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145話◆イベント参加者が決定。
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「君は…危険を呼び込み易いタチなのだと師匠から聞いている。
そんな君がどんな危険に捲き込まれたとしても、俺は生命を賭して守り抜く覚悟がある。」
ニコニコと微笑みながらも冷気を纏うサイモンが、わたしの正面に来て両肩に手を置いた。
ヒィィ!さ、寒いんだけどっ!笑顔が怖いぃ!
「だが君が自ら危険に飛び込んで行くのは話が違うだろう?
それを俺が許せるとでも?」
「ひぁあ!仰有る事は、ごもっともなんですけどぉ!
何か、わたしが現場に行かないと駄目な気がしますぅぅ!」
「何を根拠に?
あちらの戦力がどれほどか分からない今、兵士を連れて行ったとて安全とは限らない。
罠だってあるかも知れない。
そんな危険な場に戦う術も身を守る術も持っていない君を俺が連れて行くとでも?」
そっ、そうね……
わたしの戦う術なんて、神の世界から召喚した原稿用紙の束をハリセン代わりにして殴る位しか無いわ。
でも…でも!!
「申し訳御座いませんが…サイモン様。
本来ならば私もサイモン様の意見に賛同する立場であるのですが、今回ばかりは奥様の意志を尊重なされては如何でしょうか…。」
カチュアは、自身が口にした言葉に戸惑いながらもサイモンに意見した。
カチュアも、さっきまでわたしが神殿に行くのは反対していたのに、急に意見を変えた。
変えた割りには自身の意見に戸惑っている様子。
サイモンも、手の平を返した様に意見を変えたカチュアに対して怪訝そうな顔をした。
「なぜ急に意見を変えて、そんな事を言う。
身重の妻が危険な場所に赴く事に賛同した理由は何だ。」
カチュアは辺りを見回してからメイと顔を合わせ、互いに頷いた後フゥっと溜め息を吐いた。
「何て言いますか……圧が凄いんです。」
カチュアに同意したメイが、ヘドバンかって程に激しくコクコクと首を縦に振る。
「サイモン様は感じられませんか?
今、この部屋に充満する圧迫感と申しましょうか…。
何かこう…背後からせっつかれている様な変な圧を感じるのです。」
カチュアの報告にピンと来た。
これは、ディアーナかジャンセンさんが「オラオラ」とわたし達を正しいルートを選ぶ様に圧を出して誘導している。
夢の中でディアーナに会ったカチュアは、口には出さないけど何となくそれを把握している様子。
女神としてのディアーナに会っていないメイまで、何らかの空気を感じているよう。
だけどサイモンには…………
「圧?部屋に圧迫感?何も感じるワケが無かろう!
そんな根拠の無い思い込みよりも、めぐみの安全が最大優先事項だ!」
と彼なりの『わたし第一』とゆー揺るがない絶対的な正義があり、周りに流されないしブレないし、危険度が高い方へ選択を変える様な声は耳に入らない。
それに実直であるがゆえか分からないけど、視野が狭いと言うか鈍感過ぎると言うか…
神の気配を感じるどころか、自分の身近に神の一族が居る事すらも把握してないんだもんな。
「あのーサイモン様。
その神殿とやらに、私とカチュアも奥様のお供として、ご一緒して連れてって欲しいです。」
メイが右手を挙げ、熱くなったサイモンにシレっと言った。
「誰が、めぐみを神殿に連れて行くと言った!!」
メイに対して苛立ちと不満を持つサイモンは一層険しい顔になり声を荒らげようとしたが、メイは平然としたまま指先を交差させバッテンの形にし、自分の口の前に置いて見せた。
ミ◯フィーちゃんみたいだ。
「サイモン様、奥様の御身体を心配なさるのならば大声なんか出しちゃ駄目です。シーっ。
それに冷気だだ漏れしてますが、ご懐妊なさってるかも知れない奥様の身体を冷やしちゃ駄目ですよ。
……あのですね、奥様を連れて行く理由はちゃんとあるんです。」
珍しくマトモな事を言うメイに指摘されたサイモンは、ハッとしたようにわたしを見て落ち着きを取り戻すと冷気の放出を抑え、軽く咳払いをしてからわたしに謝った。
「すまない、めぐみ……。
君を恫喝しているつもりはなかった…。」
わたしはニコリと微笑み頷いた。
分かってますよ。
サイモンてば、わたし愛が強すぎて暴走しちゃったんですよね。
それよりメイが言う、わたしを神殿に連れて行く理由って?
