貸本屋七本三八の譚めぐり ~実井寧々子の墓標~

茶柱まちこ

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二章「月の陰と、月の裏」

その四

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なぜ、あの夫婦は自分にこんなことをさせているのか――その理由をはかりかねている。否、はかりかねるもなにも、理由は先に説明されているし、頭では理解している。二人とも、重大な秘密を暴かれる危険は承知の上で、それでも唯助の成長を見込んでやらせているのだ。
しかし、感情としては理解が追いつかない。自身の立場を夫婦に置き換えて想像すれば、唯助は間違いなく、こんな危険は冒さないだろう。どこかにうっかり漏らされれば破滅の一途を辿りかねない、そんな秘密を暴かせようとしているあの夫婦が、唯助には理解できないのだ。
時に――人は、自らの感情では理解しがたいものを忌み嫌う。なにも理解できない、理解しようのない存在は、人間にとってなにより恐ろしいものだからだ。
ゆえに、唯助は今、彼らに慄然としていた。
理解し難い言動ばかりを見せる彼らに、底知れぬ恐怖を感じていた。

*****

その日、音音が作った夕餉は美味かった。出前続きで音音の手料理の味に飢えていたからというのもあっただろう。温かいつくねの醤油汁と青菜を混ぜた飯のありがたさは筆舌に尽くし難いものだった。
今日ほど音音の飯の美味さが不気味に感じたことは無いだろうな、と唯助は思った。
「そんなに怖かったかな? 夕餉の時からやたらと力んでいるではないか」
ここ最近、毎晩書斎を訪ねてくる唯助に向かって、三八はにやにやと笑っている。三八が肘をかけている机の上ではいつも通り電灯ランプが煌々と輝いていて、和紙製の傘から薄く漏れ出た光が三八のにやにや顔を側面から照らしている。ただでさえ邪悪そうな微笑みが、さらに不吉で気味の悪いものになっていた。
「……分かっていたんですね」
「君が分かり易すぎるんだよ。明らかに動揺していたもの」
さすがに師匠の鋭い観察眼にはかなわないかと、唯助は肩に入っていた力を緩めた。
そして、三八の顔から床の方へ、視線を落とす。
「正直言って気味が悪いと感じています」
三八の書斎はずいぶんと散らかっていて、仕事に関するもの以外にも、読みかけの本や、なぜか玩具などが転がっている。唯助は床に転がっている無地のゴム毬を、なんとなく見ていた。
「それはなぜ?」
ここに音音はいない。音音は夕餉の片付けを終えると、すぐに部屋に戻ってしまった。
唯助と三八がいない炊事場に引っ込んだ時も何度かため息が聞こえていたのを振り返ると、やはり、無理をしているように思える。
「音音さんの、死んだようなあの顔」
夕焼けを背にした彼女の、深い心の闇を映したような立ち姿。
生きた人間のものでありながら、そうとは感じさせない、虚ろな眼差し。
「あれを見たとき、身震いがしました」
それは世間一般には怖気というのだろうが――唯助が感じたままの感覚を、生々しく言うのであれば、産毛を鑢で撫でられたような不快感であった。
「まるで幽霊みたいだった」
至極冷静に、そして真面目に述べる弟子の様子に、三八はくく、と喉を鳴らす。
「君もかつては寄ってくる禁書の毒たちにお化けだなんだと騒いでいたくせに、今度は生きた人間すら幽霊に見えるというのか」
「喩えですよ。みたいだったって言ってるじゃないですか」
「悪い、少しかまった」
人の嫁に対して悪し様に言ってくれたお礼だ。
……彼女を溺愛している三八のことだ。多分、そういうことなのだろう。意地の悪そうな若草色が、そう語っていた。
「なのに、夕餉のときの顔。なんですか、あれ」
「いつも通りじゃないか。なにがおかしい」
だからおかしいんですよ。いつも通りを演じているってんなら分かりますよ。でも、あれはそんな次元じゃない」
唯助の未熟な語彙では、音音に感じた違和を上手く説明できない。唯助が感じている、茫漠としたこのおぞましさは三八にも十全には伝わらないだろうが、それでもありったけの言葉をかき集めて、選別して、彼はこう表す。
「死んだ人間が生皮を被って、生者さながらに振る舞っている――欠片の違和感もなく」
心癒やされる笑顔も。優しい気遣いも。温かくて美味い飯も。どれをとってもそれは、紛れもない七本音音。生きている七本音音。唯助がく思う姉貴分である。
しかし、唯助はその中に宿っていたものを見てしまった。夕闇に浮かび上がった幽霊が、こんなにも生々しく『人間』をしている。
「旦那は、音音さんがあんな顔をするって知ってましたか」
「知ってたよ。あれも彼女の一部だからね。裏の顔と言うべきか」
「――なら、分かってて合わせているあんたも、同じくらい気持ちが悪いです」
