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九月『子猫の嫁さがし』
その七
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五十を超えて恋に目覚めるなど、七本三八にとっては甚だ予想外であった。
元・実井寧々子――現・七本音音は、五十年間、恋愛には目もくれず生きてきた三八の心を、初めて撃ち抜いた娘であった。
三八は譚本作家として恋愛譚に触れ、紡いだ経験は数多くあれど、自分自身については無縁の感情と思っていたのである。見た目こそ若いが中身は中年、若い娘に手を出すのは悪い気がして恋どころではないし、ほとんど人妻となっている同年代の女性に興味など湧かない。このまま独り身で死んでいくつもりだった。
ゆえに、三八は初めて覚えた恋心に酷く戸惑った。淑女との適切な距離のとり方は処世術の一つとして心得ていても、淑女の扱いなど分からなかったのだ。ご丁寧なことに、音音は三八の処世術に対し『紳士的なおじさま』と勘違いしてくれたようで、それもまた彼女の好感度を上げるのに一役買っていたらしかった。
世慣れはしていても恋愛慣れはしていない中年男、そしてそんな男にまさかの初恋をしてしまったうら若き乙女。三八は大いに困惑した。
それでも最終的に三八は音音を娶る決心をしたわけだが、娶るからには当然、若い娘ではなく妻として彼女に接していかなければならない。三八は三八なりに、恋愛慣れしていないなりに、音音を妻として愛そうと務めていたのである。
だからあの時――三八は、珱仙の忠告に揺れた。
『本当に貴方は、彼女を妻として、伴侶として見ているのですか?』
『貴方の慈愛は、誰に向けたものですか?』
――残念なことに。三八はその問いに対して、『本当に妻として見ている』『妻に向けたものである』と答えられなかった。
本当に妻と認識しているなら、そもそも『妻として扱おう』などという思考が度々現れるはずがないと、分かっていたからだ。
*****
時は数十分前にさかのぼる。
七本三八の心は、妻・音音からの無言の拒絶によって一度折られた。
それをされたことについて三人は知る由もなかったが、紫蔓だけは「あぁ、わかった」と言い、なにかを察したようだった。
「あの先生の言ってた『あんたが音音ちゃんを妻として見てない』って、そういうことだったのね」
「え?」「は?」
唯助と世助が同時に別々の返事をする。
「そんな! だって、あんなに仲がいいのに、それはないでしょう?」
「そうだよ、こっちがウザイくらい好き好き言って、臆面もなく抱きしめたりしてるんだぜ?」
紫蔓の指摘――元々は全てを見通す『慧眼』を持つ珱仙の指摘なのだが、それは意外どころの内容ではない。ありえない内容だ。少なくとも、普段からあの溺愛ぶりを見せつけられている双子と、会えば必ず惚気話を聞かされる柄田にとっては、信じられない話だった。
しかし、そんな男たちに対して、女である紫蔓はどこか呆れたように言う。
「それは旦那じゃなくてもできるわよ。女の子を可愛がることができるのは、旦那だけの特権じゃないわ。坊やたち、分かる?」
「え? ……えと、恋人、とか」
「この場合は『旦那』と同じ意味ね。じゃ、そこのメガネ司書。もしかして、あんたなら分かるんじゃないの?」
「………………父親か」
「はい、正解」
「えぇっ!?」
「ウザっ!」
……全国の(特に娘がいる)父親各位は、恐らく今の世助の言い方に少なからず心当たりがあるだろう。子供とは無情である。
「可愛いわが子を抱きしめたり、大好きだって声をかけたり。子煩悩な父親ならこれくらいするわよ。猫可愛がりってやつ。こいつはさっきまで音音ちゃんを守るために必死こいてたけど、それだって父親もすることよ? 大事な娘が化け猫に攫われちゃったら居てもたってもいられないし、命にかえても助けようって思うじゃない。旦那だからってことにはならないのよ」