もしかして、メイの頭にディアーナが『めぐみを神殿に連れて行きなさい』って直接語りかけて来たとか?
「あのですねサイモン様、私…神聖国に行った時の事を思い出しまして。
奥様が安全な場所に居る事が、必ずしも安全だと言えない気がするんですよね。」
神聖国と聞き、サイモンがピクッと片眉を動かした。
エリーゼが傀儡と化した一万の兵士を連れラジェアベリアを侵攻しようとした際
わたしはメイとスファイの3人で、共に危険が及ばぬ様にと神聖国の宿屋の一室に避難していた。
だけど転移石を使ったエリーゼが神聖国の宿に突然現れ、わたしを拐った。
あの時わたしは、エリーゼに殺される所だったのを…
「宿屋に居た奥様は私の目の前で拐われました。
あの時、サイモン様がギリで間に合ったから奥様を助けられたって聞きましたよ。
今回だって、いきなり賊が邸に現れないとは限りませんよね。
そう思ったから、邸内でも警戒してらっしゃるんでしょ?
いきなり部屋に飛び込んだ私をカチュアが斬ろうとした位だし。」
「それは…確かにそうだが……。
しかし神殿までの道は険しく魔獣も現れる…。
めぐみを危険に曝す訳には…」
メイの言う事も一理あるが、と額に指の背を当てたサイモンが苦悩する様に深く考え始めた。
「危険かも知れませんが、サイモン様の目の届かない所で奥様に何かあった場合の事を考えたら、目が届いてサイモン様が秒で助けに行ける所に居て貰った方が良くありません?
カチュアと私も同行しますから、奥様の身の回りのお世話はちゃんとしますし、いざとなれば私達が盾となりますし。」
「確かにそうだな。
奥様を邸に残して行き、事を成し遂げ邸に帰って来た時に奥様の不幸を知らされる事になれば後悔は大きく、より悲しみに打ちひしがれる事になるでしょうし…。」
それ、わたしが死んでる例え?
カチュアは何でそう、例え話で具体的な悪い結果を口に出しちゃうのよ!
スファイの事も、死んでておかしくないみたいな言い方したし!
でもカチュアの例え話はサイモンの不安を煽るには好手だったみたいで、カチュアの話を想像して焦ったのか、サイモンはわたしが神殿に行く事をすんなり認めてくれた。
「分かった、めぐみも一緒に行こう!
何があっても俺が必ず君を守るからな!」
「ありがとう、サイモン!」
それにしても……
わたしの護衛でもあるカチュアはともかく、メイまでもが神殿に行くって言い出すとは思わなかったわ。
いくら兵士さん達が守ってくれていても、やはり魔獣とかと出くわしたりするのは怖いと思うんだけど。
わたしの考えを読んだかの様に、メイが鼻息を荒くして豊満な胸をドンと叩いた。
「愛する奥様1人を危険な場所に送り出したりしませんよ!
サイモン様とカチュアが剣ならば私は盾となり、身を挺して奥様をお守り致しますわ!」
おおお!いつもは痴女みたいなメイが、何か珍しくマトモっぽい事を言ってる。
ちゃんと侍女っぽいわよ!
