普通の勇者とハーレム勇者

リョウタ

文字の大きさ
201 / 217
7章 普通の勇者とハーレム勇者

自業自得

しおりを挟む



「──なるほどのう……妾の兄さまが、お主の身体に憑依しとるワケか」

孝志は自身とアダムの因果関係をフェイルノートに説明した。実際どうかは分からないが孝志にとっては悪霊に取り憑かれた様なものである。
故にこの場では侮蔑の念を込めて憑依と表現した。


「そうなんすわ。橘といい、アダムといい、お兄さんキャラって屑しか居ないのかね?」

「いやお主にも妹がおるじゃろう」

「なんで知ってるの?キモッ」

「穂花に聞いたんじゃ」

「あー穂花ちゃんか、ならしょうがない」

「穂花にとことん甘い奴じゃな──それから……そのぉ~キモいとかそんな酷いこと……あんまり言わないでくれるかのう?普通に傷付くし」

「うそ可愛い可愛い」

「ば、馬鹿者っ!兄さまの顔で何を言うてるのじゃ!て、照れるではないかっ!」

「いや嘘に決まってるだろ?可愛いなんてこれっぽっちも思ってねーよ」

「……舐めとんのかワレ」

「ごめんごめん」

「ごめんで済まそうとしてからに……」

「え?それだけ?怒らないの?」

「別に、そう激昂することでもあるまい」

失礼な発言にも敵意を見せない。
心が広すぎて逆にヤバいと孝志は思う……今のは間違いなく自分が悪い癖に……


「似てるだけと思っとったが、まさか本当に兄さまが関係してたとは……でも性格が……はぁ~~~」

「…………」

そう言って溜息を漏らすフェイルノート。
逆に心の狭い孝志は今の発言を聞いて、いつか殺すと心に誓った。


「と言うか、そんな風に照れる割には初対面で殺そうとして来たよな?」

「──何を言うとるか、その顔で無ければ躊躇なく殺しとったわ!……ぶっちゃけてしまうとだいぶ見逃してたぞ?殺す気ならオーティスが来る前に終わらせとったわ!」

「はん!だせぇ負け惜しみだぜ!」

「……あまり調子に乗ると痛い目に遭わすぞ?」

「おっと?良いのかそんな事して?兄さま顔だぞ?」

「……妾、今ね?頑張って殺意抑えてるのじゃよ?」

「え?マジか?」

敵意を飛び越えて殺意を抱くタイプだったのか……もう怖いから黙ってよう。


「…………」

「…………」

「…………」

「…………(急に黙ってどうしたのじゃ?)」

「…………」

「……なぁ」

「……ん?俺を殺すのかい?」

「阿保か」

「阿保違うし」

「その……兄さま……元気か?」

「まぁ、元気というか迷惑」

「……そうか。妾のこと何か言うとったか?」

「いや、そこまで話さないからなぁ、嫌いだし」

「……うん、兄さまはいつも嫌われておる」

「だろうな」

「ほんとに、どうしようもない兄さまなんじゃ」

「アイツはなんで嫌われるのか自覚した方がいい」

「……うむ」

随分長いこと話してしまったな。
でもお陰で殺されかけた恨みがだいぶ薄くなった。俺も割と単純だなぁ。


「そういや、アダムは人間なのにフェイルノートはどうして吸血鬼なんだ?」

「兄さまがかつて倒した悪党の仲間に、報復として拷問された挙句殺されたのじゃ。そして体内に吸血鬼の血を流し込まれて無理やりに生き帰らされた……そして繰り返し何度も……という感じじゃな」

「……そうか」

聞くんじゃなかった。
こんな話を聞いたら嫌でも同情してしまう。
アイツは敵である魔族を滅ぼすと言っていた……恐らくそれは、敵側に生き残りが居れば同じ連鎖を繰り返すと思ってるんだろう。

俺も大切な人達が悪党に報復で、それも酷い殺され方をされたらどうするか?
きっと許さないと思う……敵も……それに巻き込んだ自分も。



「──うっそぴょ~んっ!!本当は間違って吸血鬼の血を飲んだだけっ!わははははっ!」

「………………」

「こわっ!?そんな睨まないで!!可愛い冗談ではないか!?ねぇちょっと!!」

「うるせぇっ!!言っていい嘘ってもんがあんなだろ!!もうめっちゃ感傷に浸っちまったじゃねーかよ!!心の中で『それに巻き込んだ自分も許せない』みたいなこと思ったよ!もう超恥ずかしい!」

「うわぁそれは超ハズイのぉ……」

「もういい!馬車に戻るっ!ユリウスさんにでも斬られてしまえっ!!」

「わ、悪かったわ!どうか機嫌を直して欲しいのじゃっ!な?この通りじゃ……な?」

「……はんっ!」

孝志はフェイルノートを置いてブローノ達の元へ戻ろうと歩き出した──




「【バインド】」

「……ん?」

「危ないっ!」

……だが次の瞬間、何処からか孝志へ向けて魔法が放たれた──!!
まるで獲物を捕らえるのが目的で有るかのように、魔力で構成された魔法の【網】は、孝志に覆い被さろうとしていた。

