ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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フリアダビア前哨基地編

お早うございます。

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「お早うございます。新人冒険者のノアって言います。」


巨鳩がアルバラストを飛び立ってから10分程して、ノアの事を遠巻きに見ている白銀の鎧3人組はなかなか近付いてすら来ないので、ノアから声を掛ける事にした。


「あ…お、お早うございます…」


3人の内、紅一点の女性だけが挨拶を返してくれた。


「おい貴様、ミユキ殿に馴れ馴れしいぞ。
種族を述べよ!」


女性はミユキと言うらしい、取り巻きの男性2人が女性の前に出てノアの接近を拒む。


(どこぞのお嬢様なのかな?それにしても…何で種族?)


ノアは不思議に思っていると、取り巻きの男がノアを突き放そうと胸ぐらを掴んできた。

反射的に手首を掴んで捻り、転がす。


「あ!?うぉっ!?」ゴロッ!

「ああ、すいません。つい反射的に…」


転がした取り巻きの手を直ぐに離し解放するも、もう1人の取り巻きが腰に差していた剣を抜こうとする。


「や!止めて…下さい…その子も悪気があった訳じゃ無い。
そうでしょう?」


ミユキとか言う女性が取り巻きを制止する。


「ええ。胸ぐらを掴まれたので反射的に。
流石に種族を問われた事が無かったので困惑してしまいました。
そちらの方はどこぞのお嬢様でございましたか?」


割とへり下って言ったつもりだったが、取り巻きの癪に触った様だ。


「どこぞのだと!?
此方の御方は、我が『ヒュマノ聖王国』の【勇者】様であるぞ!」


声高らかに言うがノアにしてみれば、何のこっちゃである。
だが周りにいるドワーフや妖精、エルフから妙な気配が飛んでいる。


「聞いた事ありません、不勉強で申し訳ありません。」

「ふん!学が無いのなら仕方無いな。
今回は許すが、次気安く接しよう物ならタダではおかんぞ!」


平謝りしつつ3人から離れる。
すると黒いフードの獣人が近付いてきた。


「すまないなノア君、あの3人は『ヒュマノ聖王国』の者なのだ。」

「すいません、ヒュマノ聖王国とは何ですか?実は知らないんです。」

「反応からしてそうだと思ったよ。
ヒュマノ聖王国と言うのは、アルバラストから東に進むと獣人が多く住む土地がある、と聞いたであろう?」

「はい。」

「そこから更に東に進むと『人間至上主義』を掲げるヒュマノ「あーなるほど、皆まで言わなくても大体分かりました。」

(通りで周りから妙な気配が飛ぶ訳だ。)



『ヒュマノ聖王国』…人間至上主義を掲げ、徹底的なまでに他種族除外を実行している。
その割に奴隷として獣人等の労働力を国に入れる事に躊躇いは無く、湯水の如く使い潰したりとイマイチ言っている事の整合性が取れず、方針が行方不明な国。
勇者を利用して他国に攻め入ろうと画策しているとかしていないとか。



「凄いですね…こんな時代でもそんな事掲げてる所あるんですね。」

「あの『ミユキ』って【勇者】の女性はヒュマノ聖王国に無理矢理召喚された『召喚勇者』だって専らの噂だよ。」


黒いフードの獣人もあまり宜しく思っていないのか、語気を強めてノアに説明する。


「まぁ変に絡まなければ彼方からどうこう言う事は無いだろうからそっとしておこう。」


黒いフードの獣人からそう言われ、ノアは静かに頷く事にした。






「そう言えば到着までどの位ですか?」

「この速度のまま行けば後9時間って所だな。」


黒いフードの獣人がそう言うと、ドカリと座るノアの影からヴァンディットが声を掛ける。


「ノア様、流石に寝た方が良いですよ?」

「そうだね、何もする事無ければ寝るとするよ。」


そう言ってノアは腕を組んでそのまま目を瞑る。
あっという間に寝に入ったノアに


「ねぇ僕、よくこんな所で寝られるわね?」


声を掛けて来たのは氷の羽根を持つ妖精だった。

実際今ノアがいる場所は、遥か上空を飛ぶ巨鳩の背中の上だ。
凄まじい速度の突風が吹き荒れ、風が体を叩き、爆音と揺れ、冷気でとてもでは寝ていられる状況では無い。


「前にどんな状況でも寝られる様に訓練したので、これ位ならなんて事ありませんよ。」

「若いのに一体どんな経験したのよ…
と言うか貴方から魔法を行使した感じがしないのに何で吹っ飛ばされないのよ?」


妖精は何か魔法を発動してノアの顔の周りを滞空しているが、時折強烈な突風が吹くとフラついている。


「そりゃあそうだ、その坊主の腰に提げてる剣を見てみぃ、阿羅亀じゃろう?
弓以外の武装、全部阿羅亀製じゃあ容易には動かんよ。」


ドワーフが酒瓶片手にそう説明してきた。
酔っていても武器を見る目は持っている様だ。


「ただ分からんのだが、坊主【剣士】では無いな?」

「え?剣持ってるんだから【剣士】なんじゃ無いの?」

「幾ら【剣士】とは言え、阿羅亀製の武装を持つとなったら筋量が足りなさ過ぎるからの。」

「ねぇ僕?あなたの【適正】は何なの?」

「僕の適正は【ソロ】って言います。」


疑問符を浮かべた少女と飲兵衛3人衆に囲まれたノアが【適正】を答える。
が、いつも通りの反応が返ってくる。


「【ソロ】?聞いた事無いわ…」
「「何だ?【ソロ】ってぇ。」」
「【ソロ】…つまりぼっちか。」

「うっ…まぁそう言う事です…」

(何故だろう…ぼっちと言われるとなかなかしんどいな…)


この話を境に妖精2人から『ぼっち君』の愛称で呼ばれる事になった。
2人に悪気は無いのだが、愛称で呼ばれる度に複雑な気持ちになるノアであった。







~8時間後~

「んが~っ!久しぶりによく寝た~!」

「お早うございますノア様、もう昼ですが。」


胡座の体勢から立ち上がったノアは首をポキポキと鳴らして周囲を見渡す。

男性エルフは寝る前と変わらず立ち続け、2人の妖精はエルフの肩にしがみついている様だ。
風強いからね。

飲兵衛ドワーフ3人組は、相変わらず酒を飲みつつガハハ笑いをしている。
話のネタに困らないのだろうか。

白銀鎧の勇者と取り巻きは食事中だろうか、干し肉とパンを齧っている。
その辺りは普通の冒険者の食事と変わらないのね。


「何だ?やらんぞ!」

「別に欲しくありませんよ、少し目が合っただけでやいやい言わないで下さいよ。」


そう言ってノアはアイテムボックスからハンバーグサンドを取り出し、ガツガツと頬張る。
香ばしい香り(突風)を撒き散らすと、途端に取り巻きらから羨望の眼差しを受けるが、無視だ無視。


「「ぼっち君、何たべてるの?」」

「ハンバーグサンドですよ。もし宜しければどうですか?」

「「良いの!?ちょうだいちょうだい!」」


妖精の少女2人にねだられ、掌の大きさに千切ったハンバーグサンドを渡す。

受け取った2人はパクパクと食べ始める。
ノアは一緒にいるエルフにも勧めるが、肉食がダメだと言われた。


「もしかして【神官】でしたか?」

「いや、種族的な物だ。食べれる者もいるが私はどうにも…すまないな…」

「そうですか…ではこれはどうでしょうか?」


そう言ってノアは手作りの携行食(焼き菓子)を手渡す。


「これは…?」

「穀物や木の実、蜂蜜等で作った手作りの携行食です。」

ザクッボリッボリッ…

「美味い…!甘い物も苦手だったがこの位の甘さなら大丈…何だこれは、食事効果が2つも!?」

「ああ、僕の【適正】が影響してて、僕が手作りすると効果が付きやすいんです。」

「ほう…すまない、もう少し貰っても良いだろうか?」

「良いですよ。」


ノアは男性エルフに追加で3本程渡しておいた。
割と腹が減っていたのだろう、ムシャムシャと食べ進めていた。

するとノアの近くに立っていた黒いフードの獣人が声を上げる。


「お、ノア君、見えてきたぞ!あれが目的地のフリアダビアだ。」
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