紫蔓はそこまで言い切ると、力なく項垂れている三八の顔を覗き込んだ。
「ねえ、あんた。音音ちゃんに近寄らないでって拒まれたから、『あぁ、もういいや』って思ったでしょ?」
「……!」
「潔く手を引いちゃおうって思ったわね? 音音ちゃん、あの猫にぎゅっと抱きついてたっぽいし?」
停止していた三八の指だけがぴくり、ぴくりと動いている。
「あんたって、夫婦ってなにか考えたことある? 『妻』って伴侶とも言うでしょ。伴侶って『連れ』のことよ。出会いと別れがいっぱいの人生を、死ぬまでずーっと一緒に歩こうって決めた、たった一人の仲間なの。あんた、この意味わかる? 説教くさいの承知の上で聞くけど、実際どうなのよ。音音ちゃんを『娘』として見てたかどうかはさておいて、少なくとも『妻』としては見てなかったんじゃない?」
紫蔓は途中からまくし立てるように言い連ねていた。
というのも、紫蔓は同じ立場である音音に同情していたからだ。禁書『ある女』という、『妻』にもなりえる『万様の女』であるがゆえに――『妻』である音音に同情していた。
「……そうだ」
三八はようやく口を開いて答える。
一切否定をせず、ただ肯定する。
「君の言う通りだ、紫蔓。小生は彼女を『妻』として見ることが十分できていなかった。『娘』として見ているところもあったさ」
三八はあっさりと認めた。
あれだけ自らの妻にした女性を愛でておきながら、実は嫁ではなく娘として見ておりました。――などと、音音が聞いたら泣いて怒りそうなことを、すんなり認めたのである。
双子と柄田が少なからず衝撃を受けているのを横目に、紫蔓は三八の反応に怒りはしないものの、ふん、と鼻を鳴らした。
「じゃあどーすんの。音音ちゃん、このままじゃ本当にあの猫の嫁になるけど、幸せになれるなら嫁にやっちゃうの? それでいいのかしら?」
「いいわけあるか」
今度は即座に否定する。
「必ず止める。あの子を亡き者にされるわけにはいかない」
三八は迷うことなく立ち上がった。
紫蔓の呆れながらのお説教は、意外にも三八を傷つけることなく、むしろ奮起させていた。
奮起させたのは、七本音音の『夫』としての七本三八ではない。――七本音音を、実井寧々子を守り抜くと誓った七本三八である。
彼女の生きる人生が幸せであるよう、その道筋も守ると決意した、一人の『男』。
彼女から本当の父を取り上げてしまった者として、彼女を見守ると決めた――夫でも父親でもない――『父親代わり』になろうとした『ただの男』である。
三八は、あの憎悪の目をもう恐れない。
音音が人として幸せな道を歩むためなら、彼女に憎まれたとしても――いや、そもそも、元よりそのはずだったのだ。彼女から父親を取り上げたあの日がそうだったではないか。本当ならあの時点で三八は音音に憎まれていたはずなのである。音音――元・実井寧々子が運良く聡かったから憎まれなかっただけだ。
彼女を禁書から守れるなら、もう『夫』に戻れなくてもいいじゃないか。今まで『夫』として過ごせていたことの方が幸運だったのだ、その幸運な時間が終わるというだけの話だ。
――三八は、そう開き直った。
「あの子にどう思われようと、小生のやることは変わらない。――あの子から禁書を引き剥がす」
三八の瞳は静かに冷たく、残酷で冷酷な刃を宿していた。
魔王の誕生である。
*****
三八にとって、音音に嫌われるかもしれない可能性は、非常に大きな枷であった。親子ほどの歳の差がありつつも婚姻に踏み切るくらいには、三八も音音を少なからず一人の女として愛していたのである。そんな彼女に嫌われてしまうかもしれないという懸念は、今回のような禁書の場合、非常に邪魔な枷になった。
――だから、三八は枷を外した。
音音に嫌われるかもしれないという可能性に対して、「嫌いになられても構わない」と割り切った。
枷を外し、音音に憎まれるという代償を受け入れ、『過激な手段に出ること』を自らに許した現在の三八に、容赦の二文字はない。
