普通の勇者とハーレム勇者

リョウタ

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6章 勇者と、魔族と、王女様

美しきアルマス

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♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

~???視点~

世界最大国家で知られるラクスール王国。世界の四割以上を領土とし、魔王軍以外でこの王国に立ち向かえる国家はほぼ無い。
現在獣人国とは冷戦中で、両国の対応次第では戦争に発展してもおかしくないが、戦争になれば獣人国に勝ちの目は無いと周辺国は考えている。
それほどに巨大かつ大きな戦力を保有する国が、このラクスール王国なのだ。

……しかし、こんなラクスール王国と真っ向から衝突しても五分に戦える国が、人間世界にも一国だけ存在していた。


──その名も【聖王国カコック】
この国は領土的にラクスール王国の十分の一にも満たない。恐るべきはこの国の所有している戦力だ。
カコック王国の騎士はその数こそ少ないものの、一人一人がラクスール王国の副騎士団長レベルの実力を誇り、両国が衝突した場合、混戦になるのは間違い無いとされている。

また、この国は周辺国家と交流を図らない為、国内の実態はベールに包まれている。
他の国々と違う点が幾つもある訳だが、その中でも目を見張るのがカコック王国には王が存在しないということだ。

ただ、その代わりにカコック王国では【聖女】を異世界から呼び出し、他の国々の王に匹敵する権力を与えている。
呼び出す要領としては、ラクスール王国で行なっている勇者召喚と全くもって同じ……勇者が聖女に代わっただけの話である。


──そんな聖王国の聖女が住まう大神殿で、初老の男性が慌てた様子を浮かべながら速足で神殿内を駆け回り、誰かを探してる様子だった。
老人は色々な部屋を物色した後、神殿の外へ探しに行こうとするが、門の入り口で偶然目的の人物と出会す。


「おおっ!!ここに居たかっ!!【アルティメット・マスターズ・スペシャル2】!!探したぞっ!!」

「………はぁ?ジジイが何のよう?」

「くっ!相変わらず口の減らない奴だっ……」

──老人に悪態付くのは女性。
薄紫色の長髪の美しい女性は、自らの名を呼ぶ老人に文句を言いながらも話だけは聞いていた。


「……そうだ!今は揉めている場合では無いのだっ!アルティメット・マスターズ・スペシャル2よっ!どうやらラクスール王国で初期型のアルティメット・マスターズ・スペシャルが見つかったそうだぞ!!」

「ッッ!!?何ですって!!?」

心底興味が無さそうに聞いていた女だったが、アルティメット・マスターズ・スペシャルの名前が出た途端に目の色を変える。
勢いのまま老人に詰め寄ると、ガクガクと彼の肩を揺らしながら問い正す。


「アルティメット・マスターズ・スペシャルが生きていたですってッ!!400年前に勇者に連れ去られてから何処を探して見つからなかったんじゃないのっ!?」

彼は高齢者なので、頭を揺らされて脳震盪を起こしそうになったが、自らに回復魔法を使い続ける事で揺らされながらも意識を保った。

……でもそれも限界だった。


「……もうやめてぇ~、全部話すからぁ~……老人虐待だよほほぉ~……」

「チッ!気持ち悪いジジイね……」

薄紫色の女性は我に返り、老人を解放した。
そして解放された老人も女性を横目に、なんとも言えない内なる感情を述懐する。


──アルティメット・マスターズ・スペシャル2……優秀過ぎる魔法使いのワシと、数百人規模の研究者で創り上げた生物兵器。

正式名称【アルティメット・マスターズ・スペシャルセカンド・ダブル・ドゥ・ツヴァイ・ピース・オブ・二式】
あまりに長過ぎるので、皆は省略してアルティメット・マスターズ・スペシャル2と呼んでいる。

なんでこんな名前になったかって?
それはあれじゃ……皆んなで名前を考えてる時に、気分が良くなって酒を飲んだらベロンベロンに酔っ払って、悪ノリしてこんな名前にしてしまったんじゃよ。
ワシは悪くない……悪いのは酒。酒が悪い……うん。

アルティメット・マスターズ・スペシャル2にはメチャクチャ文句言われてるけど、聖女様に名前を報告した後だから、もう変更不可能だったのよん。
あの時の聖女様の引き攣ったお顔は今でも忘れる事が出来ない。あれ以降、ワシは聖王国中の良い笑もんじゃよ。酒を造った奴はワシの前に謝りに来るんじゃ!!

