普通の勇者とハーレム勇者

リョウタ

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7章 普通の勇者とハーレム勇者

聖王国の脅威

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♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

~モルドレッド視点~

我ら聖王国は規模こそラクスール王国と比べて小さく兵量も小規模だが、騎士達一人一人の能力は極めて高い。

十魔衆の襲撃でラクスール王国は瀬戸際まで追い詰められたと聞いたが、もし仮に、その十魔衆が聖王国に攻めてきたのなら、あんな無様な追い詰められ方はしなかっただろう。

勇者が居なければ崩壊していた可能性が高いと聞く。
実に情けない国だ。小粒なラクスールの兵士とは違い我らは少数精鋭……魔族如きに敗北する筈がない。

だというのに……


──モルドレッドは二人の魔族が暴れ回る戦況をじっと見つめている。
ミイルフが斧を振れば騎士達は薙ぎ倒され、サイラムに刃を向けた者は鋭い太刀筋に斬り伏せられる。
その姿はとても精鋭と呼ぶに値しない……ただ理不尽に蹂躙されるだけの弱者そのものだった。

自分は指揮に準じ戦闘は部下に任せるつもりのモルドレッドだったが、その部下達の体たらくに堪忍袋の尾がキレる。

剣を抜き、斧を振り回すミイルフへと斬り掛かった。


「おっとぉ……びくったぁ~……不意打ちとかナンセンスだし……」

「……魔族如きがいつまでも調子に乗るな」

「……ださっ……種族差別とか今日日流行んないんですけど……?」

モルドレッドはミイルフと交戦しながら近くの騎士に声を掛ける。


「ここは私が抑える……お前達は侵攻し、シーラを捕らえろっ!」

「はっ!」

一斉に騎士達が動き出した。
サイラムは離れた場所で複数人を相手にしている為、その侵攻を妨げる術はない。

そしてミイルフも──

(ヤッベ……こいつめちゃつよ何だけど……コレと戦いながはキツイな~流石にぃ~……)

ミイルフが広範囲に振り回す斧を難なく躱し、隙を見つけては接近して攻撃を繰り出してくる。
ミイルフはその隙を突いた攻撃をギリギリで躱すので精一杯だ……殲滅型の彼女にって、モルドレッドのような常軌を逸したスピードタイプは相性最悪なのだ。


(でも数は超減らしたし、後はひろぽんが何とかしてくれるっしょ!)


「はんっ!シーラってあの小さい子でしょ?幼女拉致るとか、ロリコンにも程があるんじゃないの?」

「違う!!私はロリコンではない!!聖女様の命令で動いてるだけなのだ!!私もあんな幼い子を拐うのはどうかと思うが命令されたから仕方なく執行しているだけなのだ。か、勘違いするなよ?!彼女を傷付けたのも彼女が抵抗するからだ!!彼女は幼いのに恐ろしく強い!!だからそういう趣味がある訳でもないのだ!!ロリコンではないぞ私はッ!!」

「……うわぁ」


♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

~弘子視点~

「まずいわね……」

かなりの人数が城に侵入したみたいね。
100人はくだらない。

それでも十魔衆の二人のお陰で随分数は減った。
本当なら外で二人が食い止めてる連中も侵入して来たんだろうからね。

それにしてもアイツらムカツク……!
人の城を滅茶苦茶にして……!窓を突き破って入るヤツが多かったからそこら中の窓ガラスが割れてるじゃない……!
綺麗好きなのよ私っ!ああもう!片付けが大変だわ……でも孝志ちゃんを快く迎え入れる為に、後でお掃除頑張らないとね。

それにしても……


──弘子は逃げ回りながら聖王国について考える。
今はシーラが狙われているが、弘子も無関係という訳ではない。なんせ400年前にアルマスを連れ去った本人なのだ。その当時、聖王国に与えた損害を考えると恨まれるのは当然だった。

「てっきり、アルマスを取り返しに来たと思ったけど……」

だけど違った……むしろアルマスが居ること自体に気が付いてなかったと思う。
アレクセイが転移して襲い掛かってるから、アレクセイという強者が居るのは解ってたみたいだけど、アルマスには生物の発する気配が存在しない。
見付ける方法は直接観る位しかない……だから聖王国の人達も解らなかったんだわ……



「弘子さん、此処も行き止まりですね」

「そうね」

かなり逃げ回ったけど、いつのまにか随分と追い込まれてしまった。勝手知ったる我が城とは言えこうも囲まれていては正直キツイ。
それにティファレト様が動けないから、私がずっとおんぶしてる状態だし、ミーシャも魔力が戻ったばかりで魔法を使うのはまだ無理。
だったらせめてティファレト様だけでも代わりに背負って欲しいんだけど……


