ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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取り敢えず南へ編

妖精=大玉スイカ1個分

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「えーっと、取り敢えずこの妖精さん4人は『エレメンタル・フェアリーズ』というパーティを組んでいる最上級冒険者です。」

「「「「えっへん!」」」」

「獣人国に向かう途中に寄ったアルバラストで喧嘩を吹っ掛けられて、新人冒険者相手に最上級冒険者が4人掛かりで攻撃を…」

「えぇ…(クリストフ)」
「えぇ…(ラインハード)」
「えぇ…(ミリア)」
「えぇ…(ミダレ)」

「「「「ちょ、ちょぉーい!
言ってる事は何一つ間違ってないんだけど、聞こえが悪過ぎるから止めてぇ!
ちゃんと報いは(主にエレクトラが)受けたんだし水に流そ!ね?」」」」


『エレメンタル・フェアリーズ』の4人は、約2ヶ月振りに再会したノアに気付き、地上に降り立つと挨拶を交わしてきた。

片やこちら側にはノアとの関係性を知らない者達が多々いる為、アルバラストでの出来事を皮肉を込めつつ紹介するのだった。

ちなみに4人の言う″報い″とは、ノアの契約獣であるグリードによる″舐め回し″で、魔力の塊である妖精族にとっては天敵とも言えた。

当時は主に雷属性のエレクトラが念入りに舐められ、その光景を見た他の3人が戦意喪失させられる事になったのであった。


「ははは、冗談ですよ。
それよりも皆さんとはアルバラスト以来ですが、どうしてこんな所に…?」


当時の事を笑い話として流したノアは本題に入る。
そんな最上級冒険者である『エレメンタル・フェアリーズ』の面々が何故こんな山中に居るか、と言う事だが


「「「「夏と言えばスイカっしょ!」」」」


との事だった。

何と彼女達は今日ノア達が向かう予定の村『ウォルタメ』でスイカを食し、その帰りだったと言う。


「いやー、妖精族って大体が甘い物好きで、果物やお菓子に目が無いの。(リファイア)」

「これからの時期はスイカが旬でしょ?
だからスイカの一大産地と言える『ウォルタメ』に向かっていたと言う訳よ。(ウィンディア)」


最近までアルバラストに居り、数日前に獣人国に立ち寄ってそのまま街道沿いに進んで『ウォルタメ』に向かったと言う甘い物好きな『エレメンタル・フェアリーズ』の面々。

だが、ここで商人見習いのミリアは少し気になった様で


「あれ?でも獣人国の方が果物の種類やお菓子なんかも多いのに立ち寄っただけでそのまま『ウォルタメ』に向かったんですか?(ミリア)」

「ふっふっふ…良く気付いたねお嬢ちゃん。
私達が獣人国に立ち寄ったのは″コレ″を入手する為だったのよ。(フリージア)」ゴソゴソ…


と言いつつ妖精族のフリージアは自身のアイテムボックスを探り、″ある物″を取り出した。


「ジャジャーン!
最近市場に出回っている岩塩″封海塩″を仕入れてきたのよ!(フリージア)」

「あー。」


獣人国の隣領にあるスロア領で最近採掘される様になった岩塩(最近市場での正式名称が″封海塩″に決定)を求めて『エレメンタル・フェアリーズ』は獣人国に赴ていたらしい。


「ただの岩塩なのに魔石の様に高濃度な魔力を保有しているじゃない?(エレクトラ)」

「私達妖精族にとってこれ程打って付けな代物はあまり無いのよ。(リファイア)」

「そんな岩塩と今が旬のスイカを掛け合わせたら最高じゃない?(ウィンディア)」


この世界でもスイカを食す際は塩を振り掛けるのが定番となっており、高濃度の魔力を有している″封海塩″と妖精族、スイカの組み合わせは最高と言える。


「ちなみに『ウォルタメ』のスイカはどうでしたか?」

「「「「最高!全員2玉ずつ購入してきたわ。」」」」


全員が示し合わせたかの様にサムズアップをし、何とも御満悦な様子。

これには期待が高まるノアであった。




「…と、足止めして悪かったわね。
君なら大丈夫だと思うけど、山はすぐに真っ暗になっちゃうから早目に抜けた方が良いわよね。(エレクトラ)」

「そーですね。」


徐に空を見上げると少し日が落ちてきていた。
山に入れば思った以上に早く日は落ちるものであるので早目の行動を取るのが先決である。

ノアもそう感じて『エレメンタル・フェアリーズ』に別れを告げるのだが


「それでは皆さんまた何処かで…」

「「「「ねぇ君、最近何かあった?」」」」

「え?何ですか、突然。」


別れようとしたノアに『エレメンタル・フェアリーズ』の4人が呼び止めてきた。


「寧ろ何も無かった時はありませんでしたよ?」

「ん…まぁそうよね、君の事だし…(エレクトラ)」


思い当たる節しか無いのでこう言った抽象的な質問には答え辛いものであった。


「…いや、でも…(リファイア)」
「…悪い…は…(フリージア)」
「うん…ねぇ…(エレクトラ)」
「だねぇ…(ウィンディア)」

「ちょ、ちょっと…何かあるなら言って下さいよ…これが後に何かの引き金に繋がる事が最近良くあるので…」


※勿論あります。


「ねぇ君、私達これから『エルフの森』に里帰りするつもりなんだけど、何か用事とか無いかしら?(フリージア)」

「え?『エルフの森』に…ですか?
しかも用事て…え?」

「何でも良いわよ?
君にはこの間迷惑を掛けたってのもあるし。(エレクトラ)」


水に流したハズなのだが、以前の事を気に病んで用事を引き受けてくれると言う。

何か裏がありそうだが、丁度引き受けて欲しい用事があったので4人に相談してみる事にした。





「「「「テスタからの感謝の声をエルフ族族長のユグに届けて欲しい?」」」」

「はい…時間が無いと思いますが、出来れば届けて欲しいんです。
可能でしょうか…?」

「ん?時間が無い…?(リファイア)」
「あ、もしかして″ゲート″の事?(エレクトラ)」
「あれは魔力保有量の少ない種族が入る為に作られたゲートであって、″魔力保有量の高いエルフ族や妖精族″なら難なく入れるのよ。(フリージア)」

「え?そうなんですか?」

「えぇ、そうよ。
だから別に私達はいつでもあの森に帰れるのよ。(ウィンディア)」

「寧ろ用事ってそれで良いの?
って感じなんだけど…(エレクトラ)」

「はい、それだけで大丈夫です。
先程テスタで子持ちの未亡人の方に相談されたモノで…」

「「「「……ふむ。」」」」


ノアがそう伝えると『エレメンタル・フェアリーズ』の4人は少し考える。
何故かその間4人はノアの方をジーっと眺めていた。


「うん分かった。
その用事引き受けたわ。(フリージア)」

「あ、本当ですか?いやー、良かった良かった。流石にエルフ族や妖精族と交流を持っていなかったのでどうしたものかと思っていたんですよ。」


まさかその日に引き受けた実現不可能なお願いを、その日の内に解決にこぎつけそうになり、安堵の表情を見せるノアであった。





そして別れ際


「この用事を達成できれば君の肩の荷が下りると思うから、それまで辛抱してて頂戴。(リファイア)」

「ん?あ、はい、ありがとうございます。」


何か意味ありげな事を言い残してノア達一行と『エレメンタル・フェアリーズ』は別れる事となった。

その後ノア達は山で一晩を過ごし、翌日の早朝目的の村である『ウォルタメ』に到着したのであった。
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