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アルバラスト編
残務処理
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「さぁさぁ、残務処理依頼だよ、見てって見てって。」
ギルド長が似合わない笑顔を振り撒いてカウンターから呼び掛ける。
ここは街の冒険者ギルド内、クエストボードに手書きで『残務処理』という紙が貼られた一画に所狭しと依頼書が貼り出されている。
内容は見ていないが面倒くさいのは目に見えているからか、誰もそちらを見ようとしない。
「お前らぁ!少しはこっち見ろ!」
ギルド長がキレた為、皆渋々クエストボードを確認する。
「勿論の事だが、お前達冒険者で対処可能な物を依頼という形で貼り出してある、確認してくれ。」
『残盗の捜索』…参加人数:最低4パーティ、最大12パーティ。
捜索範囲:街の東西南北の門から3キロメル。
報酬金:見付からなくても最低1万ガル。
『犯罪奴隷専門商人馬車の護衛』…対象馬車数:20台。
参加人数:最低20パーティ。
護衛先:要相談。
報酬金:最低5万ガル。
『罠解除のお手伝い』…対象人員:<解除・解錠>持ち、若しくは<精密作業>をお持ちの方。3人まで。
報酬金:罠1つに付き4000ガル。
『盗品を元の持ち主へ』…対象人員:数が多いので<鑑定>持ち推奨。
報酬金:歩合制。
『北門~王都方面の道整備』…対象人員:土属性魔法、<毒耐性(中)>持ち。
報酬金:50万ガル。
「お、意外とマトモだ。」
「護衛か…場所にもよるが割と旨いな。」
「罠解除?ああ、金品隠してある例の小屋の事かな?」
「【義賊】としては『盗品を元の持ち主へ』が妥当かな。」
「道整備凄ぇ報酬金だが、土属性魔法持ってる奴なんかいるのか?」
「『残盗の捜索』か、気になってる所何ヵ所かあるから行ってみるか。」
各々冒険者がお目当ての物だったり【適正】に合う依頼を手にカウンターへと向かう。
だが1つだけ誰も手に取らない依頼があった。
「おーい道整備誰もやんねぇのか?」
「土属性魔法持ってない。」
「俺もー。」
「私もー。」
「同じくー。」
「じゃあ僕やります。」
「おっ!やってくれる…いやいや、お前さん流石に休めよ。」
手を上げたのはノアだった。
土属性魔法持ってるし<毒耐性>もある、しかしギルド長が止めに入る。
「お前さん、1人で野盗200人以上と戦った上に賞金首の4人とも戦って最後はヒュドラだろ?
ぶっ倒れるぞ?」
「あーお構い無く。
そこら辺鍛えてますからあと不眠不休で2日は動けます。
何も無かったら『ドラガオ』に行こうかなって思ってましたし。」
このノアの発言にドン引きする一同。
「お前さん一体どんな訓練受けたんだ?」
ギルド長の言葉に苦笑いで返す。
恐らく訓練の内容言っても理解して貰えないかもしれないだろう。
(それにしてもあの4人賞金首だったか。
ジュラとバクラは大した事無かったけど、召喚と転移使ってきた奴は厄介だったな。)
「まぁ分かった。
一応受けて貰うがキツそうなら途中で断って貰って良いぞ。
さっき作業内容聞いたがなかなかキツいみたいだからな。」
「キツい?」
と言う訳でやってきました北門の外。
夜はあまり分からなかったが、明るくなった今なかなかの被害状況だという事が判明。
ヒュドラとの戦いで一時火の海になった事で100メル四方の地面が丸焦げの焦土と化し、所々がガラス化している。
その上道の奥では【神殺之槍】で出来た大穴から白煙が立ち込め、隊員数名が魔法陣を展開して煙を封じ込めている様だ。
「道整備の依頼受けた者です。」
「あら、ノア君じゃない。」
「あ、ライリさん。僕は何すれば良いですか?」
「ちょっと待っててね、この穴の汚染が強すぎて除染が間に合ってないの。」
この大穴には一時的にヒュドラが心臓を隠していた為、体液やら血液やら毒液やらが大量に垂れ流しになっていたのだろう。
ちなみに竜の血液は毒とされている為、処理は専門業者が行うとの事。
(除染か…ん?待てよ?
グリード、ちょっといい?ヒュドラで汚染された土を綺麗にする事って出来る?)
グルルッ!