とは言っても昨日も酒飲んだんじゃがなっ!麦焼酎サイコーッ!!


「って、黙ってないでなんとか言いなさいよッ!居場所は分かってるんでしょうっ!!【プリャンダルヤン=ノーセンスネイム】!!」

「わ、わかったからフルネームで呼ぶでないっ!!ヤン老師とお呼びッ!!名前にコンプレックスがあるのよね!」

「私に変な名前を付けた癖に良く言えたわね?」

「それはマジごめんって!!三十年以上も前の事だし、水に流すべきだぞ!!もう良い加減忘れちゃいなよyou……ガハハハh──ッッいだぁ!!」

ヤン老師はボディーブローを浴びて膝を折った。このアルティメット・マスターズ・スペシャル2……老人相手でも容赦がない。

薄紫色の長髪の人造兵器……ここではアルマス2と略そう。
彼女は髪の色以外はアルマスにそっくりな容姿で、この世の誰が観ても美しいと思われる程の美しさだ。

まさに美の化身。
アルマス同様に性格に問題はあるようだが、黙って居ればこれまたアルマスと同じく、究極の美女として、観るものを骨の髄まで魅了し虜にしてしまう事だろう。
容姿に美しい者の多いこの世界に置いても、アルマスとアルマス2は、見た目だけなら突き抜けて美しいのだ。


「おまっ……年寄りの腹にパンチって……」

「アンタが舐めた事言うからでしょ?」

「年配に対して何たる言葉遣いかっ!」

「黙れ老害」

「あひゅう……」

そこまで言うかね?
確かにちょっとふざけてた事は認めるけどもよ?ワシは一時代を築いた魔法使いだぞい?一生遊べるだけの財産を持ってるしそれなりに人望もあるわ!
まぁ確かに独身で子供もおらんが、それは研究に没頭してたからでモテなかった訳ではないんじゃ!!
……ほ、ほんとじゃぞう?


「ろ、老害は言い過ぎ……じゃないかね~なんて言ったりしてぇ?」

「………」

え?また殴られる?
無言が怖すぎる……年頃の娘の考えてる事はわからんわっ!……いやアルティメット・マスターズ・スペシャル2に年齢は無いけど、見た目は歳若く造ってるし、どうしてもそう思ってしまうんじゃい。

「もう良いから……で?アルティメット・マスターズ・スペシャルの初期型は何処で見つかったの?」

「……う、うむ」

冷たくあしらわれてしまった。それが一番辛い……独身ジジイにもっと構ってちょっ!!孤独死しちゃうもんね!!

でもいつまでもふざけると本気で怒られそうだから答えちゃおう!!


「ラクスール王国を視察していた偵察機が、偶々お主にそっくりな人物を記録しててな?気になって映像を解析してみた所……なんと!!400年前に勇者に連れ拐われたアルティメット・マスターズ・スペシャルだったのであるっ!!」

「……間違いない?」

「もう完璧確実間違いナッシング!!信じてクレメンス!!」

「分かったから黙りなさい!!」

「…………」

「急に黙るな!!」

「え?黙れって言ったじゃん」

「緩やかに黙りなさい。そんな一気に黙り出したらビックリするでしょ?!」

「あー……脳に異常があるみたいじゃのう。後で検査してやるから安心しろい」

「ざけんなジジイ!!!」

「……ぐぉぉ~……またボディー……昼間食ったステーキが出る……」

「昼間っから贅沢してんじゃないわよ!!」

「良いじゃん、お金いっぱいあるし」

「……三発目いっとく?」

「では詳しい話をしよう」


──ヤン老師はもう一発殴られると間違いなくリバースすると感じたので、真剣にアルマスについて話す事にした。
ヤン老師にしてはアルマスが見つかったのは本当に嬉しい出来事だった。
どうして400年前に行方不明になったアルマスが今になって姿を現したのかは検討もつかなかったが、直ぐ会いに行く手配を取ることにした。

このアルマス2を使って──


──アルマス2も本来ならヤン老師の頼みなど聞かない。
しかし、自分がモデルとなったアルマスに会いに行くとなれば話は別だ。

因みにヤン老師が直接行けない理由は、以前ラクスール王国を視察した際メイドにセクハラをしてしまい、それ以降出禁になってしまったのである。


「……では直ぐにラクスール王国と会談の場を設けよう……向こうがアルティメット・マスターズ・スペシャルについて知ってるか分からぬが、一度話をするしかあるまい……まぁワシはラクスール王国には直接話を聴いて貰えんから、交渉は部下任せになるがのう……ぐすん」

