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7章 普通の勇者とハーレム勇者
仮眠
しおりを挟む「……はぁぁあ~~っ」
「でっかいアクビねマスター……迷信だと幸せが逃げてくらしいわよ?」
アクビをしていたら、アルマスに意味不明な突っ込みを入れられてしまった。流石にもう抱き着いては居ないが、今も至近距離はキープしてる。
「いやもう迷信って言ってんじゃん……あと、アルマスが一緒だと俺はそれだけで幸せなのさ」
「嘘でも嬉しいわ♡」
もちろん嘘……いやまるっきり嘘って訳じゃないけど。アルマスは今の冗談を聞いて嬉しそうに笑ってたが、直ぐに心配そうな目で顔色を伺ってくる。
「疲れてるでしょ?少し休んだら?」
「いやオカンか」
「ブワァッ……今までで言われた中で一番嬉しいわ……お母さんだなんて嬉しい。アルママと呼んで良いのよ?あ、お母さんと一緒にお昼寝する?一生贅沢させてあげるからその代償として結婚しちゃダメよ?」
「お前『オカン』の一言で良くそこまで話を膨らますことが出来るよな」
「どうして出来るのか……分かる?」
面倒くさいなぁ……あーでも、そう言えばアルマスって最初こんな感じだったわ。
最近はおばあちゃん関連で結構シリアスな話が多かったけど、これがアルマスなんだよな。偶にはコイツのバカ話に付き合ってやるか。
「お母さんぼく分かんない」
「ふふ、じゃあママがヒントあげるっ!『あ』から始まる言葉よ」
「ア、アア、アリアンさんッッ!?」
「ううん、全然違うの。答えは『愛してる』からよ」
「そうか」
「……途中までノリノリだったのに、急に冷めるの辞めて欲しいわ」
「付き合い切れんわやっぱり……俺どうかしてた」
「え?私ってそんなに酷いの?」
俺は眉間に人差し指を当て目を瞑る。もう完全に寝不足のテンションだな。
──その様子にはアルマスも気が付いてる様だ。
「まぁ冗談はさておき……マスター、本当に休んだ方が良いですよ?クソみたいな連中のクソみたいな会議に巻き込まれてクソ大変だったでしょうし」
「まぁ……そうだな……クソクソ言い過ぎだぞ?」
しかし、アルマスの言った通り死ぬほど眠い。きっと今までの疲れが累積して溜まってたんだろう。
基本は人任せのつもりだったけど、一応は頑張るところは自分なりに頑張って居たからな。
とにかくこの世界に来てから気疲れが凄い。
それと昼間からぐうたら寝る事に抵抗がある訳ではない。休日だと思えば良いのだから……ただ心配事があって、それが気になって気になって仕方がないんだ。
(テレサ……どうしたんだろう?)
朝話してからそれ以降ずっとテレサと連絡が取れない。こっちから呼び掛けても応答すら無いのだ。ハッキリ言って異常だ……いつもなら1時間おきに何かしら話し掛けてくれるのに。
「……夕方まで眠ってから、様子を見に行くか……」
「え?夕方までアルマスと一緒に寝るって?」
「耳垢詰まってんの?」
「うん、だから……掃除して?ね?」
「………うぜぇ」
アルマスが膝の上に寝転がろうとして来たので、孝志はチョップを御見舞いしようと構える。
「失礼するわね~」
だが孝志がチョップをかます直前……部屋を出ていたアレクセイが帰って来る。
弘子から連絡があり出て行ったのだが、何やら神妙なその様子に、孝志はおばあちゃんの身に何か有ったのかと心配した。
「アルマス……ちょっと良いかしら?一緒に来て貰える?」
「もうっ!孝志との時間を邪魔しないでよっ!オカマの分際でっ!」
「あららん?もしかしてケンカ売ってるぅ~?──なんてふざけてる場合じゃないわ……来てアルマス」
アルマスもその尋常ならざる様子に渋々頷く。
「分かったわ……もっと孝志を味わいたかったのに」
「いやもう俺のこと充分味わい尽くしてるだろ?」
「……まだまだ足りないわよっ!身体中を舐めま……まぁ良いわ」
アルマスは孝志の隣を陣取っていたソファーから重そうに腰を上げ、アレクセイと部屋を出で行こうとした。
「身体中を舐めま…………何だ?最後まで言ってけよなぁおい!」
「孝志……いえマスター。私は今からこのオカマと話があるから、少しの間だけ外に出るけど……冗談とか抜きで本当に休みなさい。疲れてるみたいだから」
「突っ込みを流すなや……まぁわかった。でもずっとベタベタして来たアルマスに疲れてるみたいとか言われたくねぇーわ!」
「………言えてる」
「こ、殺してぇ~」
アルマスは何度も振り返りながら部屋を出て行った。
少し離れるだけで大袈裟な奴だ。
でもたった1日離れてただけでこの有様なんだ……数年単位で離れ離れになったら、一体どうなってしまうんだろうか?……考えるだけ恐ろしい──もう寝よ。
──孝志はベッドの上で横になり寝る体勢を整える。蓄積させた疲労のおかげで目を瞑れば一瞬で眠りに落ちそうだ。
…………
…………
しかし、脳裏をとてつもなく嫌な予感が過ぎり、孝志はベッドから跳ね起きる。そしてその予感とは夢の中で出会った正体不明のドッペルゲンガーについてだ。
「……今まで全く姿を現さなかったのに、急に出て来たって事は何か企みがあるはずなんだよな……超眠いけど、少し対策を立てるとするか──念の為にな」
孝志はベッドから立ち上がり部屋を出る。
あの男が仕掛けて来そうな事を予想し、たった今考え付いた対策を実行するために孝志は動き出した。
今から行う対策……それがもし適切だったとしても、それをドッペルゲンガーに『見られて』いたらもう意味がない。これは一種の賭けなのだ。
「……アイツが常時監視してないことに賭けよう。まぁ大丈夫だろ?──何たって俺には【豪運】のスキルが付いてるんだからな!」
さっきまで存在を忘れてたけど。
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