「…それに私…少しでも早くクソバカの顔を見たいし…ぶん殴りたいんです。
私一人、邸で待ってるなんて…耐えれません…。」
「……メイったら……。」
くるっとわたしに背を向けたメイが、小声でボソボソと呟いた。
照れ隠しなのかしら…スファイの事を心配してるのに、ワザとそんな突き放した様な冷たい言い方をするのね。
殴るなんて言って、顔を見たらホッとして抱き着いちゃったりして…
わたしに背を向けたメイの正面に立つカチュアが、メイの顔を見て顔をしかめ、頭が痛そうに額を押さえた。
「本当にスファイを殴る程度で済むのか…?
メイ、今のお前の表情はスファイを半殺しにしてやると言ってるみたいだぞ。」
えぇッ!?は、半殺し!?
「当たり前じゃない!ムカついてるんだもん!
阿呆どものアジトから解放されて、邸に着く前にまたすぐ拐われて!アホか!
アイツが誘拐されたせいで私はジジィに昔話を聞きに行く羽目になり、その見返りにジジィに胸触られたんだから!」
「胸っ…え…話を聞くためには、お祖父様に胸を触らせないといけないの?」
「そーなんですよ、あのスケベジジィ。
話を聞きたければ胸にタッチさせろって言うんですよ。
まぁ、私はパイタッチ位全然ヘーキなんですけどね。
ただ、クソバカのせいだと思ったら腹立たしくて。」
メイは、大きな胸を腹を叩く様にパンパンと叩いてから思い出した様に「ケッ」と悪態をついた。
うわぁ…それ、ホントにゲームの中でのイベントだったら、ちょっとマズかったかもなぁ。
イベントを起こす為に、ヒロインがNPCのお爺さんに胸を触らせるとか…乙女ゲームとして有り得ないわぁ。
ジャンセンさん、イベントの作りが雑……
いや確かにあの人、エロいの好きだったけど…オフィーリアさんがジジィに胸を触らせるワケ無いし…。
ゲームのイベントとしては乙女ゲームの主人公が胸を触らせるなんてプレーヤーが納得しないだろうし、この世界でのオフィーリアさんだったらジジィの命が危うい。
こりゃ没ネタだよね。
だからって現実世界に没イベントを放置ってのもなぁ。
「とにかく……明日には出発出来る様に準備はしておこう。
俺は一度城に行き、兵士を動かせる様に殿下に頼んで来る。
すぐ戻るが、二人にはめぐみを頼んだ。」
サイモンはカチュアとメイにわたしを任せ、一度邸を出て行った。
わたしはカチュアとメイの前でベッドに横になり、大きく息を吐く。
「奥様…ひどくお疲れの様ですが、お身体大丈夫でしょうか…。
私は奥様が神殿に向かう事、本音では賛成致しかねます。」
横たわるわたしの顔を覗き込んだイケメンなカチュアが、心配そうに言って、うっすらと汗ばむわたしの額に布を当てた。
「圧を感じたんでしょ?
それ、わたしが行く事が必須ってディアーナの忠告だと思うの。
わたしが行かなきゃならない理由は分からないけど。」
だから多少、身体がシンドくても頑張って行くわ。
神様の…ううん、大事な地キュ友(地球の友達)の忠告だものね。
それに…『聖女の祈り―月の輝く夜の帳に―』オタクとしては、このイベントの顛末を見届けておかないとね!
▼
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「さぁ……カチュア様のために覚悟を決めて下さい……
オースティン様、いいえオリビア様!」
「ちょっと待て…本当にこれがカチュアの為になるのか?」
町の外れの一角にある民家の前で、貴婦人の姿のオースティンは、従者の青年にコソコソと小声で訊ねた。
数時間前にカチュアが邸を去り、意気消沈状態だったオースティンだが、カチュアの為に自分が出来る事をしようと自身を奮い立たせた。
「その意気です!
実はオースティン様にしか出来ない事がございます!
早速ですが、オリビア様になって下さい!」
と言われ、理由も分からぬままオリビアの姿になったオースティンは従者の青年に、しばし馬車に揺られて町に連れ出された。
賑やかな街から少し外れ、辿り着いた町の民家は異国情緒溢れる内装が施されており、そこには語り部と呼ばれる老人が居た。
オースティンは先ほど、その老人に「昔話を聞きたいなら、チチを触らせろ」と言われた。
「チチって…俺のは詰め物の偽チチじゃないか!
