普通の勇者とハーレム勇者

リョウタ

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6章 勇者と、魔族と、王女様

孝志と雄星

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俺は重い足取りで廊下を歩いている……それも9名にも及ぶ大人数でだ。
来た時は僅か三人だったのにいつの間にか三倍に膨れ上がった……どうしてこうなるの?
因みに転移してから数分ほどしか経っていない。


にしても面子がまぁ酷い。

勇者二人、王女一人、元魔族幹部が二人、メイド三人、見ず知らずの少女が一人。
イカれた組み合わせのグループとしか思えない。
購入したRPGソフトの中身がこれだったら棄てるね。

そして何が一番キツイかって?
さっきから橘のボケが、うざ絡みしてくるのがマジでダルい。再会してからずっと俺に向かって喋り掛けてくるんだけど?


「──松本、この剣を見てくれ……ほら、光輝いてるだろ?カッコよくないか?」

「うん、すごいな……」

「そしてこの靴……ほら靴だよ、靴。なんか魔力を安定させたり出来るらしい……良く分からないけど、まぁとにかくすごいだろ?」

「おお、いいね。ハハ」

「そしてこれがハイポーションだ。魔法使いみたいな女の人に声を掛けたらくれたんだ……青くていいだろ?」

「おお~、透明な青……はは」

「そして松本観てくれ!この護身用に暗殺者の少女から貰った黒塗りのダガーを!命を刈り奪る……形をしているだろう?」

「お、かっこいいーねーははは」

──もうウザいウザいウザいっ!!クソボケカス!!
どうでも良い自慢話ばっかりして来やがってっ!!殺すぞっ!!
それに何がハイポーションだよ、俺は獣人国へ出発する前に10本近く用意したわ!!


……ダメだ血管壊れそう。
コイツと話してると本当に頭おかしくなる。
絶対面倒臭い事になるから、他のヤバい奴らと話す時みたいにモノを言うのも嫌だし、どうしようか……?

俺はこの中で一番頼れそうなアルベルトを観た。
本当はダイアナさんの方が頼れそうな気がするけど、あの人に迷惑を掛ける訳にはいかない。
目が合ったアルベルトは俺に近付き小さく耳打ちをしてきた。

──因みに橘雄星はいまだ自慢話を続けている。


『──主人様……どうされましたか?』
『いや、こいつ煩いからどうにかならんか?』
『え?あんなに話してらっしゃるのに、仲が良いのでは無かったのですか』
『絶対に良くない』
『そうでしたか…………ではどうしましょうか?』
『う~ん……そうだなぁ~……』
『………………』
『………………』
『………………』
『………………』



『──殺しますか?』

『………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………止《や》めとこう』

『こ、これ以上ないほどお悩みでしたね』

これ以上ないほど悩んださ。
でもやっぱり嫌われてるとはいえ穂花ちゃんの兄だし、流石に殺すのはちょっと気が引けてしまう。

それに此処に橘が居るという事は、今魔族と戦って居るのは中岸さんと奥本と言うことになる。
中岸さんはまともな人なので、早く助けに向かった方が良いな。
仕方ないので、俺は橘の自慢話に耐えながら先を急ぐ事にした。

………………

………………

いや待てよ?
コイツもしかして、まだマリア王女の存在に気付いて無いんじゃないか?
あの王女は雄星を観た途端、上手いことメイドの後ろに隠れやがったからな。
どうせ今の俺の状況を観て陰ながら笑ってんだろ?
なぁ、おい?そうなんだろう?

……恨まれそうだけど、ここは卑怯王女に押し付けるか。


「──そう言えば橘くん!僕たちマリア王女と一緒にいるんだ!」

「なに?!本当か!!」

「ふぁっっ!!?」

喜ぶ橘、驚く王女。
マリア王女は驚いた後で凄い殺気篭った目で観てきたが、もう本当に精神が限界だから後は頼む。あとで土下座するから。

そしてマリア王女の存在に気付いた橘は、マリア王女に駆け寄った……

……が、マリアの前に居たど変態メイド二人が、橘の前に立ちはだかりそれを阻止する。


「……誰かと思えば、僕を裏切った二人じゃないか?よく僕の前に顔が出せたね?」

「それはこちらの台詞です、橘様。貴方の王族への無礼の所為で私たちは随分な目に遭いましたよ?」
「そうっすよ、刺激を求めて近付いたけど、あんたのは刺激のジャンルが違うっす」

「いや、人の所為にしないでくれるかい?君たちの場合、自業自得だろ?」

「「!!??」」

事実そうなのだ。
珍しい橘からの正論に二人は反論出来なかった。
ライラとケイトが怯んだこの隙に、橘雄星はマリアへ近付こうとするが、ここで孝志にとって予期せぬ事態が発生する。


「た、橘様!」

「ん?なんだいマリア?」

「ぐっ!(呼び捨て腹立つ!)」

でも怒りで我を忘れてはダメよ!
私をこんな勇者に売った松本孝志に復讐しなきゃいけないのだから……!


「──松本孝志様は、まだ貴方と話たりなそうよ?」

「ッ!?なんだって!?本当か!松本!」

「ふぁっっ!?」

なんでこっちに来るの!?
俺よりもあっちを優先しろよ!マリア王女見た目だけは凄く良いだろう!


──しかし孝志の願いとは裏腹、何故か嬉しそうに孝志の所へ戻ってゆく橘。
さっきとは真逆で、今度は孝志が殺気を籠めてマリアを睨むが、これこそ正真正銘、孝志の自業自得なので一切同情は出来ない。


「やれやれまったく……そんなに僕が知りたいなら教えてやろう……僕が君と比べてどれだけ凄いのかを」

「…………あざっす」

結局、マリアから自分へ興味の移り変わった雄星の話を、孝志は目的地まで聞き続けるハメになってしまった。



♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


~ダイアナ視点~

「エミリア、話さなくて良かったの?」

私は知っている。エミリアが孝志様をずっと気にかけている事を。
でもようやく会えたと言うのに、この子は横目に観るだけで自分から話掛けようとはしない。
なので気になってエミリアに直接聞いてみました。


「……うん、私は勇者さまと比べて全然凄くないから」

「エミリア、孝志様はそんなこと気にしませんよ?」

推測ではなく確信を持てる。
孝志様はエミリアみたいな真面目な子が相手なら、優しく接してくれるでしょう。
なのにエミリアはぶんぶん首を振った。


「……婆さま、私は……今はまだ、こうして勇者さまの近くを歩けるだけで幸せです。そんなの絶対に無理だと思ってましたから、えへへ」

「……エミリア」

エミリアは恋する少女の眼差しで、橘様の話を虚な目で聴いている孝志様を見つめていた。
それを観て私はようやく気付かされた……エミリアが抱く感情はてっきり尊敬や憧れかと思っていたけど、あの目を見る限り何かがキッカケで、孝志様に恋してしまったようです。

しかし、相手が勇者さまだから無理だと、孫娘の気持ちを否定する訳にはいかない。
流石に橘様が相手だと考えますが、孝志様なら……


「エミリア……孝志様といつか話せると良いですね」

「…………婆さま…………うん!!」

私はエミリアの祖母として、この子に出来る限り協力しましょう。


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