昔、近所のじいちゃんから「ミミズは土を綺麗にしてくれる」と言っていたのを思い出す。
一応グリードは飢餓ミミズの祖先でもあるので土を良くしてくれるのでは無いか、と期待半分で聞いてみた。
どうやらやってくれそうだ。
「すいませんライリさん、ここら辺の除染をグリードに任せたいのでちょっとそこ離れて貰って良いですか?」
「え?どういう事?」
周りにいた隊員らも「え?どういう事?」と言う顔をする。
ライリが魔法陣から離れた所でノアが合図を送る。
「よし、グリードやってくれ。」
合図を送るとノアや隊員達の周りの地面がうねり出す。
突然の事に慌て出す隊員達。
「え!?ちょっ、ちょっとノア君!何が起こってるの!?」
「地面の下でグリードが汚染された土を食べてくれてます。」
「え?何を言って…あ、でも毒素の濃度が下がってきてる…」
他の隊員達も何かを確認した後口々に「本当だ」と呟いている。
所々ガラス化した地面や炭化した草木もついでに耕されていき目の前の大穴も徐々に埋まっていく。
『グリード』が空間魔法を覚えました。
土の中から『ヒュドラの竜血』『ヒュドラの猛毒液』『ヒュドラの体液』が回収されました。
一時的に空間魔法の<収納>により保管しました。
「『ヒュドラの竜血』?」
「え?ノア君今何て?」
「いや、グリードが土の中から『ヒュドラの竜血』とかいうのを回収したみたいで…」
「りょ、量は分かるかしら?」
「うーんどれ位だろう…まだ途中ですけど井戸の水桶10杯は軽くあるみたいです。」
これを聞いたライリ含め隊員達が少し固まったが直ぐに復帰したライリが周りの隊員達に指示を出す。
「確かまだジョーさんが街にいるハズよね?直ぐにここに呼んできて!」
「はい!」
「あなたは、廃液処理班呼んで!いなければ要請して下さい!
あと空間魔法使える人も呼んで!」
「「はい!」」
「廃液処理?ああ、毒って言いますしね、竜の血液って。
もしアレならグリードが処分しますよ?」
ノアがさらりと言った一言で隊員達が慌てふためく。
「ぎゃー!?ちょっと待って下さい!?
確かに毒ですけど、高位の儀式や錬金術、薬品作製なんかに使える非常に貴重な素材なのでこちらで買い取ります!」
「へー、そんなに貴重なんですね。」
「そりゃそうよ。
ヒュドラは生命力と再生力が凄過ぎるでしょ?
超高火力で一気に仕留めないとならないから基本的に素材が取れる事は無いに等しいの。
素材を取るつもりなら、街1つダメにする覚悟が必要よ。」
ライリが捲し立てる様に熱弁してくるので取り敢えず待機する事にした。
結果的に『ヒュドラの竜血』水桶30杯分(240リル)、『ヒュドラの猛毒液』は水桶100杯分(800リル)、『ヒュドラの体液』は水桶200杯分(1600リル)も回収された。
量を知ったノアは「派手に食い散らかしたからなぁ」とその時は軽く考えていたが、この後色んな意味で恐ろしい目に遭う事をノアはまだ知らない。
ギルド長が似合わない笑顔を振り撒いてカウンターから呼び掛ける。
ここは街の冒険者ギルド内、クエストボードに手書きで『残務処理』という紙が貼られた一画に所狭しと依頼書が貼り出されている。
内容は見ていないが面倒くさいのは目に見えているからか、誰もそちらを見ようとしない。
「お前らぁ!少しはこっち見ろ!」
ギルド長がキレた為、皆渋々クエストボードを確認する。
「勿論の事だが、お前達冒険者で対処可能な物を依頼という形で貼り出してある、確認してくれ。」
『残盗の捜索』…参加人数:最低4パーティ、最大12パーティ。
捜索範囲:街の東西南北の門から3キロメル。
報酬金:見付からなくても最低1万ガル。
『犯罪奴隷専門商人馬車の護衛』…対象馬車数:20台。
参加人数:最低20パーティ。
護衛先:要相談。
報酬金:最低5万ガル。
『罠解除のお手伝い』…対象人員:<解除・解錠>持ち、若しくは<精密作業>をお持ちの方。3人まで。
報酬金:罠1つに付き4000ガル。
『盗品を元の持ち主へ』…対象人員:数が多いので<鑑定>持ち推奨。
報酬金:歩合制。
『北門~王都方面の道整備』…対象人員:土属性魔法、<毒耐性(中)>持ち。
報酬金:50万ガル。
「お、意外とマトモだ。」
「護衛か…場所にもよるが割と旨いな。」
「罠解除?ああ、金品隠してある例の小屋の事かな?」
「【義賊】としては『盗品を元の持ち主へ』が妥当かな。」
「道整備凄ぇ報酬金だが、土属性魔法持ってる奴なんかいるのか?」
「『残盗の捜索』か、気になってる所何ヵ所かあるから行ってみるか。」
各々冒険者がお目当ての物だったり【適正】に合う依頼を手にカウンターへと向かう。
だが1つだけ誰も手に取らない依頼があった。
「おーい道整備誰もやんねぇのか?」
「土属性魔法持ってない。」
「俺もー。」
「私もー。」
「同じくー。」
「じゃあ僕やります。」
「おっ!やってくれる…いやいや、お前さん流石に休めよ。」
手を上げたのはノアだった。
土属性魔法持ってるし<毒耐性>もある、しかしギルド長が止めに入る。
「お前さん、1人で野盗200人以上と戦った上に賞金首の4人とも戦って最後はヒュドラだろ?