バレたら、どうするんだ!」
「かと言って、胸を触らせる為だけに女性を用意するなんて出来ませんし。
それにご家族の方に伺いましたが、あのご老人は服の上から撫でて触るだけだそうなんで。
揉んだり吸ったり、生を見せろとは言わないらしいんで!
バレやしませんて!」
━━カチュアの為に…自分が出来る事ならば、多少無理をしてでも何とかしようと決意をしたのだが……
決意して一番最初の協力が老人に偽物のチチを触らせるって…
偽チチでも恥ずかしく感じるのは何なんだ…
いや、カチュアの為だから我慢するけどなっ!━━
オースティンは下唇を噛み、恥じらいを含みつつも老人を騙している罪悪感も有り、何とも複雑な面持ちで民家に入り、老人の前に胸を突き出すように座った。
「おお、中々に大きなチチじゃの!
孫娘もデカかったが、これもまた……
まさか貴族令嬢のチチに触れる機会が来るとは…」
『貴族令息の偽チチだがな…』と考えつつ胸に触れられながら、老人の昔語りの歌を聞いたオースティンの脳裏に、神殿への道がポンっと思い出した様に浮かんだ。
「え……?今……
行った事も無い場所の地図が頭に浮かんで……??
あと、変な女の声も………」
━━おめでとう!
あなたは神殿イベントへの参加が決定しました!
つか、変な女の声ってテメェこら!━━
そんな君がどんな危険に捲き込まれたとしても、俺は生命を賭して守り抜く覚悟がある。」
ニコニコと微笑みながらも冷気を纏うサイモンが、わたしの正面に来て両肩に手を置いた。
ヒィィ!さ、寒いんだけどっ!笑顔が怖いぃ!
「だが君が自ら危険に飛び込んで行くのは話が違うだろう?
それを俺が許せるとでも?」
「ひぁあ!仰有る事は、ごもっともなんですけどぉ!
何か、わたしが現場に行かないと駄目な気がしますぅぅ!」
「何を根拠に?
あちらの戦力がどれほどか分からない今、兵士を連れて行ったとて安全とは限らない。
罠だってあるかも知れない。
そんな危険な場に戦う術も身を守る術も持っていない君を俺が連れて行くとでも?」
そっ、そうね……
わたしの戦う術なんて、神の世界から召喚した原稿用紙の束をハリセン代わりにして殴る位しか無いわ。
でも…でも!!
「申し訳御座いませんが…サイモン様。
本来ならば私もサイモン様の意見に賛同する立場であるのですが、今回ばかりは奥様の意志を尊重なされては如何でしょうか…。」
カチュアは、自身が口にした言葉に戸惑いながらもサイモンに意見した。
カチュアも、さっきまでわたしが神殿に行くのは反対していたのに、急に意見を変えた。
変えた割りには自身の意見に戸惑っている様子。
サイモンも、手の平を返した様に意見を変えたカチュアに対して怪訝そうな顔をした。
「なぜ急に意見を変えて、そんな事を言う。
身重の妻が危険な場所に赴く事に賛同した理由は何だ。」
カチュアは辺りを見回してからメイと顔を合わせ、互いに頷いた後フゥっと溜め息を吐いた。
「何て言いますか……圧が凄いんです。」
カチュアに同意したメイが、ヘドバンかって程に激しくコクコクと首を縦に振る。
「サイモン様は感じられませんか?
今、この部屋に充満する圧迫感と申しましょうか…。
何かこう…背後からせっつかれている様な変な圧を感じるのです。」
カチュアの報告にピンと来た。
これは、ディアーナかジャンセンさんが「オラオラ」とわたし達を正しいルートを選ぶ様に圧を出して誘導している。
夢の中でディアーナに会ったカチュアは、口には出さないけど何となくそれを把握している様子。
女神としてのディアーナに会っていないメイまで、何らかの空気を感じているよう。
だけどサイモンには…………
「圧?部屋に圧迫感?何も感じるワケが無かろう!
