ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~【勇者】アーク・ダンジョン『時の迷宮』~

『地獄門』

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4段階目の"恩恵"である『時空召喚』のクールタイム終了を報せるアナウンスが金成の脳内に響く。


ブンッ!

(…何か、何かもっと強力な遺物は無いのか!?
このガキに対抗出来る強力な"何か"は!?)


と、金成の加速した視界の中で半透明のウィンドウが展開され、召喚可能な物を確認する。




(…ん?"ポルタオ・ド・インフェルノ"?
太古の昔に存在した転送装置…だと?)


謎の装置"ポルタオ・ド・インフェルノ"に目が止まった。
金成は、その装置の説明文をざっと流し読みした後


(『ポルタオ・ド・インフェルノ(地獄門)』か…
地獄だろうが天国だろうが、名前負けの無い働きを期待しているぞ!)


と、躊躇い等一切無く『ポルタオ・ド・インフェルノ(地獄門)』(以下『地獄門』)を選択したのであった。







「チッ!これだけ斬り刻んでも直ぐに再生するのか…何て厄介『バシュゥッ!』っ!?」


金成の体を6分割にしたにも関わらず、再び回帰して健常に戻った事に悪態を吐いていると、1メルサイズの懐中時計が出現し、金成の隣で浮遊していた。


「…また何か妙な物が出て来たな…
だが、変な事起こす前に破壊しておいた方が良いな、っと!」

ブォンッ!


ノアは出現した懐中時計に驚きつつも、金成から奪った高出力振動ブレード付きの槍を振るい、破壊を試みた。

のだが


ギャリリリリィンッ!

「ぅえっ!?」


懐中時計から硬質な音と火花が散る。
ノアは一思いに一刀両断したつもりでいたが、懐中時計には一切傷が付いていなかった。

しかもその上


「…おいおい…こっちの方がボロボロになるって、"ソレ"は一体何で出来てるんだ…?」


魔装鉄甲の強固な装甲を貫いた高出力振動ブレード製の穂先がボロボロになっていたのだ。


「ふ、ふはっ!ふははははっ!
流石【神】の創造物!『地獄門』の名は伊達では無い様だなっ!」

「ん?『地獄門』?それが?」

 「さぁ『地獄門』よ!我の呼び掛けに応じ、その真の力を解放するのだぁっ!」


ノアからの疑問も耳に入らない程に高揚した金成が高らかに叫ぶと、それに呼応したかどうかは定かでは無いが、浮遊している懐中時計の針が音を立てて動き始めた。


ヂキヂキヂキヂキヂキ…ヂキンッ!

『『『『『ビキンッ!』』』』』


そして針が頂点を差して止まったかと思うと、懐中時計の前後左右、それと上部の5ヶ所の空間に割れ目が出現した。

その直後


『『『『『ギュォオオオッ!』』』』』×4
『『『『『ガァアアアッ!』』』』』×4
『『『『『グルルァアッ!』』』』』×4
『『『『『キシャァアアアアッ!』』』』』×4
『『『『『ガルルォオアッ!』』』』』×4

「おおおっ!」

「うわっ!?何だこりゃっ!?」

(『何つーガチャガチャな牙してやがる…
ざっと100体位は出て来たぞ。』)


懐中時計の周囲に出来た5ヶ所の空間の割れ目から、各所20体ずつ鈍色の肌をした4本腕の人型が這い出てきた。

人型とは言ったが、顔に目は無く、ばっくりと開いた口には揃っていない牙が無数に生え、それだけでその生物の残虐性を想起させるものであった。


「何だアレは!?今までに見た事が無いぞ!」
「何と言う数じゃ…」
「な、何と醜き姿形をしておる!?
鬼か邪の類に違いないっ!」

「…だそうだけど、鬼さんや。
アレ何?知り合いか遠い親戚か何か?」

(『うっせぇ!共通してんの4本腕ってだけだろうが!
顔だって主をベースにしてっから、大分整ってる方だろうよ!』)

「ゴメンて。」


ノアの後方に居た時雨含め、足軽兵達も突然空間の割れ目から這い出てきた人型については初見の様子であった。

    
『『『『『グゥルォオオオオオッ!』』』』』

ボタッ、ボタタッ!


