ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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取り敢えず南へ編

見分け方のコツは″輪郭の曖昧さ″

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『『ガコォンッ!』』(門が開く音)

「ごほんっ!
いや済まない、非常に有名な冒険者であったのでつい…
ソシエール、ヒューガ、【勇者】軍制圧、厳戒態勢解除の報を街の者達に知らせてきてくれ。(シンプソン)」

「「は、はい。」」


身分証明が終わり、門を開放して貰える事となった。
シンプソンは咳払いを1つした後、2人に指示を出して街中の厳戒態勢を解除しに向かわせる。


「取り敢えず簡単に街の説明をしておこう。
門を潜って直ぐの所に冒険者ギルドがある。
こんな僻地にギルドがあるのは違和感があるだろうが、この街には″霊絡み″の依頼が数多くあるからギルドの設置が認められている。(シンプソン)」


普通冒険者ギルドと言うのは国や領地の伯爵家の近くに設置される事が多く、アンテイカーの様な比較的小さな街に設置される事は少ない。

だが、アンテイカーは立地的に幽霊やアンデット系モンスターが出現しやすく、『幽閉霊』と言うダンジョンがある。

そこから得られる素材等は用途があり、農作物から錬金術に使用される。
数話前に登場した『沼馬(ヌマウマ)』等の売買も行われる為、商人の出入りも少なくないと言う。

それ故冒険者ギルドの設置が認められているのだ。


「街の中央に我等の属する教会があり、裏手にダンジョンがある。何か用があればいつでも訪ねてくれ。誰かしら居るからな。
それと、″街に居る者達″とは仲良くしてくれると助かる。(シンプソン)」

「ん?はい、分かりましたありがとうございます。」

「それでは私も厳戒態勢解除の報を各所に伝えてくる故、ここで別れるとしよう。
それではな。(シンプソン)」


そう言ってペコッと頭を下げたシンプソンは、ノア達の下を離れて街の方へと消えていった。


「一時はどうなる事かと思いましたが、無事に街へとこれて良かったですね。(ヴァンディット)」

「遅くなったとはいえ、ゾネスさんが介入してくれて助かりましたよ。」

「いや、面目無い…
取り敢えず間に合って良かった。
一先ず私は今晩厩屋へ行き、馬を預け、明朝ここを発つとするよ。(ゾネス)」

「【勇者】軍から逃げてきてここには特に予定はなかったが、何かしら買い付けに向かうとするよ。(マグワイト)」

「あ、はい、それではまた。」


ここでノア達とゾネス、マグワイトは別れる事にし、ノア達は一先ず冒険者ギルドへ向かう事にした。





「あ、あの、ノア君?(ミダレ)」

「ん?」

「″幽霊″が視えるって本当っちゃ?
さっきあっちには青白い光にしか見えなかったけど…?(ミダレ)」

「あ、それ私も気になった。(ラインハード)」
「わ、私も…(ミリア)」
「何かノア様は違う様に見えてたみたいですが…?(ヴァンディット)」

「幽霊の見え方は人それぞれだからねぇ…
僕は昔何度か死に掛けてるから比較的″あっち側″に近いんだと思う。
だから皆からすれば″人魂″にしか見えないモノでも僕からすればその周りの″生前の姿″が見えるんだと思う。
これはスキルとかじゃなくて、あくまで感覚的なモノだけどね。」

「え…?それじゃあ私が冗談で言った、幽霊出没の話は…(ミリア)」

「あ、あれ冗談だったんだ?」

スン…(ミリア)

「ははは、良い親子さんだったから安心して。」


霊が苦手そうな素振りを見せていたノアに、道中で脅かそうとしていたミリアが逆に脅かされる事になった。


「…でもノア君、さっき幽霊さんを見ても怖がっていなかったから、幽霊は怖くないっちゃね?(ミダレ)」

「うーん…怖いというか…
一部の幽霊に限るけど、″トラウマはある″かな…?」

「「「「「え?」」」」」


″トラウマ″があると言う霊が何かはノアの口から発せられる事は無かった。
まぁ皆が聞こうとしなかったので言わなかったと言うのもあったが。





~アンテイカーの冒険者ギルド~

カランコロンカラン♪

「失礼しまーす。」

「はぁい…いらっしゃい…
あなた達ねぇ、夜間際に坂を下ってた一団さんって…」

「「「「……。」」」」


アンテイカーにある冒険者ギルドは石・木造の3階建てとなっており、酒場と併設されている。

扉から中に入ると、盆を胸に抱え酒場の給仕らしき女性達数人が落ち着かない様子でギルド内を彷徨いていた。

近くのカウンターには、ギルドマスターと思しき髪の長い女性がひっそりと座り、ノア達を出迎えてくれた。

女性の長い髪は目元所か顔全体を隠す程で、声音も相まって不気味さを際立たせていた。


「…ノア様、私にも見えました…幽霊…(ヴァンディット)」
「明るいギルド内で見てるからか、そんなに怖くは無いですが…(ラインハード)」
「や、優しそうな人ですね…(ミリア)」
「か、髪で表情が見えないから、怖いと言うより不気味っちゃ…(ミダレ)」

「こらこら、あの人はちゃんと生きてる人間ですからそんな事言っちゃダメだよ。」


女性陣は表情も真剣なものである為、冗談を言っているとは思えなかった。


「あらやだ…私、キノコのオバケを初めて見ちゃったかも知れない…(ギルマス)」

「ぅおいっ!貴女もか!
この人(?)はオバケなんかじゃなくて一応僕らと同じ冒険者ですよ。」

「やはり人型に「待て待て待て待て!」


ギルドマスターはギルドマスターで、ノア達一行の後ろに居たクリストフを『キノコのオバケ』に見えていた。

あながち間違いでは無いのだが、より一層クリストフが人型形態になりそうな発言は控えて欲しいモノだ。


「うふふ…冗談よ、シンプソンから聞いてるわ。
【勇者】軍を制圧してくれた【鬼神】さんとそのお仲間さんよね?(ギルマス)」

「はい、そうです。」

「この街は″内と外″に幽霊が多いけどゆっくりしていきなさい。
今はしんと静まり返っているけど、結構逗留している人が多いから朝になったら活気があるのよ?(ギルマス)」

(((((″内と外″…?)))))

「ギルドの向かいには武器・防具や錬金術素材の店。
それと、通りの先にある教会を左に進むと宿泊私設等があって、教会の裏手にダンジョン『幽閉霊』があるわ。
右に進むと、『幽閉霊』攻略用アイテム″対幽鬼・アンデットモンスター″用″<浄化>済みの聖水″、″<浄化>符″なんかが売られているわ。
まぁ後は自分達の目で確かめて見ると良いわ。
″皆に顔を覚えて貰える良い機会″だからね。(ギルマス)」 
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