65 / 114
Side郡司『嫉妬』11-1
しおりを挟む
翌週にかけて、仕事が立てこみはじめて、いわゆる繁忙期に入った。
堀井に告白されたことなんて、はるか昔のようだ。あえて考えないようにしているところもあるが…。
今はとにかく仕事に集中しないと。
産休に入る女子社員の代わりに、派遣社員を採用することになった。
元・人事課の社員に、面接から何からすべてお願いする。
手が回らないし、彼にもどんどん仕事をさせて自信をつけさせたいのもあった。
「新しく入ってくる派遣さんは、鈴木さんが紹介してくれたんです。コールセンターには珍しい法学部出身の男性ですよ」と言っていたのは覚えている。
でもまさか…。
堀井と顔見知りだったとは。
臨時朝礼で、戸谷シンヤと名乗ったその男は。
「あ、ホリカヨさん!久しぶり!」といきなり堀井に声をかけた。
「戸谷くん!」
「美玲に紹介されてきたよ!」
そいつはいかにもクローゼットにしまいっぱなしにしてました、というようなシワだらけのスーツを着て、長い髪を後ろで結んでいる。
…馴れ馴れしいな。
しかも、やたらと声がいい。
…イラつく。
「俺、ホリカヨさんと一緒のとこで働きたいな。ダメですかぁ?」
石井課長が、後ろにしりぞいたのがわかった。
いまのがトキめくってことか?
石井課長はあきらかに戸谷にトキめいてたよな?
「堀井は…いまどっちかというと営業部寄りの仕事してるからなぁ」
と、ここで。矢島が入ってきて。
…堀井は元コールセンターだから戸谷の面倒見てあげれば?せっかくの指名なんだから。
と言っているのが聞こえてきた。
「う、うむ……」
石井課長は「そうだな」と、簡単にほだされた。
「じゃあしばらく…堀井さんは戸谷さんの教育係ということで」
「やったぁ!」
戸谷が喜ぶ。
もう、静観なんてできなかった。
「それはまずいですね」
俺は、会話の中に入っていく。
堀井の顔をチラッと見ると、今にも泣き出しそうな顔をしている。
俺も後ろに退きそうになるのをこらえながら言った。
「新年あけたら受注会の準備が始まるのに、堀井さんをコールセンターに戻すことはできません」
くっそー……。
公私混同だけはしたくなかったのに。
「戻すとは言ってないです。一週間くらいお世話してあげたらいいんじゃないですか?って提案しただけです」
矢島が、ぷくぅと頬を膨らませていじけたように言う。
「ようやく慣れてきた仕事から離れるのは、思っている以上に大変だぞ。矢島さん、あなたが同じ立場だったらできますか?」
「私は…堀井さんとは違うんで」
その言い方にムカッときたが。
「ホリカヨと違うから私はできます。って言いたいわけ? 確かにホリカヨはやることはトロいわよ。でも雑用だってなんだって確実にやる子よ!」
俺の言葉を代弁するようかのように辻本さんまで入ってきて、なんだか…大変なことになった。
ヒートアップする辻本さんをなだめようとすると。
「すみません…俺、誰でもいいですから」
戸谷がオドオドしながら言った。
そうだ。お前が堀井のそばがいいから、なんて言うから。
…ん?なんで俺はこんなにイライラしてんだろう?
鈴木が詫びにやってきて、事態は収束した。
矢島は俺の顔をにらみつけてその場を去っていく。
…仕事に私情を持ち込んでどうすんだ!
俺は自分に怒りを覚える。
しばらくしてから。
「ホリカヨさーん」
戸谷の声が聞こえる。
キーボードを叩く手を止めて耳をすませると、ランチの誘いをしているようだ。
…残念だな。そんな簡単に堀井はなびかないぞ。
「…そうだったんだ。お昼の時間でよければ、アドバイスするよ」
え?