そんな根拠の無い思い込みよりも、めぐみの安全が最大優先事項だ!」
と彼なりの『わたし第一』とゆー揺るがない絶対的な正義があり、周りに流されないしブレないし、危険度が高い方へ選択を変える様な声は耳に入らない。
それに実直であるがゆえか分からないけど、視野が狭いと言うか鈍感過ぎると言うか…
神の気配を感じるどころか、自分の身近に神の一族が居る事すらも把握してないんだもんな。
「あのーサイモン様。
その神殿とやらに、私とカチュアも奥様のお供として、ご一緒して連れてって欲しいです。」
メイが右手を挙げ、熱くなったサイモンにシレっと言った。
「誰が、めぐみを神殿に連れて行くと言った!!」
メイに対して苛立ちと不満を持つサイモンは一層険しい顔になり声を荒らげようとしたが、メイは平然としたまま指先を交差させバッテンの形にし、自分の口の前に置いて見せた。
ミ◯フィーちゃんみたいだ。
「サイモン様、奥様の御身体を心配なさるのならば大声なんか出しちゃ駄目です。シーっ。
それに冷気だだ漏れしてますが、ご懐妊なさってるかも知れない奥様の身体を冷やしちゃ駄目ですよ。
……あのですね、奥様を連れて行く理由はちゃんとあるんです。」
珍しくマトモな事を言うメイに指摘されたサイモンは、ハッとしたようにわたしを見て落ち着きを取り戻すと冷気の放出を抑え、軽く咳払いをしてからわたしに謝った。
「すまない、めぐみ……。
君を恫喝しているつもりはなかった…。」
わたしはニコリと微笑み頷いた。
分かってますよ。
サイモンてば、わたし愛が強すぎて暴走しちゃったんですよね。
それよりメイが言う、わたしを神殿に連れて行く理由って?
もしかして、メイの頭にディアーナが『めぐみを神殿に連れて行きなさい』って直接語りかけて来たとか?
「あのですねサイモン様、私…神聖国に行った時の事を思い出しまして。
奥様が安全な場所に居る事が、必ずしも安全だと言えない気がするんですよね。」
神聖国と聞き、サイモンがピクッと片眉を動かした。
エリーゼが傀儡と化した一万の兵士を連れラジェアベリアを侵攻しようとした際
わたしはメイとスファイの3人で、共に危険が及ばぬ様にと神聖国の宿屋の一室に避難していた。
だけど転移石を使ったエリーゼが神聖国の宿に突然現れ、わたしを拐った。
あの時わたしは、エリーゼに殺される所だったのを…
「宿屋に居た奥様は私の目の前で拐われました。
あの時、サイモン様がギリで間に合ったから奥様を助けられたって聞きましたよ。
今回だって、いきなり賊が邸に現れないとは限りませんよね。
そう思ったから、邸内でも警戒してらっしゃるんでしょ?
いきなり部屋に飛び込んだ私をカチュアが斬ろうとした位だし。」
「それは…確かにそうだが……。
しかし神殿までの道は険しく魔獣も現れる…。
めぐみを危険に曝す訳には…」
メイの言う事も一理あるが、と額に指の背を当てたサイモンが苦悩する様に深く考え始めた。
「危険かも知れませんが、サイモン様の目の届かない所で奥様に何かあった場合の事を考えたら、目が届いてサイモン様が秒で助けに行ける所に居て貰った方が良くありません?
カチュアと私も同行しますから、奥様の身の回りのお世話はちゃんとしますし、いざとなれば私達が盾となりますし。」
「確かにそうだな。
奥様を邸に残して行き、事を成し遂げ邸に帰って来た時に奥様の不幸を知らされる事になれば後悔は大きく、より悲しみに打ちひしがれる事になるでしょうし…。」
それ、わたしが死んでる例え?
