ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~【勇者】アーク・ダンジョン『時の迷宮』~

閑話その1 アークの件

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『さて、アークさん話して貰いましょうか?
なーんで急に人が変わった様になったんです?
正直な話、先程のアークさんは全く改心する気配はありませんでしたよ?』

「あ、あぁ…話す、話すからその状態で迫るのは止めてくれ…
お、思う様に口も動かなくなる…から…」


金成から、総力戦まで11時間と言う猶予が与えられ、時雨は設備を続々と立て、戦力の増強に勤しみ、ヴァンディットやハナ達もその手伝いに行っている。

そんな中、ノアはアークを呼び出し、急激な心変わりについて詰問をする事に。

その結果ノアは、少しでも嘘を見逃すまいと赤黒いオーラをガンガンに立ち昇らせ、殺気ムンムンの状態で挑んでいたのである。


フシュ…

「これで良いですか?アークさん。」

「ぶはっ!…ハァハァ…
あ、あぁ助かるよ…だが何でさっきまで傲慢な態度を取っていたのか、自分でもよく分からないんだ…」

ズォオ…

『そんな説明で、ハイそうですか、って納得出来ると思ってんですかぁ?』

「だ、たから、それを止めてくれと言ってるんだよぉおっ!」


曖昧な返答に痺れを切らし、再びオーラを噴出させて迫るノアなのであった。






「…自分でも最初に違和感を感じたのは、1回死んで生き返った時だ。
妙に頭がスッキリして、頭の中の靄が晴れたみたいな気分だった。
だが少しして、また頭の中に靄が掛かってくると、何とも言えない気分の高揚感や、自尊心やら虚栄心の様なものが強くなっていくんだ。
だが、何回か死んで生き返ってを繰り返していく内に靄がどんどん薄くなっていったんだ。」

「靄…靄ねぇ…うーん…」


精神的なモノになると、やはり当人以外が把握するのは中々難しい。

ノアがどうしたモノかと悩んでいると


(『まどろっこしい。
主よ、少し表に出るぞ?』)

(あ、はーい。)

ズズズ…

「うっ!?ノアく『よぉアークとやら、少し頭ん中覗かせて貰うぜ?』

「え?何『ガシッ!』うっ!?うぁああああああああああああっ!?」


眼と左腕に赤黒いオーラを纏わせ、表に鬼神が出て来ると、即座にアークの頭を掴んで脳内を覗き見る。

頭の中を強制的に覗かれてる為、アークは悲鳴を上げて抵抗するも、鬼神の腕はピクリとも動かなかった。


『ほぅほぅなる程なる程、何となーく分かったぜぇ。』

パッ。

「ぶはっ!?はっ、はぁ、はぁ…
い、今、何を…」


鬼神がアークの頭から手を外すと、顔面から汗を噴き出し、地面に倒れ伏す。

まぁ頭の中を掻き回されている様なものなので、当然の反応と言えるだろう。


パタパタ…

「ち、ちょっと、何か悲鳴が聞こえたけど大丈夫なの!?」

『問題ねぇよ。
それとコイツの性格が急変した原因が何と無くだが分かったぜ。』

「「ええっ!?」」


アークの悲鳴を聞き付けてハナとハウンドが慌ててやってきた。


『コイツ、誰にやられたか知らねぇが"洗脳魔法"を掛けられてるぜ。』

「「せ、洗脳魔法!?」」

「洗脳!?…俺が…か…?」


ハナ、ハウンドは当然ながらアーク自身もまさかそんなモノが掛けられているとは知らなかった様で、驚きに身を強張らせていた。


「だ、誰がそんな事を…」

『まぁその辺は今置いておこう。
問題はそれが何故今解けたのか、って事だな。
俺はてっきり"【勇者】限定取得・固有スキル【黄泉返り】"とか言うモノで、自身の精神力が強化されて耐性が出来たのだろう、と思ったが、頭にくっきり印が残ってる事からそんなに柔な洗脳魔法じゃねぇだろうな。』

「「【黄泉返り】…?」」



【勇者】限定取得・固有スキル【黄泉返り】…1度死亡し、復活する毎に全ステータスが1.1倍上昇。効果は永続。



「へぇ、【勇者】ともなると、そんな固有スキルを持ってるのね。」

「でもそれが起因して洗脳が解けた訳では無いとしたら他にどんな要因があるのでしょうか?」

『さてなぁ、その辺俺は専門外だから要因が何か、と問われても返答に困っちまうなぁ。』


流石の鬼神でも何が切欠となって洗脳が解けたのか、までは分からない様だ。

すると


「もしかして、ですが、ハナさん達が使ってた蘇生薬の影響かもしれませんよ?」

『「「え?」」』


ハナや鬼神達の下に手伝いを終えたヴァンディットがやって来た。


「実はこのダンジョンに来て、初めてアークさんに蘇生薬を使った時から気になってたんです。
普通蘇生薬を使うと、対象は『虚弱状態』になるハズなのですが、ハナさん達が使ってた蘇生薬にはそう言ったモノが見られません。
もしかしたら蘇生薬以外の薬品も混入しているのでは?と思ったんです。」

