ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~救出作戦~

へっとへとの3人とくったくたの2人

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何か腹拵えをしようと冒険者ギルドを出たノアは、屋台通りを歩いていると、へっとへとの3人とくったくたの2人に出会した。


へっとへとの方はクロラ以外のジェイル、ロゼ、ポーラで、どうやら朝から『宝物庫』に入ってスキル上げや金策に没頭していたらしいが、クロラはやたらスタミナがあるのか、特に疲れも見せず、いつも通りノアと接していた。

特に疲れきっていたのがポーラで、ノアと出会して最初の一言が「…っす。」であった。


くったくたの方はと言うと、ヴァモスとベレーザの2人であった。
どうやらノアと別れた後、ヴァモスに弁当を持参してきた女性陣の1人である、ゴリラ獣人のビルゴリラーマ(ゴリラ寄り)が2人の前に再び現れ、お詫びがしたいとの事で屋敷に招待されたらしい。

どうやらゴリラ獣人のビルゴリラーマは、毎年優秀な踊り子達を輩出している、獣人国でも有数な名家の出であった様だ。
要はお嬢様である。

ヴァモスに惹かれて突ってはみたものの玉砕した事で、少し冷静になれたらしい。

で、ヴァモスは漸く胃に余裕が出来始めた所に再びおもてなしを受け、またもやお腹がパンパンになったとか。

ベレーザは踊り子と言う職に興味を持ったのか、他の踊り子達に色々と教えて貰いながらくったくたになるまで踊っていたとか。

ビルゴリラーマ曰く、ベレーザは足腰が強い為踊りのキレが良く、練習すれば良い線行くとの事だ。
年相応の持ち前の可愛さも相まって直ぐに人気が出るだろう。


「って言ってましたにゃ!」

「ほへー、ベレーザが踊り子ねぇ、良いんじゃ無いかな?
ヴァモスはどう思う?」

「ボ、ボクは…うぶっ…」

「あ、ごめん。今大変だったね。」


昼間以上に腹をパンパンにしたヴァモスは、一言喋るだけでもヤバそうにしていた。


「そんな事よりも少年…
昨日色々あったってのに、朝獣人達と勝負して昼過ぎに『滅びの森』に行ったのか…」

「相変わらずタフだな…」

「もーだめ…きょーはもう宿行って寝るー…」


パーティ内で元気っ子担当だったロゼですら疲労困憊と言った感じである。
どうやら皆宿に直行する様子である。


「ノア君ももう宿に戻るの?」

「うーん…僕はちょっとこれから海に行こうかと思ってる。」


と、ノアが"海"に行くと言った瞬間、ジェイル、ロゼ、ポーラ、ヴァモスとベレーザは一気に脱力した。

いつもノアの後ろを着いてくる2人ですら今日はもう宿に戻って寝るそうだ。

そんな中


「海かー…1回行ってみたかったんだ。
ねぇノア君、もし良ければ私も着いていって良いかな?」

「えぇ勿論。
何れクロラさんも連れて行こうと思ってたんですから。」

「クロラ本当元気ねぇ…
海まで片道5ケメル位離れてるのよ?
海行ってイチャコラして帰ってくる頃にはもう朝よ?」

「「イチャコラしません!」」


と、口に出して否定してみたものの、ポーラ含めその場の誰も2人の言葉を信じてはいなかった。

日頃の行いって大事だね。






「じゃあ楽しんでらっしゃいね、クロラ。
少年に襲われない様に気を付けなさいね。」

「ノ、ノア君はそんな事、し、しないよ。」

「クロラさん、そこはちゃんと否定しよ?」


冗談を言いつつも宿がある方面へと歩き出した5人を見送ったノアとクロラ。
するとノアは、手招きしてクロラを薄暗い路地裏へと誘う。



スタスタ…

「ね、ねぇノア君…これから海に行くんだよね…?
何かどんどん人気の無い所に向かって行って無いかな…?」

「大丈夫です。さっきポーラが言ってた様な展開にはならないのでご心配無く。
ただ行き方がちょっと特殊なので人に見られたく無いだけですので。」


"海"に行く、と言っていたのに人気が無く、薄暗い路地裏に連れて行かれたら、普通なら誤解されてしまう所である。

その後も入り組んだ路地を進む事暫し。
通りの喧騒が薄らとしか聞こえない所まで来た辺りで


「よし、もう良いでしょう。」ぺらっ

「…符?」

「えぇ、転移符です。これに魔力を流すと…」

「わ!何か魔法陣みたいの『シュバッ!』が出て来…うわっ!?真っ暗!?」


ノアは取り出した転移符に魔力を流すと、2人の足元に魔法陣が展開され、即座に転移を開始。

2人は辺り一面真っ暗な場所に転移した。


「ノ、ノア君、ど、どこ?真っ暗で何も見えなくて…」

「落ち着いてクロラさん。ここに居ますから安心して下さい。」


そう言ってクロラの手を握り落ち着かせるノア。
状況を全く理解出来ていないクロラは真っ暗闇の中で周囲をキョロキョロと見回している。


「月明かりや波の音が無いけど…ここって本当に海なの?
…あ、でも下砂地だ…」

「海ではあるんですが、正確には海底です。
ちょっと待ってて下さい、人呼んで来ますので。」

「か、海底?…人?」


と、ノアが海洋国の兵士を呼びに行こうとした時だった。


「その必要はありませんよ、ノア君。」

「お。」

「え!?え!?」


ノアの進行方向から青紫色の和装を着た人物が淡く光を放ちながら歩いてきた。
海洋種の王リヴァイアである。


「こうして面と向かって会うのは王都での一件以来ですね。」

「あの時はありがとうございました。」
 
「なんのなんの。
君のお陰で、国交含めた世間一般への公表は、最終段階に入りましたからね。」 

「あ、それじゃあもう間近なんですね。」

「えぇ、先ずは王都と友好関係になって、そこから他国と友宜を結ぶ予定となってます。
それで、本日は可愛らしいお連れ様を伴ってどの様なご用件でしょうか?」

「か、可愛…!?」

「あ、その、ちょっと相談事を…」

「なる程、かしこまりました。
それではここで立ち話も何なので、中へと向かいましょうか。」


そう言ってリヴァイアが先導して歩を進めようとすると


「あ、あの、リヴァイアさん、でよろしいでしょうか…?
初めまして…私はクロラと申します。」 

「あ、名乗りもせずこれは失礼しました、私はリヴァイア。
この国の王にございます。」

 
ノアとリヴァイアのやり取りを眺めていたクロラは、このまま自己紹介せずにいるのも失礼と感じ、変なタイミングになってしまったが軽く紹介をする。


「え、国?…ん?王!?」

「そうでした、ここへは初めて来たのですもの、混乱するのは無理も無い事でしたね。
少しお待ちを、今明るくしますので。」パチン!


自己紹介を受けた結果、更に混乱してしまったクロラに、リヴァイアは微笑んだ後指を弾く。

ポワワワ…

すると、周辺の砂地に生える海草や珊瑚等が発光し、周辺一帯は目映い光に包まれる。

するとリヴァイアの進行方向に、山の様に巨大で荘厳な建造物が姿を現す。
その周囲は空気の層で隔てられ、その奥には巨大な海洋生物や色とりどりの魚群が優雅に海中を泳いでおり、何とも幻想的な光景が広がっていた。


「ふ、ふわああぁ…」

「ようこそ、私達海洋種の国『龍宮城』へ。」
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