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7章 普通の勇者とハーレム勇者
幕間 〜雄星の考え方〜
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~橘雄星視点~
──アリアン達が戦闘を始める1時間程前……この地に転移したばかりの馬車の中で、雄星と由梨はこんな会話を繰り広げていた──
「──松本くんに会ったらどうするの?」
「……そうだな、とりあえずは戦うかな」
「た、戦う?もっと平和的に連れ戻せないかな?」
「連れ戻す……?どうしてだ?」
「……え?連れ戻すつもりで来たんじゃないの?」
「そんな気なんて一切ないさ」
「……どういうこと?」
アリアン、オーティス、アンジェリカの三人は第二王女マリアに付き添うような形で、馬車の入り口から一番奥の席に座っている。
どうやら先程アルマス2に暴力を振るった件で、マリアはアリアンにこってり絞られてる様子だ。
「今後、このような事の無いようにお願いします」
「は、はい……」
説教が終え第二王女はかなりシュンとしている。
因みに、ユリウスやオーティスもこんな風に王族を注意する度胸はない。
今は亡き王妃レオノーラの言葉もあり、アリアンのみが教育係として指導を行なったりする。
またこの時のアリアンに普段の狂気はなく、まるで母親か姉のような口調になるという。
第二王女マリアが怒られる元凶となったアルマス2はと言うと、流石にフローラやランスロットと一緒に大人しく座っていた。
そして後から合流した美咲とミライの二人は、雄星からだいぶ離れた所に座っている。
──それぞれが四組に別れており、とんでもなくギズギズした空気が馬車内には漂っていた。
敵同士にも関わらず和気あいあいとした孝志達の馬車とは大違いだ。
……ただもし、孝志がこの馬車に居ればこの空気も一変していただろう。
本人は気付いてない様だが、人の心を惹きつけ、無意識のうちに心を許せてしまうような……そんな人間性を孝志は持っている。
「──雄星様……コーヒーをお淹れしましょうか?」
そんな空気に耐え兼ねて、近くに居たミレーヌがそう雄星に提案した。
馬車内はコーヒーメーカーなどの道具がしっかり完備されおりメイドも給仕を行う事が出来る。
「ああ、お願いするよ。砂糖はたっぷりで」
「わかりましたわ。では4つお淹れしましょう」
「………たっぷりでと言っただろう?」
「………では5つ?」
「…………」
「………もしかして!10個です……か?」
「イエスだ」
「で、では淹れて来ます……」
そう言ってミレーヌはそそくさとキッチンへ向かう。
流石に砂糖の量に対して突っ込む度胸は無いようだ。
というより、過去に余計なことを言ってしまってるので、これ以上印象を悪くしたくないと考えている。
まるで奴隷の考え方だが、すでに王宮内での評判が地に落ちてるミレーヌは雄星に縋るしかないのだ。
「雄星……そのうち身体壊すよ?」
言われた通りコーヒーを淹れに行ったミレーヌと代わり、由梨が気を悪くしない程度の忠告をする。
「ん?どうしてだ?」
「だって……そんなに砂糖入れたら身体に悪いよ」
「そんな訳ないだろう?たかが砂糖だぞ?」
「うん……まぁ若い内は大丈夫かな?」
言っても無駄だと由梨は悟った。
また、付き合いの長い彼女は此処が引き時だと分かっている。
──間もなくコーヒーが到着し、雄星はそれを啜りながら先程の話を続ける。
「……さっきの話の続きだけど、俺は松本が悪いことをしたと考えてないよ」
「え?でも……財宝を盗んだって聞いたよ?」
「そうだね──でも王国の方が僕たちにもっと酷い事してるよ。勝手に許可もなくこの世界に呼び出しておいて、元の世界に帰せないって言うんだぞ?幾ら贅沢をさせて貰えるからってやってる事は犯罪なんだし、こちらが同じ事をしても文句を言う資格なんて無いと思うけどね?」
「……うん……確かに拉致となんら変わらないよね」
「変わらないんじゃなくて拉致されてるんだよ僕らは──ただ松本は王国側に大人しく従っていた。僕は……いや、俺はそれが我慢ならなかったんだよ。松本が王国の言う通りに動く必要なんてないのに……だから王国から逃げ出したと聞いて嬉しかったんだ。その方が彼らしくて良いと思う」
「………雄星」
──そんな風に考えてたんだ……奴隷を買ったり、向こうの世界以上に我儘になったり……この世界に来てから雄星は悪目立ちする様になった。
でもそれは、この世界に呼び出されたことが嫌だったからなんだね……?
私は雄星や穂花ちゃん……それに美咲が居るし、高待遇だから良いかなと思ってたんだけど、雄星はそうじゃ無かったんだ。雄星は向こうの世界での生活になんの不満も無かった筈だもん。
この世界に来てから雄星は人が変わったと思ってた。
でも少し誤解してたなぁ……奴隷を買いに行ったりするのは流石にどうかと思うけどね。
それでも、どうして松本君と戦うんだろう?
「……じゃあどうして雄星は松本君と戦おうとするの?彼の行動に賛成ならわざわざ戦う必要なんて無いと思うんだけど……?」
「……個人的な問題なんだ」
「個人的?」
「俺は、今まで松本に挑んで勝った事がないんだ。一度テストで点数を上回った事があるけど、アレは松本が体調を崩してたからノーカンだ」
その勝負、松本君は認識してるのかな?
多分、勝手に言ってることだと思う……でも余計なこと言って話の腰を折らない方がいいね。
「そして松本に勝って、俺にはどうしてもやりたい事があるんだ」
「……聞いても良いかな?そのやりたい事って?」
「松本に勝って……その……名前で呼び合いたい」
「友達になるとかじゃなくて名前で呼び合うだけ?」
「……い、いきなり友達だって!?物事には順序という物があるだろう!──これをキッカケに、徐々に関係を深めていけたらと思ってるよ」
「そ、そうなんだ」
凄い乙女チックだよ雄星。
私達に対してもそんなロマンチストさが欲しい。
「だからどうしても負けられない。向こうの世界ではテストの点数で張り合ってたけど、この世界だとテストが無いから戦いで優劣を決めようと思っている。これに勝つ事で名前で呼び合う様になり、さ、最終的には……し、親友になるんだ俺は……!」
「親友……いいね、それ」
「……誰にも言うなよ由梨?俺が松本と仲良くなりたいなんて、誰かに打ち明けたこと無いからね?幼馴染の由梨だけに教えるんだからな?」
「ふふ……うん!もちろんだよ!」
幼馴染の私だけに教える……なんだろう、凄く嬉しい。
ちゃんと特別に考えてくれてたんだ、私のこと。
「そうだ!御飯に誘おうと思ってるんだが、松本と俺は味覚が合うんだよ!甘い物が好きなんだってさ!前に食べたデザートを紹介したら喜びそうだぞ!」
「そ、そうね」
あぁ~やっぱり嫉妬しちゃう。
松本くんずっと長いこと居た私より、雄星や穂花ちゃんに思われてるんだもん。
でも雄星……上手く行くといいね。
やり方が本当に不器用………ただ──
──それが雄星らしいかな?
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