「自業自得よ、ヘンタイゴミ親父」

「それってあんまりじゃない?」

──アルマス2は最後にヤン老師を口汚く罵ると、踵を返しある場所へ向かおうと歩き出す。
口を閉じ、真剣な面持ちで行動するアルマス2の姿はやはり美しいとヤン老師は改めて実感した。


「何処へ向かうのじゃよ?王国に会談を取り付ける事が出来れば今直ぐにでも出発するぞよ?」

呼び止められたアルマス2は気だるそうに振り返る。真面目で美しいモードはたったの三秒で終了した。


「【フローラ】の所へ行くのよ」

「え……どうして?」

「どうしてって……今から会談を取り付けるんでしょ?だったら移動はどうすんの?」

「馬車以外何があるん?」

アルマス2は馬鹿を見るような目でヤン老師を睨む。そんな目で睨まれた老師は傷付く。


「馬車だとこの聖王国からラクスール王国まで十日は掛かるでしょ!?けどフローラに変身させて、背中に乗せて貰ったら二時間よ!!……だから彼女に乗せて貰えないか交渉してくるのよ!!」

「怒りすぎぃ……でもフローラ様、龍に変身してくれるかのう?15年前の一件以来、部屋に篭ったきりで邪竜にも変身してくれないんじゃが?」

この老師の言葉に対し、アルマス2は口元を釣り上げ、ニヤリと笑いながら答えた。


「無論、説得して外に出るような女の子じゃないわ」

「え?無理矢理なの?……相手は邪竜よ?戦闘になったら呪いが発生しちゃうよ?巻き添えは勘弁してよ?もうすぐ寿命なんだから老衰死させて欲しいんじゃが?」

「……ふっ、まぁ黙って観てなさい……邪竜とは言え、フローラは竜年齢だとまだまだ子供よ──しかも、今は人化してて見た目も子供だし、まぁ上手く言いくるめてやるわよ……くくく」

性格悪そうな笑い声を上げながらアルマス2はその場を後にした。
そんなアルマス2の後ろ姿を見つめながら、この場に取り残されたヤン老師は溜息を吐いた。


──400年前……ワシの先祖が残した記録にはアルティメット・マスターズ・スペシャルについて、こう記載されていた。
初期型は造られた生命体だったが、姿だけでなく性格まで機械そのものだったと、そう書かれている。

まず、笑わない。任務を大成功に収めても表情を崩さず、常に虚で死んだ魚のような目をしていたと……その時の映像データまで残っていた。
映像越しでもわかる様に、アルティメット・マスターズ・スペシャルは、まるで世界そのものに興味がない様で、命令には忠実に従うものの、何をしても楽しそう見えなかった。アルティメット・マスターズ・スペシャル2とは雲泥の差だ。

当時の科学者達はそんなアルティメット・マスターズ・スペシャルを忌み嫌ってたらしいが、アルティメット・マスターズ・スペシャル2の我儘っぷりを目の当たりにしてもそんな事が言えるだろうか?
アルティメット・マスターズ・スペシャルのような忠実で物分かりの良い人工生命体がどれだけ貴重なのか、過去の偉人達は何も分かってないのだっ!!


ワシはここでアルティメット・マスターズ・スペシャルを回収し、今いるアルティメット・マスターズ・スペシャル2を大神殿から追放しよるのじゃい!!
まぁ腐っても自分で作り上げた生命体じゃから大事にはするが、少なくとも権力者からは外れて貰うぞい!!
これまで自分の立場を利用して、あのアルティメット・マスターズ・スペシャル2が周りにどれだけ迷惑を掛けてきた事か!!その度に怒られるのは造ったワシなんじゃよ!!


アルティメット・マスターズ・スペシャルが記録通りの存在なら、命令すれば昔のように忠実に聞き入れてくれる事だろう!!
今までは散々アルティメット・マスターズ・スペシャル2に振り回されてきたがこれからは大丈夫だっ!!ガハハハハハハッ!!


ヤン老師は近い内に訪れるであろう良き未来を思い描き、心躍らせるのであった。





──何も知らないとは恐ろしいものだ。

今のアルマスは……もう…………



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