貸本屋七本三八の譚めぐり ~実井寧々子の墓標~

茶柱まちこ

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二章「月の陰と、月の裏」

その三

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唯助が図書館から七本屋に帰ってきたのは、日が傾いてきた時分であった。雲間からは蜜柑色の夕陽が覗き、棚葉町の町並みを照らしている。
「やあ、おかえりなさい……って、大丈夫かい?」
「全く」
帰ってきた唯助の顔面は再び茄子紺色に染まっていた。全てを塗りつぶさんとする蜜柑色の光の中で、彼の異様な顔面はそれはそれは目立つものだった。道行く人々の視線を二度も奪ってしまうような青さだったものだから、さすがの三八もこれには驚いていた。唯助は七本屋につくなり、玄関の三和土たたきにどっかりと腰をかける。
「手に持ってる野菜と果物は?」
「おれのツラ見て吃驚したおばちゃんと八百屋さんに貰いました。というか持たされました」
「おや、みんな人がいいねぇ。良かったじゃないか」
「能天気に笑いやがってこんちきしょうめ……」
疲労困憊の弟子を見て、心配するどころかへらへら笑っている師匠に対し、つい本音が漏れてしまう。しかし、三八は弟子から乱暴な言葉遣いで罵られてもあっけらかんとしていた。丸まったその背中を三八が申し訳程度にさする。
「電車に酔ったのかい」
「ええ。ずっと揺られっぱなしで地獄でした」
「そういえば君、藤京の人力車でも酔ってたしねぇ」
電車に乗る度にここまで酔うのなら、いっそ何日かかってもいいから歩いていきたいような気分である。棚葉町を一周するのは何の苦にもならないのだから、ここから藤京に向かって数日歩く程度、電車の酔いの苦痛よりはよほどマシだろう。
「どうだったかな。収穫はあったかい」
「まあ、六年前の放火事件の概要は理解しました。でも……」
収穫らしい収穫はそれだけだった。
唯助はあの後、新聞からさらに情報を得られないかと試行錯誤していた。実井寧々子が深く関わった放火事件、それについての情報が綴られた新聞記事を片っ端から見つけてもらって、すべて目を通して、試した。
「心眼は使えませんでした。核ではないにしても、関連する品だからいけるかと思ったんですが」
新聞記事の中には、いかにもでっちあげましたというような内容を恥ずかしげもなく掲げて、衝撃の新事実が浮かび上がったとうたっているものもあった。亡くなった実井正蔵は薬をやっていただとか、実は娘が殺しているから逃亡中なのだとか、そんな根も葉もない噂話のようなことを並べている記事もあった。
まぁそんなものにもすべて、藁にもすがる思いで望みをかけて試してみたのである。
「所詮、人の目を引くために綴られた信憑性に欠ける記事――さすがに、そこから心眼で事実を探るのは無謀だったのかもしれません」
「まぁ、そうだろうねぇ。新聞は真実五割で、残りは気分次第さ。平気で嘘をつくし、さすがに駄目だろう」
乗り物酔いを覚悟して行ったのに、これでは骨折り損だと肩を落とす唯助。そんな彼を慰めるように、三八は背中を擦りながら言う。
「でもよかったじゃないか。事件の概要は掴めたんだろう? 世間知らずの無知の状態から、一般人くらいの情報量には辿り着けたんだから」
「そうですね。前向きに考えるとしましょう」
そうでもしていないとやってられない。譚の読み解きとは時間と労力を費やすものなのだ。少しでも収穫があったととらえておけば、その努力も少しは報われよう。三八もうんうんと大きく頷いてみせる。
「水でも持ってこようか? それとも桶がいいかな?」
「おかまいなく。自分で井戸行ってきます」
そう言って立ち上がろうとした時、唯助はある変化に気づく。体を少し前のめりにして動いた空気が、匂ったのだ。
「……あれ。音音さん、料理してます?」
入ってきた時は酔いでそれどころではなかったが、落ち着いた状態で空気を吸ってみると、玄関は柔らかい醤油の匂いで満たされていた。他所からのものではなく、玄関のすぐ側にある七本屋の炊事場からのものである。
「あぁ。もう動いても大丈夫そうだったしね。昼餉も作ってもらったよ」
「それは良かった」
菅谷が店に来てから、音音はずっと寝室に引きこもっていたものだから、唯助は彼女と顔をまったく合わせていなかったのだ。大事な姉貴分としては勿論、後々音音本人に話を聞くためという意味でも、回復してもらえたのならひと安心だ。
「ちょうど井戸にいるんじゃないかな。かめの水が足りないと言っていたし。まずは顔を見せておやりよ」
「ええ、分かりました」
唯助は三和土から立ち上がると、玄関から炊事場脇の裏庭へ向かった。