「やった!よろしくお願いしまーす」
戸谷の声が聞こえて、俺は耳を疑った。
ショックをうけている自分にも愕然とした。
堀井に告白されたことなんて、はるか昔のようだ。あえて考えないようにしているところもあるが…。
今はとにかく仕事に集中しないと。
産休に入る女子社員の代わりに、派遣社員を採用することになった。
元・人事課の社員に、面接から何からすべてお願いする。
手が回らないし、彼にもどんどん仕事をさせて自信をつけさせたいのもあった。
「新しく入ってくる派遣さんは、鈴木さんが紹介してくれたんです。コールセンターには珍しい法学部出身の男性ですよ」と言っていたのは覚えている。
でもまさか…。
堀井と顔見知りだったとは。
臨時朝礼で、戸谷シンヤと名乗ったその男は。
「あ、ホリカヨさん!久しぶり!」といきなり堀井に声をかけた。
「戸谷くん!」
「美玲に紹介されてきたよ!」
そいつはいかにもクローゼットにしまいっぱなしにしてました、というようなシワだらけのスーツを着て、長い髪を後ろで結んでいる。
…馴れ馴れしいな。
しかも、やたらと声がいい。
…イラつく。
「俺、ホリカヨさんと一緒のとこで働きたいな。ダメですかぁ?」
石井課長が、後ろにしりぞいたのがわかった。
いまのがトキめくってことか?
石井課長はあきらかに戸谷にトキめいてたよな?
「堀井は…いまどっちかというと営業部寄りの仕事してるからなぁ」
と、ここで。矢島が入ってきて。
…堀井は元コールセンターだから戸谷の面倒見てあげれば?せっかくの指名なんだから。
と言っているのが聞こえてきた。
「う、うむ……」
石井課長は「そうだな」と、簡単にほだされた。
「じゃあしばらく…堀井さんは戸谷さんの教育係ということで」
「やったぁ!」
戸谷が喜ぶ。
もう、静観なんてできなかった。
「それはまずいですね」
俺は、会話の中に入っていく。
堀井の顔をチラッと見ると、今にも泣き出しそうな顔をしている。
俺も後ろに退きそうになるのをこらえながら言った。
「新年あけたら受注会の準備が始まるのに、堀井さんをコールセンターに戻すことはできません」
くっそー……。
公私混同だけはしたくなかったのに。
「戻すとは言ってないです。一週間くらいお世話してあげたらいいんじゃないですか?って提案しただけです」
矢島が、ぷくぅと頬を膨らませていじけたように言う。
「ようやく慣れてきた仕事から離れるのは、思っている以上に大変だぞ。矢島さん、あなたが同じ立場だったらできますか?」
「私は…堀井さんとは違うんで」
その言い方にムカッときたが。
「ホリカヨと違うから私はできます。って言いたいわけ? 確かにホリカヨはやることはトロいわよ。でも雑用だってなんだって確実にやる子よ!」
俺の言葉を代弁するようかのように辻本さんまで入ってきて、なんだか…大変なことになった。
ヒートアップする辻本さんをなだめようとすると。
「すみません…俺、誰でもいいですから」
戸谷がオドオドしながら言った。
そうだ。お前が堀井のそばがいいから、なんて言うから。
…ん?なんで俺はこんなにイライラしてんだろう?
鈴木が詫びにやってきて、事態は収束した。
矢島は俺の顔をにらみつけてその場を去っていく。
…仕事に私情を持ち込んでどうすんだ!
俺は自分に怒りを覚える。
しばらくしてから。
「ホリカヨさーん」
戸谷の声が聞こえる。
キーボードを叩く手を止めて耳をすませると、ランチの誘いをしているようだ。
…残念だな。そんな簡単に堀井はなびかないぞ。
「…そうだったんだ。お昼の時間でよければ、アドバイスするよ」
え?
「やった!よろしくお願いしまーす」
戸谷の声が聞こえて、俺は耳を疑った。
ショックをうけている自分にも愕然とした。
0
あなたにおすすめの小説
ハイスペミュージシャンは女神(ミューズ)を手放さない!
