ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~救出作戦~

確認お願いしまーす。

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「依頼の達成報告に来ました、確認お願いしまーす。」


獣人国に戻ったノアは、先程応対してくれた受付嬢(羊獣人の人間寄り)の居るカウンターに来ていた。

時間的に夜に差し掛かっていた事もあり、冒険者達は夜の街に繰り出しており、ギルド内は閑散としていた。


「はーい。…ってあら?
さっきの坊やじゃない、もう依頼の報告に来たのですね。
それで、どの依頼を報告しに来たのかしら?」

「全部です。」

「んー…?」


受付嬢は、一瞬何を言われているのか分からない様であった。


「取り敢えず『エレファント・バッファロー』6頭、『ランス・ラビット』7羽、『発火ネズミ』4匹、『トン豚』を 2頭狩ってきましたので確認お願いします。」


そう言ってノアは、冒険者カードを提出。
直ぐ様受付嬢が手に取り、カウンターの水晶に翳して戦歴を確認。


「うわぁ…本当に倒してる…
…もしかして他パーティに手伝って貰ったりしませんでしたか?」まま耳や見まもめみ見まま

「いいえ。
僕の【適正】は、他の人に協力して貰うと弱体化してしまうので…」

「え?……あ、そう…ですね…って、んんん!?
あなた、『魔蛸』も倒してますよね!?
それに『ダックス憤怒』との交戦歴も…」

「えぇ、どちらも運悪く遭遇しただけなのですが、『魔蛸』の方は何か聞いた所によると凄く美味しいらしいので是非とも食べてみたいな、と思って狩りました。
後で解体の申請を出そうと思うんですが、一緒に『魔蛸』もお願いして良いですか?」

「え、えぇ…大丈夫だと思います…
ちょっと問い合わせしてみますね、少々お待ち下さい。」


そう言ってカウンターの受付嬢はサラサラっと手紙を認めると、窓際に居た栗鼠獣人に手渡し、建物伝いに何処かへと向かっていった。

そこから2~3分程経った後に先程の栗鼠獣人が別の手紙を背負って帰ってきた。


「えーっと、現在夜と言う事もあって人も疎らで、解体依頼も特に無いので持ち込んで貰って大丈夫だそうです。
ただ『魔蛸』はちょっとした問題があって解体以前に"処理"が難しいとの事です。
詳しくは来てから話すそうです。」


と言う訳でギルドの受付嬢から解体場の場所を教えて貰い、ノアは依頼をしに向かうのであった。






「こんばんわー、先程解体依頼を出した者ですがー!」


冒険者ギルドの裏手に向かい、道なりに進むと、少し広目の広場と、天井の高い倉庫の様な建物が建っていた。

重々しい扉を開けると、中には返り血を防ぐ為の前掛けを着けた8人程の獣人(全員筋骨隆々)が待機していた。


待ってましたとばかりに早速中に通され、建物内の空きスペースに『エレファント・バッファロー』6頭『ランス・ラビット』7羽『発火ネズミ』4匹『トン豚』2頭をそれぞれ並べていく。

数もそうだが、何より驚かれたのは、損傷が殆ど無い事であった。

『ランス・ラビット』や『発火ネズミ』等の小型のモンスターは兎も角として、『エレファント・バッファロー』や『トン豚』等の巨体を討伐するとなれば大抵の場合損傷や汚損が激しくなると言う。

『エレファント・バッファロー』は表皮が固い為、状態が良ければ防具に使用される物だが、その固い表皮を突破して致命傷を与えるには強力な攻撃や高火力の属性魔法で仕留められる事が殆どらしい。
結果、防具に使用出来る程の量が確保出来ず、食肉として買い取られる事が殆どだと言うが、汚損により、買い取り価格も捨て値になってしまうとか。

