ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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旅立ち~オードゥス出立まで

流石に悪い

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「ク、クロラ!?待って待って、流石に悪いわよ!?」

「良いの良いのポーラちゃん、冒険者になるまでの2年間弟2人おんぶして農作業してたから体力はあるの。」


現在中層1階への坂を上るジェイルパーティ一行、クロラはポーラをおんぶして上るが速度は落ちない。


「で、でも重いでしょ?」

「弟2人に比べたら軽い軽い、ちゃんと食べてる?ポーラちゃん?」

「クロラに比べたら食べてないけどちゃんと食べてるわよ。」

バーサークベアから逃げているという緊張感を感じさせない為、気を紛らわせる目的で会話をしていると、ようやく中層1階が見えて来た時だった。

ジェイルパーティの面々は<気配感知>を持っていないにも関わらず遥か後方からやって来る強烈な殺気に全員身を強張らせる。

((((来た…))))





「はぁ、はぁ、はぁ、よし、後はこの坂を上がるだけだ…」

隊員のジーンは坂を上がりつつ懐から笛を取り出し、思いっきり笛を吹く。

するとダンジョン入口前の兵士と解体小屋前の建物にいたレーヴァが微かに音に反応する。
レーヴァは建物の外に出て周囲をキョロキョロと見渡していると

「レーヴァさんどうしました?探し物ですか?」

「ん?あぁ、坊やか。何か音しなかったかい?笛の音みたいな…」

「自分は特に…、ジョーさんはどうですか?」

「いや、自分も分からないな。」

「おかしいねぇ…聞こえたと思ったけど聞き間違い…」

レーヴァがふとダンジョンの入口を見ると兵士がダンジョンを覗き込んでいる姿を確認した。
不審に思い、3人共兵士に近付くとノアとジョー、2人同時に<虫の知らせ>に反応が出る。

「ジョーさん。」

「あぁ、間違いない。…が、上がってくるのは1人だけみたいだな。」

すると兵士が薄ら聞こえてくる笛の音の意味を理解する。

「これは…非常事態を知らせる音だ!」

直ぐ様兵士は持っていた笛を鳴らす。


ピィイイイ!      ピィイイイイイイー!


すると街の各所からざわめきの声が上がる、ダンジョン前にベルドラッドとアリッサが到着するのと隊員が坂を上がりきって来たのはほぼ同時だった。

「今度は何…あれ!?お前は確か中層で番をしているハズじゃ…
それにあとの2人はどうした!?」

「はぁっ、はぁ、封鎖箇所の任を受けていた所、下層よりバーサークベアが封鎖を突破。
冒険者パーティを逃がす為2人は残って時間稼ぎを…」

「バ、バーサークベアですって!?隊員2人じゃ無理よ!ベルドラッドさん直ぐに向かいましょう!」

「そうだな、ジーン!戻って早々で悪いが隊員に通達!10分で準備を済ませ、突入すると伝えてくれ。」

「了解しました!」

ベルドラッドと隊員らの話に区切りが着いた所で険しい表情のノアが隊員に詰め寄る。

「すいません隊員さん!さっき言っていた冒険者パーティっていうのは…」

「…ジェイルパーティだ。」

「…確かライルさんもいたと思いますが…」

「ライルさんは俺を上層3階まで送ってくれた後消耗状態で倒れているハズだ。」

「…了解。」

「了か…え?」


ダンッ! 


「あ!?おい、ちょっと待て!ノア君!」

「待ちなさいノア君!相手はあの…」


ベルドラッドとアリッサの静止の声も聞かず駆け出すノア。
続けとばかりにもう1人後を追う様に駆け出す姿があった。




ドドドドドドドドドドドドド!

今までに無い程の速度で坂を駆け下りるノアは<地図化>を発動し、中層5階迄の最短ルートを確認していた。

後方からノアを追い掛ける様に別の足音が聞こえて来る。

「坊や、待ちな!」

「レーヴァさん、申し訳ありませんが止めたって無「別に止めに来たんじゃないさ!」

「お前さんの性格からすりゃ止めたって無駄だってのは百も承知さ!
お前さんの体力がどんだけあるか知らないがそのペースで走ったら中層に着く頃には流石にバテちまうだろう?
あたしに乗って体力温存しときな!」

「レーヴァさん…」

「お前さんの事だ、バーサークベアと戦うつもりだろう?なら尚更温存しとくんだね。
その代わり最速で連れてってやるから道案内よろしく頼むよ。」

「…ありがとうございます。」

ノアは腰に差していた剣、刺突武器、ナイフを一度アイテムボックスに仕舞い、レーヴァに跨がる。

その直後レーヴァの体が一回り大きくなり、ノアの【鎧袖一贖】同様黒いオーラが体を覆う。


「【酷風雹雨(こくふうはくう)】これを発動するのも久しぶりだ。
良いかい?振り落とされるんじゃないよ?」


ドガァッ!           「うぉっ!?」


レーヴァが1歩駆ける度、嵐の様な暴風が吹き荒れ、また1歩駆ける度、轟音が鳴り響く。
黒いオーラを纏ったレーヴァが通った跡は黒い帯が走った様な軌跡を辿る。

あっという間に中央にある池の畔まで辿り着くと、一足飛びで池を軽々と越え、そのまま2階へ向け突入。

2階に出るとノアがレーヴァに見える様に進行方向に腕を指し示す。

「この方向だね!了解した。」

指し示した方向に進むと3階への坂が見えた。

「そういや、ジーンの報告通りなら3階にライルがいるらしいじゃないか!
どうするんだい?回収して行くかい?」

「余程の危険がなければ護衛を付けて先行します。」

「護衛?坊や召喚か何か出来たのかい?」

「召喚では無いですが…まぁ召喚みたいなモノですね。」




3階への坂を7割程下り終えた所でライルの反応を感知、どうやらウルフ4体に囲まれている様だ。


「いました。ウルフに囲まれてますね、早速喚んどきますか。」

そう言うとノアは指笛を鳴らす。
視界の先では倒れたライルが吠えてウルフを近付けさせない様にしていたがウルフは今にも飛び掛かろうとしていた。

指笛によって喚ばれた者だろうか、ライルの周囲各所の土が盛り上がって行く。


「ライルさんに襲い掛かる奴は喰って良し!」


ノアが叫ぶと、飛び掛かるウルフの真下から飢餓ミミズが飛び出し、丸飲みにして行く。
突然の事にライルも目をぱちくりさせる。

「飢餓ミミズだって!?あれ喚んだの坊やかい?」

「<特殊清掃員のお得意様>の称号効果を使いました。
使うのは初めてですが上手く行って良かった…」

そのままの速度を保ったままライルの横を通り過ぎるレーヴァ。
2人の姿を確認したライルは今起きた事柄に納得した様だ。


「ノア君にレーヴァ…あの姿は久しぶりだな…」


「ライルさーん!護衛置いていきます!」


すれ違った直後、ライルに向かって一言投げ掛けるノア。

「護衛って…」

周りを見るとライルをじーっと見つめる周囲の飢餓ミミズ達。


「いや、これはこれで生きた心地がしないにゃ…」
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