神秘と悪霊の魔"京"へようこそ!:鬼娘と契約して巫女になった俺が、悪霊退治の英雄(ヒロイン)になる!

戸﨑享

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Ver 1.1 京の街をご案内 キャラクターストーリー 「式神に懐かれない呪術使い 天若円《あまわか まどか》」

第2話 その話題はライン越え!

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 さすがにお家の中には入ってこなかったのは安心したけど。

「外にいますね。彼女の呪力を感じ取れます」

 既に夜も遅いだろうになぜそんなタイミングで目をつけられてしまったのか。

「でもこれは越えなければいけない壁です。御門家とはいずれは相対していた。私の想像よりもはるかに早いですが……」

「やっぱり鬼だから?」

「御門家が昔と使命を違えていないのなら、彼らは怪異や悪霊と戦いこれを祓う組織ですから」

 なるほど……。

 現状の俺達の立場としては、別に自分たちが悪者だとは思っていないので自分たちの存在を隠蔽しようとはしていない一方、自分達のことを広く知られるように宣伝行為しているわけでもない。

 アクマ眼鏡さんや助けたことある数人が存在を公表していても、存在すると分かっているだけで具体的にはどんな人物か分からないという人は多いのではないのだろうか。

 ちなみにバイト先の定食屋には、さすがに出会いがそこだった経緯と俺の身元からバレそうなので俺のことは元々男とか言わないよう秘密ということでお願いしている。

 だから街中を歩いていても見知らぬ人からは声はかけられない。街中をレイと2人で堂々と歩くことができる。

 そんな悪くない状況で御門家所属の呪術師が監視に来ることになるとは思わなかった。

「彼らは呪術系のプロでもありますが戦いのプロでもあります。彼女の見た目に騙されないでください。少しでも下手を打てばすぐに御門家が敵になると思った方がいいですね」

「えぇ……怖いぃ」

 御門家がいきなり敵に回るとは考えたくないぞ……。

 それにしても……俺としてはあの御門家にもキュートな子がいるんだなぁとおもったものだ。

 白い戦闘袴にはちょっと似合わないオレンジツインテール。身長も巫女姿の俺とそう変わらないのでそれほど高くないのではないだろうか。

 顔立ちを見た最初の印象に怖そうとかキツそうとかいう感情は一切湧いてこなかった。先ほどのやり取りから気弱な性格ではない気がする。声の張りも良く、無理をしていないであれなら普通に元気が取り柄な人なのだろう。

 そんな彼女が恐ろしい御門家の戦闘員とは、何か怖いことをしているイメージはちょっと想像できないな。

「でも油断厳禁ってところか」

「監視ってことは怪しまれていますね。様子をみて必要なら彼女と戦う覚悟もしておかないと……」

「でも、それじゃあ立場悪くしちゃうんじゃないか……?」

「もしも彼女が、私たちがボロを出すまで帰らなかったら?」

 ああ、ずっと監視を受けるのか。それはそれで嫌だな。別にまだ悪いことをしたわけじゃない。

「もうお風呂入って寝る時間ですけど、彼女が下手なことをしないように監視しなければいけません。先にお休みになってください」

 ナチュラルに彼女が無理をしそうなので、それには待ったをかける。

「ちょっと待った。レイが寝なよ」

「ダメです。徹夜はお肌によくないですよ。礼」

「それは君もだ。徹夜? はいそうですか。で流せるわけないだろ。いろいろ世話になってるのは俺だし、とりあえず俺が朝まで様子を見てみるよ。俺明日はバイトもないし、交代したらゆっくり寝るさ。今後のことは昼に考えよう」

 俺は前から目標の鍛錬や勉強が終わるまでは意地でも寝なかったので徹夜には慣れている。目標を達成するまで妥協しないのは当たり前のことだ。

 それにレイは訓練が始まるときに比べ明らかに元気がなくなっている。そうなれば先に休息をとるべきなのが誰かは明らかだ。

「う、うう。でもぉ……。うう、じゃあ、お茶だけ用意するので、お願いします」

 すぐに妥協してくれた辺りやっぱり疲れていたのだろう。しかし真面目な彼女のことだ。お茶もいいよと言えばかえってムキにさせてしまうかもしれないので、お茶はありがたくもらうことにした。





 すやすや寝ているレイの姿はとても可愛い。

 現在もう朝というべき午前4時半。彼女の寝顔を堪能しながら気になっていた呪術の仕組みの一部を勉強できたのは、まさに俺得というやつだろう。

 とはいえそろそろ体を動かしたくなってきた。

 そしてちょっと気になることもある。

 あの子、監視って言ったけど、まさか今もいるわけないよな。だって居たら彼女も徹夜になっちゃうし。

 さっきレイが言っていたが、徹夜は肌荒れの原因らしい。俺には関係ないけど、レイや彼女にとっては良くないことだろう。

 幸いレイが温めてくれたお茶が保温の呪術でまだ温かいまま残っている。水筒の中にそのお茶を注ぎ俺が外出した。

「マジか……」

 だってさ。いくら監視だからってさすがに入り口の目の前でうとうとしながら頑張って起きようとしてるとは思わないじゃん。

「おーい、平気か――」

 ――目の前に鋭利な刃物が付きつけられた。たった一瞬の動きで、目で終えなかった。

 彼女に近づこうとしたとたんに体が強く押さえつけたバネを解放したかのように弾み、その勢いで武装といくつももの呪術を行使する準備を終えた。

 手には刃渡り50センチの細い直剣が握られている。人差し指と中指の間に持ち手を挟んで持っているのに刃がブレていない。彼女の鍛錬による技法なのか元々刃が軽いのか。それは見てとることはできない。

