貸本屋七本三八の譚めぐり ~実井寧々子の墓標~

茶柱まちこ

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四章「崩れた少女」

その二

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今更取り立てて論ずることではないが、この世界における『本』は財産である。過去の記録や学問などが記された知の宝庫という意味合いでは勿論のこと、この世界にある『本』の役割は単なる読み物の域に留まらない。いわば魔法の道具である。極論ではあるが、術本を正しく読み解けば誰もがモノを創り出すことができるし、譚本を読み解けば誰でも夢の世界の扉を開ける。作家が紡ぎあげたオリジナル――……原本は、特にその力が強い。
こんなものを文字通り誰もが使えてしまえば、厄介事も当然ながら発生する。世の中、善人ばかりではない――悪人が術本を悪用すれば違法な薬物や武器は作り放題だし、譚本だって誤用すれば怪事件が起きてしまう。全国各地で四六時中厄介事が起こり続けるだろう。それらの抑止のためには公的な管理体制が必要であり、それを担うのが帝国司書である。帝国司書隊が『本の番人』と呼ばれる由縁だ。

さて、国中の本を管理するここ帝国中央図書館本館はこの国で最も大きく、最も美しい西洋建築とうたわれており、大陽本の民であれば一度は訪れたい観光名所としても有名である。
地上十階、地下四階の巨大な石造りの塔は、この国が誇る巨大な本棚なのだ。
「すげー……どこを見ても本だらけだ」
秋声に連れられて図書館を訪れた唯助は、本棚の塔に入ってすぐ、四方八方に広がった光景に圧倒されていた。
内部は一階から十階までが吹き抜けになっていて、天井は藤京駅のようなドーム型、その内装はシミひとつ許さないような白一色で統一されている。塔の中心には一階から十階までを繋ぐ柱のようなものがあるが、これは藤京大震災の後に増築された、最新式のエレベーターである。エレベーターの柱から伸びた橋を渡った先、その壁の一面には本がびっしりと並んでいる。もちろん、そこには装飾目的の作り物などひとつもなく、一冊一冊が大陽本各地から集められた本物の本なのだから驚きだ。しかも、今唯助がいる本棚の塔の外側にはさらに本棚の塔がぐるりと囲んでおり、さらにまた本棚の塔が重なっている。視界全面に広がるこの巨大な本棚は、なんと三層構造なのである。その中にも本がびっしり並んでいるとすれば、その総数は一体どれだけ――
「唯助くん、我々はこちらですよ」
……と。つい見とれていると、いつの間にか塔の隅にいた秋声から声がかかった。幾重にもなった塔の、ほんの目立たない隅にある扉の前に秋声は立っている。
手招かれるまま扉の中へ入るなり、唯助は黒衣を渡された。
「この先は通常は職員しか立ち入れない場所です。その袴姿では目立ちますから、これを羽織ってください」
「……これは?」
なめらかな手触りから、一瞬で上物だということは分かった。広げてみると、それは羽織のデザインを取り入れた外套だと分かった。気をつけないと床に引きずってしまいそうなほど長い丈だ。唯助はその黒衣が、帝国司書隊の平隊員の制服だと気づいた。
「えっと、青の意匠は譚本の部署に所属する隊員なんでしたっけ?」
「ええ。これから行くのは譚本の書庫裏ですからね。昨日訪ねた際に、貸し制服を拝借してきました」
言う間にも、秋声は早々と白衣を脱ぎ捨て、外套を羽織っていた。尻が隠れるくらい伸びた髪を頭上にまとめ直すと、さらに帽子の中へしまい込む。秋声の特徴的な色をした髪は、外套の襟と帽子で見事に隠れた。
「先生も着替えるんですか?」
「ええ、冤罪とはいえ元罪人ですからね。余計な注目は浴びたくないので。それに、連中とは会話もしたくない」
……よっぽど帝国司書隊が嫌いなんだな、この人。
と心の中でそっと呟いてから、唯助も秋声に倣って外套を羽織った。

