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6章 勇者と、魔族と、王女様
アリアンサイド〜六神剣VSカルマ親衛隊
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~王宮・城門前~
──時間は少し前まで遡る──
王宮の門前では、千を大きく超える兵士が集結していた。
王宮内の全戦力と言っても過言ではない。
中には魔法使いも居たが、殆どは銀色の甲冑で身を堅める騎士達である。
だが彼らは皆、一様に表情が硬い。
中には死を覚悟して家族の写真を握り締める者も居た。
その原因となっているのが、前方の少し離れたところに居る四人の魔族にあった。
彼らは数分前に宣戦布告し、人間達が隊列を整えるのを待っているのだ。
それほど、魔族にとってこの戦いが余裕だと言うことである。
──そんな中、隊列の中央付近で六神剣序列六位・エディへ向かって土下座し、謝罪の言葉と態度をみせる人物の姿があった。
「──なるほど……それでアリアンに化けていた訳だな」
「す、すいません!!」
それ人物とは、魔法でアリアンに変身していた宮廷魔導師である。
二十代そこらといった若い女性魔法使い。
アリアンの姿をした人物が、エディ相手に土下座しているのだ……本来ならとてもシュールな絵面である。
だが、今は笑い話にはなり得ない。
王国の危機に呼び出されたアリアンが、なんと偽物だったのである。
ユリウス、オーティスが獣人国へ出向いている現状、一番頼れるのはアリアンだったが、彼女まで居ないと分かった今、ここに集まった兵士達の絶望感は底知れない。
エディはようやく顔を上げた宮廷魔導師へ対し、呆れた様に声を掛ける。
「しかし、変装ならもっと完璧にしてくれよ……すれ違い様に『エディさん、お疲れ様です!』とか言ってくるアリアンとかキショかったぞ?」
「うぅ……アリアン様なら言うと思ったのにぃ~」
「まぁアイツはお前らには本性出して無いからな」
彼女にいたぶられた過去を思い出し、エディは目を細め感傷に浸るが、心をどうにか落ち着かせ、直ぐ近くにいた金髪の女性……同じ六神剣アテナへ話を振る。
「ところで、アテナの姉さんはどうして彼女がアリアンの変装だと分かったんですか?」
エディ問い掛けに、アテナは自慢のツインテールを揺らしながら自信満々に答えた。
「ふふ……彼女を観ても胸がトキメかなかったんだ。あと、近付いた時の匂いも違った。あれはアリアン様のトリートメントじゃないわね」
「ただすれ違っただけなのに……なんでシャンプーの匂いで分かるんですかっ!?」
「姉さん、真顔でこわいっっすよ!」
「怖いとは失礼だな、君……だが、戯れ合うのはここまでのようだぞ?」
「……ああ、来やがった」
エディはゴクリと唾を呑み込んだ。
こちらの準備が整ったからか、今まで動きのなかった敵が動き出し此方へ向かって来ていた。
但し、幸いにもやって来るのは四人の内、一人のみ。
他の三人はその場から動かずにその魔族を見送る……要は何処までも人間側は舐められているのだ。
ただ、寄って来ている魔族の放つ威圧感に、集まった数千の兵士はもちろん、エディとアテナでさえも恐怖心を抱き、身体は勝手に震え出していた。
敵の数は僅か一人。
数の戦力差は比べるまでも無く王国側の有利でも、個々の力がそこに加わると逆にとんでもなく不利となってしまう。
近付いて来ない三体の内の二体は、五メートルをゆうに超える巨体。一体が虎でもう一体が龍の姿をしている。
それは龍人や獣人ということでは無く、二体とも正真正銘の龍と虎。
人の姿をして居ないので魔族というより魔物と言った方が良いかも知れない。
残りの一人は人の姿こそしているものの見た目は魔族そのもので、外見や見え隠れする牙から吸血鬼と思われる。性別は男性。
そして、近付いてくる魔族が鬼人族の男性。
後ろの虎と龍程では無いものの、彼も十分に巨体で二メートルは軽く超えているだろう。
そんな鬼人族の男は、ゆっくりと城門を守るエディ達の下へ近付く。
そして充分に近付いた所で、手に持っていた巨大な斧を振り回し、最後にそれを地面に突き刺した。
振り回したというだけでとんでもない風圧……まだだいぶ離れて居るのに、何人かの者は風で押されてしまう程だった。
一頻り演舞を終えた鬼人は、高らかな雄叫びを上げる。
「──我が名は玄武ッ!魔王軍、玄武であるッ!戦争を始める前に、我こそは最強だと思う者よ!何人でも構わぬっ!前へ出るが良いッ!!」
──この言葉で兵士達はどよめき出すも、直ぐ視線をアテナとエディへと向けた。
と言いより、ユリウス達や他の六神剣が不在な今、王国最強は実質この二人である。
「──あれが恐らく十魔衆と呼ばれる連中っすね」
「ああ、近づかれるだけで吐きそうよ。それだけの圧を感じるわ……とんでもない相手ね」
「あんな化け物の相手が、ただの人間に出来る訳がないっすね」
既に敗色濃厚。
近付かれて兵士達の間に絶望感が更に広がった。
こんな化け物たち相手では、例えアリアンでも勝つ事は不可能だろうと、威圧感に押された者達の間に諦めムードが漂い始めるのだった。
そんなムードを払拭するかの様に、エディは自らの頬っぺたを強く叩き気合いを入れ直した。
「よっしゃっ!!アテナの姉さん!あいつ、何人でも構わないと言ってましたね?ここは協力して、あの舐め腐った筋肉ダルマぎゃふんと言わせましょうぜっ!!」
「……ああ、せっかく舐めてくれる訳だし、遠慮なく行かせて貰いましょう」
そしてアテナとエディは陣列から前へと出た。
そんな二人の後ろ姿を見た兵士達から歓声が湧き上がる。
二体一ならどうにか出来るかも知れないと、兵士達は大いな期待を抱く。
中には手を合わせて祈る者まで居た。
だが期待されるアテナとエディは、共に勝ちの目は薄いと分かっていた。
三大戦力には遠く及ばずとも、相手との力の差が分からないほど弱くはない。
二人は死を覚悟して玄武へ向かって歩みを進める。
大袈裟ではなく、一歩一歩がまるで断頭台の階段を登ってるような、背筋の凍り付く気分を味わされていた。
「エディ……他の六神剣と連絡は?」
エディは黙って首を振った。
それを見てアテナは歩きながら表情を歪める。
「アテナの姉さん、どうやら他の奴らは隊長を含めて不在みたいっすね……通信魔具も持って行ってないみたいだから連絡も取れないし、どうしたもんか」
「……はぁ~……泣きごと言っても始まらないわ……私たち二人で何とかするしか無いでしょうね」
「──そうっすね」
「アリアン様に笑われないように、勇ましい死花を咲かせて見せるわっ!」
──アテナは大きな声を上げ背中の剣を抜くと、それに合わせるかの様に、エディも同じく背負っていた剣を抜き、玄武と名乗る魔族に立ち向かうのだった。
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