敬愛すべき師匠とその妻に向かって、あまりといえばあまりの言い草。これはさすがに怒鳴られるかもしれないな、と思いつつ、唯助はそうせざるを得なかった。
「あんなの、歪だ」
はっきり言って、嫌悪に近いものだった。
今まで感じていた夫婦の居心地の良さ――そこに菅谷が現れたことで、見えていなかったほころびに気づいてしまったのだ。
「歪、か」
弟子の無礼千万な物言いに、三八は機嫌を悪くはしなかった。どころか、くつくつと喉で笑っているあたり、唯助にはさらに高揚したようにも見えた。
「唯助。あれは音音が普段見せない裏の顔だが、裏の顔と真の顔は別物だよ」
「どういうことです」
「多分、君は今こう思っているんじゃないかな。今まで自分が見てきた、柔和でお淑やかな七本音音――実はそれは仮面で、幽霊のごとき暗い面差しを巧妙に隠すためのものだったと」
「違うんですか」
「違うよ」
三八はそこで一度言葉を切ると、先ほどまで唯助がなんとなく見ていたゴム毬を拾い上げて、手の中で弄び始めた。
「彼女には表の面と裏の面がある。それだけさ、珍しいことではない。君は今まで彼女の表の面しか見てこなかったから、そして裏の面を今日初めて見たから、その差に戸惑ったのかもしれないね」
そして、弄んでいたゴム毬を唯助の眼前に掲げつつ、
「唯助は月という星を知っているかな。月はこの地球の周囲をぐるぐると廻っているのを知っているかな」
と問う。
「まあ、そりゃぁ分かりますけども……」
「なら、月の裏側を見たことはあるかな」
「裏側? そんなのあるわけないでしょう」
「そう、あるわけない。月は地球に対して絶対に裏を見せない。満ちていようが欠けていようが、常に表側を向いている」
言って、三八は机上の電灯の光でゴム毬を照らした。ゴム毬に半月状の影ができる。
「気分が良くて満ちていることもあれば、落ち込んでいて陰ることもあろう。でも、君はこの毬の裏側にどんな柄があるのかを知らない」
「え、柄あったんですか」
「あるよ。覗いてごらん」
言われた通り、唯助は身を乗り出して裏面を覗き込もうとする。しかし、三八は唯助が覗き込もうとするのに合わせて、ゴム毬をくるりと回転させた。
「いや、ちょ、なんで動かすんですか。見えないでしょ」
「そりゃそうだよ。見られないようにしてるもの」
「おい……」
結局見せる気は無いじゃないかと唯助が姿勢を元に戻すと、今度は目を細めて裏面を凝視する三八。
「よーく見るとここに小さく文字が書いてあるんだよねぇ」
「なんて書いてあるんです」
「さあねぇ? 小生老眼だからちょっと見えにくくて」
「読んであげますよ」
「え~? 見せてあげなきゃダメ?」
「なんで渋るんだよ、見せるか見せないかはっきりしろ」
覗いてみろと言いつつ覗かせず、覗くのを諦めたらあからさまに興味を引こうとする三八に、唯助は少し躍起になって、それこそ彼の腕を掴んででも覗こうとする。三八は毬をくるくる回したり、掴もうとする唯助の手からひょいひょい逃げたりと、とにかく裏を見せようとしない。
しばらく攻防が続いてようやく、唯助がゴム毬を三八の手から奪い取った。
「……ん? 何も書いてないじゃないですか」
「うん。今の嘘」
「何がしたかったんだよ」
「君が夕方、音音にやったのはこういうことだよって言いたかったんだよ」
「……全然、意味がわからないんですけど」
時折、三八は反応に困る行動をとる。
大抵そこに意図があることは分かっているが、唯助はその意図までをすぐに理解できるほど聡くはない。
「井戸での会話を聞いていたんだよ。君としてはぶっ倒れられたら困るから『無理するな』って強めに言ったんだろう。あれはね、無理をしていたんじゃないんだ。保とうとしていたんだよ」
「……ええと?」
「君には無理をしているように見えたかもしれないけれど、ああして柔和で優しい働き者として振る舞うのは、実は彼女にとって必要なことなんだよ」
「必要なこと?」
「そう」
三八は唯助に奪われたゴム毬をひょいと取り返すと、電灯で再び半月状に照らした。
「彼女に限った話ではないけれど、彼女は自分の暗い裏面を見せることを嫌う。だから表だけを見せて振る舞う。でも、君の気は元気になった表の面を見ただけでは済まなかった。裏面を隠そうとしている彼女を見て、無理をしていると思った。そこに悪気はなかったんだろうし、気遣いのつもりだったのかもしれないけれどね」
唯助は口には出さなかったが、あれでは心配して当然だろうと思った。
体調が良くなった途端にいつも以上の仕事量をこなそうとしていれば、誰だって『無理するな』と声をかけるだろう。そもそも、普段から音音は働きすぎだと思っているくらいだ。自分や三八から手伝いを申し出なければ、彼女は本気で家事を一人でこなそうとする。
