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女王とアンドリュー
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空に浮かぶ細い月に雲がかかる。
今夜も国境は戦場と化していた。
草原はむせ返る程の血の臭いで呼吸をするのも苦しい。
だが、もう慣れた。
足元に転がる、人だった物の一部を足蹴にする事にも慣れてしまった。
この惨状を作り上げた「化け物」と言われる男が目の前に居る。
築き上げた屍の山の頂きに、誇らしげに立つ狂戦士と呼ばれる巨躯の男。
「オブザイア殿…今宵は一段と…美しい…」
俺の最愛の人。
この人が作り上げた景色なら、どんな凄惨な景色でも俺は否定しない。
全て受け入れる。
人としてどうかだとか、関係無い。
貴方のすべてが愛しい。
俺は、血に塗れた美しい彼の元へ行こうと足を踏み出した。
「アンドリュー!!」
放たれた矢が、俺を目掛けて飛んで来た。
オブザイア殿の、そんな焦った顔を初めて見た…。
何百、何千もの人間を殺して来たのに…
俺一人の身を案じてくれるんだ…?
それは、すごく嬉しい…。
「ダイオス殿、アンドリューはどうしている?」
山の頂きにある、「彼の国」の城。
戦場で矢を放たれたアンドリューは、矢を受ける前にオブザイアの前で倒れた。
矢を放った者は、即オブザイアが殺した。
倒れた原因に矢は全く関係無かったようで。
「熱が出ているみたいだね。
解熱薬を飲ませて寝かせているから大丈夫だよ。
……それよりオブザイア…デルフィナに戻らないのかい?」
先代国王ダイオスは少し困った顔でオブザイアを見る。
「……ああ、なんとなくな……」
「彼の体調に気づかなかったからと言って、思い詰めちゃ駄目だよ…?」
「彼の国」の城の中、元貴賓室はアンドリューの部屋である。
貴賓室の大きなベッドの真ん中に、アンドリューは寝かせられていた。
ベッドの枕元に腰掛けたオブザイアはアンドリューを見下ろす。
「……オブザイア…殿……」
熱にうかされたアンドリューに、うわごとで名を呼ばれる。
「俺かよ…切ないな、こりゃ…」
オブザイアは額に手を当て苦笑した。
「こんなお前を見ていたら、女王に戻れねぇ…」
いつから俺は…いや、女王は…
コイツをこんなに大事に思うようになっていたのだろうな…。
最初は本当に殺すつもりだった。
それが、懐かれたから情が移ったってぇのも確かにある。
だが、それは俺だろう?
女王はいつも冷たくされていたハズだ。
なのに…今、ここで俺が変化を解こうとするのを拒否される位に、女王が傷付いている。
合わせる顔が無いと…。
「………オブザイア……殿…?」
目を覚ましたアンドリューが呟くように声を出す。
「おう、目ぇ覚ましたか…具合どうだ?あん?」
オブザイアが大きな手の平でアンドリューの頭を撫で回した。
「初めて…オブザイア殿に…会った日の夢を…見ましたよ…
あの日は、何度も…死を覚悟した日だった…。」
「ほう、そうか…殺されかけていたしな。
あの時は、俺もお前を何度も殺そうとしたからな。」
「…………オブザイア殿……俺……あなたが好きだ……」
「………そうか」
オブザイアは目頭を押さえて俯いた。
アンドリューに、女王に、俺がどうしてやれる?
この、笑い話みたいな三角関係を誰に相談出来る?
「あなたの、すべてが好きだ…オブザイア殿…」
「………そうか………」
「そうです貴方のすべて、俺の…です…」
アンドリューはベッドの縁に座るオブザイアの首に腕を回し、オブザイアの唇に自分の唇を押し付けた。
「…………ッ」
アンドリューの舌先が、オブザイアの唇に触れ、唇を開こうとされると、さすがに耐えれなくなったオブザイアは
「……ッわ…!妾だ!妾だから!」
唇同士が触れたままの状態で、オブザイアは逃げるように女王に変わった。
「…っん…ちょ……ッ…!」
アンドリューは女王の細い身体を抱き締め、女王に深い口付けをした。
唇が離れ、互いの吐息を感じながらアンドリューが囁く。
「……すべてが好きだ…と、言った。
…オブザイア殿も、デルフィナも含め、すべてが俺のだ…と。
好きだ…デルフィナ、お前の事も。」
「………そうか……」
「オブザイア殿と同じ口癖なんだな、それ。
そりゃそうか、同一人物だもんな。」
アンドリューは意地悪い笑みを浮かべる。
デルフィナは溢れる涙を止められなくて手の甲で目を隠した。
「女王……いや、デルフィナ……今夜こそ、お前と世継ぎを………」
アンドリューはデルフィナの上に身体を重ね……
バタッと倒れる様にダウンした。
「あ、アンドリュー!?
ね、熱が!まだこんなに!?
