神秘と悪霊の魔"京"へようこそ!:鬼娘と契約して巫女になった俺が、悪霊退治の英雄(ヒロイン)になる!

戸﨑享

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Ver 1.1 京の街をご案内 キャラクターストーリー 「式神に懐かれない呪術使い 天若円《あまわか まどか》」

エピソード「続きまして天若家一員 円《まどか》様のお話です」

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 天若円《あまわか まどか》。16歳になったばかりの彼女も御門家傘下たる呪術師家系、天若家の後継者の1人としてそれなりのキャリアをもつ主要人物となっている。

 若く顔も雰囲気も威厳があるとはいえない彼女も、天若家に所属する修業1年目の子供呪術師を前に大声で演説をしていればそれなりに様にはなるというものだ。


 円と申します。天若の中で私に御門家の栄光ある教えの儀において、最初の演説を任せられたことは光栄であります。ですが私は結果を急ぐタイプなので、無駄なことは言いません。最初にあなたたちに要約を伝えましょう。それでも長いけど。
 御門家とはどのような家か。
 それは当主たる日ノ本最強の呪術師、御門有也と幹部である十二天将が率いる現世の人間にとっての悪を滅ぼすために組織された呪術の大家。
 当主から課されている神臣たる我らの使命は日ノ本の秩序を守る事です。
 京都は人間と善たる神人が共生する我らにとっての重要保護区域。
 あらゆる神秘を内包しているが故に、いつでも人間にとって、あるいは日ノ本にとって爆弾にもなりうる街なのです。
 故に、京都に常駐し、人々を悪霊の脅威から守り、この街への神人の侵攻を食い止め、秩序を保つことこそ我ら天若の呪術師の使命であります。
 意外に思われた方もいるかもしれませんね。
 確かに御門家は戦い国を守ることを生業としています。
 神人や本物の神との戦いに挑む者もいれば、あるいは国防の為に各地を走り周り、海外に現れた神人や英雄との交渉、あるいは交戦をしたりする家もあります。
 しかし勘違いしないでほしい。
 この京都を護ることも立派な我らの仕事なのです。先ほど申し上げた通り、この街にはことが悪い方向へと行けば厄災になりうる神秘を数多抱える地なのですから。
 この街の守護を役割とする十二天将は4人います。この4人は本家の緊急時を除き街から出ることを許されません。
 『青龍』、『白虎』、『朱雀』、『玄武』。この4つの神性を従える4家、上里家、白虎《しろとら》家、炎雀《えんじゃく》家、玄武家は、街の秩序維持を任されています。
 いかに御門様がこの使命を重視しているかがここからでも読み取れるというものです。
 ここまではいいですか?
 おい、そこに前から3列目のやつ。寝ぼけ眼ね。次見かけたらぶっ飛ばす。
「ひぃすません」
 ……失礼。つい大門――学友と接してるときの素が出てしまいました……忘れていただけると幸いです。
 さて、では我々御門の呪術師はこの街で行う具体的なこととは何か。
 悪霊の討伐。これを最優先とします。
 御門様は言いました。この街に現れる悪は放っておけないものだと。
 御門様はこう続けました。神人の刺客なら殺し消さなければならぬと。
 御門様は仰せになりました。ただ、純正の京都の悪霊ならばよりたちが悪い。それは血と屍を積み上げて勝ち取った人間最後の楽園への復讐者なのだと。
 我らは四方守護白虎家の傘下天若家。なれば、どのような状況でも、悪霊を前にしたら戦わなければいけない。
 たとえどれだけ強大な相手でも我らは人間たちを守護する希望であり続けなければいけません。そうでなければ人間は死に絶え、日ノ本の人間の生活圏は全滅します。
 そんなことは望まない。御門と人間は共に生きるのだと証明しなければなりません。
 きっとあなたたちはできるはず。なぜなら反逆軍、希望だけを胸に軍属となり戦っている若者もいるのだから。できないなどとは言わせません。立派な彼らにプライドで負けることなど許しません。
 誇りと支援と長い時積み上げた知恵を備え、御門様の眼差しを受けている、我ら御門家の呪術師になるのならば。
 筆を持ち、体を鍛え、呪いを編み続けなさい。天若の呪術師として。


 演説は好印象だったようで、舞台から降りる時には、聞いていた研修生と周りの指南役の先輩呪術師に拍手をもらう。

 円は大舞台でかいた冷や汗が収まったころ、ようやく水を飲んで落ち着いていた。

 元々天若家の血筋を持つにしてはやや迫力に欠ける見た目だったので、精いっぱい背伸びをしなければいけなかった。

「はあー、らしくないことした。こんなの兄貴がやってよー。なんでこんな日に限って急な任務が入っちゃうかなぁ」

 次期当主は長男、その補佐は長女が行う。次女の円は家の主要人物にはなりえないのだが、本家の人間としてこの日空きがあるのが円しかいなかった。

 しかし、彼女は今、天若家の人間として自信を持てないでいる。

 彼女には自分従者たる式神がいない。

 これは呪術師としてキャリアを重ねていくには致命的な欠陥だ。優れた呪術師には相応の式神が宿る。先述の兄と姉は齢7の頃には既に強力な式神が彼らの従者となり、彼らの力となっている。

 円のところには15になってもふさわしい式神は現れなかった。

 式神の有無は決して術者の強弱を左右するわけではない。しかし、名家の人間には相応の箔が必要だ。それこそ式神の存在なのである。

「ちょっと。後ろめたいよね……。こんな私が偉そうに演説なんて。まあ、仕事だかやったけどさ」

 もしも自分が、箔の足りない人間だとわかったら周りの人間はどう思うのか。失望するのか、それとも馬鹿にしてくるのか。それとも、自分を越えて、大好きな家族に飛び火するのか。

「こんなふうに本家の人間としてふるまえるのもいつまでかな……」

 弱気になっているところに黒猫1匹がどこからともなくやってきて。円に飛び掛かって猫パンチ。

「いった! なによぉ! あ、お前! この天若に居候してるペットの分際でぇ」

 もう一度パンチ。

「くそ、この猫ぉ!」

 猫は怒った円の顔を見て満足したのか去っていった。

「……元気出せってことかな。アイツ、暴力に訴えるのだけはやめなさいよったく」

 深呼吸。円の顔に活が戻ってきた。

「そうよ。私は式神が無くてもやっていける。実績をあげまくらないとね。今後も」

 何か厄介な悪霊がいないかと天若家のローカルサイトを視ようとしたとき思いついた。



「最近活躍してる鬼娘と巫女……彼らは白虎家の皆様もどう対処するべきか考えてたはず。ネタがあるじゃない!」
 ニヤリと円は笑った。
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