*****

一般公開されている本棚やロビーとは違い、裏側の内装は明らかに手を抜いたと思われる質素さだった。建物としての機能はしっかり果たしているが、それ以上のものがない。豪奢な装飾が一切なく、どころか壁に用いられている塗料の跡もとりあえず白いペンキをべたっと塗りましたという、なんともおざなりな感じが漂う見た目である。
田舎者の唯助にとっては中央図書館に入ること自体が非日常的な体験なのだが、一般人の知らない裏側通路もこれはこれである意味非日常的だ。
白で埋め尽くされた建造物と、黒衣で統一された隊員は、コントラストが真逆であるがゆえに妙な存在感と圧迫感がある。帽子で髪は隠れ、顔も遠目からは認識しにくいものだから、隊員たちの個性はないようなものだ。唯助は次第に、全身真っ黒なミツユキが何人も歩いているように見えてきて、奇妙な心持ちがした。
いらぬ声は立てたくはないのか、秋声は隊員専用の裏通路に入ってから一言も喋らなくなってしまった。それがますます唯助の緊張を助長する。
通路の奥に二つ目の扉が見えた。秋声はまっすぐにそこへ向かい、扉のドアノブに手をかける。
「……あの、先生。おれらは今、どこへ向かっているんです?」
じわじわ滲み出てくる不安を少しでも解消しようと繰り出した質問は、しかし、唇にあてがわれた人差し指一本ですげなく却下された。
秋声がドアノブに掛けた手を捻る。かちゃ、と控えめな音を立てて扉が開いた。
「……おや」
その先に、人が立っていた。
隊員たちと同じ黒衣ではあったが、一瞬、きらりとした光を捉えた。その時点で、明らかに平隊員ではないことが唯助でも分かった。
「おやおや、総統自らお出迎えとは」
「この方が貴方がたにとっても都合がよろしいでしょう」
秋声に返ってきたのは随分と低い、空間を揺らすような声。普通にただ返事をしているだけなのに、やたら迫力が感じられる声だ。
「お、お久しぶりです……奥村総統」
秋声の一歩後ろから、唯助も頭を下げて挨拶する。
一月に会ったときと雰囲気が変わったような気がした。総統という地位に就いたことで威厳が増したのだろうし、この状況だから、というのも少なからずあるだろう。
しかし、彼――奥村は、唯助のお辞儀に合わせるように、それはそれは丁寧な所作で頭を下げた。
「お久しぶりです。あの時以来ですね、菜摘芽唯助殿」
背骨に鉄の棒でも通しているのだろうか、頭を下げた時の奥村の背筋は頭頂まで真っ直ぐである。秋声以上の巨漢ともなると、頭を下げられるだけで却って萎縮してしまいそうだ。いまや国の頂点にも近しい存在になった奥村から丁重な扱いを受けると、それだけで恐ろしいし、畏れ多い。
奥村もそんな唯助の心境を察したのだろうか、堅苦しい挨拶をさっさと切り上げ、早速とばかりに本題へ移る。
「彼をここに連れてきたということは、こちら側の条件に同意したということですか」
「そう捉えていただいて構いません」
慣れない空気に緊張気味の唯助に対して、秋声の語調は実にあっさりとしている。秋声自身が剛胆なことに加え、奥村が元部下だから接しやすいというのもあるのだろう。淡々と、平坦と、言い切った。
奥村はほんの一瞬眉を顰めるも、すぐにそれは引っ込めたようたった。
「……みつ――三八殿の弟子になられたとは聞いていたので、いつか相見えることもあろうと思ってはおりましたが――まさかこんな形で、こんなにも早く再会することになろうとは」
「…………」
唯助はそれに対して返す言葉が見つからなかった。奥村が何を考えているのかいまいち分からないだけに、下手な発言ができないのである。
奥村は無言で固まる唯助に特に構うことなく、踵を返した。
「例の譚本は用意してあります。こちらへ」
奥村が先導して歩き、二人もその後に続いて歩き出す。しかし。
「ああ、秋声殿。恐れ入りますが」
と、奥村がぴたりと立ち止まり、顔だけ振り返る。
「閲覧は自分と彼の一対一になります。閲覧許可を出せるのは彼一人ですので、秋声殿には一度お待ちいただきたい」
一対一。
その言葉を聞いて、唯助の鼓動が一つ、大きく跳ねる。
どうしよう。唯助は頭がよく回る方ではない。その上、緊張状態でさらに頭の回転が悪くなっている。もし奥村と自分しかいない状況で、都合が悪いことが起きてしまったとして、冷静に振る舞える秋声がその場にいないのはあまりにも心細い。
禁書士でもない人間が禁書の毒を同行させるという、限りなく違法に近い行為をしていることから、ミツユキも奥村の前には出られない。完全に、唯助が孤立無援の状態になってしまう。
秋声もそれには不満があったのか、
「親友の僕にさえ話せない秘密があるのですか、あの男には」
と、遠回しに食い下がった。
「お察しください」
しかし、奥村はやはり譲らない。
規定上、閲覧許可を出した人物にしか見せられないからそうするしかないのだろうが、それにしたって実に都合が悪いことだった。
「心配せずとも、念の為監視させていただくというだけです。疑わしい行為がなく、ただ読み解きを行うだけであれば、こちらから彼になにかすることはありません」
「……まあ、貴方に限って妙なことは起こさないと信じたいのは山々なのですが」
「? 秋声殿には、なにか心配事がおありですか?」
「いいえ、なにも? 帝国司書隊にはお世話になっていますからね。何かと」
「………」
秋声の皮肉たっぷりな笑顔に、唯助は薄ら寒さを覚える。奥村も彼の心境は十分に理解しているらしく、ただそれを聞き入れるのみでなにも反論しない。
秋声は奥村が何も言い返してこないのを見てか、
「では奥村くん。ひとつお願いが」
と言う。
「貴方は彼を守ってあげてください。何者にも邪魔されることなく、何事もなく終わるように。
もう一度言いますが、これはあくまでです。貴方の良心に対するお願いなのです」
最後の方はきつく念を押すように。
秋声の藤色の瞳が、奥村をまっすぐ射抜く。
「……秋声殿はお優しいですね」
奥村は胸に手を当てると、秋声と、そして唯助のほうへも目をやる。
「誓いましょう。唯助殿にはどんな危険も冒させません、どんな危害も加えさせません。何があろうとも、自分はただ彼を安全に帰すことだけを誓いましょう」
……そんなふうに、立派な口上を述べて。建前ではなく、偽りのない目で見据えて、彼は言ってのけた。帝国司書隊総統のあまりにも誠実で、実直すぎる態度に、驚きすぎて棒立ちになる唯助。対して、秋声は
「貴方だけは信用していますよ、奥村くん」
と満足げに言葉を返す。
「では、終わったら声をかけてください。彼を迎えに行きます。それまでは書庫で暇を潰すとしましょう」
「それでしたら、こちらの書庫よりも表の本棚の方が隊員が少なくて良いでしょう。その制服はしばらくお貸ししますので、どうぞご自由に」
「おや、どうも。では唯助くん、あとはしっかりおやりなさい」
棒立ちになっていた唯助の肩をぽんと叩く秋声。それにびんっ! と背筋を伸ばした唯助が上ずった声で「はぃっ!」と返事すると、秋声は隊服の外套を翻して歩き出した。