出現した人型達は、唸り声と涎を垂らしながら周囲を睨め回していた。
1体1体から発せられる殺気はかなりのモノで、視線が僅かに交わった足軽兵達は身を強張らせ、息を詰まらせる。

まだ戦っていないので正確な強さは測れないが、殺気だけで言えば地均明王位はあるだろう。


「ふ、ふははっ!良い!良い殺気だ!
これ全てが我のモ『カシュッ!』ノ…?」

「ぬっ!?」

「!?」


金成が出現した人型達に接触を図ろうとすると、凄まじい速度で首を振った人型により喉元を噛み千切られたのである。


「ゴフッ!?待『カッ!』『コッ!』『チッ!』おごっ…」

『『『『『ゲギャギャギャッ!』』』』』


どうやら人型に言葉が通じていないのか、金成の制止も空しく、首、両足、胴体を鎧ごと両断され、次々に捕食されていく。


ガチン!チキチキチキ…

「おい待て『ブヂィッ!』止『ガブジュッ!』ヤメ『ブチブチッ!』あぁああ『メリメリッ!』あっ!」


神々の恩恵(ベネフィシアル)の効果で肉体が元の状態に戻ろうとするが、人型に群がられ、治った傍から喰われ続けると言う悲惨な状態が発生してしまった。

すると


ガァアアッ!ブヂィッ!

カッ!カツッ!

「…ぁっ『ブジュッ!』マズ『ボギンッ!』」


腕を噛み千切られた拍子に神々の恩恵(ベネフィシアル)を手放してしまう金成。
慌てて取りに行こうとするも、人型に噛み付かれた金成は全く動く事が出来ないでいる。

結果


チキ…ガキュン。


神々の恩恵(ベネフィシアル)は金成の手から離れた事により"恩恵"が行使されなくなり、再生が停止してしまった。


『ガリッ!』『ボリッ!』『ムシャ。』『ゴギッ!』『ガツガツ…』

「うわぁ…」


再生出来なくなってしまった金成はそのまま人型達に跡形も無く喰い殺されてしまった。


"時羽金成が死亡しました。〟


と、金成死亡のアナウンスが空しく響く。
金成が死亡した事で、金成が出現させた懐中時計の様な物体『地獄門』が消失してくれれば良いのだが


ヂキヂキヂキヂキヂキ…ヂキンッ!

『『『『『ビキンッ!』』』』』

「ちょっと待て…嘘だろ…」


先程と同じ様に懐中時計の様な物体の針が動き、前後左右、上部の5ヶ所の空間に割れ目が出現。


『『『『『ギャァアアアッ!』』』』』×4
『『『『『ゲャァアッ!』』』』』×4
『『『『『グルルァアッ!』』』』』×4
『『『『『ガァアアアッ!』』』』』×4
『『『『『ガルルォオアッ!』』』』』×4


「時雨殿っ!急いで兵達を下がらせて下さい!
その上で自分が突っ込んで気を引くから火縄、矢、大砲全てを『地獄門』に撃ち込み、近付けさせるな!」

ダンッ!

「な…
き、聞いたな皆の者っ!急ぎ下がり、防御陣形を取れっ!
砲門を盾代わりとし、槍兵の背後に火縄兵を前に展開!その後ろに足軽兵を配置し、弓兵を置くのじゃ!」

「「「「「「は、ははっ!」」」」」」


一瞬思考が停止していた時雨だが、直ぐ様ノアの指示通りに行動を開始。
指示を受けた足軽兵達は、追加で出現した人型に焦りの色を表しつつも時雨の言葉通りに行動したのであった。
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