普通の勇者とハーレム勇者

リョウタ

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6章 勇者と、魔族と、王女様

橘雄星がやって来る。2 〜雄星視点〜

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♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

★雄星視点★


──遂に……遂にだ!!
ようやくこの時がやって来たと言っても過言ではない!!
俺の実力を見せ付ける時がやっと来たんだ!!

遠くから釘付けの女の子達へ向けて俺は手を振った。
すると、そうなるだろうとは予想出来ていたけど、やっぱり皆は声援を俺にくれたあとに安心した顔になる。
俺が来たからもう大丈夫だと解って貰えたのかな?

それに戦いを行う場所も良い。
パーティー会場でだなんて、まさに俺の為に用意されたステージみたいじゃないか。
なんか俺の思い通りで悪いね、この世。


……それに良く見ると、手を振り返してくれた彼女達……俺の周りに集まって居ることの多かった女の子達だ。全員見た目が非常に良い。


──うん、いいよ……凄い乗って来たよね。
天井に施されたシャンデリアが更に俺を輝かせてくれてるよね。

いや、女の子達とかシャンデリアなんてぶっちゃけどうでもいいっ!肝心なのは松本だっ!!

俺は横目でチラッと松本を見た。


……するとどうだろう?
おいしい所を持っていかれたのがそんなに悔しいのか、奴は俺の姿を観て頭を抱えていた。


──良しっ!!


俺は内心ガッツポーズを決めた。
やっと松本をぎゃふんと言わせる事が出来たんだっ!これほど嬉しい事はないぞっ!
奴とライバル関係になってから437日目にして、ようやく目にモノを見せてやる事が出来たんだっ!


もう達成感が凄いし帰ろうかな?
いやいやダメダメ、此処はやっぱりもっと俺の凄さを見せ付けて、松本に完膚なきまでの敗北感を与えるとしよう!そうだ!格の違いを見せ付けてやるんだ!


「──雄星っ!」

「ん?….…なんだ美咲か。折角良い気分に浸っていたのに──それで?僕に何の要件だ?君を許した覚えは無いんだけど?」

「そ、そんな邪険にしないで……あっ、でも雄星っ!由梨がソイツにやられたの!!」

「何だって?由梨がっ?」

俺は辺りを見渡す。
すると壁際で気を失い倒れている由梨を見付けた。
しかも額から少し血が流れている……あ、いや血は気のせいだった。


──くっ!何にせよ大切な幼馴染をよくもッ!!堪忍袋の尾が切れたぞ…!!もう絶対に容赦しないからな…!!
俺は鞘に納めていた剣を抜き、男へ向けて構える。
悪いが此処は全力で行かせて貰おう。


「ゴールドパワー!!」

力強く叫ぶと俺の全身を金色のオーラが包み込む。
まるで会場全体を照らすように眩い光を放ちながら、黄金のオーラは俺の力を爆発させた。

そんな俺の姿を観た途端、貴族や女の子達から歓声が湧き上がった。
普段から慣れている事だけど、喝采を浴びる瞬間は心地良い……何回浴びても飽きる気がしないなっ!
正直、金色に光ってるだけで何を興奮しているのかと思わなくも無いが、まぁ喜んで貰えたなら良しとするか。


……ま、松本は金色に輝く姿を観てどんな風に思うだろうか?


俺は横目で再びチラッと奴を見る。


………



………


って、今度は全くコッチを観てないじゃないかッッ!!!

何故だ!?急に冷たいじゃないかっ!!
観てて欲しいッ!!松本にはこの姿を絶対見て欲しいのにっ!!いやむしろ松本にこそ観て欲しいっ!!

そもそも黄金に光ってるだけで何が凄いんだこれっ!?
松本に見向きされないんだったら存在する価値なんて無いぞこのオーラッ!?



──雄星が心の中で葛藤し嘆いて居ると、彼と対峙していたカルマが雄星にある質問を投げ掛けた。


「……ちょっといいか?」

「なんだい?」

「君は勇者なのだろう?名前は何という?」

「……やれやれ、君には常識がない様だね。相手に名前を尋ねる時は、自ら名乗りを上げるのが常識だろ?お母さんにそう教わらなかったのかい?」

カルマは眉間に思いっきりシワを寄せた。


「……………ふぅ~~~…………………これは失敬。僕の名前はカルマ……君は?」

「僕の名前は橘雄星……ところで君の名前は?」

「……今……………名乗っただろう?」

「ごめん、聴いてなかったや、はは」

「よしっっ!!今日が貴様の命日だッッッ!!!!死ねぇ!!!橘雄星ッ!!!」

「ま、待たれよ、坊ちゃん!!」

怒りに身を任せて斬りかかろうとするカルマを、明王が全力で止める。力量が全く分からない相手へ無策で突っ込むのは、流石に危ないと判断しての事だ。
止められたカルマも深く息を吐き、我に返る。