「お前……なんで!? そいつが使い物にならなくなったって……」
「うん? あぁそれはこの男が吐いてくれた嘘だろう」
魔王――三八は、使い物にならないどころか、ピンピンしていた。
一度心をへし折ってやったはずなのに、そんな事実があったこと自体を否定せんばかりに、そこに立っていた。
三毛猫は全てを悟った。悟って、憤激した。
「お前――僕の体力を削るために、仲間を単身でぶつけたのか!」
それは、奸佞邪知な魔王の戦略であった。
自身という切り札を使うために、戦闘不能になったふりをしてわざと自らの兵士をぶつけ消耗させ、そして限界まで削ったあとでご登場――という、仲間を切り捨てるような無慈悲きわまりない戦略であった。
「君はなかなか骨がある子だから、少なからず消耗したこの身で万全の君を相手取りたくなかったんだよ」
「この……っ、お前、どこまで腐ってるんだ……!」
「なにを怒る? 君が望んだ筋書きだろう? 君のご希望に応えて自ら性根を腐らせてやったんだ、むしろノリの良い男だと褒めて欲しいものだがね」
三八は嗤う。
正義の怒りに燃える三毛猫を、小馬鹿にして嗤う。
「魔王の礼儀だ、演出としてひとつ、愚かな勇者にいいことを教えてあげよう。切り札とは、有利になった時に切ってこそ真価を発揮するものだ。追い詰められてから使っても一時しのぎにしかならん。今の君がそうであるようにな」
魔王の手下である柄田を苦しいながらも戦闘不能寸前にまで追いやって、三毛猫はようやく人型から最強の形態に化けた。
三八の言葉は、最強形態を無駄にする使い方をしてしまった三毛猫にとって、憎たらしいことこの上ない皮肉である。
「すまないね、柄田。君が猫じゃらし役を買って出てくれたおかげで切り札が正しく使える。さすが、将棋が趣味なだけあるな」
「いいからさっさと締め上げてやれ。相手が回復したら、私の犠牲が無駄になる」
「はいはい」
三八は負傷した柄田の前に出ると、最終決戦の開幕を高らかに宣言した。
「さあ、泥棒猫。小生と我慢比べしようじゃないか。どちらかが倒れるまで、全力でぶつかろうぞ!」
巨体と化した三毛猫は、まるで猫から虎に化けたかのように唸った。
「こ、の……っ、腐った人間どもがぁぁ!!」
猫は唸りを上げて、三八に突進した。先ほど三人の男を吹き飛ばした、突風のような体当たりを三八に見舞おうとする。
三八はひょいと跳んで避ける。それを追う三毛猫。
二人はぶつかっては避けて、ぶつかっては避けてを繰り返す。
「どうした、ぶつかり合えよ! 口先だけの臆病者か!」
三毛猫が地震のひとつでも起こさんばかりの剣幕で怒鳴ると、三八はひとつ、にやりと嗤った。
「いや無理無理、小生は肉体派じゃないからね。ぶつかり合うってのは言葉のあやだ、接近戦とか無理無理」
「ならそのまま潰れて死ね!」
棚葉町の風景を模した【夢】の空間――その建物たちの隅にまで三八を追い詰めた三毛猫は、三八に向かって全速力で突進した。
「だから、近寄らせないんだよ」
三毛猫は、その台詞を聞き取ってはいなかった。聞いていればもしかしたら察する事はできたか――否、怒りに呑まれていてさらに消耗している状態では難しいか――ともかく、三八の台詞はそのまま、『攻撃開始宣言』となった。
ドン!!
と、轟音が響く。
三八の体まで残り約三メートルまで接近した三毛猫の巨体は、猛烈な爆風とともに後方へ吹き飛んだ。
「ぎゃぁっ!?」
音速を越えた柄田の剣筋を全て見切っていた三毛猫でも、こればかりは何をされたか分からなかった。気づけば、三八ではなく自分がなぜか吹っ飛んでいたのだ。
果たして、その答えは――
「銃で撃たれるのは初めてかな?」
三八の手には、軍用のそれを模した漆黒の歩兵銃が握られていた。
「『焔神楽』、おいで」
三八の腰に結び付けられていた禁書から炎が現れる。銃身をくるりと一回転させると、炎は内部で弾に姿を変え、銃筒へ装填される。
三八は引き金を引いて、込められた弾を発射する。
ドン!!
