ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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旅立ち~オードゥス出立まで

ダンジョンに入って15時間

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ダンジョンに入って15時間。

余程疲れていたのだろう、休憩所の中では皆ぐっすりと深ーく眠っていた。

クロラ、ポーラ、ロゼは仲良く寄り添って寝ていたのだが、途中からロゼがポーラの事を抱き枕の如く抱き締めてしまった為、クロラの体がずり落ちてしまった。


「むにゃ?……くぁ~…」


起きたクロラは皆を起こさない様にそろりそろりと外に出る。



休憩所を出ると目の前の岩の上でノアが頬杖を付き、足を組んでどっかりと座っていた。
ピクリともしなかったので前に回ってみると両目を閉じていた。

(やっぱり眠いよねー。)

徐に頭を撫でようと手を翳すと


「よく眠れましたか?」

「ひゃっ!?お、起きてたんだね…」


片目を開きつつノアが答える。


「慣れてくると寝てても<気配感知>に反応があれば直ぐ対処出来ますよ。」

「じゃあ少し寝てたのね。」

「頼もしい護衛もいますしね。」


休憩所の周囲を見ると何度も飢餓ミミズが出現した様で、地面に穴がボコボコ空いていた。


「まだ皆寝てる様ですけどクロラさんは良いんですか?」

「うん、もう目が覚めちゃった。」

クゥゥゥゥ~…

クロラのお腹から可愛らしい音が聞こえる。
ダンジョンに入ってから歩きっぱなしで途中スキルを覚えつつ最後は熊の連続狩猟だったので仕方の無い事だ。

クロラは少し顔を赤らめお腹を押さえる。
そんなクロラにノアがアイテムボックスを開き、ほかほかの大きめな煮込みハンバーグサンドを取り出す。


「はい、これどうぞ。昨日作ってきました。」

「え!?食べて良いの?」

「勿論クロラさんに食べて欲しくて作ってきましたから。」

「はぅ…そ、それでは頂きます…」


ノアからハンバーグサンドを受け取るとノアの斜め向かいに座る。
おずおずと口に持っていきおもいっきりがぶりと囓り付く。

バクッ!  モグモグ    「ん~ふ~~~!!」

一口食べるとそれなりに美味しかったのだろう、恐らく「美味しい~」と言いながら腕をブンブン振る。

よく叩いた肉と飴色になるまで炒めた玉葱から出た肉汁と甘味が押し寄せ、パンに染みた濃い目のソースが合わさり一口、もう一口と食が進む。


「ふももも!」

「お、久々のふももさんだ。」

「ふもっ!?…お、おいひぃよ。」

「ふふ、気にしないでいつも通り食べて下さい。」

「ふ、ふもも…ふももも…」


明らかに小声になり顔を赤らめつつも食べる速度は変わらない。
そしてあっという間に完食する。


「あー美味しかった。ノア君の料理凄いね~、食事効果が4つも付いてるよ。」

「そう言って貰えるとありがた…え?4つ?」

(あれ?おかしいな、確か食事効果は体力上昇(小)、攻撃力上昇(小)、防御力上昇(小)の3つのハズ…)

「クロラさん、4つ目の食事効果教えて貰って良いですか?」

「えーっと…敏捷性(中)だよ。」

「敏捷性(中)!?」


ノアは食事効果で"敏捷性(中)"が付く食事を作った事が無い訳では無いが、ごく一般的な食材でこの効果が出る事は今まで無かったのだ。


「あ、もしかして<大好物>の影響かも。」

「え?何そのスキル。」


<大好物>…自分の好物を食べると自身に有利な効果が1つ付与される。


「へー、僕このスキル初めて見ました。」

「私も元々持ってなかったんだけど、初めて街に来た時にはもう持ってたの。」


取得条件がよく分からないがクロラにとって有利になるなら良いかとそこで考えるのを止める。

なぜなら今まで寝ていたほぼ全員が同時に起き始めたからだ。


「うーん…何か良い匂いが…」
「お腹空いた…」
ぐぎゅるるる~
「あででで!?」


どうやらノアのハンバーグサンドの匂いで皆起きた様だ。
そして恐らく悲鳴を上げたのは筋肉痛になったバルドロだろう。
寝惚けながらものそのそと休憩所から出て来る一同。


「皆さんよく眠れましたか?」

「「お陰様でー」」
「さまでー」
「ダンジョンでこんなぐっすり眠れると思わなかったわ…」
「あででで…」
「それにしてもこの匂いは…?」

「僕の手作りですが、お腹空いてたらどうぞ。
煮込みハンバーグサンドです。」


皆余程腹が減っていたのだろう、ノアからハンバーグサンドを受け取ると直ぐ様口に運ぶ。


「うっま!」
「美味しー!」
「やるわね少年。」
「ガツガツ」


反応からしても味の方は上々の様だ。
男性陣に至っては2、3個食べている者もいる。


「一応多めに作ってきましたので好きなだけ食べて良いですよ、動けなくなったら困りますがね。」


そう言うと女性陣もおかわりをして来た為、3割程が1回の食事で無くなった。
途中からルドルフのパーティも参加したから仕方ないと言える。
底を尽きた場合、乾燥出汁もあるのでスープを作るとしよう。


「さて、少し落ち着いたら中層に向かいますか。」


このノアからの提案に頷く一同、何故なら先程よりも明らかに熊の湧く早さが落ちているからだ。
恐らく魔素の上昇が終わり、元の発生量まで下がったのだろう。

そこから各々装備の点検、手入れ等の準備を進め、10分程で完了。

即席で作った休憩所を元に戻しいざ出発、という所で呼んだ覚えが無いにも関わらず地面から飢餓ミミズが顔を出し、こちらを見ていた。

未だに見張りを続けてるのではと思ったノアは飢餓ミミズの元へ向かう。


「見張りありがとうございました、もうお帰り頂いても大丈夫です。」


そう言うとズズズッとノアの足元まで近付き、すぐ近くの地面から握り拳大の白い玉が出て来る。
というよりも完全に卵が出て来た。


「これを僕に?」


返事も無いまま飢餓ミミズは地面に潜って行った。

ノアは足元の卵を拾い、暫し眺めているとこの卵の説明文が表示される。
今までの様子を見守っていた他の面々もノアの元に集まり、同じくこの卵の説明文を読む。


「飢餓ミミズの卵…へー、意外と普通の卵なんだね。」

「狩りの時は憎き奴だけど私の村にも1匹欲しいんだよね、良い肥料作ってくれるから。」

「俺の村にも欲しいな…」


各々感想を述べ、少なからず羨ましがっているが、説明文を読んでいるノアの表情は険しい。

(どうやら皆には"飢餓ミミズの卵"という説明しか見えてない様だな…なぁ『俺』この説明文どう思う?)

(『これは流石に孵化しない事には何とも言えないな。』)

(だよねぇ…)



飢餓ミミズの卵…飢餓ミミズの卵。孵化まであと5日。


【以下の説明文は【特殊清掃員のお得意様】の称号をお持ちの方にのみ表示されます。】


【???の卵】…【特殊清掃員のお得意様】の称号を持った者から更に異常な量の餌を与えられた事で"この者になら【王】を託せられる"と判断された時に貰える卵。
卵の中には飢餓ミミズから先祖返りした強個体が誕生を今か今かと待ちわびている。
孵化まであと5日。



(とりあえず飢餓ミミズからしたら友好の証としてくれたんだろうから、ヤバい代物では無いでしょ…)

(『多分な…』)


ノアは周りに不審がられ無い様に説明文から目を外し、直ぐ様卵をアイテムボックスへ仕舞い歩を進める。
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