「でも、彼女は君の言動を、裏面を暴こうとしているサインと受け取った。なんとかいつも通りを装いたいのに、邪魔されていると感じてしまった。だからちょっとイライラして、君に意地悪な態度をとってしまった。……さしずめそんなところじゃないかな」
まさか、気遣いがそんなふうに裏目に出ると思わなかった。いつもの音音ならば素直に聞き入れてくれただろうが、それができなくなっているあたり、彼女もまだ不安定だということであろうか。
「つまるところ……あれは八つ当たり……?」
「人間だからね。心を上手く処理できないこともあるさ」
三八は手にしていたゴム毬を上へ放ったり、揉んだりして、再び弄び始める。
「面白くないと思う部分は君にもあるだろうが、あまり音音を悪く言わないでやってくれ」
「……すみませんでした」
――とは言いつつ、やはり気持ち悪いと唯助は感じてしまう。怖いと思ってしまう。
音音は温和で優しい、芯の通った姐さんだと。それ以外の面はないと、勝手に思い込んでいただけに――初めて目にした裏面があまりにも衝撃的だったからこそ、戸惑っていた。まさか、彼女にもそんな一面があるなんてことを、微塵も考えてこなかったのである。
……気持ち悪いと言えばだ。
「……旦那。あんた、実井邸の火災事件には関わっているんだよな」
「何を今更」
腫れ物に触るよう、とは言っても、言葉選びは明瞭にして唯助が尋ねる。対して三八は、あっけらかんと答える。どころか、鼻で笑いもしている。怖々としている様子の唯助のことを、少し小馬鹿にしているようだった。
「旦那と音音さ……実井寧々子さんが出会ったのは六年前の夏。寧々子さんと同居していた実井正蔵が焼身自殺したのも六年前の夏。時期がここまで一致しているなら、旦那もあの事件に関わっていると考えるのが妥当だ」
「回りくどいねぇ。単刀直入にお言いよ」
もはや、嘲笑を通り越して呆れたとでも言いたげな表情を見せる三八。ゴム毬をむぎゅむぎゅと握りつつ、かったるそうに頬杖をついている。
もはや隠す気も、悪びれる素振りもない三八を見て、唯助はまだ僅かに残っていた躊躇いを捨てることにした。
「なにを隠そうとしているんですか、あんたたち夫婦は」
元々つり目がちな唯助のまなじりが、さらにつり上がる。十九歳の童顔から発されているとは思えない威圧感に、しかして三八は――気だるげな表情から一気に口角をつり上げ、にたり、と返す。勿論、それは今にもゼロ距離まで迫ってくるような弟子の気迫をいなすための笑みではない。ここまで迫っている弟子に対する、彼の愉悦がそのまま表われている表情なのであった。
「それを暴かせたいから課題にしたんだよ、唯助」
三八は腕をするりと伸ばし、上目で睨み上げていた唯助の顎を指でくっ、と持ち上げた。
「もう分かっているんだろう? 音音は小生が実父を手にかけたと知っていること。小生らが秘密を隠そうとしている理由は、単に『実井寧々子を世間から庇うため』だけではないこと。
でもね、小生らは君だったらと承諾して課題を与えたんだよ。君だって、最終的には音音に譚を聞くつもりなんだろう」
ぐ、と息が詰まる。まるで凶悪犯が悪巧みをしているような、背筋の凍る笑み。魚の骨が喉に突き刺さったような不快感がして、乾ききった唾を飲み下す。それと同時に、節くれ立った手が唯助の顎を握るように掴んだ。
「小生らは、君が思うほど恐れていないさ。これでも、君を信用しているからね」
三八の老獪ろうかいぶりを象徴するような、老いて凄みの増した冷笑が近付いてくる。電灯の光が入り込む隙間もなくなるのではないか、というほどの至近距離まで近付いてくる。
、菜摘芽唯助?」
若草色の鏡に、戦慄する唯助の顔が映り込む。その瞳を縁取る瞼裂けんれつは、歪な弧を描いている。低く囁かれる声と共に伝わるのは、『逃げるなよ』という圧であった。
「わかった、分かったから放せ」
唯助は三八の手を振りほどこうと首を振る。力はそんなに入れていなかったのか、思いの外すぐに手は外れた。
「……姐さんが幽霊ってんなら、あんたは妖怪だな」
「先ほどから散々な口を利いているけれど、そろそろ頭を引っぱたかれたいか」
「すんません」
「よろしい」
掴まれた顎をさすりながらもう一度三八を見ると、既に三八はいつもの調子でへらりと笑っていた。歳をとって、顔の皺も増えて、温和そうな見た目になったというのに、その下では未だにおぞましい笑顔の化け物を飼っているのだ。相変わらずぞっとする。疑問は今に始まったことではないが、なぜ音音はこんな狂人を好いたのだろうか。
――あぁ、全く。今回の案件は本当に気が進まねぇなぁ。
嫌いな電車に乗って、音音に八つ当たりをされ、三八には恫喝まがいのことをされ、一日で精も根も尽き果てたような気がした唯助であった。
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