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王都編
ぬぼーっ。
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ぬぼーっ。
「…あれがデカピパラですか…」
「…その様だな…確かにデカい…」
ノアとバドロ達が道を歩いていると、開拓作業を行っている者達だろうか、人とチラホラ遭遇する様になった。
例の珍獣は別の場所に移ったのかな?と思われたが、開拓作業のど真ん中にある大岩に凭れ掛かり、燦々と降り注ぐ陽光に体を当てて日光浴をしていた。
デカピパラは気持ちよさそうに目を瞑って日光浴を続けている。
デカピパラはゴワゴワとした茶色の体毛に覆われ、全長は5メルもあり、事前情報を聞いていないと、ネズミとはとても思えない巨体である。
にも関わらず周囲の人達はもう慣れているのか、日光浴の邪魔にならない様に避けつつ開拓作業を続けている。
辺りには木を伐採する音や、現場の人の大声が聞こえたりするが、デカピパラは特に気にする様子もなく、時折鼻をフスフスと動かしている。
「おや、アンタ達かい?あのデッカイ奴の調査に来た冒険者というのは。」
ノアやバドロ達の元に筋骨隆々で30代位の男性がやって来た。
「依頼を請けたのは俺らだ。
害がある様なら駆除しろとの事でな。」
「僕らは王都周辺で素材採取でここら辺散策してる者です。
珍獣が出たとの事で着いてきました。」
「そうか。
生憎、害らしい害は…見ての通りだよ。」
男性が手をデカピパラの方に向けるが、未だデカピパラはぬぼーっ、とした表情で気持ちよさそうに日光浴中である。
「5日前にこの辺りを開拓してたんだ、一際大きな木を切り倒したら下に洞穴があってな、その中からのそりとアイツが出てきたんだ。
"襲われる"と覚悟したんだが、奴は洞穴から出た後川の水をガブガブ飲んで、水草をモリモリ食って、樹皮をゴリゴリと削って食って、あそこの大岩で日向ぼっこして寝ちまったよ。
一時は開拓中止しようか、と言う意見が出たんだが、一先ず開拓作業を続けて動きがあったらその時に考えよう、って事になったんだが…」
「全く動きが無かったので作業を続行してるんですね?」
「そうなんだよ…
割とデカい音立ててんだけど、特に気にしてないみたいでね。
時折水飲んだり木や岩を齧る位で、日がな1日ずっとああしてるよ。」
「岩を?」
「恐らく歯を削ってるんだと思うんだ。
アイツ、あの図体だがネズミの仲間なんだってな?」
と、ここまで話した所で各々本来の目的の為に動く事になった。
どうやら今までノアやバドロ達と話していた30代位の男性は、この開拓現場の責任者で名前はダンで、北の村の住人との事。
バドロ達は取り敢えず調査(採寸、生態、行動内容等の観察)に取り掛かるとの事。
ノアは開拓地周辺で素材採取しても良いか、とダンに聞いてみた所
「作業の邪魔にならなければ良いよ。」
と了承されたのでノア達も行動を開始する。
【植物】【錬金術】【薬剤】【料理人】のレイルは野草、薬草、キノコの採取をメインで。
【防具】【洋裁】【魔術】【料理人】のドリーは、ノアが仕留めたモンスターや動物の肉、皮、血の採取をメインに行う。
さてここでヴァモス、ベレーザの2人は手が空いてしまうのだが
「はい、ヴァモス、ベレーザ。
2人は昨日と同様に僕と鬼ごっこをして貰います。」
「え?ここでですか?」
「皆さんの作業の邪魔になるのでは…」
「勿論普通にやれば皆さんの迷惑になりますから、今日は僕を捕まえるよりも"音や振動を立てない"事を重点に置いて下さい。」
「「は、はぁ…」」
どうも2人の反応が宜しくないのでしっかり説明する事にした。
「勿論これにもちゃんと意味がある。
"音や振動を立てない"事を重視して行動すれば自ずと【隠密】や【忍】等でも重宝されるスキルを取得する事が可能。
また、昨日の草原とは違って森という障害物や地形、石や葉等の音が立つ物が多数存在する場所はこういった訓練には打って付けだ。
<木登り上手><忍び足><縦横無尽><気配消失><聞き耳>なんかの熟練度は格段に上がるよ。
君達2人は飲み込みが早いから、昨日僕がやった様に野盗40人位だったら気付かれずに捕まえる事も可能になるだろうね。」
「「おおー。」」
2人の反応が良くなったので本題に入る。
「それじゃ僕は樹上だったり下で木の実やら野草なんかを採ってるから、動きに慣れたら僕を捕まえに来ると良い。
それじゃあ、よーい始め!」
トッ!
