ソロ冒険者のぶらり旅～悠々自適とは無縁な日々～

ヴァリエンテ領・大規模氾濫掃討戦編～街(前哨基地)建設～

仲裁

<これは明らかな敵対行為、これに関しては厳しく対応させて貰いますよ。良いですね？>


(うわぁ、キレてるなぁ…(レドリック))
(うわぁ、キレてるわね…(アミスティア))
(うわぁ、キレてるなぁ…(リヴァイア))


『『ズズン…』』ズゥンッ！(もがく亜龍。)


「…珍しくノアが殺る気満々過ぎて逆に冷静になっちまったな。(レドリック)」

「まぁ本人が殺るって言うなら殺らせてあげる方が良いけど、ちなみにコイツ(亜龍)は何て言ってるのかしら？(アミスティア)」

「要約すると『″10年前″、同様の気配を漂わせる輩に煮え湯を飲まされた。故に復讐を行う。』らしいよ。(リヴァイア)」

「…″10年前″…？
…つまり、5才のノアに…？(レドリック)」

「それは流石に無理があるわよ。
他人の空似じゃないかしら？(アミスティア)」

「うん、まぁそうだと思いたいけど、亜龍が気配を間違えるとは思えないし、ノア君の様な気配が他に居るとも思えないし…(リヴァイア)」


亜龍はリヴァイアに尻尾を掴まれこの場に縫い付けられているが、手を離せば直ぐにでもノアに向かって矢の如く放たれる事だろう。

亜龍曰く『10年前』にノアと同じ気配の者に何かされたらしく、それによって怒り狂っているらしい。

だがノアは現在15才、5才のノアは原因不明の病で1歩も外に出る事等出来やしない為、他人の空似だと思いたい。


《離して下され龍殿！積年の恨み、ここで晴らさせて下され！》

「″離してくれ、積年の恨みをここで晴らす。″
だそうですよ。(リヴァイア)」

「では離してやってくれないか？
どちらにしろもう少しでノアが斬り込んで来るだろうからな。(レドリック)」

「危うくなったら私達が介入するからお願い出来ないかしら？(アミスティア)」

(まぁどのみち私も介入するだろうから良いかしらね。(リヴァイア))

パッ！


ドダンッ！ズン！ズン！ズンッ！


リヴァイアが手を離し亜龍を解放すると、よろめきながらも真っ直ぐノアへと向かっていく。

氷で出来た6枚の翼を広げ、全身を白い龍鱗で覆われ、長い尻尾をしならせた亜龍が怒り狂って迫る状況は普通なら恐怖でしか無いが


『来やがったな″トカゲ″。
食卓に並べてやるから掛かってこいよ。』

ビュオンッ！(再び尻尾による薙ぎ払い。)

『『『バヒュヒュッ！』』』(尻尾表面の氷柱が無数に飛来。)

ガギガガガギッ！『『バガァッ！』』

『『『ガッ！』』』ギュリィインッ！


尻尾に纏っていた薄氷が殺意を持ってノアに迫るが、ノアはこれを荒鬼神ノ化身と赤黒い腕で次々に迎撃。

直後に大木の様な太い尻尾が衝突するも、3本の荒鬼神ノ化身でいなし、尻尾は逸れていった。

が


『『『ヒュゴォオオオオオオッ！』』』(冷気を伴ったブレス。)

『バッ！』        『バシュンッ！』(短距離転移。)

『ゼェアッ！』ズゴンッ！

グォオオオオッ！


薙ぎ払いの後隙を埋めるかの様に極低温のブレスを放つ亜龍。

だが、荒鬼神ノ化身を放って亜龍の顔の側面に転移したノアは、<渾身>を乗せた拳を叩き込む。

まるでハンマーを叩き込まれたかの様に亜龍は大きく揺らぐ。


『シッ！』ヒュ

『『『ドゥンッ！』』』(飛翔。)


顔を上げた亜龍の首を狙って斬撃を放つも、同時に亜龍が空へ飛翔。

逃げたのか？と思ったが、それは間違いであった。


『『パキパキパキパキ…』』『『『ピキピキキ…』』』(亜龍を中心とした半径30メルの範囲に氷柱が発生。)


