ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~国交式典・解放・擬似的大氾濫~

″停止″

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「オオオオオオオオオッ!」ゴォッ!

バクンッ!『バシュゥウウッ!』

ゾリンッ!ドガァアアアアッ!


目の前で食事を続けている<人化>形態のグリードに、A to a-S(腕部装着型スタンプロテクター)が装着された右腕で殴り掛かるイスケルダ。

だがプラズマレーザーを放射され、無事だった右腕も装備ごと切断されてしまった。


〔こっちはもうすぐ終わりそうよ!
そちらもさっさと処分なさい!出来なければ私が食べてあげるわ!〕

〔『は!今すぐに!』〕


目の前で項垂れるイスケルダに見向きもせず、エボル・バトフライの上で暴れている<人化>形態のエルダークラーケンへ指示を出すグリード。

すると即座にエルダークラーケンが″準備″を開始した。


『『『ギュゥウウウン…』』』

〔『体は脆いですが再生力は恐ろしい。
ただの打拳では時間が掛かりましょう。
故に我の『エルプシオン・カタストロフィカ(破局噴火)』で塵1つ残さずに滅してやりましょうぞ!』〕


エルダークラーケンは、拳を固めて大きく振り被って動きを止めた。

<人化>形態とは言え、『エルプシオン・カタストロフィカ(破局噴火)』     は上から2番目の破壊力を持つ技。

拳から発せられる衝撃波だけであらゆる物が消し飛ぶ事だろう。


〔へぇ…そんなモノを試合場で主様に放とうとしていた…のよね…?〕チリ…

〔『み、未遂故許されよ!(汗)』〕

「くっ、そ…んな事させるか『ゾリッ!』…ぱふぁ…」ボタボタ…


今まさにエボル・バトフライを破壊せんと力を溜め続けるエルダークラーケンに吠え掛かるイスケルダだが、直後胸部に強い衝撃が走り、″大穴″が空いてしまった。


「か…かひゅ…」ボタボタ…

〔あむ。『ボリボリ…』
さっきは″丸ごと″食してしまったら消えてしまったでしょ、貴方。
もしかして″即死″したら何処かに″転移″してしまうのかしら?
【魔王】関連って面倒ねぇ。〕


胸に大穴が空き、死ぬ寸前のイスケルダから抜き取った″モノ″を食しながら考察するグリード。


(〔…ん?何?この味…何か″空っぽ″ね…〕)


イスケルダを食したものの、お気に召さなかった様子である。


『『『ギュィンッ!』』』

〔『力が溜まりましたぞ、グリード殿!
強い衝撃が走ります故、身構えて下され!』〕

〔よっしゃ来い。〕

『『『ゴォッ!』』』


『エルプシオン・カタストロフィカ(破局噴火)』の準備が整ったエルダークラーケンは、徐に拳を振り下ろす。

1秒後、周囲一帯に強い衝撃波が襲う事であろう。

だが


『『『ズゥウウウウ…』』』

〔『ぬぅ…ぅ…ぅ…?』〕

〔…あるぁとぅぇ……くぁすぃるぁあ…?(新手かしら?)〕


エルダークラーケンとグリードに強い″減速″が掛けられた。

イスケルダは虫の息である為、身動き1つ取れず、セルトは未だノアの所である。

となれば新手である事は明白だが


「″転移″。」

バッ!〔…っ…!〕

「″転移″。」

ババッ!〔『ぬぅ…っ…?』〕


声は聞こえるが、姿が見えない。
気配は感じるが、姿が見えない。
自身が持ち得ている最高の反射神経で以て確認するが、姿が見えない。

それだけ2人に掛かっている″減速″と、時折聞こえる″転移″によって対象が高速で移動しているものと思われた。


(〔くっ…速過ぎる…いや、私達が遅過ぎるんだわ…〕)

(〔『先程までの奴らの″仕掛け″よりも幾分上…
チッ、また面倒な奴が来よったわい…』〕)


