ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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天空大陸~終わりの始まり

加護は支援魔法なんですね、はい…

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~4000メル上空~ 


天空大陸へ向かっている途中の一行。
グングンと高い所まで昇っていき、眼下には闇が広がっている。

明るければ凄まじく美しい光景が広がっていたのだろうが、それに伴って凄まじい恐怖も襲ってきた事だろう。

何せ地上4000メルもあるし、足下は半透明な魔法陣でスッケスケである。
地上では体験出来ない暴風が吹きすさみ、体感温度は零下を遥かに下回る。

空気も薄く、暴風によって息がし辛い危険な場所。

だがステラの話では、天空大陸周辺は各種加護が効いているらしく薄らと見える夜の山々を眺める余裕があり、かなり快適である。

″ノア以外″は。



『『『『『バボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボッ!!』』』』』(吹き荒れる暴風) 


「落ちちゃう落ちちゃう落ちちゃうっ!!!
寒い寒い寒いっ!
(空気が)薄い薄い薄いっ!
ちょ…ステ…まだ、着かないのっ!?」


《大丈夫ですか主様?》

「え?何でノア君はそんな状況に…?(カルル)」
「ちょ、大丈夫かノア殿!?
ステラさん、どうにかならないのかい!?(ルルイエ)」

〈あれれ…?おかしいのだわさ…
ここはもう『ハルモニア』の制空圏内だから<風避けの加護>・<温もりの加護>・<呼気の加護>が発動してるハズなのだわさ…〉


魔法陣の上で景色を眺め見る余裕がある3人とは対照的に、ノアは魔法陣の端に手を掛けて吹き飛ばされない様にするので精一杯である。

以前は荒鬼神ノ化身の重量でどんな突風だろうと心配は無かったのだが、剣が更に派生して自身の身体が鞘になった事で常時帯刀する事が無くなった。

その為ノアは現在、普通の少年同様の重量しかない為非常に軽い。
魔法陣の端に必死こいて掴まっていなけれぱ、あっという間に吹き飛ばされていた事だろう。

と、ここである事に気付く。


「ん!?″加護″!?
″加護″って事は支援魔法の一種じゃん!
って事はそれ僕には発動しない!だからこんな状況なんだ!」

〈な、何て事なのだわさ!〉


天空大陸の制空圏内であれば各種加護(支援魔法)が発動するが、【ソロ】のノアは一切そういった類いの恩恵を受ける事は無い。


『『『ピキピキピキッ!』』』(大火傷した腕の包帯に霜が発生)

「あ痛たたたたたっ!?
暴風と低温で腕が凍っちゃう!?
ごめん!僕もう耐えらんないかも!」

〈にょわーっ!1番に来て欲しい人に帰られるのはマズイのだわさ!
えーっとえーっと、<火竜の加護>とか<天照の加護>とかはどうだわさ!〉

「ステラさん!加護全般効かないのだわさ!」


1人台風中継真っ只中のノアの体に氷が張り始める。そんな状況に耐えられず、ノアは今にも魔法陣から飛び降りようとしていた。

ステラはあたふたしながらも何かしら策を考えるが、全部″加護″である為ノアに効く事は無いだろう。




(『…全く…』)

『『『ピキピキピキ…』』』(ノアの全身に龍鱗が纏われていく)


〈だわさ!?〉

《あら…》

「「おお…」」


ノアの胸の辺りから真っ黒い龍鱗が生え、前身を瞬く間に覆っていく。
ノアの中に居る『鬼神』自ら龍衣無双刀・比類無鬼神ノ顕現(長いので今後は″無双刀″)を発現。

再構築された【鬼鎧殻】改め【鬼龍装(キリュウソウ)】による鎧を纏う事で脆弱な肉体を保護する事が可能。
体格の倍もある尻尾を持つ為見た目で言えば″龍人″である。

全身を龍鱗で覆い、″龍人化″しているのは分かったが、″鬼″成分は何処にあるかといったら、単純に″筋量″なのだとか。

本来の″龍人″は細くしなやかな体格で線が細いのだとか。

それに対してノアの″龍人化″は、両腕両足の筋量が凄まじい上、″鬼″らしい一本角が額の辺りから生えてる様だが、この姿になってから自分の姿を鏡で見ていないので人から又聞きした情報しか持ち合わせていない。

だがこの姿を間近で見たルルイエ親子は揃って顔を引きつらせているので、中々に迫力があるのだろう。


(た、助かった…ありがとう『鬼神』。)

(『ったく、気が動転するとポンコツになる癖、早く治ってくれると良いんだが…』)

(ごめんごめん。
まぁでもこの姿になればこっちの

『『『バボボボボボボボッ!』』』(暴風)

【うわぁああぁァァァ…】


「おおおいノアァアっ!?(カルル)」
「ノア殿ぉっ!?(ルルイエ)」
〈坊やぁあっ!?〉


″龍人化″した事で身体が凍り付く程の寒さを防ぐ事に成功したノアは徐に立ち上がる。

威圧感は増したが別に重量が増した訳ではないので、暴風に煽られたノアはそのまま吹き飛ばされてしまった。


ガシッ!

《大丈夫でしたか主様?》


【た、助かった…ありがとうグリード…】バクバク…


だが寸での所で″龍人化″状態のノアの尻尾をグリードが掴んでくれたので落下する事は無かった。
やはりグリードは頼れる相棒である。





スッ…(ステラが手を差し伸べる)

〈ほら坊や、掴まるのだわさ。〉

【あ、どうも。】


『『モフン。』』


【……。】

「「……。」」

《……。》

〈ん?どうしたのだわさ?〉


尻尾を手繰り寄せられ、陣まで近くなった所で徐にステラから手を差し伸べられる。

差し出されたモコモコで大きな″真っ白い手に掴まり、よじ登っていた所でその場に居た全員が違和感を覚えた。

何せ


「「【《何かステラさんデカくなってない?》】」」

〈そうなのだわさ。
私こっちではこのサイズが普通なのだわさ。〉



モコモコで″大きな″真っ白い手の主、先程まで子猫同然であったステラの姿が、いつの間にか何処ぞのテーマパークにでも居そうな2~3頭身位のずんぐりとした大型の猫に変わっていた。

しかもどっしりとした2本の後ろ足で自重を支え、二足歩行で立っているから尚更驚きである。

隣で尻尾を手繰り寄せていたグリードも思わず固まり、ステラのモコモコの体毛に半分程埋もれていた。非常に羨ましい、そこ代わって。

なんてやり取りをしていたら



『『『スゥウウウウ…』』』(減速&微風)

『『バサバサッ!』』


〔お帰りなさいませステラ女王様。(ハーピー1)〕

〔そちらの親子様が下界の街の領主様ですね。
…それと、そちらの龍と龍人様は…?(ハーピー2)〕 


足場となっていた陣が減速し、それに伴って風も幾分か収まった。

直後翼を羽ばたかせて2人のハーピー族がやって来てステラとノア達を迎える。

そしてもう1体。


『『バッサァッ!』』

《やぁノア殿、よく参ったな。
あそこに見えるのが天空大陸・第3諸島『ハルモニア』だ。》


ノアと共に竜征趙と戦ったある意味戦友の四季龍インヴェルノも飛来。
彼が指差す方向には、雲海の上に横に長い菱形状の巨大な島が見えていた。
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