「えぇ、そうよ。
騎士団ですから、戦闘中に命を落とし、復活しても虚弱状態であったら逆に足手纏いになってしまいますからね。
なので蘇生薬とは別に万…あっ!?そう言う事ですね!」


と、ヴァンディットからの指摘を受けたハナが何かに気付き、慌てて蘇生薬を取り出した。


チャプン…

「アークさんが死んで生き返ると同時に蘇生薬の中の"万能薬"が作用して洗脳状態も解除されてたんですね!?」

『あー、なる程ね。』



万能薬…全ての状態異常を直す事が可能。
最高品質の物になると死亡状態すら直すと言われ、家が買える程の額になると言われている。



「あれ?でもまだ頭の中に印が残ってるんですよね?」

『あぁ。くっきり頭ん中に刻み込まれてる事からして、それなりに強力な洗脳魔法なんだろうな。』

「…という事は、定期的に万能薬を服用していかないと、何れは再発してしまうと言う事なのか…?」

『…上手くいくかは分かんねぇが、手ならある「そ、それは一体何ですか!?」


万能薬の効果で今直ぐに性格が変わるという事は無いだろうが、頭の中に印が残っているという事で戦々恐々のアークは、鬼神の思い付きに食い気味になる。


『より強めの洗脳を掛けて上書きしちまえば良い。ヒッヒッヒ。』

「「「えぇ…」」」


赤黒い眼でどす黒い笑みを浮かべてアークに迫る鬼神である。


『元々お前さんが改心しない様だったら廃人同様に精神を壊してやろうと思ってたんだ。
遅いか早いか位の差でしかねぇんだ、さっさとやっちまおうぜ?』

「…わ、分かった、現状頼めるのは君だけだ。
やってくれ!」

「ちょ、アークさん…」


鬼神の思い付きを即座に飲んだアークに、ハナが制止の声を掛けるも、アークの決意は確かなものの様だ。


『ほぅ、素のお前さんは割と気っ風が良い様だ。
そんじゃ、掛けさせて貰うぜ【神心掌握】っとね。』

ズズズ…


【神心掌握】…自身との精神的なレベル差があればある程相手を傀儡の様に掌握可能。
使い方によっては外法にもなるので、発動者の趣味趣向が問われる為、ご利用は計画的に。
発動時に精神力を大幅に消耗するのでご利用は計画的に。

    

キィイイン…

『よーし…"入ったな"。
アーク、"今後お前本来の自分で過ごせ"。
それだけだ。』

「はい…畏まりました…」ガクッ。


虚ろな眼で鬼神を見るアークに、そう一言だけ告げると、当のアークは了承の意を告げて気を失った。








「でもどうしましょう…
洗脳魔法を掛けた犯人をどうやって探しましょう…」

「うむむ…【高位鑑定士】を呼んで…
でも印だけで犯人を特定出来るでしょうか…?」


一先ず傲慢な態度のアークになる心配は無くなったが、犯人の目星が付かない。

ハナとハウンドがどうやって探そうかうんうん言いながら思案していると鬼神から


『それについては俺に…と言うか主に伝手がある。ダメ元で頼んでみるとしよう。』

「「…伝手…ですか?」」


鬼神の言う伝手について、外に出た後で依頼する、という事でその場での犯人探しは止めになった。
これから金成との総力戦が始まるのだ、他方に意識を散らす訳にもいかないからである。






~それから4日後のとある街の冒険者ギルドで~


「はい、熊の間引き依頼完了しました~。」

「はい、確かに。
あ、そうだお二方、とある新人冒険者の方から依頼が来ています。」

「「依頼?私達に?」」

「何々…
"アルキラーさん、バラスさん、お久し振りです。
今僕は獣人国で訳あって【勇者】の厄介事に付き合っています。
回りくどいのは無しにして単刀直入に書きますが、以前【魔王】の幹部の死体から敵本拠地を割り出した手腕を見込んで、洗脳魔法の印から犯人を探し出して欲しいのですが、お願い出来ませんでしょうか。"」(..)(..)


「「ノア君の頼みなら断れないねぇ。お受け致しましょう。」」(^^)(^^)

「あ、はい、畏まりました。」
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