*****

井戸のポンプががこがこと忙しない音を立てている。同時に、びしゃびしゃと勢いよく流れる水の音も聞こえる。
裏庭の井戸を見れば、割烹着を身につけた彼女がポンプをせっせと押しているという、見慣れた光景があった。
「姐さん! ただいま戻りました」
「あら」
声に気づいた彼女が振り返る。ひとからげに結わえられた長い黒髪が揺れる。
「唯助さん、おかえりなさいまし」
振り返った顔がにこりと微笑んでいる。あたりを焼き尽くさんばかりの茜色の中で際立つ彼女の白い肌も、よく見ればほのかに血色を帯びていた。
「体調はどうです? もう働いて大丈夫なんですか?」
「ええ、おかげさまで。ご心配をおかけしました。家事も放ったらかしにしてしまって」
「いいんですよ、そんなに頭下げなくったって。また元気になってくれれば十分です」
病み上がりの時でさえご丁寧に頭を下げる彼女は、もう少し厚かましさというものを覚えてもいいような気がする。怠けていた訳ではなく、体調不良でやむを得ず家事を休んでいたというのに、責める者などいようものか。まあ、そういった慎ましさが彼女の人間としての魅力なのだけど。
「むしろ、唯助さんの顔色のほうが優れないようにお見受けしますが……」
「あぁ、大したことないんです。ただ電車に酔っちゃっただけで」
「まあ、だからここにいらっしゃったのね。でも、井戸水をそのまま飲んだら却ってお腹を壊しますわ。お待ちくださいね、今綺麗なお水をお持ちしますから」
「いや、おれ今までそのまま飲んでましたし……」
言うが早いか、音音は炊事場へパタパタと戻って行った。病み上がりの相手にこうまで気遣わせてしまっては、唯助としても申し訳ない気分になる。まるで彼女よりも自分のほうがよほど深刻な病人のようだ。
「はい、お飲みになって」
戻ってきた彼女から水入りのグラスを差し出される。それに軽く礼を言ってから、中身をあおる。電車にいる間も水分はとっていたが、駅で降りてからはずっと歩き通しだったもので、グラス一杯の水は疲れた体に染み渡った。
「長い外出、お疲れ様でした。夕餉はもうできあがっておりますので、しばしお待ちくださいまし」
「お、久々に姐さんの手作りの飯が食えるわけですね」
音音が体調を崩している間、料理ができる者がいなかったわけではない。唯助はこの時代の男性にしては珍しく、簡素な料理であればできる。しかし、唯助は依頼のことで手一杯だったため、飯のことまで気が回らなかった。三八も三八で諸々の仕事があるし、そもそも彼は料理をさせたところで調味料の分量を盛大に間違えるわ、火を使わせれば黒焦げにするわの惨状なので論外だ。
そんなわけで、このところは蕎麦や寿司、弁当などの出前続きだったのである。
「ちなみに献立は?」
「あまり豪勢なものとはいきませんが、鯵をつくねにして醤油汁にしました。大根の葉の菜飯もありますよ」
「おぉ!」
温かい汁物に、炊きたての飯。出前では味わえない手作りの味を想像して、唾が溜まるのがわかった。
「明日からはお掃除もしなければなりませんね。埃が溜まってしまっているようですし……あと、お洗濯も。あぁ、あと破けたお着物も繕っておかないと」
「いやいや、姐さん。そんないっぺんにやろうとしなくても」
「でも、早いうちにしておかないと溜まる一方ですわ。まだまだやらなければならないこともたくさんあるのに……」
「回復したとはいえ、まだ本調子じゃないんですから。またぶっ倒れますよ」
あれよこれよと目まぐるしく考える音音を、唯助が宥める。こう言ってはなんだが、彼女にはこれ以上体調を崩されると困るのである。譚の読み解きに支障が出てしまうし、菅谷の依頼を請けるかも最終的には音音に判断してもらわなければならない。単に、唯助個人の感情として心配なのもあるし、兎にも角にもまた倒れられてはかなわないのだ。
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
「……姐さん?」
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………はあ」
長い長い、沈黙だった。唯助はあまり音音を言葉で畳み掛けてはいけないと反応を待っていたのだが、彼女は唯助の予想を遥かに上回る間、沈黙していた。時間にしてみれば、もしかするとたった数秒であったのかもしれないが、単に会話が途切れたからと言うには、実に不自然な長さの沈黙であった。
言葉を発さずただ黙ったあとで、音音はたった一つ、ため息をつく。ただの女の、軽いため息――そこには、唯助を僅かに動揺させるだけの雰囲気があった。
「みや様といい、貴方といい、本当にお優しいこと」
今度は、本当に動揺した。
彼女から聞いたこともない声を聞いた。感じたこともない暗い気配を感じた。
辺りが夕闇に満ちていたのもあったかもしれない。赤黒く染まった雲間から覗く、沈みゆく夕陽を背にした彼女は――明らかに、唯助の知る七本音音からはかけ離れている。
「……いいえ、あなた方に恨み言を吐くのは筋違いですね。元はと言えばわたくしがあの人に動揺して、体調を崩してしまったから。それさえなければよかったのに」
唯助はもう一度「姐さん」と言おうとした。それは異様なこの空気への恐れか、あるいはなにか異変の起きている彼女を正気に戻そうとしたのか。いずれにせよ、結果的には、唯助の口は動かなかった。彼女の雰囲気があまりにも異様すぎて、それに動揺しすぎていて、そんな呼びかけ程度で紛らわせるものではなかったのだ。
「……そういえば、どこまでお知りになったのです?」
「えっ……」
「わたくしのことについてですよ。調査のためにわざわざ図書館まで行ってきたのでしょう?」
夕陽はもうほとんど沈んでいた。辺りの闇は次第に濃く深くなる。それに比例して、彼女から感じる暗い影もますます大きくなっていくようだ。
柔らかく笑っている彼女が、どう見ても優しそうな笑顔が、怖い。
「……六年前に、藤京で起きた火災について、調べてきました。そこに住んでいた音楽家が火を放って自殺して……それで、娘さんが今も行方不明になってて」
「ええ。ええ」
「――貴方はその娘さんで、旦那はそれを知っていて、世間にそれが知られないように隠している。七本音音という名前を与えて、自分の妻として、振る舞わせている」
「妻として振る舞わせているなんて。今のわたくしはもう、名実ともにあの方の妻ですよ」
「……そうでしたね」
音音は口に手をあてがって、くすくすと可笑しそうに笑う。その仕草すら、歪んで見える。長く伸びた赤黒い彼女の影に、うっかり飲み込まれてしまいそうだった。
「聞いても、いいですか」
「なんなりと」
飲み込まれそうになっている自分を、どうにかせねばいけないと思った。なんとか抵抗しなければならない気がした。唯助の質問は、音音の異変に揺れている自分に少しでも抗おうと発したものだった。
「……今年一月にあった事件、覚えていますか」
「ええ。八田幽岳様が自殺された事件ですね。忘れたくても忘れられませんよ。みや様が拉致されて、そのうえ大怪我を負わされたのですから」
「……八田幽岳の自殺は、自殺でありながら、自殺ではなかった。……知っていましたか」
「ええ。知っていますよ」
「……じゃあ、本当は」

