普通の勇者とハーレム勇者

リョウタ

文字の大きさ
204 / 217
7章 普通の勇者とハーレム勇者

普通の勇者VSハーレム勇者

しおりを挟む



勇者として召喚された松本孝志と橘雄星。
向こうの世界から微妙に、本当に微妙に因縁のある二人が戦闘を繰り広ようとしている──




──が、その前に……この世界に来てから両者のここまで経緯を簡単に振り返っておこう。



まず橘雄星についてだが──


──この男はこれまで特に何もして来なかった。
アリアンにこっ酷く痛めつけられて以降、一度も修練に励むことなく日々を過ごしていた。
王国への反骨心から来るサボりだが、それでもサボりはサボり、お陰で全く成長をしていない。
ポテンシャルは孝志を大幅に上回るものの、いかんせん経験値が不足している。
これは美咲にも言えることだが、隠れて弓術を鍛えていた由梨とは違い、雄星は戦闘の形すら一切知らないのだ。



──一方の松本孝志……この男は逆に引く位凄まじい成果や経験をこれまで積んで来た。
この世界に呼び出されてそれほど時間が経過してないのにも関わらず、既にカルマ、アッシュ、ザイスといった魔族最高峰の戦力・十魔衆と戦闘経験がある。
アッシュに関してはスキルモリモリの状態とはいえ、長時間凄まじい剣戟を凌いでみせた。

他にもフェイルノートとも戦い、味方側の強者達の戦いっぷりも間近で幾度も観せられている。オーティスやアルベルトなど名前を挙げればキリがない。
何よりテレサの圧倒的な強さも目の当たりし、挙げ句の果てにアリアンが師匠。

確かに、能力では雄星に大きく劣るものの、圧倒的に修羅場を潜ってきたのは文句なく孝志。
孝志本人が不本意だったとはいえ、この経験の差は雄星にとって絶望的な格差になる。



「………」

「………」

木刀を構える両者。

雄星はカルマを圧倒した時の力は、何らかの魔道具によるものだと考え、木刀のみの一騎討ちならば互いの実力はほぼ互角だと思っている。
孝志の勇者にしては低過ぎのステータスを知らないのだから無理はない。そもそも孝志を下に見た事のない雄星ならば、この場で孝志を侮るなど有り得ない。


対象に孝志は負けるはずがないという自信がある。
それは傲りではなく、実際に雄星と対峙することでそう確信するに至った。

まず、なにひとつ圧が雄星からは感じられなかった。
今まで戦って来たどんな相手と比べても、雄星は非常に脆く感じる。
ただそれは化け物クラスとばかり戦って来た所為で生じるイカれた正気じゃない感覚。
雑魚モンスターとの戦闘経験をすっ飛ばし、ボスクラスと戦い続けて来たお陰で、本来なら強い雄星を弱い部類だと錯覚しているのだ。


「──はぁっ!」

「…………」

そんな孝志の洞察になど気付きもせず、雄星は地面を踏み鳴らし孝志へと斬り掛かる。
既にスキル【ゴールドパワー】で限界を超えた力を発揮している。孝志相手に手加減などあり得ない。
爆発的に飛躍されたスピード……それにより、一瞬で孝志の懐に潜り込み、そのまま木刀で孝志に斬り掛かった。


──この戦いを見届けているギャラリーは四人。
一方的に雄星の勝利を願うミレーヌ。
孝志を応援するマリアと美咲。
両者に大きな怪我なく終わる事を祈る由梨。


観戦者に見守られながら放たれる雄星の一撃は──


「ぐぅ……!」

「………」

孝志が自らの持つ木刀の柄を、雄星の手の甲にぶつける事で止まった。
それどころか手に走ったあまりの痛みに、雄星は強く握り締めていた武器を手放してしまう。

カランと音を立てて地面に転がる木刀を雄星は慌てて拾い上げようとするが……その動きはピタッと止まった。



「ば、バカな……」

「勝負あったか?」

地面に膝を着き、武器を取ろうとした雄星の首元に、孝志の木刀が添えられている。
その行為は明確な『詰み』を表している。
つまり雄星は敗北したが故に、動きを止めたのだ。


(思ったより速かったな……でも──)

動きが単調すぎだな。
アリアンさんに比べると、繰り出す攻撃があまりにも真っ直ぐで見切るのが容易かったし、同じ感じで真正面から来るアッシュと比べても剣に鋭さとスピードがない。
何より橘の攻撃には『怖さ』を感じない。木刀を使ってるからとか以前の問題だ……何ひとつ怖くない。

流石に正面から受けるのは不可能だったけど、動きを目でちゃんと追うことが出来たお陰で、あんな風にタイミングを合わせてカウンターをキメる事ができた。

……ていうか、初めて他人の力に頼らず勝ったんだが?相手が橘なのは癪だけども……

アリアンさんとの地獄訓練の成果だな。
ステータスが全然上がらないから、本当に意味があるのかと心配だったが、こうして結果が出ると無駄な地獄では無かったと確信が持てる。
アリアンさん今迄本当にありがとう……もう訓練は卒業しても大丈夫そうですよ?


「ま、まだ終わりじゃない!」

「おっと」

落ちていた剣を掴んで再び雄星は構える。そして今度はさっき以上に神経を研ぎ澄ませ更なる力を発揮させる。


「ゴールドパワー!レベル2!」

更に身体能力を向上させるスキル。
これはまだ制御しきれてない力で、出来ることなら使いたくは無かったがどうしても負けられない戦い。
身体への負荷は大きいがここは耐えることにした。


「……ッ!!」

身体中が軋み始める。
痛みに弱い雄星だったが、孝志と名前で呼び合う関係になる為、涙目になりながらその痛みを必死で耐え忍んでいる。

かなり身体強化だ……ただ、孝志の戦う手段は何もアルマスだけではない。


【相手の能力向上により敵対者を格上と判断。スキル:ティファレトの加護を発動します】


相手の戦闘パラメーターにデバフを与える強力な加護スキル、ティファレトの加護が発動する。


「な、なんだ……身体が急激に重くなったぞ……?」

あのアッシュですら孝志とマトモに戦えるレベルにまで落とした特殊スキル。その負荷が雄星の身体に文字通り重くのし掛かる。

相当な自己強化スキルの筈なのに、さっきより動きが鈍くなってしまった雄星……むしろさっきより弱体化してしまった。

もはや彼に勝機は残されていない……だが──


「か、格上……?橘が俺より格上だと……?」

その事実に孝志は尋常じゃない程凹んでいた。
お陰で孝志の動きが鈍くなる……こちらもスキルが発動して弱体化してしまった様だ。



「か、身体よ……いう事を聞いてくれっ!!」

「た、たた、橘より格下……ひひひ、もう俺に生きる価値なし……死のうかしら……?へへへ……」 




「──ふざけてるのかしら?」


マリアは呆れ顔でそう呟いた。






しおりを挟む
感想 295

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...