ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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王都編

噛み千切って

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「グリードはバドロさん達が待機する林側に向かってくるホーミングボアの前足の一部を噛み千切って転ばせるんだ、良いかい?」

リョーカイ。

と、グリードから了承を得られた所でノアは早速行動を開始した。

スラァッ…

アイテムボックスから取り出した荒鬼神2本を両手に持ち<渾身>と<投擲術>を発動。
2本共肩に担ぐと、前方からバシャバシャと飛沫を上げながらホーミングボアが突っ込んでくるので、少し前辺りを狙って1本ずつぶん投げる。


「よい『ブォンッ!』しょっとぉっ!『ブォンッ!』」

ザバッ!ザバァッ!ブゴォオッ!?

先頭を走るホーミングボアの目の前に物凄い速度で荒鬼神が次々に着弾。
大きく水飛沫が上がった為、一心不乱に駆けていたホーミングボアも堪らず動きを止める。

バシャ…バシャシャ…

水飛沫が収まるとホーミングボアの目の前にノアが転移してきていた。
ノアは川に突き立った荒鬼神を引き抜き<渾身>を発動して猛然と振るう。

ブ、ブゴォオ『ゾンッ!』オオッ?
ゴァッ!『ザシュッ!』
ブギャァアア『ゾリッ!』アッ!
ゴォァアッ!『ザバッ!』

僅か2~3秒の間に4頭のホーミングボアの首が飛ぶ。
何頭か置きに突っ込んで来るだけならまだしも、纏めて10頭突っ込んで来ているので手早く処理しなければならない為、悠長にしていられないのだ。



フゴォ『ザッ』オオオ『ガリュッ』オッ!?

ズシャッ!ドシャッ!

鳴き声を聞いてチラリと見やると、林側を駆けるホーミングボアが悲鳴を上げつつ次々と転倒している。

前足の一部が欠損している事から、ノアの指示を受けたグリードの仕業であろう。

<え?何で急に転けた?>
<分かんないけどノア君が何かやったんでしょ。さ、今の内に仕留めるわよ。>

待機していたバドロ達は困惑しながらも転倒したホーミングボアに次々と仕留めに掛かっている。


ボヒュッ!ドズッ!ブゴッ!
ドヒュッ!ズドッ!オゴォッ!

シュバッ!

左右に居るホーミングボアの首目掛けて荒鬼神を投擲したノアは、即座に両手に荒鬼神を転移させると左右のホーミングボアの首から血が大量に噴出。

既に先に倒した者達の血で川は真っ赤に閉まっているが、追加で大量の血を噴出させて水中に倒れ込んだ事で辺りは更に真っ赤に染まる事になった。

パシャッ!パシャッ!ザシュッ!ブゴァッ!

久し振りに<水面渡り>を発動して水面を駆け、近くに居たホーミングボアの首を深々と斬り裂く。

ザボァッ!ドッ!

どくどくと血が吹き出し、川の中に突っ伏したホーミングボアを踏み台にしたノアは樹上に上がり、<縦横無尽>を発動して枝伝いに駆けつつ眼下に居るホーミングボア目掛けて荒鬼神を次々と投擲。

ドズッ!ゴッ!?
ズンッ!ブゴッ!

ブ、ブゴォオッ!ザバババッ!

仲間が凄まじい早さで屠られ、残ったホーミングボアが慌てて山の方に駆けていく。

すると川辺の地面からニュッとグリードが姿を現し


ボクガヤロウカ?


とノアに聞いてきたので


「いや、いい。俺が殺る。」


そう言って背中から弓を取り出して矢を番える。

ホーミングボアの走力は中々の物で、既に森の中に入り、その姿が小さくなりつつある。

ギリリッ!ズバァンッ!

が、そんな事気にしないとばかりに<集中><渾身><偏差撃ち><曲射>を発動して弓を引き絞ったノアは、とても弓の発射音とは思えない音を響かせて矢を発射した。

ドヂュッ!ブゴォアアッ!