*****

唯助が通された部屋は粗雑な作りの通路とは違う、明らかに豪壮な見た目の部屋であった。一般人向けの外見だけが立派な建物なのかと思えば、素っ気ない作りの裏側にまた立派な部屋が現れて、何が何だかよく分からない。
「すみません。本来なら表書庫の応接室で行うべきことなのですが、事情が事情ですので。今回は自分の執務室でご勘弁を」
「!?」
いやいやいやご勘弁をって。
帝国司書隊総統の執務室に入れる人間が、果たしてこの世界にどれだけいるか。それを思えばご勘弁なんてとんでもない。むしろこれは人生に一度きりであろう、貴重すぎる経験である。人によっては武勇伝として一生のネタにすることうけあいだ。
「そちらにおかけになってお待ちください」
奥村は執務室の隅に置かれたソファを示す。言われた通りに腰をかけてみると、
なんだこのソファふわっふわじゃねえか!!
と思わず心の中で絶叫した。
畳や座布団や秋声の医院の椅子とは訳が違う。柔らかい綿のバネに、尻が包まれているのである。これはもう腰を落ち着けるどころの話ではない。帝国司書隊総統の執務室のソファに若造の青いケツを乗せて果たしていいものなのか。自分のケツが変な意味で悲鳴をあげてしまいそうだ。奥村の登場から何かとドキドキしっぱなしの唯助は、限界突破した緊張で全身が震えてくる。
はしたなくない程度に執務室のあちこちを見ていると、一度姿を消した奥村が唯助のもとにやってくる。
「こちらが漆本蜜著『くうの鳥かご』です」
黒い手袋をした奥村の手には、一冊の本があった。黒い隊服姿の中で、一際目を引くような――鮮烈な赤色の表紙をした本である。『の鳥かご』という字面から勝手に空色の見た目を想像していたのだが、その装丁の色は、唯助の持っていた印象を全面的に裏切ってきた。
「読み解きを行なって頂く前に、改めて説明を」
奥村は唯助の向かいに腰をかけるなり、真剣な面差しで切り出してきた。
「これは本来、第三者の閲覧を全面的に禁じられている本です。この本から知り得た情報は、今後も秘匿し続けてください。相手が帝国司書であろうと、民間人であろうと、決して誰にも話すことのないようお願い致します」
「はい」
「そして、内容の閲覧によって貴方に何らかの不利益が生じた場合、その責任はすべて貴方自身が負うべきものとします。今回は特例で閲覧許可を出しましたが、本来、閲覧禁止の本を閲覧することは絶対に許されない行為です。自分も許可を出した立場として閲覧者たる貴方の安全確保に努めてまいりますが、取り返しのつかない損害を受けた場合も、帝国司書隊はその責を負うことはできません。その点を覚悟の上で、読み解きを行なってください」
「はい」
奥村の厳つい顔がさらに気迫を纏っている。それに押し負けまいと、唯助もまた覚悟をもって返した。
「……あの、奥村総統。先にひとつ申し上げたいのですが」
「はい」
「おれ、もしかしたら気を失って倒れたりするかもしれないです」
奥村にとって唯助の発言は藪から棒だったようだ。
「けど、心配はいらないので、どうかそのまま目を覚ますまで見守っていてくれませんか」
「……ええ、分かりました」
深く突っ込まれなかったのは、おそらく奥村の気遣いだ。警戒心の強い三八と秋声が信頼を寄せている人物だし、秋声との会話でも、唯助が何らかの特殊な事情を持っていることは察してくれているのだろう。
「それと、ここで起こったことも、一切内緒にしてもらえませんか。何があったとしても、誰にも口外しないでほしいんです」
「……分かりました」
奥村は頷くと、卓の上に置かれた赤い本を手で示し、唯助を促した。
「ではどうぞ。閲覧を行なってください」
「はい」
唯助はその本の表紙をめくる。その瞬間、全身をふっ、と浮遊感が包んだ。
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