「ふぅ~~~………ありがとう、爺や。どうにか落ち着いたよ」

「いいんですじゃ、ここは手堅く、冷静にゆきましょうぞよっ!」(こんなに怒り狂ったカルマ坊ちゃん、初めて見たぞい。橘雄星……ある意味恐ろしい男じゃ)


カルマは明王の言葉に小さく頷いた。
その後、頭を冷やすように額へ指を当てる仕草をした。
そして落ち着きを取り戻し雄星をもう一度観る……の・だ・が──



「──松本ッッ!!流石に我慢の限界だぞっ?!僕の勇姿を何故観ようとしないんだ!!?金色に輝いてるんだぞ!?何が凄いのか分からないけど凄くないか!!?──というかコッチをみろ!!!!」

「お!?……お、お、おぉう……凄くかっこいいと思うよ?」

「え?….そ、そうか!」


なんと…!?当の本人はカルマなど眼中に無いと言った風に、少し離れた場所で大人しくしていた孝志へ話かけていた。しかも内容はどうでも良い自慢話で、重要性や作戦性は全くないものだった。

そんな雄星を目の当たりにし、二人は茫然自失となる。


「……………………」

「ぼ、坊ちゃん……」

もう何も言えんのじゃい。

明王は十歩、後ろへと下がった。


………



………


──カルマは目を瞑り理想の未来を思い浮かべる。
あまりに思考をクリアにし過ぎて鳥の囀りが聞こえてきそうだとカルマ自身が錯覚する程だ。

瞑想しながら思い出す。
自分が魔王軍の頂点に立つという、とてつもなく大きな野望を抱いていた事を。


だが頂点に立つ為にはライバルが尽きない。
特に同じ十魔衆の中でもカルマ、アルベルト、ルナリア、ネネコ……この4名の実力は拮抗している。
僅差でカルマが一番強いというだけの話だ。

だから4名の中の二人が徒党を組んでカルマに挑めば、彼が敗北するのは間違い無いだろう。
そんな程度の実力差では頂点に立ったとは言い辛く、安心を手に入れる事なんか出来ない。
彼は他の追付いを許さない程の力の差で、誰にも脅かされること無く魔王軍を支配したいと考えているのだから。

だからこそ、彼は魔王軍に拘りのない人族最強のユリウスと手を組んだのだ。
しかも魔王に選ばれた瞬間、嫌そうにしていたのをカルマは見抜いており、彼なら簡単な説得で魔王を降りてくれるから大丈夫だと考えている。


──今回のミッションを確実に達成し、王国を滅ぼした犯人をルナリアとネネコの所為だと押し付ける。
そしてユリウスと力を合わせ、ルナリアとネネコを葬り去るつもりで居るのだ。
そうすれば最早魔王軍に敵など居ない。


その点、アルベルトが魔王軍を抜けたのはカルマにとって計算外のラッキーな出来事だった。
彼の性格から出し抜くのは難しく、一番厄介だと考えていただけに、急に抜け出したと聞いた時は自身にツキがあり過ぎて怖かったらしい。

魔王軍という組織は抜けた者には非常に冷たい。
心変わりして彼が戻って来たとしても、アルベルトに居場所など無いだろうから、実質、アルベルトは組織内でのし上がる為の障害には今後絶対に成り得ない。


──肝心の魔王テレサに至っては、彼女の居場所さえ用意しておけば、魔王を降ろされても大丈夫だろうとカルマは考えていた。
そしてあながちそれは間違いじゃなかった。

というより、テレサは一人で居るのが寂しいだけの寂しがり屋なので、ユリウスと同じで魔王には特に何の拘りもないのだ。
その事を、これまたカルマは見抜いていたので、彼女の事はある程度どうにか出来る自信もあった。

もっとも、それも全て孝志とテレサが出逢う前の見立てでしか無いのだが──


ともあれ計画は想像を絶するほど順調に進んでおり、王国さえ抑えれば完遂と言っても良かった。
此処さえ上手くやれば、後は邪魔な十魔衆を倒してカルマは絶対的な権力を手にする事が出来た。
こんな風に、カルマにはこれから輝かしいビジョンが待ち受けている。



──だからこそだ。
カルマは雄星のナチュラルかつ無意識な挑発に乗って失敗のリスクを僅かでも背負う訳にはいかなかった。

カルマは血が滴り落ちるほど強く唇を噛み締め、内に灯った怒りの炎を鎮火させる。
その我慢っぷりは明王が驚くほどの忍耐力である。
全ては輝かしい未来を掴む為に、今すぐ橘雄星を斬り殺したという衝動をカルマはグッと飲み込んだ。



……だが、この日雄星に味わされた屈辱を、カルマは生涯忘れる事は出来ないだろう。
アリアンも本気で怒らせていたし、橘雄星は人を不快にさせる事に関しては本当に凄いのだ。





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