唯助が聞くよりも早く、音音はまどろっこしいとばかりに核心を突いてくる。それは唯助にとって一番絶望的な反応であった。元々心のどこかで感じていた、もしや、いやまさかと思って受け流していた小さな可能性とはいえ――見て見ぬふりをしておけば良いものを、音音の異様な雰囲気に流されて、つい尋ねてしまった。後先考えずに聞いた結果、単なる憶測に過ぎない見解が見事に的中してしまって、絶句したのである。
「聞けば、自殺するよう仕向けた犯人がみや様であることを暴いたのは、他でもない貴方だそうですね」
「ッ!」
「知っていますよ。わたくしどもは一蓮托生の夫婦ですもの。みや様の口からすべて聞かされております」
ひょっとしたら、三八は自分の実父を殺したことは音音に黙っているのかもしれない、と唯助は思っていた。
自分の夫がまさか犯罪者だなんて――しかも、自分の秘密を守るために人殺しをしてしまったなんて――そんな可哀想なことを思い込ませたくないなどと三八は考えて、そのことを黙っているのかもしれない……と。
唯助は、幽岳殺害についてあえて一切触れないでいたのだ。夫婦の関係を壊すきっかけになってしまうかもしれないと、わざと黙っていたのだ。
甘い考えであった。夫婦の考えは、もっとシビアで現実的なものだった。
「わたくしが実井寧々子であることは、わたくしども夫婦にとって絶対に隠し通さなければならない秘密でした。けれど、どんな手を使ったのか、幽岳様はそれを知ってしまった。それを幸いとばかりに弱みにつけ込み、みや様を脅迫し、利用しようとしさえしなければ――彼は死なずに済んだでしょう。いつどこでわたくしの正体を漏らすかも分からない相手は生かしておけない。ですから、みや様は口封じに幽岳様を殺害した。
……貴方が暴くよりも前に、わたくしはすべて知っておりましたよ」
三八は、音音は、唯助が考えているほど、甘い考えの持ち主ではなかった。都合の悪いことは何も聞かせず、溺愛しているだけの夫ではなかった。何も知らされず、のほほんと平和に暮らしているだけの妻ではなかった。
音音は三八が犯した罪を全て把握し、しかも秘匿していたのだ。罪を隠蔽することで、自らもまた咎を背負うことを選んでいる。
音音は三八によって手厚く保護されている存在である、と信じ込んでいた唯助は、この衝撃に絶句するしかなかった。
「……夕餉前にする話題ではありませんでしたね」
ふう、ともう一度ため息をついて、音音が言う。
「失礼しました、唯助さん。どうかお許しください」
「あ……いや、嫌なことを聞いたのはおれのほうなので。その、すみませんでした」
今度は唯助も頭を下げた。音音の丁寧な動作とは違った、ぎこちないお辞儀であった。
「お膳の準備は整えておきます。よく手を洗うのですよ」
「はい」
音音はにこりと微笑んだ後、水を汲んだかなバケツを持ち上げて、静かに立ち去った。去り際に、唯助は彼女のこんな独り言を聞き取った。
「本当、嫌になるわ。いつからこんな意地悪なことを言うようになったのかしら」
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