《″氷原″。》


ズドドドドドッ！『『ドドドッ！』』ズドドドドドッ！(1メルもある氷柱が無数に降り注ぐ。)

『デカい図体して飛び道具ばかりか。』

ゴギンッ！バガァッ！ボゴォッ！『『ピキピキッ！』』

『む？』


降り注ぐ氷柱を剣で、拳で、足で迎撃するが、触れた所から徐々に凍り付いていく。
逸れた氷柱が地面に着弾すると、同様に凍り付く。


ドゴンッ！『バキッ！』ボゴォッ！『『『ビキビキビキッ！』』』

ヒュォオオオオッ！(ブレス前の溜め。)

『『『バガァッ！』』』(全身に力を込めて体中の氷を砕く。)

バヒュッ！(転移。)


ノアの周囲は凍り付き、徐々に動きも制限されていく。
それを見越してブレスの発射体勢に入った亜龍を見て全身の氷を砕いて荒鬼神ノ化身を放り亜龍へと転移。

この光景を見た者は再び接近戦に挑むのだろう、と思ったが直後に恐ろしい光景を目の当たりにする。


ヒュォオオ『ｺﾞｸﾞｯ。』オオオッ…ゲェハッ！？

ガハッ！ガァッ！


ノアはブレス発射の為大きく息を吸い込んでいた亜龍の真っ正面に転移し、勢いそのままに口内に突入していったのだった。

亜龍も流石にブレス発射を中断し吐き出そうとする。

も


『『ｽﾞﾑｩﾝｯ！』』(中から打撃音。)
『『ｽﾞﾝｯ！』』(中から打撃音。)
『『ﾄﾞｺﾞｫﾝｯ！』』(中から打撃音。)

ゲェアウッ！ガァアアアッ！『『ゴボォアアッ！』』(亜龍の体内から鮮血が噴き出す。)


「「「…エグ…(レドリック、アミスティア、リヴァイア)」」」


ノアによる残酷な体内攻撃に、間近に居る3人も思わずドン引きする。


オオオオオオオオオオッ！『『『バシュァアアア…』』』

『あ？』


と、亜龍が大きく咆哮を上げた直後、亜龍の体が氷の結晶へと変化して霧散。
亜龍の体内で暴れ回っていたノアも合わせて出現した。


『『『パキパキパキパキ…』』』(体を再形成。)

《ハー…ッ…バハーッ…あ″あ″っ！！
相変わらず憎たらしい奴だ！小さき体でここまで好き勝手暴れてくれる！
これで完全に息の根を止めてやるぁ！
『カタストロフ・アブソリュート』ォッ！》


『飛んで逃げて変わらず飛び道具か。
何でも撃って来いよ、完全に焼き尽くしてやる。
この【召喚獣:三刀】『龍神邪火(リュウジンジャッカ)』でな。』ﾁｬｷ…


更に上空で肉体を再形成した亜龍は体を丸めて力を溜める。
大技の予感を感じたノアも荒鬼神ノ化身を構えて【召喚獣:三刀】『龍神邪火(リュウジンジャッカ)』の召喚に備える。

と


『【召喚獣:三刀】『龍神ジィヤッッ…(リュウジンジィヤッッ…』

『『ズゥウｳﾝ…』』(時間の流れがゆっくりとなる。)


『ピタッ。』


そして周囲の時が完全に停止した。
この独特の状況下で現れる者と言えば


ダバダバダバッ！

〝待って待ってお二人さん！
ストップ！ノーモア戦争！お願いです！仲良くして下さいぃっ！(暦)〟


『…やっぱ暦さんか…何です？そんなに慌てて…』


こう言っては失礼だが、運動出来ない人の走り方で、慌てた様子の神様、暦が仲裁にやって来た。

だがノアはここである事に気が付く。


『ん？″二人″？…一体誰の事…』

《む？何故この場に″暦殿″が来られたのです？》

『は？え？何でコイツも動けてんの？』
 

いつもノアと2人っきりで会う際に周囲の時間を止める暦だが、今日は何故か亜龍も動きを止めてはいなかった。

そしてこの亜龍、暦の存在を知っている様子であった。


《ん？何故貴様も動けているのだ？》