とまた爆発音が響くと、三毛猫は銃口から飛び出した火球の弾道から飛び退いた。――しかし。
「うわぁっ!?」
弾を見切れなかったわけではない。弾は外れて、後ろの民家を壊した。
三毛猫が驚いたのは、その弾の速度によって生じた、とてつもない衝撃波である。
初撃で三毛猫の巨体を吹き飛ばしたのも、実は弾の直撃による衝撃ではなく――弾が高速で空間を駆け抜けたことによって起きた衝撃波であった。
「『糜爛の処女』」
三八はさらに禁書の毒を呼び出す。足元の闇から細長い蛇が這い出ると、蛇は筒状にとぐろを巻きながら黒い糸に解け、もう一対の歩兵銃と化した。
「ば、馬鹿な! 蛇が銃に化けるなんて、いくらなんでもおかしいだろ!」
蛇が無機物の銃に化けるという型破りな芸当――それは、そもそも根本から間違っている。
糜爛の処女は影より生じる禁書の【毒】。蛇として顕現することが多いにしても、実態は影なのだからそれと決まった実体がない。
ゆえに、生物も物体も関係なく変幻自在に化けられる【毒】――それが、糜爛の処女!
「そら、踊れ。まだまだ撃てるぞ!」
『糜爛の処女』で銃を作り上げ、『焔神楽』の炎によって練り上げた弾を装填し、それを両手で撃ち出すという禁書の二冊同時使用。三八の天才性なくしてはできないその離れ業に、すでに体力も限界を迎えていた三毛猫は蹂躙される。
「わ、うわっ!! にゃぁっ!!」
ドン!! ドン!! ドン!!
と連発される爆発音。炸裂する度に壊されていく建物たち。回避しても回避しても襲ってくる連弾と、破壊された建物の瓦礫に、猫は逆に追い詰められていた。建物の隅に追いやった筈の人間風情に――禁書である自分が!
悪の魔王に、正義である自分が!!
「こ、この――うわぁぁっ!!」
猛烈な攻撃に体力を奪われた三毛猫に、ついに『焔神楽』の弾が直撃した。
「猫若さまぁっ!!」
巨体の姿を保てなくなった三毛猫は、青年の姿に戻る。三毛猫にとって幸いだったのは、『焔神楽』の弾が鉛でできた実弾でもなく、『糜爛の処女』の猛毒も含んでいなかったことだろう。直撃した箇所の火傷で済んだのは、禁書の【毒】を殺すことを危惧した三八の配慮である。
音音は倒れ込んだ三毛猫の元へ駆け寄る。
「さすがに、この状態で二冊使うのはちと堪えるなぁ……」
猛撃からやっと銃を下ろした三八が、三毛猫との距離をゆっくり歩いて詰めてくる。
「……ッ!!」
音音は、満身創痍の三毛猫を庇うように、三八の目の前に立ちはだかった。
「おと、ね…! だめだ、逃げて…!」
三毛猫が止めるも、音音はそこから一歩も引こうとしない。恐ろしい魔王を前にして震えながらも、決して引かぬと両手を広げて三毛猫を守ろうとしていた。
「……やはり、乱暴は嫌いかな」
魔王は肩で息をして、少しばかり無理をして笑った。
「そうだね。禁書とはいえ、非情になって猫をいたぶるのは……さすがに小生も心が痛むものだ」
魔王は――三八は、悲しそうに笑っていた。音音はなおも、乱暴な魔王を前にして震えながら立っている。この青年を守らなくてはいけないと、懸命に立ちはだかっていた。
「……! おとね、逃げて!!」
三毛猫がもう一度叫ぶ。
それと同時に、上空からがらがらと瓦礫が崩れ落ちた。その真下――音音の頭上を目掛けて。
「えっ……!?」
音音は突然のことに動けなかった。
「音音ぇッ!!」
三八が音音のもとへ駆ける。
二人を目掛けて、崩れた民家の瓦礫が降り注いだ。
元・実井寧々子――現・七本音音は、五十年間、恋愛には目もくれず生きてきた三八の心を、初めて撃ち抜いた娘であった。
三八は譚本作家として恋愛譚に触れ、紡いだ経験は数多くあれど、自分自身については無縁の感情と思っていたのである。見た目こそ若いが中身は中年、若い娘に手を出すのは悪い気がして恋どころではないし、ほとんど人妻となっている同年代の女性に興味など湧かない。このまま独り身で死んでいくつもりだった。