かなりのスピードで迫り来るそれは、一時的に【全知全能】を奪われた孝志では到底対処出来ない。殺意の篭ってない魔法だけに危険予知すら発動しなかった。

このままでは捕まる──しかし、その魔力網はフェイルノートの爪によって切り裂かれ消滅した。




「……なるほど……あの時の白の姫君か……まさか孝志と組むとは……人生とは奇妙なものだ……」

程なくして奥の岩陰から一人の人物が姿を現した。
それは黒いローブを羽織り、手には神々しい光を放つロッドが握られている。

そのロットこそ魔神具ロード・オブ・パラディン。
所持者はオーティス・アルカナ。
孝志が信頼する三大戦力の賢者である。


「ほぉ?洞窟で戦った悪魔か。いずれリベンジを誓っていたが……まさか、こんなにも早く再戦の機会に恵まれるとはな」

そしてもう一人。
更に奥からは赤い髪の美しい女性が姿を見せる。


「あ、やべやべやべ……!」

その姿を見て孝志は絶望した。
だってアリアンだったから。

この時の孝志はもう人生終わったと思っていた。
ただアリアンは不機嫌そうにオーティスの睨む。


「おい、オーティス……なんだ今の魔法は?」

「バインドだが……アリアン嬢どうした?」

「あんなのが当たって孝志が怪我したらどうする?」

「いや大丈夫だろう……初級拘束魔法であるぞ?」

「万が一の可能性がある。もう孝志の相手は私に任せろ」

「わかった──しかし、訓練でケガさせてるのはアリアン嬢なのでは……?」

「それはそれ、これはこれ」

「……酷いな……いつにもマシて」


この場にはアリアンとオーティスの二人だけで、他の者達は一緒ではない。
本来なら待ち伏せで囲い込むつもりだったが、何故かユリウスの気配が消えたので、それを機に仕掛ける事にしたのだ。

つまりはアリアンとオーティスが仕掛けて来たのは孝志の嫌がらせが原因……ユリウスを陥れたツケをこんな形で支払うことになった訳である。
加えて自身の戦う手段となるアルマスも居なくなったのでかなり危機的状況だ。アルマスのスキルが使えない孝志が加わっても戦力にはなり得ない。

また、邪竜フローラとアルマス2がアレクセイ達の足止めを行なっている為そちらからの援軍も望めず、フェイルノートが一人で、あのアリアンとオーティスを同時で相手にしなくてはならない。
そうなると、封印から目覚めたばかりで力を完全に取り戻してない今のフェイルノートでは厳しい。

無論、一体一なら例え不完全でも負ける事はない。
魔法使いのオーティスが相手だと、弘子の城のように魔力が充満した場所だと苦戦するが、屋外だと魔法の質や連射速度が落ちるので対処出来る。
同じ接近戦タイプのアリアンなら神化さえ気を付ければ問題にはならない……力推しで圧倒出来る。

ただし、二人を同時に相手取るとなれば話は180度変わってくる。
王国で二番目に強い戦士アリアンと、魔法という分野において王国1の実力を誇るオーティス。そんな二人が連携をとってしまえば勝ちの芽は薄いだろう。


「孝志よ、ユリウスを遠くにやったこと恨むぞ?」

「マジごめ──ッ!!前!!」

「ライトニングボルトッ!」

フェイルノートがよそ見した隙を付いてオーティスが雷撃を放つ。
中級魔法による詠唱破棄……いくらオーティス程の使い手が放つ魔法と言えど、この程度の魔法の詠唱破棄なら直撃しても大したダメージにはならない。


「────ッ!?」

しかし、それをフェイルノートは必死で躱す。
ロード・オブ・パラディンの効果で威力が大幅に上昇しているのだ。直撃だと只では済まない。


「はぁっ!!」

「ぐっ!」

そして躱した着地点にアリアンが待ち構えており、フェイルノート目掛けて剣を振り下ろす。
身体を硬化する時間がなく、そのまま腕を斬り付けられてしまった。 

それは実に見事なコンビネーションで、やはり生半可な相手ではないとフェイルノートは確信する。


「いったいのぉ~……」

フェイルノートの腕からは血が滴り落ちている。
勇者以外から受ける傷は直ぐに癒えるものの、痛みは確かに感じる。フェイルノートは斬られた箇所を摩りながら、自身を斬ったアリアンにある事を尋ねた。


「……ふん、妾にリベンジすると言っていたなアリアン。だが良いのか?一対一じゃないぞ?」

「なに、リベンジとは勝つことだ。戦いに卑怯なんて言葉はない……勝利か敗北かの二者択一」

「……アリアン嬢!!」

「ん?どうしたオーティス?」

「今のセリフ……なかなか良かったぞ──今度使っても良いか?!」

「オーティス!!ふざけてる場合かッ!?」

「ぐぬぅ……余裕があるのうこやつら」


──そして三人の戦闘が幕を開けた。



──────────


「ほんとに凄いな、あの人たち」

目の前で最強同士の互角の打ち合いが始まり、孝志はその光景を見守っている。

すると、とある人物が孝志の元を訪れた。


「やぁ」

「……!?ウゲッ!」

「──松本……まさか敵対することになるとはね」



その男は孝志の前に立ちはだかり、そして──




「──君の相手はこの橘雄星が引き受けよう」




そう名乗りを上げた。



しおりを挟む
感想 295

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...