合図を送った直後、ノアは腰に差した荒鬼神2本をアイテムボックスに仕舞いつつ直上の太い枝へと飛び上がる。
枝は多少しなる程度で殆ど音も無い。
「よーし…」ダンッ!
それを見たベレーザが、見よう見まねで跳躍し、ノアの様に樹上に上がろうとするが
ズルッ!「う、わ!?」
ガシッ「こーら、横着しないの。」
枝に付着していた苔に足を滑らせたベレーザの装備のベルトを掴み落下を防ぐノア。
「駄目だよ~ベレーザ。
まずは地上で慣らしてからにしようね。」ナデナデ
「は、はいですにゃ…」
宙ぶらりんの状態のベレーザの頭を撫でて注意をするノアだが、ベレーザは満更でもなさそうに撫でられていた。
トッ、タッ、スタッ。
「それにしても木の実やら野草なんかが豊富ですね、この森は。」
「…お前さん、えらく身軽だなぁ。
まぁ確かに今年は中々豊作だが、ここら辺は切り拓く予定だから採り尽くしちゃっても良いぞ。」
「え?良いんですか?」
「ああ、俺らも採ってはいるんだが、それでもあり過ぎて困ってる位だ。
採らずに腐らす位なら採り尽くして貰った方が良いだろ?」
「ありがとうございます。
そういえば、ここを切り拓いて畑にでもするんですか?」
「いや、ここにカラメル牛の安定供給の為の牧場を建てる予定だよ。
本当は大分前から話は挙がってたんだが、フリアダビアへの物資優先で頓挫してたんだ。
何処ぞの冒険者達の活躍で終結したってんで再開されたんだ。」
「へぇ~、カラメル牛の。
でもアレって成熟してくると危ないのでは?」
「キチンと管理して均等に育てていけば大丈夫らしいんだと。
王都のエルニストラ王が言ってたぜ。」
(手広くやってるんだな~あの王さ…ん?)
バサササッ…
責任者のダンと話をしていると木と木の隙間から、上流の方で一斉に鳥が飛び立つのが見えた。
不審に思っていると<気配感知>の範囲内に多数の反応を確認。
反応からしてホーミングボアの様だ。
<うわっ!?>
<うおっと!>
<あれ?急に立ち上がったぞコイツ。>
<ご飯かしら?>
ノアとダンがいる場所から50メル程後方にいるバドロ達はまだ気付いていない様だが、デカピパラは察知したのかずっと閉じていた目を開き、その場にヌッと立ち上がった。
「この場に居る全員にお知らせします!
上流からホーミングボアが15頭程こちらに向かってきています!
皆さん作業を一時中断、ヴァモス、ベレーザも下がって下さい!」
突然大声を上げたノアに周囲からの視線が集中する。
責任者のダンも何を馬鹿な、と言った反応を示すが、直ぐに上流の方から地鳴りの様な音や水音等が響き渡ってきた。
「おい皆この坊主の言う通り全員作業を中断!
