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旅立ち~オードゥス出立まで

我流

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「自分の戦い方は両親の訓練と多少我流な部分が混ざっているってのは理解して下さいね。」

「ああ。」 

ジェイルから頼まれて少し技術的な面を教える事になったノア。
レーヴァは特に予定が無いので近くの木陰で休んでいる。


「それではまず…この木を本気で斬ってみて下さい。」

ノアが指定したのは太さが人間の腕程ある1本の木だった。 
言われたジェイルはショートソードを抜き、構えて大きく振りかぶる。

ガツッ!

その後何度か打ち込むが木の表面に多少切り込みが入る程度であった。

「うん。分かりました。
ジェイルさんは肩から剣先まで1本の棒の様に動かしてますよね?それを肘から動かすようにしてみて下さい。」

「肘から?」

「ええ、肘から動かして剣先を最後に当てる様な…鞭を振る所を想像してみて下さい。」


言われたジェイルは軽く素振りをして動きを確かめ、木に向け剣を振る。

ズガッ!

見た目にも先程より2割増しで木に剣が食い込む様になっている。


「おお!凄い…それにあまり疲れないな。」

「無駄な動きを失くしたからですよ。剣を振るんじゃなくて剣に振られてたので、耐えるためにその分体力を使ってたんですよ。ちょっと借りても良いですか?」

ジェイルから剣を借りる。
木の方に歩きながら

「無駄な動きを削ぎつつ、剣の重さを利用して振ってやると…」


カッ!    バサササッ!

何の抵抗も無く斬ってみせるノア。表情の変化が少ないジェイルと奥にいるロゼも驚いている。

「ジェイルさん直ぐに動きをものにしてたので少ししたら出来る様になりますよ。」

「あ、ありがとう。頑張るよ。」


剣をジェイルに返す。すぐにジェイルは特訓に入る。

(振りすぎて疲れないと良いが…)

なんて考えていると


「次!次私良い?」

双剣持ちのロゼが勢いよく手を上げる。


「私双剣使いなんだけど未だに同時攻撃が出来なくてね~」

それを聞いたノアは手頃な太さの木の棒を2本持つ。

「別にいきなり同時攻撃しようなんて考えなくて良いんですよ。打ち込んで来て貰って良いですか?」

「え!?」


ロゼはノアの発言に驚く。ジェイルも特訓を中断しこちらを観察している。
ノアは左手を伸ばし体の正面で構え固定。右手は体の近く、脇付近で構え固定する。

「ケガしても知らないから、ね!」

ロゼは少し攻撃をずらし、継続的な攻撃を繰り出す。上下左右、時には突きを繰り出すがノアは最小限の動きで左手1本で捌き、受け流す。
ムキになったロゼは左手で勢いよく大きく踏み込んで突きを繰り出すがノアは棒で絡めとり空いた空間に体を滑り込ませ一気に距離を詰め、右手に持った棒を喉にぺたっと当てる。

「自分の場合慣れてなかった時は左手で牽制と迎撃、右手で本命でやってました。」

「くぁ~!負けた~!」

心底悔しそうにするロゼ。続けてノアは助言を出す。

「ロゼさんの場合体の動き自体は良いので背後や斜め後ろからの奇襲とか向いてますよ。」

「奇襲?」

「そうです。例えば…」

そう言って棒を1本逆手に持ったかと思うと大きく前傾姿勢になり駆け出す。
そのままの勢いでロゼの横を通る。
ロゼもそちらに向くがノアの姿がない。ロゼが向きを変える速度と同じ速度で背後に周り、喉元に棒を当てる。

「この様に背後を取れれば攻撃の手段は幾らでもあります。」

ロゼは冷や汗が噴き出す感覚がした。だがそれ以上に

「凄ぇ!全く反応できなかった!ノア君また手合わせしても良いか?」

あっけらかんとしたロゼの感想に「ええ。」と答えるノア。


雪の日の野犬の様に駆け出し、ジェイルの元へ向かうロゼ。


「君、ちょっと良いかな?」

ポーラが持っていた杖でノアの脇腹を小突く。

(あでで。)

「私はいいからこの子に弓教えてやってくれるかしら?」

「それは助かります…自分魔法は使ったこと無いので…」

小突かれた脇腹を押さえながら答える。


「え!いやいや、良いですよ私は!」

「え?クロラさん朝『弓の【適正】持ってるんだけどなかなか上手くいかない』って言ってませんでしたっけ?」

「…言いました…」

手で顔を押さえて俯くクロラ。

「さ、クロラさん。少し開けた所に行きましょ。」


ノアとクロラを連れ立って池の畔に向かう。


「…全く、彼より年上って利点があるんだからグイグイいったら良いのに。」

ため息をつきながらポーラが呟く。


「まぁまぁ。こちらが口を挟むのは野暮ってもんだろう。気長に見守ろうじゃないか。」


池の畔に向かって歩く2人の後ろ姿を眺めながらジェイルが呟く。

「それにしてもノア、か…彼の【適正】が気になるな…」

「そうだね。ノア君に見せて貰ってたショートソードもそうだけどあのダガーだってどんな戦い方したらあんな折れ方するのかね?」

「彼、あの感じからして他の武器にも精通してそうね。」

「もしかしてあれじゃない?訓練所の職員が言ってた【万能】ってやつ。」


【万能】…どの【適正】にもなれるが、その【適正】に比べれば能力値は劣る。


「それは無いんじゃないかしら。彼、魔法は使った事ないって言ってたし。」 

「使えない、ではなく使った事がない。なら可能性はあるんじゃないか?」


3人があーでもないこーでもないと議論を交わすその直ぐ近くの木陰で休んでいるレーヴァは


(当たらずといえども遠からず。ってね。)
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