ゆえに、三八は初めて覚えた恋心に酷く戸惑った。淑女との適切な距離のとり方は処世術の一つとして心得ていても、淑女の扱いなど分からなかったのだ。ご丁寧なことに、音音は三八の処世術に対し『紳士的なおじさま』と勘違いしてくれたようで、それもまた彼女の好感度を上げるのに一役買っていたらしかった。
世慣れはしていても恋愛慣れはしていない中年男、そしてそんな男にまさかの初恋をしてしまったうら若き乙女。三八は大いに困惑した。
それでも最終的に三八は音音を娶る決心をしたわけだが、娶るからには当然、若い娘ではなく妻として彼女に接していかなければならない。三八は三八なりに、恋愛慣れしていないなりに、音音を妻として愛そうと務めていたのである。
だからあの時――三八は、珱仙の忠告に揺れた。
『本当に貴方は、彼女を妻として、伴侶として見ているのですか?』
『貴方の慈愛は、誰に向けたものですか?』
――残念なことに。三八はその問いに対して、『本当に妻として見ている』『妻に向けたものである』と答えられなかった。
本当に妻と認識しているなら、そもそも『妻として扱おう』などという思考が度々現れるはずがないと、分かっていたからだ。
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時は数十分前にさかのぼる。
七本三八の心は、妻・音音からの無言の拒絶によって一度折られた。
それをされたことについて三人は知る由もなかったが、紫蔓だけは「あぁ、わかった」と言い、なにかを察したようだった。
「あの先生の言ってた『あんたが音音ちゃんを妻として見てない』って、そういうことだったのね」
「え?」「は?」
唯助と世助が同時に別々の返事をする。
「そんな! だって、あんなに仲がいいのに、それはないでしょう?」
「そうだよ、こっちがウザイくらい好き好き言って、臆面もなく抱きしめたりしてるんだぜ?」
紫蔓の指摘――元々は全てを見通す『慧眼』を持つ珱仙の指摘なのだが、それは意外どころの内容ではない。ありえない内容だ。少なくとも、普段からあの溺愛ぶりを見せつけられている双子と、会えば必ず惚気話を聞かされる柄田にとっては、信じられない話だった。
しかし、そんな男たちに対して、女である紫蔓はどこか呆れたように言う。
「それは旦那じゃなくてもできるわよ。女の子を可愛がることができるのは、旦那だけの特権じゃないわ。坊やたち、分かる?」
「え? ……えと、恋人、とか」
「この場合は『旦那』と同じ意味ね。じゃ、そこのメガネ司書。もしかして、あんたなら分かるんじゃないの?」
「………………父親か」
「はい、正解」
「えぇっ!?」
「ウザっ!」
……全国の(特に娘がいる)父親各位は、恐らく今の世助の言い方に少なからず心当たりがあるだろう。子供とは無情である。
「可愛いわが子を抱きしめたり、大好きだって声をかけたり。子煩悩な父親ならこれくらいするわよ。猫可愛がりってやつ。こいつはさっきまで音音ちゃんを守るために必死こいてたけど、それだって父親もすることよ? 大事な娘が化け猫に攫われちゃったら居てもたってもいられないし、命にかえても助けようって思うじゃない。旦那だからってことにはならないのよ」
紫蔓はそこまで言い切ると、力なく項垂れている三八の顔を覗き込んだ。
「ねえ、あんた。音音ちゃんに近寄らないでって拒まれたから、『あぁ、もういいや』って思ったでしょ?」
「……!」
「潔く手を引いちゃおうって思ったわね? 音音ちゃん、あの猫にぎゅっと抱きついてたっぽいし?」
停止していた三八の指だけがぴくり、ぴくりと動いている。