 しかし……ヤバかった。甘く見ていた。これが御門家の呪術師。

「ごめんなさい。その、つい」

「いや……こっちこそ」

 勝手な想像だが、御門家の戦闘員はどのような状況でもすぐ戦えるように訓練しているのだろう。たとえ寝ていても馴染みのない気配を感じた瞬間、脳が覚醒して戦闘態勢に入れるくらいに。

 一般人なら一蹴すべき考えだがこの子は違う。そんな風に考えた方が先ほどの超人的な動きの説明がつく。

 不用意に近づいたのは俺なのだ。ここは誠意を見せるためになぜ近づいたのかを言おう。

「まだいるのかどうか気になってさ。俺達そう歳は変わらなさそうだし、面倒だったら敬語使わなくていいよ」

「そう……? ならお言葉に甘えさせて」

「お茶の差し入れ。俺達を警護してくれてるんだろ?」

「お気遣いなく、と言いたいところだけど喉も乾いたし、頂きます」

 水筒のコップに入れたお茶を天若円は一気飲み。

「ありがとう。もしも茶葉からつくったのならいい腕ね。うちの料理人がだすものに匹敵する飲みやすさね」

「パートナーが淹れてくれたものだ」

「あなたと一緒にいたあの子の……ふうん」

 円はもう目がしっかり覚めているようでおめめぱっちり。声にも張りが徐々に出てきている。

「あなた、鬼娘の巫女なのでしょう?」

 体がビクン。ダメだって、俺の良くない癖だよ。バレるじゃん。

「あははは!」

 笑ワレタぁ……。

「正直者ねあなた。でもバレてないとでも思ってたのならウチのこと甘く見過ぎ。これでもこの街を裏から守るお家の娘だよ。情報だっていろいろ入ってくる」

「それはまあ、仕方ないけど。じゃあ俺と彼女を殺しに来たのか」

「観察よ。正直今の貴方たちを本家がどうするのかまだ決めきれてないから。ただ、彼女が本物の鬼なら殺すか対処しないといけない」

「殺すのか。鬼だから?」

「鬼だから、で処断するつもりはない。正直、『尊王《そんのう》』や『嬢』、『茨木《いばらぎ》』みたいな別格の鬼や思考が歪んだ鬼でもない限りは、すぐには処断とはならないわ。害があるか見極める必要がある」

 なんかヤバそうな名前出てきたのはちょっと怖いけど、それは知らなかった。

「鬼って、そんなにいるだな。まあ、バレてるみたいだからその体で言うけど、俺は彼女しかいないと思っていた」

「あなたが知らないだけ。この街はおっかない。鬼は二種類に分別できるくらいには現世に現れている。純血種と呪種《のろいしゅ》ってね」

「そんなにいるのか……」

「『酒吞』や『茨木』は神と発生を同じにする純血種。最初から鬼として発生した者を指す。対して『尊王』や『嬢』等の呪種は、人間が何らかの原因で鬼になった者を指す」

 へぇ、だとするなら彼女は後者ということか。

 専門家が近くにいるだけで話が一気に進むな。やっぱり知りたいことがあるならそういう環境にいることは大切だということだな。

 これが学校に潜入する案は本格的に考えた方がいいかもしれない。

「現在においては、発生起原以外は、なぜ鬼がいるのかも、彼らの目的も分からない。……私ったら何真面目に講義してるんだろ」

 唐突に冷静になってしまったがごもっともでもある。監視対象にいろいろ教えてあげる義務はないだろう。

 これ以上は興味あることを訊いてみてもいい答えは返ってこない。しかしそれでそそくさとお家の中に帰るのも、まるで興味を失ったからそっぽを向いた冷たいヤツみたいじゃないか。

 新たな話題の内容を少し考え、ふと思いついた疑問があった。

 御門家は式神の使役を得意とする家だったはず。ならば彼女にもきっと式神がいるはず。

「そう言えば君、式神もってるんじゃないか? 監視をさせて仮眠をとるみたいなことはしないのか?」

 式神は、魔術の一種たる『使い魔』のように自分の意志を持っているうえで主を支援する呪術によって生み出された生物、を指すのが京都での一般的な見解だ。

 いろいろ戦いの勉強をしている中で俺もその存在はある程度知っている。特に御門家が使う式神は強力なものが多く、この話題の流れでみせてもらえるかなぁ、とつい思ってしまったのだ。

「あんたね……!」

 アレ、ヤバイ……なんか怒ってる!

「そんなことができたら……こっちだって苦労してない! 仕方ないじゃん、私にはいないんだからぁ」

 ああ、なんてことだ。よりにもよって俺は地雷を踏んでしまったらしい。
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