普通の勇者とハーレム勇者

リョウタ

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7章 普通の勇者とハーレム勇者

フェイルノートと松本孝志

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──獣人国へと向かう王族専用馬車。
その豪華な馬車を、道路の外れにある大きな岩陰に停め、孝志達は休息をとっていた。


「う~ん……」

そこで休みがてら孝志は非常に悩んでいた。
勢いで王国を飛び出したは良いものの、先の事はまだ不確か……要は今のところは行き当たりばったり状態。

幸いにも戦闘面ではユリウス、アレクセイ、フェイルノート、ネネコ、ルナリア。
それと心許せる味方としてアルマス、穂花、ブローノが居る。後はクソの役にも立たないがウインターも居る。

仲間には恵まれているので気が沈む事はないが、彼らに出来るだけ迷惑を掛けずに解決するにはどうすればいいのか?

孝志にはその事が気掛かりとなっていた。



「…………」

「どうしたんだ孝志?変な顔してるぞ?」

これから先の事を真剣に考えていたところ、ユリウスに茶化される。外見を馬鹿にされるのが嫌いな孝志は割と苛つくのであった。


「マスタ……孝志ぃ~」

「孝志さ~ん!」

するとそこへ、ほんの数秒だけ離れていたアルマスと穂花が冷えた飲み物を手に近付いて来る。
タイミング的にユリウスの悪口を聴いてなかったらしく、二人ともユリウスには目もくれない。


「えぇ……俺って透明人間?」

二人の美女にガン無視された剣帝は大いに傷付くのであった。相変わらずの豆腐メンタルである。



「どうしたの孝志?いつにも増して凛々しい顔立ちをしてるわよ?」

「どうしましたか孝志さん?代わり映えなくカッコいい佇まいですよ?」

「……ありがとう二人とも……ぐすん」

唐突に泣き真似をし始める孝志。
アルマスと穂花の二人は、直前までデレデレしてた表情を一瞬にして引き締め、心配そうに孝志の元へ駆け寄った。


「大丈夫ですか!孝志!溢れた涙を舐め取らないと!」

「舐めずに拭き取ってくれる?あといつまで引き摺るねんその下品なペロネタ」

「た、孝志さん!私のハンカチ使って下さい!」

「……ありがとう、穂花ちゃんの心遣いだけ受け取るね」

「ぐぬぬ……!」

穂花に敗北したアルマスは悔しそうに拳を握り締める。
また、泣き真似なのに心配かけて申し訳ないと穂花に対してのみ思いつつ、孝志はハンカチを受け取った。
演技派の孝志はなんとか一滴だけ涙を流す事に成功し、それを拭い取って穂花へと返す。


「……よし、養分ゲット」

「ん?穂花ちゃん?」

「……?どうされましたか?」

なんかアルマスっぽい事を言ってた気がするけど、穂花ちゃんに限ってそれはあり得ないよなっ!
穂花ちゃん天使だし。


「……穂花、貴女上手いことやりましたね」

「アルマスさんは直接的過ぎるんですよ」

「欲望を抑えきれないのよ」

「私も、抑える気なんて有りませんよ?」

「……その涙で何をする気?」


二人は孝志れず火花を散らしている。
しかし途中で両者我に帰り、先程まで泣いていた孝志を心配そうに話し掛ける。


「孝志、ホームシックになった?それなら私に甘えて良いのよ?お母さんだと思って……オッパイ飲む?」

「そうですよ!辛い事があったら私に相談して下さい!私の事は好きにして良いので……膝枕します?」


「…………」


──一瞬、穂花ちゃんにアルマスの幻影を垣間見てしまった。耳だけじゃなく目まで悪いとは……まだ17歳なのに可哀想な俺。ストレスなのかなやっぱり。

いや、身体の心配をしている場合じゃない!
ユリウスさんを陥れないと!