お主、何をやっておるのだ!」
女王はアンドリューの看病を始める。
性格は悪いが最愛の夫の。
世継ぎは……うん、また今度だな…うん。
今夜も国境は戦場と化していた。
草原はむせ返る程の血の臭いで呼吸をするのも苦しい。
だが、もう慣れた。
足元に転がる、人だった物の一部を足蹴にする事にも慣れてしまった。
この惨状を作り上げた「化け物」と言われる男が目の前に居る。
築き上げた屍の山の頂きに、誇らしげに立つ狂戦士と呼ばれる巨躯の男。
「オブザイア殿…今宵は一段と…美しい…」
俺の最愛の人。
この人が作り上げた景色なら、どんな凄惨な景色でも俺は否定しない。
全て受け入れる。
人としてどうかだとか、関係無い。
貴方のすべてが愛しい。
俺は、血に塗れた美しい彼の元へ行こうと足を踏み出した。
「アンドリュー!!」
放たれた矢が、俺を目掛けて飛んで来た。
オブザイア殿の、そんな焦った顔を初めて見た…。
何百、何千もの人間を殺して来たのに…
俺一人の身を案じてくれるんだ…?
それは、すごく嬉しい…。
「ダイオス殿、アンドリューはどうしている?」
山の頂きにある、「彼の国」の城。
戦場で矢を放たれたアンドリューは、矢を受ける前にオブザイアの前で倒れた。
矢を放った者は、即オブザイアが殺した。
倒れた原因に矢は全く関係無かったようで。
「熱が出ているみたいだね。
解熱薬を飲ませて寝かせているから大丈夫だよ。
……それよりオブザイア…デルフィナに戻らないのかい?」
先代国王ダイオスは少し困った顔でオブザイアを見る。
「……ああ、なんとなくな……」
「彼の体調に気づかなかったからと言って、思い詰めちゃ駄目だよ…?」
「彼の国」の城の中、元貴賓室はアンドリューの部屋である。
貴賓室の大きなベッドの真ん中に、アンドリューは寝かせられていた。
ベッドの枕元に腰掛けたオブザイアはアンドリューを見下ろす。
「……オブザイア…殿……」
熱にうかされたアンドリューに、うわごとで名を呼ばれる。
「俺かよ…切ないな、こりゃ…」
オブザイアは額に手を当て苦笑した。
「こんなお前を見ていたら、女王に戻れねぇ…」
いつから俺は…いや、女王は…
コイツをこんなに大事に思うようになっていたのだろうな…。
最初は本当に殺すつもりだった。
それが、懐かれたから情が移ったってぇのも確かにある。
だが、それは俺だろう?
女王はいつも冷たくされていたハズだ。
なのに…今、ここで俺が変化を解こうとするのを拒否される位に、女王が傷付いている。
合わせる顔が無いと…。
「………オブザイア……殿…?」
目を覚ましたアンドリューが呟くように声を出す。
「おう、目ぇ覚ましたか…具合どうだ?あん?」
オブザイアが大きな手の平でアンドリューの頭を撫で回した。
「初めて…オブザイア殿に…会った日の夢を…見ましたよ…
あの日は、何度も…死を覚悟した日だった…。」
「ほう、そうか…殺されかけていたしな。
あの時は、俺もお前を何度も殺そうとしたからな。」
「…………オブザイア殿……俺……あなたが好きだ……」
「………そうか」
オブザイアは目頭を押さえて俯いた。
アンドリューに、女王に、俺がどうしてやれる?
この、笑い話みたいな三角関係を誰に相談出来る?
「あなたの、すべてが好きだ…オブザイア殿…」
「………そうか………」
「そうです貴方のすべて、俺の…です…」
アンドリューはベッドの縁に座るオブザイアの首に腕を回し、オブザイアの唇に自分の唇を押し付けた。
「…………ッ」
アンドリューの舌先が、オブザイアの唇に触れ、唇を開こうとされると、さすがに耐えれなくなったオブザイアは
「……ッわ…!妾だ!妾だから!」
唇同士が触れたままの状態で、オブザイアは逃げるように女王に変わった。
「…っん…ちょ……ッ…!」
アンドリューは女王の細い身体を抱き締め、女王に深い口付けをした。
唇が離れ、互いの吐息を感じながらアンドリューが囁く。
「……すべてが好きだ…と、言った。
…オブザイア殿も、デルフィナも含め、すべてが俺のだ…と。
好きだ…デルフィナ、お前の事も。」
「………そうか……」
「オブザイア殿と同じ口癖なんだな、それ。
そりゃそうか、同一人物だもんな。」
アンドリューは意地悪い笑みを浮かべる。
デルフィナは溢れる涙を止められなくて手の甲で目を隠した。
「女王……いや、デルフィナ……今夜こそ、お前と世継ぎを………」
アンドリューはデルフィナの上に身体を重ね……
バタッと倒れる様にダウンした。
「あ、アンドリュー!?
ね、熱が!まだこんなに!?
お主、何をやっておるのだ!」
女王はアンドリューの看病を始める。
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