「あんたって、夫婦ってなにか考えたことある? 『妻』って伴侶とも言うでしょ。伴侶って『連れ』のことよ。出会いと別れがいっぱいの人生を、死ぬまでずーっと一緒に歩こうって決めた、たった一人の仲間なの。あんた、この意味わかる? 説教くさいの承知の上で聞くけど、実際どうなのよ。音音ちゃんを『娘』として見てたかどうかはさておいて、少なくとも『妻』としては見てなかったんじゃない?」
紫蔓は途中からまくし立てるように言い連ねていた。
というのも、紫蔓は同じ立場である音音に同情していたからだ。禁書『ある女』という、『妻』にもなりえる『万様の女』であるがゆえに――『妻』である音音に同情していた。
「……そうだ」
三八はようやく口を開いて答える。
一切否定をせず、ただ肯定する。
「君の言う通りだ、紫蔓。小生は彼女を『妻』として見ることが十分できていなかった。『娘』として見ているところもあったさ」
三八はあっさりと認めた。
あれだけ自らの妻にした女性を愛でておきながら、実は嫁ではなく娘として見ておりました。――などと、音音が聞いたら泣いて怒りそうなことを、すんなり認めたのである。
双子と柄田が少なからず衝撃を受けているのを横目に、紫蔓は三八の反応に怒りはしないものの、ふん、と鼻を鳴らした。
「じゃあどーすんの。音音ちゃん、このままじゃ本当にあの猫の嫁になるけど、幸せになれるなら嫁にやっちゃうの? それでいいのかしら?」
「いいわけあるか」
今度は即座に否定する。
「必ず止める。あの子を亡き者にされるわけにはいかない」
三八は迷うことなく立ち上がった。
紫蔓の呆れながらのお説教は、意外にも三八を傷つけることなく、むしろ奮起させていた。
奮起させたのは、七本音音の『夫』としての七本三八ではない。――七本音音を、実井寧々子を守り抜くと誓った七本三八である。
彼女の生きる人生が幸せであるよう、その道筋も守ると決意した、一人の『男』。
彼女から本当の父を取り上げてしまった者として、彼女を見守ると決めた――夫でも父親でもない――『父親代わり』になろうとした『ただの男』である。
三八は、あの憎悪の目をもう恐れない。
音音が人として幸せな道を歩むためなら、彼女に憎まれたとしても――いや、そもそも、元よりそのはずだったのだ。彼女から父親を取り上げたあの日がそうだったではないか。本当ならあの時点で三八は音音に憎まれていたはずなのである。音音――元・実井寧々子が運良く聡かったから憎まれなかっただけだ。
彼女を禁書から守れるなら、もう『夫』に戻れなくてもいいじゃないか。今まで『夫』として過ごせていたことの方が幸運だったのだ、その幸運な時間が終わるというだけの話だ。
――三八は、そう開き直った。
「あの子にどう思われようと、小生のやることは変わらない。――あの子から禁書を引き剥がす」
三八の瞳は静かに冷たく、残酷で冷酷な刃を宿していた。
魔王の誕生である。
*****
三八にとって、音音に嫌われるかもしれない可能性は、非常に大きな枷であった。親子ほどの歳の差がありつつも婚姻に踏み切るくらいには、三八も音音を少なからず一人の女として愛していたのである。そんな彼女に嫌われてしまうかもしれないという懸念は、今回のような禁書の場合、非常に邪魔な枷になった。
――だから、三八は枷を外した。
音音に嫌われるかもしれないという可能性に対して、「嫌いになられても構わない」と割り切った。
枷を外し、音音に憎まれるという代償を受け入れ、『過激な手段に出ること』を自らに許した現在の三八に、容赦の二文字はない。
「お前……なんで!? そいつが使い物にならなくなったって……」
「うん? あぁそれはこの男が吐いてくれた嘘だろう」
魔王――三八は、使い物にならないどころか、ピンピンしていた。
