだ方が良さそうだな……」

「ああ……アルベルトと言ったな?その三ヶ所とは何処か詳しく分かるか?」

「チッ、人間風情が偉そうに……まぁ良いだろう。場所は王宮の城門前と、王宮から一番近い市街地と、後は王宮内でも既に小規模だが戦闘が始まっている」

「なんだとっ!?既に王宮まで……くそっ!」

「待ちなさいっ!!」

直ぐに部屋を飛び出そうとするアリアンをアレクセイが大声で呼び止めた。


「邪魔をするな、急いで向わなければ──」

「急いで向かった所で、此処からだと半日は掛かってしまうわよ?」

「それはそうだが!!……ではどうしろと!?」

「ふふ、この城の地下に転移装置があるわ。それを使って王国へ飛びなさい。魔王軍の転移装置と違って転移先は固定じゃないから、結界が破壊された今の王国へなら問題なく飛べる筈よん?」

「ほんとうか?!」

「ええ、嘘は付かないわ」

「……すまない……恩にきるアレクセイ殿」

アリアンは深々と頭を下げた。
それに続くようにオーティスもポーズを決めながら立ち上がる。


「済まぬアレクセイ殿……我も昨日……転移魔法を覚えたが……まだ再使用までに時間が掛かりそうだ……故に、どうしたモノかと悩んでいたのだよ」

「へぇ~、転移魔法なんて凄い魔法が使えるのね~……でも確かにあの魔法は一回使用したら、何日か時間を空けないと再使用出来ないからねぇ~」

「……そう言う事だ……世話になる」

「お~けぃ~」

「……ふぅう…………」

今すぐ何とかなると解り、アリアンは落ち着きを取り戻した。
それでも席には戻らず、部屋の入り口前に立ったままアルベルトの方を向いた。

「アルベルト……三ヶ所にはそれぞれ何体の魔族が居るんだ?」

「……城門前に四体、市街地に二体、そして場内に一体だ」


「そうか……城門前はキツそうだな……よしっ!そこには私が一人で行こう」

「うむ……では、我は市街地へ……単独で向かうとしよう」

「なに?親衛隊を相手に単独だと?しかも城門前には四体居るのだぞ?」

これにアリアンが答える。

「戦闘中と言う事は他に人が居るのだろう?魔族と一緒に居るところを誰かに見られる訳にはいかないからな」

この場では特に問題ない。
しかし、流石に王国の人間に魔族と一緒にいるところを観られるのは剣聖アリアンの立場的にはマズイ。
それは賢者オーティスも同じだ。

事前に説明さえすればある程度は大丈夫だろうが、いきなり魔族と一緒に出向くと余計な混乱を招いてしまう恐れがあった。
それに以前、本物の十魔衆ザイスと戦闘経験のあったアリアンは、あのレベル以下の相手なら四人程度なんら一人でなんら問題はないと確信もしている。


「十魔衆のなり損ないなど、何人いようが敵ではない」

「……言うではないかっ!!人間の小娘風情がっ!!」

「おお、勝負するか!いいだろう!」

アリアンの余計な一言に激怒したアルベルトは、魔力を高め戦闘体勢となり、アリアンもアリアンで腰に掛けている剣を掴んだ。
この突然な一触即発を孝志は慌てて止める。


「あ、あの………喧嘩は辞めよう?」

「はい、主人よ」
「わかったぞ、孝志」

「ぬぇぇ!!?……お、おう」

なんて物分かりがいい奴らなんだ……しかもアリアンさんまで……ここまで来ると思い通り過ぎて逆に怖いんだが……?

いや、深く考えても仕方ない。
相手は所詮魔族と狂人だから、俺たちは互いの気持ちを理解する事は出来ないんだ……悲しいけど。
これがまともに生まれて育った宿命だな、お母さんありがとう、良い子に育ててくれて。