岩や大木等に身を隠せ!」
ダンが指示を出す間も川の上流から10頭、林の中に5頭の割合でホーミングボアがやって来ている様だ。
「林側のホーミングボアを転かしますのでバドロさん達はトドメをお願いします!」
「「「「了解した!」」」」
ノアの実力を知っているバドロ達は戸惑う事無く了承し、林の方に向かってくれた。
こう言った判断が早いのは流石上級冒険者である。
「ちょっと待て坊主!お前さんも早く逃げろ!もう目と鼻の先だぞ!?」
「僕の事はお気になさらず。さ、ダンさんも早く避難を。」
「くっ…どうなったって知らんぞ!?」
ダンは少し考え頭をガリガリと掻いた後、駆け出して行った。
ノアは向かってくるホーミングボアを見据え、準備に取り掛かった。
「…あれがデカピパラですか…」
「…その様だな…確かにデカい…」
ノアとバドロ達が道を歩いていると、開拓作業を行っている者達だろうか、人とチラホラ遭遇する様になった。
例の珍獣は別の場所に移ったのかな?と思われたが、開拓作業のど真ん中にある大岩に凭れ掛かり、燦々と降り注ぐ陽光に体を当てて日光浴をしていた。
デカピパラは気持ちよさそうに目を瞑って日光浴を続けている。
デカピパラはゴワゴワとした茶色の体毛に覆われ、全長は5メルもあり、事前情報を聞いていないと、ネズミとはとても思えない巨体である。
にも関わらず周囲の人達はもう慣れているのか、日光浴の邪魔にならない様に避けつつ開拓作業を続けている。
辺りには木を伐採する音や、現場の人の大声が聞こえたりするが、デカピパラは特に気にする様子もなく、時折鼻をフスフスと動かしている。
「おや、アンタ達かい?あのデッカイ奴の調査に来た冒険者というのは。」
ノアやバドロ達の元に筋骨隆々で30代位の男性がやって来た。
「依頼を請けたのは俺らだ。
害がある様なら駆除しろとの事でな。」
「僕らは王都周辺で素材採取でここら辺散策してる者です。
珍獣が出たとの事で着いてきました。」
「そうか。
生憎、害らしい害は…見ての通りだよ。」
男性が手をデカピパラの方に向けるが、未だデカピパラはぬぼーっ、とした表情で気持ちよさそうに日光浴中である。
「5日前にこの辺りを開拓してたんだ、一際大きな木を切り倒したら下に洞穴があってな、その中からのそりとアイツが出てきたんだ。
"襲われる"と覚悟したんだが、奴は洞穴から出た後川の水をガブガブ飲んで、水草をモリモリ食って、樹皮をゴリゴリと削って食って、あそこの大岩で日向ぼっこして寝ちまったよ。
一時は開拓中止しようか、と言う意見が出たんだが、一先ず開拓作業を続けて動きがあったらその時に考えよう、って事になったんだが…」
「全く動きが無かったので作業を続行してるんですね?」
「そうなんだよ…
割とデカい音立ててんだけど、特に気にしてないみたいでね。
時折水飲んだり木や岩を齧る位で、日がな1日ずっとああしてるよ。」
「岩を?」
「恐らく歯を削ってるんだと思うんだ。
アイツ、あの図体だがネズミの仲間なんだってな?」
と、ここまで話した所で各々本来の目的の為に動く事になった。
どうやら今までノアやバドロ達と話していた30代位の男性は、この開拓現場の責任者で名前はダンで、北の村の住人との事。
バドロ達は取り敢えず調査(採寸、生態、行動内容等の観察)に取り掛かるとの事。
ノアは開拓地周辺で素材採取しても良いか、とダンに聞いてみた所
「作業の邪魔にならなければ良いよ。」
と了承されたのでノア達も行動を開始する。
【植物】【錬金術】【薬剤】【料理人】のレイルは野草、薬草、キノコの採取をメインで。
【防具】【洋裁】【魔術】【料理人】のドリーは、ノアが仕留めたモンスターや動物の肉、皮、血の採取をメインに行う。
さてここでヴァモス、ベレーザの2人は手が空いてしまうのだが
「はい、ヴァモス、ベレーザ。
2人は昨日と同様に僕と鬼ごっこをして貰います。」
「え?ここでですか?」
「皆さんの作業の邪魔になるのでは…」
「勿論普通にやれば皆さんの迷惑になりますから、今日は僕を捕まえるよりも"音や振動を立てない"事を重点に置いて下さい。」
「「は、はぁ…」」
どうも2人の反応が宜しくないのでしっかり説明する事にした。
「勿論これにもちゃんと意味がある。
"音や振動を立てない"事を重視して行動すれば自ずと【隠密】や【忍】等でも重宝されるスキルを取得する事が可能。
また、昨日の草原とは違って森という障害物や地形、石や葉等の音が立つ物が多数存在する場所はこういった訓練には打って付けだ。
<木登り上手><忍び足><縦横無尽><気配消失><聞き耳>なんかの熟練度は格段に上がるよ。
君達2人は飲み込みが早いから、昨日僕がやった様に野盗40人位だったら気付かれずに捕まえる事も可能になるだろうね。」
「「おおー。」」
2人の反応が良くなったので本題に入る。
「それじゃ僕は樹上だったり下で木の実やら野草なんかを採ってるから、動きに慣れたら僕を捕まえに来ると良い。
それじゃあ、よーい始め!」
トッ!