汐瀬うに
恋愛
雫は失恋し、単身オーストリア旅行へ。そこで素性を隠した男:隆介と出会う。意気投合したふたりは数日を共にしたが、最終日、隆介は雫を残してひと足先にった。スマホのない雫に番号を書いたメモを残したが、それを別れの言葉だと思った雫は連絡せずに日本へ帰国。日本で再会したふたりの恋はすぐに再燃するが、そこには様々な障害が…
互いに惹かれ合う大人の溺愛×運命のラブストーリーです。
※ムーンライトノベルス・アルファポリス・Nola・Berry'scafeで同時掲載しています
【完結】恋多き悪女(と勘違いされている私)は、強面騎士団長に恋愛指南を懇願される
かほなみり
恋愛
「婚約したんだ」ある日、ずっと好きだった幼馴染が幸せそうに言うのを聞いたアレックス。相手は、背が高くてきつい顔立ちのアレックスとは正反対の、小さくてお人形のようなご令嬢だった。失恋して落ち込む彼女に、実家へ帰省していた「恋多き悪女」として社交界に名を馳せた叔母から、王都での社交に参加して新たな恋を探せばいいと提案される。「あなたが、男を唆す恋多き悪女か」なぜか叔母と間違われたアレックスは、偶然出会った大きな男に恋愛指南を乞われ、指導することに。「待って、私は恋愛初心者よ!?」恋を探しに来たはずなのに、なぜか年上の騎士団長へ恋愛指南をする羽目になった高身長のヒロイン、アレックスと、結婚をせかされつつも、女性とうまくいかないことを気にしている強面騎士団長、エイデンの、すれ違い恋愛物語。
恋は秘密のその先に
葉月 まい
恋愛
秘書課の皆が逃げ出すほど冷血な副社長
仕方なく穴埋めを命じられ
副社長の秘書につくことになった
入社3年目の人事部のOL
やがて互いの秘密を知り
ますます相手と距離を置く
果たして秘密の真相は?
互いのピンチを救えるのか?
そして行き着く二人の関係は…?
【完結】私にだけ当たりの強い騎士様と1メートル以上離れられなくなって絶望中
椿かもめ
恋愛
冒険者ギルドの受付嬢であるステレは幼い頃から妖精の姿を見ることができた。ある日、その妖精たちのイタズラにより、自分にだけ当たりの強い騎士コルネリウスと1メートル以上離れれば発情する呪いをかけられてしまう。明らかに嫌われてると分かっていても、日常生活を送るには互いの協力が必要不可欠。ステレの心労も祟る中、調べ上げた唯一の解呪方法は性的な接触で──。【ステレにだけ異様に冷たい(※事情あり)エリート騎士×社交的で夢見がちなギルドの受付嬢】
※ムーンライトノベルスでも公開中です
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちだというのに。
入社して配属一日目。
直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。
中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。
彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。
それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。
「俺が、悪いのか」
人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。
けれど。
「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」
あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちなのに。
星谷桐子
22歳
システム開発会社営業事務
中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手
自分の非はちゃんと認める子
頑張り屋さん
×
京塚大介
32歳
システム開発会社営業事務 主任
ツンツンあたまで目つき悪い
態度もでかくて人に恐怖を与えがち
5歳の娘にデレデレな愛妻家
いまでも亡くなった妻を愛している
私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?
DEEP FRENCH KISS
名古屋ゆりあ
恋愛
一夜を過ごしたそのお相手は、
「君を食べちゃいたいよ」
就職先の社長でした
「私は食べ物じゃありません!」
再会したその日から、
社長の猛攻撃が止まりません!
お見合いに代理出席したら花嫁になっちゃいました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
綾美は平日派遣の事務仕事をしているが、暇な土日に便利屋のバイトをしている。ある日、お見合いの代理出席をする為にホテルへ向かったのだが、そこにいたのは!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる