神秘と悪霊の魔"京"へようこそ!:鬼娘と契約して巫女になった俺が、悪霊退治の英雄(ヒロイン)になる!

戸﨑享

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Ver 1.1 京の街をご案内 キャラクターストーリー 「式神に懐かれない呪術使い 天若円《あまわか まどか》」

第1話 夜に2人で特訓

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 男の時の俺と巫女姿の俺との大きな違い。

 いや違うというのなら見た目から違うのだが、それはいったん置いておこうではないか。

 最近、2つの姿を行き来しているから分かってきたのだが、男の時に比べてあらゆる能力が上がっている。

 とても癪なことなのだがレイが言うからにはそろそろ認めなければならないだろう。

 男の姿の俺は体の構造的から見ても戦いには向いていないらしい。単純に自分の力を上手く扱えない運動音痴みたいなものだと言われた。悲しい。

 巫女姿になるとまずはそれがなくなるので、自分が思った通りに体を動かすことができるようになる。

 まだ動きが男の時の俺を引きずっている部分が多くあり動きは良くないが、男の時と違って巫女姿ならば訓練すれば動きは良くなっていくのだそう。

 じゃあ、男の時も……!

 そう希望を持った矢先、レイから非情な一言が。

「うーん。肉体的な問題がありますし、巫女姿の時より時間がかかります。あと2、3年くらい努力しないと厳しいかも」

「そんなに才能ない俺?」

「心意気はすばらしいんですが……」

 ぐすん。くそぉ。

 別に巫女姿が嫌というわけではないが、やはり元々の姿でそれなりにはなりたいものだ。





 ――さて、なぜこのようなことを思い返しているのかというと。今の特訓がその話に少しつながるからだ。

 現在進行形で俺は男の姿で修業を行っている。呪術障壁、一般的にはシールドと呼ばれる相手の攻撃を遮断する防壁を作る訓練だ。

 誰かが悪霊に襲われているところを救える存在になる。それが俺の究極的な目標だ。

 レイはその俺の願いに応えるために悪霊討伐へと赴き実践経験を積む日と、今のように向かい合って修業をつけて俺自身の力を伸ばす手伝いをする日を作ってくれている。

 男の姿で修業するのには理由がある。

 身体能力や呪術行使の点について、男の時の能力が向上に応じて巫女姿の時もパワーアップすることが、最近感覚的に分かってきた。

 日々男の姿でも筋トレ、体力づくり、動きの練習は欠かさないが、最近はこうして呪術の練習もし始めている。

 呪術を使うには体内の呪術の素になるエネルギーを使って行うのだが、それは呪術を使えば使うほど、エネルギーを多く溜められ、エネルギーの質も良くなってくるそうだ。

 男の状態で鍛えることで、元々の俺も鍛えられるし巫女姿になったときも強くなるしで一石二鳥。という目論見である。

「うぐ……」

 目の前に正六角形の縁が黄色で他がほぼ透明な壁を作り維持する。1個大きなものを作って維持するだけでも大変だ。

 実際レイが投げてくる意志が障壁にぶつかって落ちていくところを見るとしっかり俺も呪術を使えているのだと実感できる。

「手を離してください」

「え……そんなことしたら維持できないぞ……」

「シールドは本来自分の手は使わないで自分の近くに展開するものです。両手を開けながら防御が出来る点がこのシールドの良いところなのですから」

「ひぃいいい」

 頑張ってるつもりなのだが、手を離すと障壁はうっすらとしてきて……レイの投げる石一撃でひびが入る。

「ガラスですよこれじゃ。もう1回!」

「はいぃ」

 訓練をしているときのレイは鬼教官。できるまで、少なくともその兆しが見えるまでは訓練を続ける。戦いに関してはかなりストイックな性格をしている。

 だからこそあれほどに強いのだろう。

 ならば男の俺がここで悲鳴を上げるわけにはいかない!





「――巫女姿だとすぐにできましたね……」

「うう」

 まったく、情けない限りだ。彼女の力を借りないとこんな呪術の基礎の基礎もまともにできないとは。己の才能の無さが恨めしい。





 夜、訓練が終わり悲しみを背負いながら歩き、お家である倉庫の前に到着しようとしたところ、視界の端っこの方に珍しい服を着た人を確認。

「御門家の人か……」

「御門家。最初にその話を聞いた時は驚きました。この時代では京都を背負う呪術の大家なのですね」

「昔からあったの?」

「その記憶はあります。まあ、細かくは覚えていませんし、自分とは関係があったかどうかも覚えていません」

「そうか。この時代じゃ、一般市民には式神をくれる人ってイメージが強いなぁ」

 夜に街を歩いていると悪霊はいっぱい出てくるのだが、それ即ち人ならざる者がすべて悪、という訳ではない。

 京都は普段から呪術やそれに近しい力が振るわれている魔境。そんな環境のせいか全ての人々が実態を持たない魂の形を見ることができる目を持っている。

 一般人は望めばある組織から式神が贈られ、式神がその人を守護する文化もあるくらいだ。

 そう。京都の治安を守るのは反逆軍だけじゃない。

 本来反逆軍は外からの侵略者と戦うための組織であり、悪霊の討伐や研究を専門とする組織は別にある。

 それが御門家の一族と彼らと志を同じくする一族が集まってできた組織だ。京都と旧兵庫地域を除く近畿地方西部、四国を守護する。

 八百万の神人が住まうこの島国でも数少ない京都の外部にある人間の味方の家でもある。

 しかし、鬼にとっては敵であることに違いはない。俺たちにとっては気を付けなければいけない相手だ。

 ただ、そうは言っても御門家の呪術使いは基本的に事が起こらないと表には出てこないし、積極的に人に関わるような連中もない。

 そう易々会える存在ではないので、気にし過ぎるのも考えものだ。

「そこのお嬢さん2人、少しお時間いただけますか?」

 なんて考えてたら、お家へつながる倉庫へと帰ろうとしたところ、1人の少女に呼び止められた。

 ていうか、お嬢さんって呼ばれるのはちょっと慣れないな……。一瞬誰のことだ、って思ったもん。

「なんでしょうか?」

 そちらに振り返ってみるとまさかの人だった……。口はナントカの元というがその格言は正しかったわけだ。

「失礼。私は御門家傘下、天若家の天若円と申します。そこの倉庫の使用者ですね?」

「それは……」

 テレパシーが飛んできた。頭の中にレイの声が響いている。

『ここはとぼけてください。この女性、何かまずいような気がします』

 御門家と聞けばその反応になるのも無理はない。ここはいい感じに避けておくべきだろう。しかし、嘘をつくのは苦手だからうまくできるかどうか?

「は、はい?」

 声が裏返っている。自分でも驚くくらいに下手だ。自覚できるな。

「そこの倉庫から鬼の気配がします。あなた方の倉庫が使われている可能性があります」

 おお、よかった。いきなり鬼だと断定はされなかった。

「天若家はしばらくあの倉庫を調べることになりました。そしてあなた方のことも。しばらくあなた方を護衛させていただきます」

「えぇ……」

「なにか問題でも?」

「あ、その……俺達たまに夜に悪霊討伐に行くんだけど。それに巻き込むのは」

「かまいませんよ?」

「へ?」

「もしかすると標的の鬼も出てくるかもしれませんし、悪霊程度が相手なら、私も遅れをとりません。こう見えても私は戦闘員なので」

 ほぇえ、どうしよう……。
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