姿の見えない謎の存在の登場に、各々思考を巡らせる中


「″停止″。
悪いがこれ以上の暴挙を許す訳にはいかないな。」










『『『ドパァン…』』』

『『『『『『ズゴンッ!』』』』』』

〔『むぉ…?『ブジュゥウウウッ!』ぅ!?おぉおおおおおおおっ!?』〕

〔えっ!?ちょ…″コレ″はどういうこ『『『『『ドガァアアアアッ!』』』』』


空気の爆ぜる音の後に″何か″が落下してくる音。

拳を振り上げた姿勢だったエルダークラーケンに強い衝撃が走り、ノアが十数ものスキルを多重発動して漸く突破した頑強な甲殻を易々と突貫き、右肩口と右太腿にぽっかりと大穴を空けた。

エルダークラーケンは訳も分からず悲鳴を上げる中、落下してきた″何か″は、そのまま羽化直後のエボル・バトフライをも貫通して地面に到達。

こちらも訳が分かっていないグリードに、″大地が持ち上がる″様な感覚を感じた直後に大爆発が発生。

超巨大なハンマーにぶっ叩かれた様な衝撃と共に吹き飛ばされてしまった。

結果から言えば、この大爆発によって直径1キロメルものクレーターが形成され、この時に発生した揺れと舞い上がった土砂は数キロメル離れた獣人国にも降ったと言う。





~ノア視点~


『『『ドパァン…』』』

『『『『『『ズゴンッ!』』』』』』

〔『むぉ…?『ブジュゥウウウッ!』ぅ!?おぉおおおおおおおっ!?』〕

『『『ズォッ…』』』

『『『『『ドガァアアアアッ!』』』』』


『えっ!?な、何『ガガンッ!』いでっ!?』

「お、おぉ…【魔王】様が来られた!我等の窮地に【魔王】様が来てくれ『ゴヂュッ!』っぎゅ!」

(『何が何だか分かんねぇが取り敢えず逃げろ!ただの大爆発とは訳が違ぇ!』)


セルトと近接戦闘中だったノアは、遠方で発生した大爆発を視認。

その際セルトが放ったMP-G(魔力貫通銃)を食らってしまったが、力の制御下である為特段ダメージは無い。

セルトは「【魔王】が来てくれた!」と歓喜していたが、衝撃波によって高速で吹き飛んできた土石の塊に圧殺されてしまった。

思わず中に居る鬼神が焦る程の規模の大爆発に、ノアも避難しようとするが、地震とは比にならない程の揺れと、衝撃波の伝播と同時に発生した大規模な地割れによって、思わず動けなくなっていた。

そこに


「ノ、ノア殿!これは一体…!(クリストフ)」

『っ!?
クリストフか!ちょっと待ってろ!』

バシュッ!


周囲を見渡してみると、ノア同様に身動きが取れず、護衛中のナサケに被さっているクリストフを視認したノアは、荒鬼神ノ化身をぶん投げて即座に転移した。


『『『『ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!』』』』

バシュッ!

「ノア殿、よくぞご無事

『クリストフ!お前″痛覚″あるか!?』

「は…いえ!ありません!(クリストフ)」

『よしっ!″ナサケさんを抱き締めろ″!』

「ははっ!『ムギュッ!』(クリストフ)」

「え?(ナサケ)」

『よしっ!″ぶん投げる″ぞっ!』

「「へ『ゴオォッ!』ぇ?(クリストフとナサケ)」」

『『『『ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!』』』』

『……ッ…!』

『『『『『ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…』』』』』


ナサケを抱き締めたクリストフの胴体を掴み、ほぼ全力で外側にぶん投げるノア。

直後に衝撃波と爆発、大量の土石が降り注ぎ、ノアは完全に生き埋めとなってしまった。










ボンッ!ボインッ!バインッ!

ドカッ!「うっ!?」ゴロゴロゴロゴロ…

「…うっ…何がどうなって…
あっ!クリストフ!クリストフ殿!?大丈夫ですか!?(ナサケ)」

「…全く…ノア殿は…痛覚無いとは言え無茶苦茶が過ぎますぞ…
大丈夫、岩や木片が突き刺さっていたり、柄に色々とめり込んでいますが、大した事はありません…
水捌けの良い日陰で休めば回復しましょう…
それよりも…ノア殿の下へ…(クリストフ)」

「あ、あぁ…(ナサケ)」


弾力のお陰で無傷だったナサケとは違い、クリストフの体(柄)や傘には石や木片が幾つも突き刺さっていた。

だがそれを意に介さず、クリストフはぶん投げられた地点に向かってナサケと共に駆けていく。

その方向には天高く立ち上るキノコ雲が発生していた。
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