だがノアは、強烈な拳を『エレファント・バッファロー』の心臓付近に叩き込み、ほぼ一撃で仕留めている。

半身には攻撃を加えていない為、汚損の心配も無く、食肉としての価値も十分である。


『トン豚』は赤身と脂肪のバランスがとても良く、食肉メインである。
だが、『エレファント・バッファロー』と同じ理由で品質を保ったまま仕留めるのが難しい為、買い取り価格もまちまちになってしまうらしい。

そんな『トン豚』に対してノアは、脚を斬り付け転がすと、首に荒鬼神の一撃を加えて即殺し、直ぐに放血しているので品質は最高である。


「いやぁ、こんな綺麗な状態の物は中々御目に掛かれないぜ。
おぅお前ら!最高品質の代物だ!下手な仕事して価値下げんなよ!」

「「「「「「「おぅ!」」」」」」」


流石解体専門の職員が集ってるだけあって、モンスターの解体・洗浄含め、30分程で完了した。






「さて、坊主。
お前さん、『魔蛸』を狩ったんだってな。
ちょっと状態を見させて貰っても良いかな?」

「あ、はい、良いですよ。」


と、職員から提案があった為、ノアは素直に応じアイテムボックスから仕留めた『魔蛸』をでろんと取り出す事にした。


でろん。

「「「「「「「「おおー!」」」」」」」」


建物内の空きスペースを埋め尽くす程の大きさの『魔蛸』を取り出すと、職員から歓声が上がった。

一応仕留めてはいるが、触手の一部がまだビクビクと動いてる辺り、締めたてホヤホヤであると言える。


「凄ぇ…ほぼほぼ無傷じゃねぇか…」
「眉間の一刺しのみで仕留めてやがる…」
「傷口が炭化してるが、何やったんだ…」
「他に斬り傷が無いからマジで1人で倒しやがったんだな…」


『魔蛸』の状態を見た職員の獣人達から驚きの声が上がっていた。
恐らく状態を見たかったのも本当だろうが、現物を見るまで1人で倒したのが信じられなかったのだろう。


「だがやはりこのサイズだと、なぁ…?」

「「「「「「「あぁ…」」」」」」」


1人の職員が『魔蛸』のサイズを見た後、顎に手をやって難しい顔をしている。
他の職員も顔色がよろしくない。

もしかするとここに居る職員だけでは解体が出来ないのだろうか、と思い聞いてみる事にした。


「もしかして解体が出来ない…とか?」

「いや、解体自体は出来るんだが、これだけのサイズだと処理の方がな…」

「処理?」

「あぁ。『魔蛸』の表面、ぬるぬるしてるだろ?
解体の前にコイツのヌメリを取る処理をする為には大量の"塩"が必要になるんだ。
だが、ヒュマノの連中がアホみたいな関税を掛けてるからこの国では"塩"がかなり貴重なんだよ。」

「あー、この間そんな話したなぁ…色々あってすっかり忘れてた。」


獣人国に来たその日の内に"塩"問題に触れていたノアは、職員達が『魔蛸』の解体を渋っていた訳を漸く理解した。


「申し訳無いが、"塩"の問題がある程度緩和する迄はコイツの解体は控えたい。
一応氷属性魔法で凍らせてヌメリを取る方法もあるが、価値は大分下がっちまうがどうする?」

「う、うーん…」


一応品質は下がるが、処理は出来ない事も無いとの事なのでその辺りは妥協してしまおうか、とも思ったが、納得していない者が1人居た。


(『ダメだダメだ!処理をしっかりしないと折角の蛸の風味も抜けちまって味が数段落ちちまう!刺身も良いが折角だから唐揚げにでもして貰おうと思ってたのにそれ「あ、じゃあ少し間空けてまた来ます。」

「はいよー。」


凍らせての処理方法に拒否反応を示した『鬼神』を鎮める為、一旦この場は退く事にした。

(しかし、"塩"か…ヒュマノは話が通るとは思えないし、海の事は"海の人"に聞いてみるのが1番だな。)

との事で、この後数週間振りに"あの国"に寄ってみる事にしよう。
そう決めたノアであった。
 
でも、その前に何か食べていく事にしよう。
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