森の中からホーミングボアの悲鳴が聞こえる。
少しの間苦悶の鳴き声が2、3聞こえた後辺りは静寂に包まれた。


「ふぃーっ、取り敢えず終わりかな。」

スタッ

「グリード、お疲れ様。
後でアレ、丸焼きにしような。」

オー、アルジワカッテルー。

グリードがご機嫌になった所で、ノアの元にバドロとディオ、現場責任者のダンがやって来る。


「おーいノアく…うおっ!?
こ、このモンスターは御前試合の…」

「じゃあさっきホーミングボアが転けてたのはこの子の仕業だったのね…」

「何だ?こんな生き物見た事無いぞ…
まぁ良い。坊主、お前さん無茶苦茶強かったんだな…」

「まぁ一旦その辺りは置いといて、皆さん協力感謝します。
ダンさん、こういったモンスターの襲撃は以前もありましたか?」

「1頭2頭とかはあったが、こんな数は今まで無かったな。」

「そうですか…となると…「おーいノアくーん!ちょっと来て貰えるー?」


林の方に居るマールとストラが声を上げてノア達を呼んでいる。
何かあったのか分からないが一先ず向かう事にした。







「お二方どうしまし…ん?これは…」


ノア達が2人の元へ集まると、仕留めたホーミングボアの死体が横たわっていたのだが、体をよく見てみると、太い杭の様なものが突き刺さった跡が楕円に付けられていた。

近くのホーミングボアの死体も見てみると、丸太の様なもので強く叩かれ、体の一部が陥没していた跡が見受けられた。


「この杭の様な跡、こりゃ何かの牙が突き立った跡だぞ!」

ツツッ…「傷口の血、まだ乾ききっていないわ。
ここから差程離れていない所で噛まれた様ね。」

「ホーミングボアの走力を鑑みれば、3~4ケメル圏内って所かしらね。」

「うーん、陥没痕に泥が付いてるな。
水棲モンスターにでもやられたかな?」


バドロ達は各々状況証拠のみでモンスターと生息域を割り出そうとしている様だ。


「ダンさん、この辺り若しくは上流で、この様な事が可能なモンスターを見たり聞いた事はありますか?」


そう聞かれたダンは少し考え込んだ後、小さく首を振る。


「いや、無い…な。
上流の方は未開拓で人も殆ど寄り付かない。
今俺達が居るこの場所すらここ最近まであまり通らなかった位だよ…」

「そうですか…
うーん、どうするかな…取り敢えず上流の方に見回りでも行ってきますかね…」


などとノアが呟いていると

のそ、のそっ…

話し合うノア達の背後にデカピパラがのそのそと歩み寄って来た。


「んお?どうしたんだお前さん。」

キュルル、キュルルル。

「デカピパラってこんな鳴き声何ですね…」
「図体の割には可愛らしい声してんじゃん。
どうした?遊んで欲しいのか?」

グルッ!!

「違うな。」
「うん多分違う。」
「"そうじゃない"って言ってるんじゃない?」
「いやいや、コイツモンスターだぜ?
俺らの言葉分からんだろ。」

キュルルル、キュッ、キュッ。

「「「これ、分かってるっぽいな…」」」


実際デカピパラは、ノア達の会話を理解している素振りを見せている。
基本は"キュルキュル"と可愛らしく鳴くが、相手が違う事を言ったら否定の意味で"グルッ"と鳴く様だ。


「うーん…申し訳ないが、お前さんは俺らの言葉理解しているみたいだが、俺らはお前さんの言葉が分からないんだ、悪く思わないでくれよ?」

キュルル…

「"分からないんじゃしょうがないか…"と言ってるみたいですよ。」

「「「「え?」」」」キュッ!?


声のした方を(デカピパラ含め)見ると、ヴァモスとベレーザが立っていた。


「あれ?言ったらマズかったですか?」
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