「……実は……ユリウスさんが俺に、変な顔だって言うんだよ。それがほんとショックでさ」

「……ぬぉ!?おい孝志!!その訳の分からない茶番は俺をハメる為だったのか!?」

それを聞いて驚きの声をあげたユリウス。
泣き真似を始めたのを観て、相変わらず頭のおかしい奴だと内心思っていた──しかし、まさかそれが自分を陥れる為の演技とは考えても無かったらしい。


「今だってほら、あんな風に茶番とか言う~……アルマス、穂花ちゃん……ぴえん」

「「………………」」

岩場に腰を降ろす孝志に迫っていた二人は、しゃがみ込んでいた状態からゆっくりと立ち上がり、ぎろりと血走った目でユリウスの方を向いた。


「……おい30歳……おまえちょっとこっち来いや」

「……そうですね……孝志さんの何処が変な顔なのか……見る目ないですね。だから権力者なのに30歳にもなって未婚なんですよ」

「……多分、俺に酷い事をするのはこれからだろうけど、今の橘穂花のセリフで俺の精神ポイントは0だぜ?あとそこまで酷い事言ってねーし!……って、ちょっと待て!おいっ!」

二人はユリウスを連れ、近くにあった森の中へと姿を消すのであった。
ユリウスが言う通りそこまで酷い事は言ってない。ただ二人にとっては孝志を泣かせた事が問題なのだ。


──孝志は去り行く三人の後ろ姿を見送る。そして完全に見えなくなった所で立ち上がり行動を開始した。


「……ちょっと強引な手段になっちゃったけど、コレであの三人と離れる事が出来た。ずっとべったりだったからなぁ──ユリウスさんには後で謝ろう」

孝志はフェイルノートの元へと向かう。
今からする話はアルマスと穂花にどうしても聴かせたくは無かったのだ。


「アイツに見せられた映像から察するに、のじゃ女なら何か知ってるかも知れない」


──それはもちろんアダムについての事だ。
そして、のじゃ女はブローノ王子や元十魔衆達と仲良く話をしていた。
因みにブローノ王子があの中に混ざっている理由は、魔族について色々知るためだと言う。

実に勉強熱心だ。
マリア王女やネリー王女と違って王族の立場を鼻にかけたりしない、とても真面目でしっかりとした考えを持ってると思う。俺が女なら付き合いたい。


「……ん?どうした松本孝志?」

俺の気配にいち早く勘づいたフェイルノートがこちらに目線を飛ばして来る。やはり敵意はない。
つい数日前に殺し合った関係とは思えないんだが……?

……でもそうだな。
向こうはフレンドリーだし、俺も城での出来事は水に流して仲良く接しよう。


「のじゃ女!ちょっとこっち来いやコラッ!!」

「ふぁ!?何でキレてるのじゃ!?もしかして城での出来事をまだ根に持っておるのか!?思った通りみみっちい男じゃのう!!女男が!!」

「……思った通り?」

確かに殺されかけたことは根に持ってるけど、思った通りってどう言うことだ?他の魔族達もそう思ってるって事なのか?あと女男って悪口ヤバくない?


「まぁいいわい。実は妾もお主に聞きたい事があったのじゃ」

「…………いや、たったいま罵った事を謝るまで何も答えるつもりはないぞ?」

「……すまなんだ」

面倒くさいのでフェイルノートは心の中でみみっちいと罵りつつ折れた。そんな彼女を見て孝志は満足そうに頷く。


「……いいだろう。それで聞きたいことってなんだ?」

「そうじゃのう~……聞きたい事とは────なんでお主が兄さまと同じ顔をしてるのかって事じゃ」

「なるほど」

その路線の話か。どう切り出そうか悩んでいたんだが、これなら手間が省けていいな。


「ああ、唐突に言われても知らんと思うが、兄さまとは──」

「アダムだろ?」

「……なんじゃと!?」


珍しく素の驚きを露わにするフェイルノート。
兄の話をしようと考えていたが、孝志がアダムを知っているとは思ってもなかったようだ。


「…………場所を変えて話をしようではないか」

「よし、ついてこい」

「いちいち頭に来るのうぉ」

「兄さまの顔に免じて許して」

「…………」


──孝志とフェイルノート。
二人はブローノやネネコ達から離れた場所へ移動を開始した。

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