しかし、今はそんな事よりも気になる事が……


「あの……ちょっと良いですか?」

「敬語は不要です、主人」

案外、面倒くせぇなコイツ。
……まぁいいか、その方が俺も楽だし。


「おう、じゃあちょっといいか?」

「どうしたのです?」

「いや、俺はアリアンさんと一緒が良いんだけど?」

「……え?わ、私か?」

訓練中は圧倒的に別もんだが、孝志にとって普段のアリアンはかなり頼れる存在だ。
そして、この中で一番強いのはアリアンかオーティスのどちらかだと彼は思う。


──オーティスさんは魔法使いだから、いざと言う時の為に、小回りの効くアリアンさんが一緒に居てくれると非常に安心できる。

正直に、戦力的な理由からの御指名なのだが──


「そ、そうか、孝志は私と一緒が良いのか……嬉しいぞ」

言われた本人は嬉しそうに笑っている。
孝志からあまり良く思われてないと悩んでいただけに、今の孝志の発言がどうしようもなく嬉しいらしい。

──だが、孝志が自分の方を向くと、直前まで笑顔でも彼女は真剣な顔付きとなる。
アリアンとしては、一番弟子の彼に惚けた姿を見せたくなかったから表情を引き締めたのだが、無理に笑顔を止めたので表情が少し引き攣ってしまうのだった。
悪循環なことにそれがまた孝志の勘違いを誘う。


──ア、アリアンさんめちゃくちゃ不機嫌じゃないか?すげぇ顔が引き攣ってんだけど?
もしかして俺が一緒に行きたいと言ったから、甘えるなとか、下手したらキモいとかそんな風に思われてたりするのか?

だとしたらヤバいな……直ぐに訂正しないと後で殺されてしまう。


「冗談です。アリアンさんとは一緒になんて微塵も行きたくなんかありません」

「たかしぃぃッ!!お前は私の心を弄んでどういうつもりだぁぁッッ!!」

「ぬ゛ぇ゛え゛え゛ッッ!!?」

突然前振りなく裏切られ、アリアンは怒りのあまり机をバンバン叩いて感情を爆発させる。
これが魔法で強化した机で無ければ粉々に砕けていた事だろう。


──え!?今まで見せた事ないようなキレ具合なんですけど!?どうしてそんな怒ってるの!?今回に限っては悪い対応は一切して無い筈なのに、怖いよ……助けてアルマス……


「マスター」

「おう、アルマス、心の声が伝わったか?ヘルプヘルプ圧倒的ヘルプ」

「いや、流石に今のはマスターが酷過ぎますよ。私がアリアンさんの立場なら自害してますよ」

「そこまでのこと言ったか俺!?」


──そして段々ショックが膨れ上がり、いよいよ耐え切れなくなって来たアリアンは、アレクセイの方を勢い良く振り返った。


「アレクセイ殿ッ!私は手筈通り一人で行動するッ!──そしてアルベルトッ!確か王宮の門前では四人の十魔衆もどきが暴れているんだなっ!?ええッ!?」

「え、ええ……そうですが……」

アルベルトもアリアンの圧にやられてしまい、思わず敬語な口調で質問に答えてしまう。


「ならば私が今すぐそっちを攻める!」

「今すぐにか!?作戦も建てずにっ?!相手は十魔衆並みに強い奴らが四人だぞ!?明らかに自殺行為だ!!」

「うるさいっ!十魔衆のなり損ない如きが何だと言うのだっ!──アレクセイ殿、先ほど話していた地下の転移装置を借りるぞ!確か結界内部以外なら好きなところに転移出来るんだったな!!城門前へ直接頼むッ!!」

「……ふぅ~……了解したわ。ただし、それは送るだけの装置だから、帰って来るにはまた別の装置がいるの。それは私が持って行くから後で合流しましょう?」

「わかった、では直ぐに行ってくるっ!──孝志のばーか!ばかばかばか!嬉しかったのにッ!」


捨て台詞を最後に置いて、顔を真っ赤にしながらアリアンは部屋を飛び出して行った。
後でどんな訓練が待っているのだろう……実に楽しみである。
アレクセイも装置を起動するためアリアンの後を追うのであった。


「──俺、バカじゃないし……なんなんあの人、酷くないか?あんなにバカって何回も言わんで良いのにさ……なぁアルマスもそう思うだろ?」

「………いやいや、流石に反省なさい」

「………………え?」

あのアルマスが庇ってくれないんだけど?
もしかして本当に俺が悪いんじゃないのかこれ?


……………


……………



はは、いやまさかなっ!

しおりを挟む
感想 295

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...