貴方を想っていた

菜坂

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貴方を想っていた

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セナは今、妹と一緒に城下町へ来ていた。
勿論変装して来ている。
妹と一緒に城下町を来るのももう何回目になるだろうか。

「お姉様、見て下さい!また新しい商品が入荷されています!」

そう言って妹が指を指した先には、よく分からない動物のぬいぐるみがあった。

耳は垂れていて、口が大きく開いている。
ぶさかわというやつだろうか。

──数時間後

「そろそろ、城に戻りましょう」

私は隣にいる妹に言った。

「そうなの。時間が経つのは早いわ」

妹が言うこのセリフも城下町に来るたびに聞く。

そして少し歩き、馬車に乗る。

「城まで、お願いします」
「分かりました」

そして馬車を走らせて少し経った。
少し窓の外を見て、私は違和感に気付いた。

いつもと違う道⋯?

「あの、ここはどこでしょうか?」
「ん?どういうことですか。城へ向かっておりますが」
「そ、そう」

どういうことかしら?城へ行く道は一つしかないと思っていたのだけれど。

「どうしたの?お姉様?」
「なんでもないわ」

城へ向かっていると言っているのだし、と私はそのまま馬車を進めた。

ドンッ

いきなり何かにぶつかった音がした。
急いで馬車を降りた。
馬車の周りを何者かたちが囲っていた。
全員黒いフードをかぶっていて、顔が見えなかった。

私は妹に言った。

「中から出ないでね」

多分この人たちは、私たちを狙って来た刺客なのだろう。私たちはくさっても王女だ。

「貴方たちのボスは誰かしら」

私は黒服の人たちに問う。

黒服の中の一人が言った。

「教える訳がないだろう。第一王女様。
それより第二王女はどこだ」
「知らないわよ。あの子は先に帰ったのだから」
「そんなはずは⋯情報と違う⋯?」

⋯情報?
私たちが今日出かけることを知っているのは⋯
まさか!
いや、ありえない。
今日はここにいない⋯し⋯

「第一王女を先に殺せ。第二王女はあとだ!」

頭を巡らせていると、黒服たちが襲ってくる。

とりあえず、逃げないと。考えるのは後よ。

私は一歩道を走って進んでいく。
こんな場所は知らない。

黒服たちが追いかけてくる。

全員追いかけてきてる。これで、妹はもう安全なはず。

そして走って行った先には城がそびえ立っていた。

私は大きな声で門番の騎士に助けを求める。

門番を見ると、黒服たちは逃げていった。

「第一王女様、何があったのですか?」
 
私の姿を見て門番は何かを察知したのだろう。

「説明は後でするわ。この道を真っ直ぐ行ったところに馬車があるから早く向かって!」
「了解しました。ただ事ではない様子。今すぐ迎えに行きます」
「そうね。私も心配だから、一緒に行くわ」

騎士5人と私一人の計6人で馬車のところへと向かう。

馬車を見つけた。
もうその頃には黒服はその場に一人もいなかった。
そして扉を開けて中を見る。

──ヒッ

中には、胸を小刀で刺され死んでいる妹がいた。
あの時置いていかなかったら良かったと後悔をする。
私は近くに行き、息があるか確認する。
──ない
そして自然と目は、胸を刺している小刀へといく。
その小刀には、私のイニシャルが入っていた。
そしてその小刀は昔、私がアンにあげたものだった。

私たちは妹を連れて、急いで城に戻った。

その日、城にはたまたま隣国の殿下が来ていた。

そして殿下は死んでいる妹を見た。そして、凶器に書いてある私のイニシャルを見て

「貴様が殺したのか⁉︎」

と言った。

誰が見ても同じことを言うだろう。
私は否定しなかった。
今否定したとして、次に疑われるのはアンだ。
私の小刀を持ち得るのはアンしかいないのだから。
アンには家族がいる。夫がいる。子供がいる。
私には、誰もいない──。

私は牢屋に入れられた。
数日後に処刑されることになるだろう。


処刑当日

城下町の広場で私は斬首刑されることになる。
いろんな人が、私を見ている。隣国の殿下も。
処刑台に立たされる。

「何か言うことはあるか」

騎士は言う。

「はい。では。
殿下、初めて会ったあの日、殿下が幼い頃からずっとお慕いしておりました」

私は嘘をついた。

そして、刃が私の首に向かって落ちてくる。

この日、セナ・シェルヴァーは20歳という若い年齢で命を散らした。



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