「……ミーシャ、ティファレト様お願い出来る?」

「え!?無理ですよっ!ダークエルフは非力なので、魔法の補助がないとボンクラなんですよ……!──でも代わりにほら──」

──ガチャッ


「行く先のドアをこうして開けます!」

「…………」

もう言葉を発する気にもならなかった。
代わりに弘子に背負われてるシーラが口を開く。


「ごめんね、弘子……私が足を引っ張ってるわ」

「…………」

「え?どうして何も言ってくれないの……?もしかして本当に足手纏いだと思ってる……?」

「……孝志ちゃんの件といい、今といい、今日だけでティファレト様の株が暴落ですよ」

「……そ、そんな」

シーラは弘子の背中に顔を埋めて露骨に落ち込んだ。弘子はそれに反応せず、別館へと続くフロアへ足を踏み入れる。どうにか包囲網の穴を見つける事が出来ないかと彼女は希望を探し続けるのだ。


「ふふ」

追い詰められては居るものの、魔王アレクセイを倒す為に仲間と駆け回った冒険の日々を思い出し、弘子は含み笑いを浮かべた。


「弘子さん」

「どうしたのミーシャ?」

「せめて地下の魔神具を取りに行きませんか……?」

「無理ね、敵陣を突破しなくちゃ行けなもの……ミーシャもまだテレポート出来ないんでしょ?」

「はい……すいません」

「良いわよ別に」

でも彼女の言う通りだ。
ここに魔神具バオウが在れば、その絶大な破壊力で状況を覆す事ができるのに……でも無いモノをねだっちゃダメよね。


「とにかく、出来るだけ出口に──」


──そんな弘子の言葉を遮るように、別館へ向かってる先から複数の足音が聞こえて来る。
弘子は慌てて引き返そうとしたが、今度は後方から同じように団体の足音が聞こえた。

「……参ったわね」

完全に挟み撃ちにされた。
ここは真っ直ぐな一本道の廊下で、外へ逃げ出せる窓も身を隠せる部屋もない。完全に詰みだ。
騎士達は直ぐにやって来て、前後に弘子達の逃げ場を塞ぎ込んだ。


「その女神を差し出せば命は取らない」

「………」

一人の騎士がそう忠告する。

敵は全部で13人。
それに加えてかなりの実力者揃いだ。弘子一人だけなら何とかなるが、怪我人シーラと、無能なミーシャを護りながらだと相当厳しい。


「……はぁー、片側に突っ込めば突破出来そうだけど……お荷物が二つもあるからなぁ」

「「ご、ごめんね」」

そうは言ってもシーラを差し出す気は毛頭ない。
弘子は騎士達に向かって力強く叫んだ。


「残念だけど、その提案はお断りよ!!」

「……そうですか……残念です……」

それを宣誓布告と捉え、騎士達は一斉に弘子へと斬り掛かる。直ぐに抜いた剣で応戦するも、相手は並の実力者ではない。それになんと言っても背中にはシーラを背負っているのだ……勝ちの目は薄い。


(くっ!全盛期なら余裕だったけど……今の年齢じゃ、流石に厳しいかな……でも女神様は守り通さないと──!人の孫に発情するような人だけど、恩人で大切な女神だから──!!)

昔も今も、勇者だった頃の強い気持ちは変わらない。
絶対不利な状況でも諦めず、弘子は二人を守る為に剣を振るい続ける──





「──手を貸そうか?」

「え……?」

どこからともなく声が聞こえた。
すると次の瞬間、三人を囲んでいた騎士達が一斉に吹き飛ばされてしまう。


「………ひ、弘子……今のは奥の手?半分以上片付けちゃったけど……?」

「い、いえ、私じゃないです……」

「……!弘子さん、シーラ、アレを……!!」

「「……!!?」」

二人はミーシャが指を刺す方を向く。
そこには身体中が刺青で覆われた悪魔が居た。その得体の知れない怪物は残った敵を片付けている最中のようだが、それも数秒で蹴散らし終える。

そして悪魔は弘子の方を見た。


「……あの方に似た気配を感じたが……やはり似ている。駆け付けて良かった……あの人に恩返しが出来そうだ」

「………あの方?」

弘子にはなんの事だかさっぱりだ。
しかし、目の前の怪物からは敵意を全く感じず、その禍々しい気配とは裏腹、敵を倒した後は静かに佇んでいる。


「……ミーシャも、元気そうで何よりだ」

「……知り合いだったか?」

「……ああ、この姿で話すのは初めてだったな」

「……なに?」

「俺はカルマだ。禁呪を使ってこの姿になったが、中身は元のままだ。でもミーシャも居たなら此処へ来て良かったぞ」

「え?お前カルマなの?」

「そうだ」

「いやブッサイクになったな!!」

「ああん?」







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