ぶっ倒れるぞ?」
「あーお構い無く。
そこら辺鍛えてますからあと不眠不休で2日は動けます。
何も無かったら『ドラガオ』に行こうかなって思ってましたし。」
このノアの発言にドン引きする一同。
「お前さん一体どんな訓練受けたんだ?」
ギルド長の言葉に苦笑いで返す。
恐らく訓練の内容言っても理解して貰えないかもしれないだろう。
(それにしてもあの4人賞金首だったか。
ジュラとバクラは大した事無かったけど、召喚と転移使ってきた奴は厄介だったな。)
「まぁ分かった。
一応受けて貰うがキツそうなら途中で断って貰って良いぞ。
さっき作業内容聞いたがなかなかキツいみたいだからな。」
「キツい?」
と言う訳でやってきました北門の外。
夜はあまり分からなかったが、明るくなった今なかなかの被害状況だという事が判明。
ヒュドラとの戦いで一時火の海になった事で100メル四方の地面が丸焦げの焦土と化し、所々がガラス化している。
その上道の奥では【神殺之槍】で出来た大穴から白煙が立ち込め、隊員数名が魔法陣を展開して煙を封じ込めている様だ。
「道整備の依頼受けた者です。」
「あら、ノア君じゃない。」
「あ、ライリさん。僕は何すれば良いですか?」
「ちょっと待っててね、この穴の汚染が強すぎて除染が間に合ってないの。」
この大穴には一時的にヒュドラが心臓を隠していた為、体液やら血液やら毒液やらが大量に垂れ流しになっていたのだろう。
ちなみに竜の血液は毒とされている為、処理は専門業者が行うとの事。
(除染か…ん?待てよ?
グリード、ちょっといい?ヒュドラで汚染された土を綺麗にする事って出来る?)
グルルッ!
昔、近所のじいちゃんから「ミミズは土を綺麗にしてくれる」と言っていたのを思い出す。
一応グリードは飢餓ミミズの祖先でもあるので土を良くしてくれるのでは無いか、と期待半分で聞いてみた。
どうやらやってくれそうだ。
「すいませんライリさん、ここら辺の除染をグリードに任せたいのでちょっとそこ離れて貰って良いですか?」
「え?どういう事?」
周りにいた隊員らも「え?どういう事?」と言う顔をする。
ライリが魔法陣から離れた所でノアが合図を送る。
「よし、グリードやってくれ。」
合図を送るとノアや隊員達の周りの地面がうねり出す。
突然の事に慌て出す隊員達。
「え!?ちょっ、ちょっとノア君!何が起こってるの!?」
「地面の下でグリードが汚染された土を食べてくれてます。」
「え?何を言って…あ、でも毒素の濃度が下がってきてる…」
他の隊員達も何かを確認した後口々に「本当だ」と呟いている。
所々ガラス化した地面や炭化した草木もついでに耕されていき目の前の大穴も徐々に埋まっていく。
『グリード』が空間魔法を覚えました。
土の中から『ヒュドラの竜血』『ヒュドラの猛毒液』『ヒュドラの体液』が回収されました。
一時的に空間魔法の<収納>により保管しました。
「『ヒュドラの竜血』?」
「え?ノア君今何て?」
「いや、グリードが土の中から『ヒュドラの竜血』とかいうのを回収したみたいで…」
「りょ、量は分かるかしら?」
「うーんどれ位だろう…まだ途中ですけど井戸の水桶10杯は軽くあるみたいです。」
これを聞いたライリ含め隊員達が少し固まったが直ぐに復帰したライリが周りの隊員達に指示を出す。
「確かまだジョーさんが街にいるハズよね?直ぐにここに呼んできて!」
「はい!」
「あなたは、廃液処理班呼んで!いなければ要請して下さい!
あと空間魔法使える人も呼んで!」
「「はい!」」
「廃液処理?ああ、毒って言いますしね、竜の血液って。
もしアレならグリードが処分しますよ?」
ノアがさらりと言った一言で隊員達が慌てふためく。
「ぎゃー!?ちょっと待って下さい!?
確かに毒ですけど、高位の儀式や錬金術、薬品作製なんかに使える非常に貴重な素材なのでこちらで買い取ります!」
「へー、そんなに貴重なんですね。」
「そりゃそうよ。
ヒュドラは生命力と再生力が凄過ぎるでしょ?
超高火力で一気に仕留めないとならないから基本的に素材が取れる事は無いに等しいの。
素材を取るつもりなら、街1つダメにする覚悟が必要よ。」
ライリが捲し立てる様に熱弁してくるので取り敢えず待機する事にした。
結果的に『ヒュドラの竜血』水桶30杯分(240リル)、『ヒュドラの猛毒液』は水桶100杯分(800リル)、『ヒュドラの体液』は水桶200杯分(1600リル)も回収された。
量を知ったノアは「派手に食い散らかしたからなぁ」とその時は軽く考えていたが、この後色んな意味で恐ろしい目に遭う事をノアはまだ知らない。
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