ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
235 / 1,117
王都編

人魚

しおりを挟む
突如現れた『人魚』は全身に薄紅色の鱗で造られた鎧の様な物を身に纏い、水面より僅かに浮いた状態でモンスターとノアの元に近付いてきた。


「skhdoksnhnnuwkntsmst、nnkstt…」


その『人魚』は超巨大モンスターの上に立つノアの姿を見て固まり、目を見開く。


「kr-kn!nzkknnngngirndsk!?」

グォオオガァアアアッ!

モンスターは『人魚』に何やら吼え、ノアが落下してきた方向を指差す。


「rkstktdstt!?
sknnngn!anthduyttkknktndsk?」


モンスターと何やら会話をしていた『人魚』が、今度はノアの方を向き、何か質問を投げ掛けている様だ。

だが、相変わらず何を言ってるのかが分からない。


『…申し訳無いが、何を言っているのか分からないんですが…』


このノアの声を聞いた『人魚』はハッとなって喉を弄り始める。
と言うかノアの発した言葉を『人魚』は理解している様だ。


「a-…あー…どうでしょう、私の言葉が分かりますか?」

『え?あ、はい、理解出来ます。』

「色々思う所はあるでしょうが、降りてきて貰っても良いでしょうか?」

『…コイツが暴れない様にしてくれるんなら応じます。
出来なければ、取り敢えずコイツの眼を潰してからで良いですか?』


そう『人魚』に言い放ったノアは、自身の血でべっとりと濡れた荒鬼神を今一度しっかり握り直す。


「そ、そこの人間の子よ、信じられないかもしれませんが、今の所こちらから危害を加える事は致しません。
kr-kn!imsgsntuwcdns、hketinsi。」


『人魚』から何やら言われたモンスターは鼻をフンと鳴らし、先程から発していた強烈な殺気を霧散させ、触手もだらりと脱力させる。


「取り敢えず彼には戦闘を止める様に言いました。安心して貰って大丈夫です。」


未だ超巨大モンスターの頭部に立つノアは少し逡巡した後、モンスターの眼球に向けて構えていた荒鬼神を腰へと戻す。


『…コイツと戦わなくて済むならそれに越した事は無い…あなたの要望に応じよう。』


ズダンッ!グルルル!


モンスターの頭から飛び降りたノアの元にグリードが近付き、ノアをの背後に陣取る。

『人魚』の指示に従ったモンスターはノア達の元を離れて壁際の方へと向かい、待機する。


『グリード、よくやってくれた…
一先ず一時休戦の様だから落ち着いてな。』

グル!

ノアは共闘してくれたグリードに労いの言葉を掛け、落ち着く様に促す。


ノアが降りてきた事で『人魚』が本題に入ろうとするのを、ノアは手で制して問い掛ける。


『申し訳ないのですがこんなナリなので、治療しながらでも良いですか…?』


未だノアの体から血が滴り、骨が軋む音が聞こえる。
ノアとしては一刻も早く『俺』が寄越してくれた力を解除して治療を施したい所である。


「え?ええ…
と言うよりか、言ってくれれば回復魔法をお掛け致しますよ?」

『お心遣い有り難いのですが、僕の【適正】上、支援魔法、回復魔法の類いが掛からないのでお気持ちだけ受け取っておきます。
信じられないとお思いなら試して頂いても構いません。』

「何でしょう、その様な【適正】聞いた事ありませんが…iysnszk!
…え?iysnszk!iysnszk!…嘘でしょ…本当に掛からない…」


案の定信じられないと言った表情の『人魚』がノアに向けて手を翳し、何かを唱えるが何も発動せず困惑している。

何回か行使しているが結果は変わらず不発の様だった。

その間のノアはと言うと、体から赤黒いオーラを消し、力を『俺』へと返す。

忽ち地面に崩れ落ちたノアは、何とか右手で体を支え、膝立ちの姿勢になって途轍も無く襲って来る脱力感や<痛覚遮断>を持ってしても逃れられない苦痛に耐えていた。

その上、ノアの手持ちの回復系アイテムを持ってしても骨折を完全に完治させる程の効果は得られない。

最悪の場合、折れた骨を力業で正常な位置に戻しながら回復玉を摂取し、徐々に治すと言う気の遠くなる様な回復法を取るしか無い。

それでも完治は難しいが…


明確な治療の手立てが無いが、取り敢えずアイテムボックスからチノアラシの針を取り出したノアはブスリと首筋に打ち込む。

輸血しながらノアは回復玉を3個取り出して握り潰し、口に放り込む。

が。


「う!?げぇっ……ゴブッ、ブハッ!」


臓器を幾つか損傷し、吐瀉物と共に大量に血を吐いてしまう。
とてもでは無いが話が出来る状態とは言えない。この状況に、少し思案した『人魚』はノアに告げる


「このままではあなたの命が危ういので私共の住まう神殿へお連れします。
どうやら薬の類いでしたら効果がある様子ですので、神殿にある秘薬ならあなたをお救い出来るかと思われますが如何でしょう?」

「…こんな素性の知れない人間を迎え入れて、大丈夫なのですか…?」

「本来は有り得ない事ですが、我等の神殿に入る為の資格をあなたは既に2つ持っていらっしゃいます。
さ、急ぎましょう、そこに居られる龍種のお供の方も御一緒にどうぞ。」


そう言って『人魚』の足元に巨大な転移魔法陣が出現、壁際で待機していたモンスターも範囲内に入っている様だ。
『人魚』に促されたグリードは、特に抵抗する事無く魔法陣の中に進む。


「…資格…が何の事か分かりませんが、宜しければお願いします…正直手が無い物、で…」


そこまで話した所でノアの体から急激に力が抜け、倒れそうになるのをグリードが胴体を這わせて背に乗せる。


「気を失ってしまいましたね…急ぎましょう。」

シュバッ!

残された時間は少ないと判断した『人魚』は直ぐ様転移を行った。









~何処かも分からない海の底~

通常であれば真っ暗で何も見えない海底だが、荘厳で巨大な海底神殿が聳え建つ、とある一帯だけはその限りでは無かった。

蛍光発光する海藻や珊瑚、光る魚が周辺を泳ぎ、辺りを照らす。

その光に誘われて他の魚や巨大な生物が周囲を泳ぎ、海底神殿は天然の要塞と化していた。

その海底神殿は結界の様に薄い膜で覆われ、外界を遮断している様であった。

シュバッ!

その膜の内側、海底神殿の前の砂地に魔法陣が展開、『人魚』とモンスター、気を失ったノアとグリードが転移してきた。

この場になって分かった事だが先程まで戦っていた超巨大モンスターの全長は500メルを越える長大な物だが、海底神殿と比べても山と子供位の差があり、神殿の巨大さが伺える。


「oy?hykttn、sria。stkinhnnuhitti…
strn『okt』hdntdsk?」
(おや?早かったな、セレイア。さっきの反応は一体…
そちらの『御方』はどなたですか?)


転移してきた『人魚』に対して神殿前に佇んでいた兵士の様な人物2人が声を掛ける。


「kwsihnshmtatd…imsg『kss』wyndkdsi。」
(詳しい話はまた後で…今すぐ『薬師』を呼んで下さい。)


「nnkjj-ugoarnyudsn…
wkrmst、sgnoybsmsyu。」
(何か事情がおありの様ですね…
分かりました、直ぐにお呼びしましょう。)


兵士の1人が神殿の中へと入って行く。


「sks、knbnnngnth…brbrtiukth『tuhs』k?」
(しかし、この場に人間とは…ボロボロと言う事は『踏破者』か?)


「ie、soudharmsng、srdknskkhyustims。」
(いえ、そうではありませんが、それだけの資格は有しています。)


「tiukthkn『okt』h…」
(と言う事はこの『御方』は…)


と、そこまで兵士が話した所で仙人の様な見た目の『薬師』が来た様だ。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...