ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~全ての始まり~

10年前、全ての始まり。~遭遇~

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~レドリックの回想終了~


「「え?一方的にやられたの?
2人掛かりで?(バラスとアルキラー)」」

「あぁそうだよ…
腹に重い一撃食らって2人共気絶。
他のクランメンバー達も誰1人殺されずに気絶させられただけだった。
時間にしたら僅か数分だったが、次に目を覚ましたら全員″魔力枯渇状態″で碌に動く事すら出来なかった。(レドリック)」


レドリックが回想を終えると、真っ先にバラスとアルキラーの2人が質問を飛ばしてきた。

10年前の話とはいえ、当時既に『最上級冒険者』への昇格の声が出ていた2人を一方的に伸す程の手練れが居たと言うのだ。


「ナサケを通じて探して貰ったんだが、全く情報は入ってこなかったらしい。(レドリック)」

「2人を容易に倒す者が居たらある程度絞り込めると思ったのですが、今現在有力な情報は皆無です。(ナサケ)」


王都の諜報員であるナサケですらお手上げのポーズをする程である。
謎の人物が誰なのか、どの国に所属しているのか、ようとして知れていない様だ。


「…っと、話の腰を折って済まなかったなツェドさん。
話の続きを話してくれるか…?(レドリック)」

「なぁ、その謎の人物とやらはスパルティアに突っ走って言ったんじゃよな?(ツェド)」

「あぁ。
もしかして何か知ってるのか?(レドリック)」


レドリックの話を胡座をかいて顎に手を当てながら今の今まで黙って聞いていたツェドが口を開く。


「いや、そう言った類いの輩は見んかった。
そもそも″アレ″はもっと異質な存在じゃった。
じゃがおヌシが言っとった″魔力枯渇状態″については説明出来るぞ。(ツェド)」

「え?本当か?(レドリック)」

「まぁ取り敢えず順を追って話そう。
確か儂が膨大な魔力の反応を感知した所からじゃったな。(ツェド)」


レドリックの言う謎の人物が【魔王】の件に関係しているかは定かではないが、ツェドは一先ず話の続きを語り出した。

丁度ツェドが地下空間内で召喚が開始され、膨大な魔力の奔流が開始された頃。
スパルティアの裏手、約500メル地点の事であった。





~回想再開~

『…ォォオオオオオ…』

バガッ!

(何じゃこの魔力量は!街…いや、地下…遺跡か!
何ぞ『廃都』のモンスターが侵入って来よったか!?(ツェド))


乗っていた馬車の扉を蹴破ったツェドは真っ先に奴隷達の居る街の方を見る。
どうやら魔力の反応は街ではなく王城の地下、件の地下空間からであった。


「レイマァ(御者)!
このまま正門へ向かえ!レグロ(従者)とシレマ(従者)も正面からだ!
モンスターが出現したやもしれん、装備を整えておけ!(ツェド)」

「は、はいっ!(御者)」ダガガッ!

「はっ!(レグロ)」
「ツェド様はど「儂ゃ先に行く!走った方が早い!『バッ!』」了解しました!(シレマ)」


御者と従者の2人に指示を出したツェドは開け放たれた扉から身を乗り出して夜の闇の中へと消えていった。


ザガッ!ガガガッ!ズダダダダダダッ!

ダ!ダンッ!ダンッ!

ズダンッ!ダダダダダッ!


地面に降り立ったツェドはそのままスパルティアの城壁へと疾走、20メルはある城壁を3歩で飛び越えた後胸壁へと降り立った。


ズダダダダダダッ!

(城下の方は無事じゃな…
…ん?他の奴隷達は何処だ…?
それに城の者達の姿も見えん…(ツェド))


更に王城の方へと走りつつ城下の方を見ると、どうやら祭の最中の様で、遠くの方から子供達の笑い声や、楽しげに酒を煽っている声、目映く輝く篝火の灯り等が見えていた。


タンッ!

ゴギャッ!ズダダダダダダッ!


胸壁から飛び降り、石畳を粉砕しながら着地した後、王城の方へと向かう。


『オオォォォ…』

<あああ…>
<…ううう…>

(…魔力の反応が減少している…?
それに反比例して変わった魔力の反応があるのぅ…
モンスターの類いでは無いのか…?
それとこの呻き声…城の奴等じゃな…?
何故この時間にそこに居る…?(ツェド))


王城へと近付くにつれて先程まで感じた魔力の反応は減少傾向にあり、代わりに空間の中央部に謎の魔力の反応が留まっていた。

その周囲には幾人もの呻き声が聞こえており、そこで何かがあったのは明白であった。


(ん?立ち入りを禁ずる札が外されとる…
誰ぞ許可無く入りよったな?(ツェド))

ダンッ!ヒュゥゥウッ!


ツェドは王城に入ると、モンスターが居るかどうかも分からない、地下空間へと繋がる縦穴を何の躊躇も無く飛び降りていく。
この時のツェドは、外遊に向かった時の格好のままで、防具も武器も無しに、であった。





~地下空間・祭壇場~


ヒュゥゥウ…

(ん?微かな飯の匂い…誰かが調査に入ったか?
それと血の匂いも混じっとる…怪我人…にしては″量″が多いな…(ツェド))


降下しながらも状況を確認し続けるツェドは、この先で起こっているであろう惨状を、ある程度覚悟するのであった。





ズダンッ!

「……………『チラッ…』…………………『チラッ…』……………話が通じるかどうか知らんが聞かせてくれんか…?
貴様は…″何″じゃ…?(ツェド)」


祭壇場外周に降り立ったツェドはゆっくりと視線を動かして状況を確認する。
祭壇場内側(召喚陣)には炊き出し用の器具や調査隊の装備品等が散乱し、外周には手足、胴体が破壊され、出血多量で殆どが死に体となっている城の者達が倒れ伏していた。


「ヒュー…ヒュー…」ボダボダボダ…
「…ブフッ…ゴフッ…」プシュ…ブシュッ…

「助、け…助…」


恐らくこの場の状況を知っていたであろう関係者全員の命がたった今終えた。
蘇生薬や蘇生魔法の類いを持ち合わせていないツェドにはどうする事も出来なかった。




「kkhdkd…?knnzh-uhsnzisni…
sstnzmdnngngiknkttir…″s″snmnwhrbstwrwrhs-rsthzdz!」

「…言語からして全く通じんか…
さてはコイツら…別世界から″何か″を喚びおったな…?(ツェド)」


ツェドの目の前、祭壇場内側(召喚陣)の中央に、金属質の装備を全身に装着し、表情が窺い知れない″人型の謎の存在″が佇んでいた。

その存在はツェドを指差して何かを叫んでいる様だったが、全く言語が通じない為、内容は一切分からなかった。


ザリッ!

「まぁえぇ。
貴様を捕らえて″支配し″時間を掛けてでも聞き出すまでよ。(ツェド)」


″謎の存在″へ向けて歩を進め出したツェドに対し、言葉は通じなくとも何をしようとしているのかは分かる様で


「ks!nngdunnttygr!
…dgyrkthkwrn!nngnhsbt″msst″srnmd!」

『『『ギュィイイイイイッ!』』』


謎の起動音と共に全身の装備が発光を開始。
何かを叫んだ″謎の存在″も既に臨戦態勢の様であった。
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