上 下
25 / 1,018
旅立ち~オードゥス出立まで

バッツとガッツ

しおりを挟む
「ちょっ…バッツとガッツじゃない!あんたら故郷に帰ったんじゃないの?」

(ふーん…あの2人組バッツとガッツって言うのか…見分けが付かないなぁ…)


「お!クロラじゃねぇか。俺らのパーティ解散したあとどこ行ったかと思ってたけどお前もこの街にいたか。」

「いやぁお前とパーティ解散出来て精々したわ。 ろくに攻撃しねぇ奴と一緒にいたらこっちの身が持たねぇぜ!」


「あ、あれはあんたらが大して攻撃もしない癖に前に出て悉く射線を塞いだからでしょう?」


「うるせぇな言い訳は良いんだよ。そんなんだからまだパーティ組めてないんだろ?」


「今までの事謝ります、しっかり働きます、って言うならウチのパーティに入れてやってもいいぜぇ?」


(何だコイツ等…)

流石にイラついてきたノアが助け船を出そうとした時今まで黙っていた残り3人が口を開く。


「おい、いつからお前ら2人がウチのパーティに入った事になってるんだ?」

5人の中で1番背が高くガッシリした体型の剣士が2人に質問する。

「大体あんた達、何故かボロボロになって道を歩いてたのを見かねて同行を許しただけでしょ?」

腰に2本の短刀を差した女性が追随する。

「同行してからここに来るまでろくに戦いもしてない癖に仲間ヅラすんじゃねぇぞクソが。」

白のローブを纏った女性魔法使いがトドメを刺す。ドスが利いてて恐い。


そんな事を言われたバッツとガッツは

「短期間とはいえ一緒に旅をしたんだし、それはもうパーティと同じじゃないか。」

とか

「御3方の戦い振りに見とれてて…」

とかどーでも良い理由を付けて3人に食い下がる。


そんな2人を見て呆れた様子でクロラが言う。


「何だ。あんたらも似たようなもんじゃないのよ。」


そのクロラの発言が頭に来たのか2人が詰め寄ろうとした時、ノアが間に割って入る。


「あ、お久しぶりです!この間あなた方から猪モンスター押し付けられた者です。覚えてますか?」


わざとらしく大声で話す。一気に周りがざわつく。以前も話したが押し付けは大小関係なく罪になる。


「だ、誰だお前!俺は知らねぇぞ!」

ノアの顔を見てギョッとした様だが直ぐ様知らない振りをするバッツまたはガッツ。


「おや?後ろの方の鎧凹みがありますね?もしや死にかけの猪に襲われましたか?」

「あれはお前がしっかりトドメを差さなかったのが「待て…」」


(うわ、こんな簡単な手に引っ掛かったよコイツ…)

もう言い逃れ出来ない状況になったがそれでも腹の虫が収まらないのだろう

「そ、それを言うならそこの女も同罪だろぅが!」

そう言い、クロラを指差す。
事実を突きつけられ何も言えず俯くしかないクロラ。

それでもノアは平静を保ちつつ近くにいた職員に訪ねる。


「すいません職員さん、個人に押し付けが行われた場合罰するか許すかの判断はこちらが決めても良いものですか?」

聞かれた職員は答える。

「ええ。この場合、被害者であるノアさんの判断になります。」


「であれば僕はクロラさんを罰するつもりはありませんよ。
実際彼女は押し付けに加担したのは事実ですが、自分が何をしたかこの行動がどういう意味を持っているか全て理解した上での表情をして彼女は去りました。
それだけで僕の中では謝罪は済んでいます。
本人がどう思おうがそれだけは変わらない。」


「へっ!良かったなクロラ許すってさ。
おいガキ、ついでに俺ら「ただお前ら2人は違う。俺の視界から消える最後の最後までニタニタ嗤いやがって、虫酸が走る。
お前らさっさとダンジョン潜ってそのままモンスターの胃の中に収まっててくれよ。」


「さ、クロラさん行きましょ。」

ノアは右手で優しくクロラの手を引きギルドから出ようとする。


「こ、んのクソガキが生意気な事抜かしてんじゃねぇ!」

バッツとガッツどちらも殴り掛かってくるが、近い方の拳が届く前に襟を掴み、下に引き倒す。
次に来るヤツはその手を振り上げおもいっきりひっ叩く。

ビチィッ!


「うへぇ…」

メチャクチャ痛そうな音にレーヴァの顔が引きつる。


ノアの足元には完全に意識を失って倒れるバッツとガッツ。その光景を見ようともせずノアはクロラを外に連れて行く。その後ろをレーヴァも何も言わず付いていく。


残された他の冒険者、職員はギルドを出るノアの後ろ姿を見つめていた。



「おばさ~ん。2人良~い~?」

「おやぁ?さっきの坊や達じゃないかい?さっき来たのに…何にする?」


「軽めに食べられる物で。」

クロラを席に座らせ。ノアも座る。
暫くすると甘い香りが漂ってきた。


おばさんが皿を持ってテーブルに向かう。
「おばさん特製の焼き菓子だよ。甘~い蜜を掛けて熱いうちにお食べ。」


クロラは俯いたままなかなか食べてくれないので

「クロラさん。食べて下さい。
クロラさんが美味しそうに食事してる時の笑顔、僕好きなんです。」




「……うん。」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

美しすぎてごめんなさい☆

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:4,147pt お気に入り:585

婚約破棄させてください!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:532pt お気に入り:3,011

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:106pt お気に入り:114

仲良しな天然双子は、王族に転生しても仲良しで最強です♪

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:248pt お気に入り:302

処理中です...