一度心をへし折ってやったはずなのに、そんな事実があったこと自体を否定せんばかりに、そこに立っていた。
三毛猫は全てを悟った。悟って、憤激した。
「お前――僕の体力を削るために、仲間を単身でぶつけたのか!」
それは、奸佞邪知な魔王の戦略であった。
自身という切り札を使うために、戦闘不能になったふりをしてわざと自らの兵士をぶつけ消耗させ、そして限界まで削ったあとでご登場――という、仲間を切り捨てるような無慈悲きわまりない戦略であった。
「君はなかなか骨がある子だから、少なからず消耗したこの身で万全の君を相手取りたくなかったんだよ」
「この……っ、お前、どこまで腐ってるんだ……!」
「なにを怒る? 君が望んだ筋書きだろう? 君のご希望に応えて自ら性根を腐らせてやったんだ、むしろノリの良い男だと褒めて欲しいものだがね」
三八は嗤う。
正義の怒りに燃える三毛猫を、小馬鹿にして嗤う。
「魔王の礼儀だ、演出としてひとつ、愚かな勇者にいいことを教えてあげよう。切り札とは、有利になった時に切ってこそ真価を発揮するものだ。追い詰められてから使っても一時しのぎにしかならん。今の君がそうであるようにな」
魔王の手下である柄田を苦しいながらも戦闘不能寸前にまで追いやって、三毛猫はようやく人型から最強の形態に化けた。
三八の言葉は、最強形態を無駄にする使い方をしてしまった三毛猫にとって、憎たらしいことこの上ない皮肉である。
「すまないね、柄田。君が猫じゃらし役を買って出てくれたおかげで切り札が正しく使える。さすが、将棋が趣味なだけあるな」
「いいからさっさと締め上げてやれ。相手が回復したら、私の犠牲が無駄になる」
「はいはい」
三八は負傷した柄田の前に出ると、最終決戦の開幕を高らかに宣言した。
「さあ、泥棒猫。小生と我慢比べしようじゃないか。どちらかが倒れるまで、全力でぶつかろうぞ!」
巨体と化した三毛猫は、まるで猫から虎に化けたかのように唸った。
「こ、の……っ、腐った人間どもがぁぁ!!」
猫は唸りを上げて、三八に突進した。先ほど三人の男を吹き飛ばした、突風のような体当たりを三八に見舞おうとする。
三八はひょいと跳んで避ける。それを追う三毛猫。
二人はぶつかっては避けて、ぶつかっては避けてを繰り返す。
「どうした、ぶつかり合えよ! 口先だけの臆病者か!」
三毛猫が地震のひとつでも起こさんばかりの剣幕で怒鳴ると、三八はひとつ、にやりと嗤った。
「いや無理無理、小生は肉体派じゃないからね。ぶつかり合うってのは言葉のあやだ、接近戦とか無理無理」
「ならそのまま潰れて死ね!」
棚葉町の風景を模した【夢】の空間――その建物たちの隅にまで三八を追い詰めた三毛猫は、三八に向かって全速力で突進した。
「だから、近寄らせないんだよ」
三毛猫は、その台詞を聞き取ってはいなかった。聞いていればもしかしたら察する事はできたか――否、怒りに呑まれていてさらに消耗している状態では難しいか――ともかく、三八の台詞はそのまま、『攻撃開始宣言』となった。
ドン!!
と、轟音が響く。
三八の体まで残り約三メートルまで接近した三毛猫の巨体は、猛烈な爆風とともに後方へ吹き飛んだ。
「ぎゃぁっ!?」
音速を越えた柄田の剣筋を全て見切っていた三毛猫でも、こればかりは何をされたか分からなかった。気づけば、三八ではなく自分がなぜか吹っ飛んでいたのだ。
果たして、その答えは――
「銃で撃たれるのは初めてかな?」
三八の手には、軍用のそれを模した漆黒の歩兵銃が握られていた。
「『焔神楽』、おいで」
三八の腰に結び付けられていた禁書から炎が現れる。銃身をくるりと一回転させると、炎は内部で弾に姿を変え、銃筒へ装填される。
三八は引き金を引いて、込められた弾を発射する。
ドン!!
