ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
869 / 1,117
取り敢えず南へ編

お願い事

しおりを挟む
~獣人国の北方にある街道~


『『『ざわざわ…』』』

「ほら、キビキビ歩け!列を乱すんじゃない!」
「魔力封印の手枷、弱体化の効果切れの確認を怠るなよ!」
「不振な行動を起こしたら只じゃおかないぞ!」


「ねぇねぇ、何の大軍なのこれ?(リファイア)」

「おわっ!妖精族とは珍しい。
いやね、この列は″捕まった【勇者】軍″なのさ。
その数推定500人。
南にある村を襲い、駆け付けた者達によって制圧されたんだと。」

「へぇ~、鎧の造りからして2、3ヶ国位で編成されてるみたいだけど、かなりの大捕物になったわねぇ。(エレクトラ)」

「だが聞いて驚くなよ嬢ちゃん達、彼等は捕縛と連行をしているだけで、″制圧は殆ど【鬼神】″が行ったらしいんだ。」

「「「「え?(『エレメンタルフェアリーズ一同』)」」」」


妖精族のみで組まれたパーティ『エレメンタルフェアリーズ』の4人がエルフの森に向かっている最中、街道を進む大軍を目撃。
特に最重要と思われる者は鋼鉄製の牢馬車に入れられていた。

4人は近くに居た商人に列・車列の正体を聞いてみると、【鬼神】によって制圧された【勇者】軍であると判明した。


「アルバラストの『野盗200人殺し』に続いて『【勇者】軍500人潰し』と来た。」

「また彼の武勇伝が1つ増えたって話だ。」

「へ、へぇ…(フリージア)」
「相変わらずね…ノア君…(ウィンディア)」
「数日前に会ってから何がどうなってそうなったのよ…(リファイア)」

「ホント彼って話題に事欠かないわよね…
この間会った時は何故か″子供と女性の幽霊″を引き連れてたし…(エレクトラ)」

「確かに…″憑かれて″いたけど″呪われてる訳では無かった″からスルーしたけど…(ウィンディア)」

「こっちが″視えてる″のを察して″シーッ!″のポーズしてきたけど、結局何だったのかしらね。(フリージア)」

「まぁ何れ会えそうだし、その時にでも聞いてみましょ。(リファイア)」

「「「そだね。」」」





~ウォルタメ~


「ノア様~、ノア様~?
あれれ?何処行っちゃったのでしょう…(ヴァンディット)」


ノアに目薬を処方したヴァンディットが調子の程を聞こうとしたのだが、ノアの姿が見えずあちこちをキョロキョロと見回しながら探していた。

その隣では





「話とは一体何でしょう?
何か困った事でもありましたか?」

「いえいえ、私の故郷を守ってくれた事と、旦那とお話が出来る様にしてくれた事の感謝をお伝えしたかったのと、何も言わずに″憑いて″来てしまった事の御詫びをしようと思いまして。(エミ)」

「あー…あの時に言ってたのって″付いて来た″じゃなくて″憑いて来た″だったんですね…
いや、特に謝って貰う様な事では無いので気にしなくても良いですよ。」



~タイトル:『手合わせ』より抜粋~


「でも昨日頼りになる方が来たので、勝手ながらついて来たんです。
お陰で安全にこの村に辿り着けました。(エミ)」

「それは良かった。」



「当初私とユーが試験街テスタに居たのは、故郷と移住した旦那の下に帰ろうとしてたのですが、この子が山に棲むモンスターを怖がってたからなんです。(エミ)」

「もんすたぁこぁい。(ユー)」


エミが抱き抱えている男の子ユーがイヤイヤ顔で訴え掛けている。


「何度か街を訪れた冒険者さんの後に付いて行こうと思ったのですが、それでもユーが怖がってたんです。
ただ、【鬼神】さんには珍しく安心して近付いていったので、故郷に帰るなら今しか無いと思って憑いて行っちゃいました。
ごめんなさいね。(エミ)」

「ごめんなさぁい。(ユー)」

「ははは、気にしてないよ。」


エミが頭を下げると、それに倣ってユーも頭を下げる。
ノアはそんな2人に笑みを浮かべていた。


「お知り合いの妖精さん達は私達の存在に気付いていたみたいですけど、スルーしてくれて助かりました。(エミ)」

「あー、だから色々と聞いてきてたんだな…」

(『まぁ″また何かに巻き込まれてるなー″位に考えてたんだろうぜ。』)
    


~タイトル:『妖精=大玉スイカ1個分』より抜粋~


「「「「ねぇ君、最近何かあった?」」」」

「え?何ですか、突然。」


別れようとしたノアに『エレメンタル・フェアリーズ』の4人が呼び止めてきた。


「寧ろ何も無かった時はありませんでしたよ?」

「ん…まぁそうよね、君の事だし…(エレクトラ)」





「それで、御詫びと御礼を兼ねてなのですが…(エミ)」

「あ、いえいえ、御詫び等気にせず…」

「おれーイヤ…?(ユー)」

「うっ…い、頂きます。」

「はい、ありがとうございます。(エミ)」


流石に死者から御礼を頂くのはどうかと思ったが、子供から困り顔で言われたら受け取らざるを得ないだろう。


「私からの御礼は″スキル<浄化>の伝授″になります。(エミ)」

「え?″<浄化>の伝授″?
″<浄化>″って神職じゃないと取得出来ないのではないですか?」



<浄化>…主に神職の適正を持つ者が取得出来るスキル。
用途は多岐に渡り、対アンデットモンスターへの対抗手段、呪いの解除、土壌汚染の浄化等にも応用出来る為、引く手数多である。

だが、一定以上の信心が無いと取得出来ない為、取得率は意外と低い。



スキルの伝授…スキル取得者からスキルを受け継がせる事が可能。
だが、対象者に相応の基盤が必要な為、何でもかんでも受け継がせる事は出来ない。



「私は元々近くの教会で【修道女(シスター)】をやっていたので<浄化>を取得していたんです。
それに、何故だかあなたからは神聖な物を感じます。
もしかして【鬼神】と言う二つ名でも神性って帯びるのでしょうかね。(エミ)」

「さ、さぁ…」

(『恐らくだが″暦″と繋がりがあるから、かも知れないな。』)

(かもね。)


勿論【鬼神】と言う二つ名が付けられたからノア自身に神性を帯びたのでは無く、鬼神の言う通り″暦″等の神々と関わりを持った事で<浄化>を取得出来るだけの基盤が出来たのである。


「それと【鬼神】さんはこの後はどちらに向かわれますか?(エミ)」

「いや、特に決めてなくて、取り敢えず南に向かっている感じですね…」

『リィン…』

「それであれば、個人的なお願いになってしまうのですけど、このベル…『鎮魂の振鈴』を南にある教会に届けて頂けませんでしょうか…?
その教会から支給された物なのですが、死した身ではもう無用の長物です。
神父様も心配しているでしょうから、可能であれば…(エミ)」

「分かりました、引き受けましょう。」


エミが差し出したのは、壊れ掛けの『鎮魂の振鈴』と言うベルで、エミは生前【修道女(シスター)】として近隣の村々を回り、死者の魂やアンデットモンスターの討伐等を請け負っていたらしい。

ノアはエミからの頼み事を二つ返事で受けるのだった。


「何から何までありがとうございました。
それでは<浄化>の伝授を致しますね。(エミ)」
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

処理中です...