ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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ヴァリエンテ領・大規模氾濫掃討戦編~街(前哨基地)建設~

人(脈)海戦術

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 ~街(建設予定地)~


「新領主殿、建設班のモルドーです。
防壁を建てる前に地盤固めを行いたいのですが、魔力だけでは不十分だ。
″石灰″で強度を高め、その上で魔力で補強しようと思っているので″石灰″を依頼したい。
出来るだけ多く。」

「せ、″石灰″?(カルル)」


「新領主様、手伝いのカーリアですが、作業している間子供達のお守りをお願いしたいのですが…それか年長位の子供が出来そうな作業等あれば…」

「お守りか…街の婦人方にでも…
うむむ…作業は…うーん…か、考えておこう。(カルル)」


「新領主殿、【防具】のデボンだ。
さっき解体したモンスターだが、ありゃかなりの良品だ。
俺らでも手に余る、何処か良い腕の職人に伝手はないだろうか?」

「ひ、一先ず街の職人に声を掛けてみよう…(カルル)」


「新領主殿、戦闘職食糧調達班のメルドラだ

食糧の事なんだが…」

「こ、今度は何です…!?(カルル)」


〈いっぱいいっぱいなのだわさ。〉
「だねぇ…」

「ふっふっふ、そうであろうな…(ルルイエ)」


新領主カルルの下にはひっきり無しに人が詰め掛け相談事をしにやって来る。
街の建設から食事、制作物に子供の事等様々である。

前話、秒で新領主として任命されたカルルが対応するも、経験も無ければ伝手も無い為対応を取りようも無い。

そんな光景を遠目から父親のルルイエ伯爵が暫く眺めていたが、助言を授けにカルルに向けて歩み寄ろうとする。

恐らく彼の思惑として暫く泳がせていたのだろう。




「待った。」

「え?(ルルイエ)」

「ここからの事について僕の方から口出しさせて貰って良いですか?
一応今回の策は僕(と両親)の発案であり、出資も僕ですので。」

「確かにそうだが、良いのか?
既に6億もの大金を払っておるのだぞ?
街の者には黙って、これからの事はこちらから出資するぞ?元々それが正なのだから…(ルルイエ)」

「実を言うと獣人国からの報奨金はまだ半分以上残ってるんですよ…
勿論出資者だからといって皆さんの意に反する事はしたくありませんので、もし気に入らなかったら止めに入って構いません。」

「む…分かった、お手並み拝見といこう。(ルルイエ)」

「ははっ、そんな仰々しい事はしませんよ。」





「カルルさん、ちょっと良いですか?
相談事に対する策、僕の方で幾つか案があるのですが。」

「オ,オネガイデキル…?(カルル)」

〈いっぱいいっぱいなのだわさ。〉


ひっきり無しに寄せられた相談事に対して策があると言うノアがカルルの下に向かうと、既に一杯一杯な様子であった。

まぁ段階を幾つかすっ飛ばしての領主任命であるから、仕方無い事ではある。

とは言え別にノアに領主としての心得みたいなモノが備わっている訳では無く、単純に自分の持ち得る手札でどう現状を打破するかの答えを持っているだけであった。





~1件目:建設について~


「と言う訳でラーベさん、早速仕事です。」

「あ、ノア様どうなされました?(ラーベ)」

「確かリヴァイアさんから定期的に『貝殻』を購入して″石灰″を生成してましたよね?
それをこちらに融通出来ないでしょうか、大量に。」

「フリアダビアからの受注分は終わったので恐らく大丈夫だと思います。
ただ全体量までは把握出来てないので、幾らか融通出来ないかリヴァイアさんに聞いてみましょう。(ラーベ)」

「龍宮城から戻ったら靴に付いた砂はしっかり落としましょうね?」

「ふぐっ。(ラーベ)」





~2件目:職人の伝手について~


「今度はラベルタさん、僕の防具を作ってくれたデオさんとガーラさんをここに呼んで欲しいのですが良いでしょうか?」

「あぁ、あのお2人ですか。
確かオードゥスに戻っていたハズです。
ただ本人達の予定もあるでしょうから聞くだけ聞いてみます。(ラベルタ)」

「よろしくお願いします。」





~3件目:食糧+子供のお守りについて~


「クリストフちょっと良い?」

「はい何でしょう?(クリストフ)」

「子供達の引率として森に入って木の実を採ってきて欲しい。
出来るだけ大量に。カジュ・トレントから採ってきても良いからな。」

「畏まりましたぞ。
子供の面倒はスロア領で見ておりましたから慣れております、お任せを。(クリストフ)」

「頼んだよ、″着ぐるみ″のクリストフ。」

「…っすー…(クリストフ)」

「ほらやっぱ納得してないじゃん!」





~4件目:続・食糧について~


「さーて、お次は…」

「あ、【鬼神】殿、少し良いでしょうか?(兵士)」

「へ?どうしました?」

「実は街の正門に【鬼神】殿と会いたいと申すご老人が居りまして…(兵士)」

「へ?あ、はい、取り敢えず向かいます。」





~ヴァリエンテ領・正門前~


「へ?」

「よぅ、少年。獣人国以来じゃな。(海神)」


兵士に呼ばれてヴァリエンテ領の入り口である正門にやって来たノア。
するとそこには獣人国で会った時は目が眩む程の後光が差していて顔までは認識出来なかった神様、『海神(ワダツミ)』が商人然とした格好で立っていた。

最初に『ご老人』と聞いて真っ先にスロア領に居るハズのツェドが頭に浮かんだが、まさかの人物過ぎて余計に混乱してしまった。


「あ、あれ?もしかして海神(ワダツミ)さん?」

「おお、そうじゃそうじゃ。
実は″かくかくしかじか″でな、あの時の約束をぜーんぜん果たせんかったから儂が直接やって来たんじゃ。(海神)」

「…んまぁ確かに最初の1週間は何が来るのか心待にしてましたけど、2週目からは頭から完全に抜けてましたね…」

「儂は″暦″の様に時止めが出来んし、お主は常に激戦を繰り広げておるからこうやって対面する暇が無い。
ほれ、一先ず1ヶ月分の魚を幾つか見繕って入れといたぞ。
お主は恐らく新設の街の者にもてなすのじゃろ?そう考えて体が大きく、食いでのある物を用意しといたぞ。(海神)」

「おぉ…それはどうもありがとうございます。」


海神(ワダツミ)は、懐から掌サイズの『氷で出来たキューブ』を手渡してきた。
今の話振りからしてこの中に何種類かの魚が入っている様だ。

ノアはそれを受け取ってみるが、見た目が氷というだけで、触れても冷たくは無く、淡く光輝いていた。


「今後は出来る限り遣いの者に届けさすが、今回の様に厳しい時はアイテムボックスに直接贈らせて貰うとしよう。
こう他の目に触れるのはあまり良くないからのぅ。(海神)」

「はい、ありがとうございます。」


言葉短かに話を終えた海神(ワダツミ)は、「また来る」とだけ言い残して来た道を戻って行くのだった。





〈ぼ、僕ちゃん…?い、今のって…〉

「あ…、し、シーッね?ステラさん、シーッ。」     
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