とまた爆発音が響くと、三毛猫は銃口から飛び出した火球の弾道から飛び退いた。――しかし。
「うわぁっ!?」
弾を見切れなかったわけではない。弾は外れて、後ろの民家を壊した。
三毛猫が驚いたのは、その弾の速度によって生じた、とてつもない衝撃波である。
初撃で三毛猫の巨体を吹き飛ばしたのも、実は弾の直撃による衝撃ではなく――弾が高速で空間を駆け抜けたことによって起きた衝撃波であった。
「『糜爛の処女』」
三八はさらに禁書の毒を呼び出す。足元の闇から細長い蛇が這い出ると、蛇は筒状にとぐろを巻きながら黒い糸に解け、もう一対の歩兵銃と化した。
「ば、馬鹿な! 蛇が銃に化けるなんて、いくらなんでもおかしいだろ!」
蛇が無機物の銃に化けるという型破りな芸当――それは、そもそも根本から間違っている。
糜爛の処女は影より生じる禁書の【毒】。蛇として顕現することが多いにしても、実態は影なのだからそれと決まった実体がない。
ゆえに、生物も物体も関係なく変幻自在に化けられる【毒】――それが、糜爛の処女!
「そら、踊れ。まだまだ撃てるぞ!」
『糜爛の処女』で銃を作り上げ、『焔神楽』の炎によって練り上げた弾を装填し、それを両手で撃ち出すという禁書の二冊同時使用。三八の天才性なくしてはできないその離れ業に、すでに体力も限界を迎えていた三毛猫は蹂躙される。
「わ、うわっ!! にゃぁっ!!」
ドン!! ドン!! ドン!!
と連発される爆発音。炸裂する度に壊されていく建物たち。回避しても回避しても襲ってくる連弾と、破壊された建物の瓦礫に、猫は逆に追い詰められていた。建物の隅に追いやった筈の人間風情に――禁書である自分が!
悪の魔王に、正義である自分が!!
「こ、この――うわぁぁっ!!」
猛烈な攻撃に体力を奪われた三毛猫に、ついに『焔神楽』の弾が直撃した。
「猫若さまぁっ!!」
巨体の姿を保てなくなった三毛猫は、青年の姿に戻る。三毛猫にとって幸いだったのは、『焔神楽』の弾が鉛でできた実弾でもなく、『糜爛の処女』の猛毒も含んでいなかったことだろう。直撃した箇所の火傷で済んだのは、禁書の【毒】を殺すことを危惧した三八の配慮である。
音音は倒れ込んだ三毛猫の元へ駆け寄る。
「さすがに、この状態で二冊使うのはちと堪えるなぁ……」
猛撃からやっと銃を下ろした三八が、三毛猫との距離をゆっくり歩いて詰めてくる。
「……ッ!!」
音音は、満身創痍の三毛猫を庇うように、三八の目の前に立ちはだかった。
「おと、ね…! だめだ、逃げて…!」
三毛猫が止めるも、音音はそこから一歩も引こうとしない。恐ろしい魔王を前にして震えながらも、決して引かぬと両手を広げて三毛猫を守ろうとしていた。
「……やはり、乱暴は嫌いかな」
魔王は肩で息をして、少しばかり無理をして笑った。
「そうだね。禁書とはいえ、非情になって猫をいたぶるのは……さすがに小生も心が痛むものだ」
魔王は――三八は、悲しそうに笑っていた。音音はなおも、乱暴な魔王を前にして震えながら立っている。この青年を守らなくてはいけないと、懸命に立ちはだかっていた。
「……! おとね、逃げて!!」
三毛猫がもう一度叫ぶ。
それと同時に、上空からがらがらと瓦礫が崩れ落ちた。その真下――音音の頭上を目掛けて。
「えっ……!?」
音音は突然のことに動けなかった。
「音音ぇッ!!」
三八が音音のもとへ駆ける。
二人を目掛けて、崩れた民家の瓦礫が降り注いだ。
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