合図を送った直後、ノアは腰に差した荒鬼神2本をアイテムボックスに仕舞いつつ直上の太い枝へと飛び上がる。
枝は多少しなる程度で殆ど音も無い。
「よーし…」ダンッ!
それを見たベレーザが、見よう見まねで跳躍し、ノアの様に樹上に上がろうとするが
ズルッ!「う、わ!?」
ガシッ「こーら、横着しないの。」
枝に付着していた苔に足を滑らせたベレーザの装備のベルトを掴み落下を防ぐノア。
「駄目だよ~ベレーザ。
まずは地上で慣らしてからにしようね。」ナデナデ
「は、はいですにゃ…」
宙ぶらりんの状態のベレーザの頭を撫でて注意をするノアだが、ベレーザは満更でもなさそうに撫でられていた。
トッ、タッ、スタッ。
「それにしても木の実やら野草なんかが豊富ですね、この森は。」
「…お前さん、えらく身軽だなぁ。
まぁ確かに今年は中々豊作だが、ここら辺は切り拓く予定だから採り尽くしちゃっても良いぞ。」
「え?良いんですか?」
「ああ、俺らも採ってはいるんだが、それでもあり過ぎて困ってる位だ。
採らずに腐らす位なら採り尽くして貰った方が良いだろ?」
「ありがとうございます。
そういえば、ここを切り拓いて畑にでもするんですか?」
「いや、ここにカラメル牛の安定供給の為の牧場を建てる予定だよ。
本当は大分前から話は挙がってたんだが、フリアダビアへの物資優先で頓挫してたんだ。
何処ぞの冒険者達の活躍で終結したってんで再開されたんだ。」
「へぇ~、カラメル牛の。
でもアレって成熟してくると危ないのでは?」
「キチンと管理して均等に育てていけば大丈夫らしいんだと。
王都のエルニストラ王が言ってたぜ。」
(手広くやってるんだな~あの王さ…ん?)
バサササッ…
責任者のダンと話をしていると木と木の隙間から、上流の方で一斉に鳥が飛び立つのが見えた。
不審に思っていると<気配感知>の範囲内に多数の反応を確認。
反応からしてホーミングボアの様だ。
<うわっ!?>
<うおっと!>
<あれ?急に立ち上がったぞコイツ。>
<ご飯かしら?>
ノアとダンがいる場所から50メル程後方にいるバドロ達はまだ気付いていない様だが、デカピパラは察知したのかずっと閉じていた目を開き、その場にヌッと立ち上がった。
「この場に居る全員にお知らせします!
上流からホーミングボアが15頭程こちらに向かってきています!
皆さん作業を一時中断、ヴァモス、ベレーザも下がって下さい!」
突然大声を上げたノアに周囲からの視線が集中する。
責任者のダンも何を馬鹿な、と言った反応を示すが、直ぐに上流の方から地鳴りの様な音や水音等が響き渡ってきた。
「おい皆この坊主の言う通り全員作業を中断!
岩や大木等に身を隠せ!」
ダンが指示を出す間も川の上流から10頭、林の中に5頭の割合でホーミングボアがやって来ている様だ。
「林側のホーミングボアを転かしますのでバドロさん達はトドメをお願いします!」
「「「「了解した!」」」」
ノアの実力を知っているバドロ達は戸惑う事無く了承し、林の方に向かってくれた。
こう言った判断が早いのは流石上級冒険者である。
「ちょっと待て坊主!お前さんも早く逃げろ!もう目と鼻の先だぞ!?」
「僕の事はお気になさらず。さ、ダンさんも早く避難を。」
「くっ…どうなったって知らんぞ!?」
ダンは少し考え頭をガリガリと掻いた後、駆け出して行った。
ノアは向かってくるホーミングボアを見据え、準備に取り掛かった。
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