カチュアは何でそう、例え話で具体的な悪い結果を口に出しちゃうのよ!
スファイの事も、死んでておかしくないみたいな言い方したし!
でもカチュアの例え話はサイモンの不安を煽るには好手だったみたいで、カチュアの話を想像して焦ったのか、サイモンはわたしが神殿に行く事をすんなり認めてくれた。
「分かった、めぐみも一緒に行こう!
何があっても俺が必ず君を守るからな!」
「ありがとう、サイモン!」
それにしても……
わたしの護衛でもあるカチュアはともかく、メイまでもが神殿に行くって言い出すとは思わなかったわ。
いくら兵士さん達が守ってくれていても、やはり魔獣とかと出くわしたりするのは怖いと思うんだけど。
わたしの考えを読んだかの様に、メイが鼻息を荒くして豊満な胸をドンと叩いた。
「愛する奥様1人を危険な場所に送り出したりしませんよ!
サイモン様とカチュアが剣ならば私は盾となり、身を挺して奥様をお守り致しますわ!」
おおお!いつもは痴女みたいなメイが、何か珍しくマトモっぽい事を言ってる。
ちゃんと侍女っぽいわよ!
「…それに私…少しでも早くクソバカの顔を見たいし…ぶん殴りたいんです。
私一人、邸で待ってるなんて…耐えれません…。」
「……メイったら……。」
くるっとわたしに背を向けたメイが、小声でボソボソと呟いた。
照れ隠しなのかしら…スファイの事を心配してるのに、ワザとそんな突き放した様な冷たい言い方をするのね。
殴るなんて言って、顔を見たらホッとして抱き着いちゃったりして…
わたしに背を向けたメイの正面に立つカチュアが、メイの顔を見て顔をしかめ、頭が痛そうに額を押さえた。
「本当にスファイを殴る程度で済むのか…?
メイ、今のお前の表情はスファイを半殺しにしてやると言ってるみたいだぞ。」
えぇッ!?は、半殺し!?
「当たり前じゃない!ムカついてるんだもん!
阿呆どものアジトから解放されて、邸に着く前にまたすぐ拐われて!アホか!
アイツが誘拐されたせいで私はジジィに昔話を聞きに行く羽目になり、その見返りにジジィに胸触られたんだから!」
「胸っ…え…話を聞くためには、お祖父様に胸を触らせないといけないの?」
「そーなんですよ、あのスケベジジィ。
話を聞きたければ胸にタッチさせろって言うんですよ。
まぁ、私はパイタッチ位全然ヘーキなんですけどね。
ただ、クソバカのせいだと思ったら腹立たしくて。」
メイは、大きな胸を腹を叩く様にパンパンと叩いてから思い出した様に「ケッ」と悪態をついた。
うわぁ…それ、ホントにゲームの中でのイベントだったら、ちょっとマズかったかもなぁ。
イベントを起こす為に、ヒロインがNPCのお爺さんに胸を触らせるとか…乙女ゲームとして有り得ないわぁ。
ジャンセンさん、イベントの作りが雑……
いや確かにあの人、エロいの好きだったけど…オフィーリアさんがジジィに胸を触らせるワケ無いし…。
ゲームのイベントとしては乙女ゲームの主人公が胸を触らせるなんてプレーヤーが納得しないだろうし、この世界でのオフィーリアさんだったらジジィの命が危うい。
こりゃ没ネタだよね。
だからって現実世界に没イベントを放置ってのもなぁ。
「とにかく……明日には出発出来る様に準備はしておこう。
俺は一度城に行き、兵士を動かせる様に殿下に頼んで来る。
すぐ戻るが、二人にはめぐみを頼んだ。」
サイモンはカチュアとメイにわたしを任せ、一度邸を出て行った。
わたしはカチュアとメイの前でベッドに横になり、大きく息を吐く。
「奥様…ひどくお疲れの様ですが、お身体大丈夫でしょうか…。
私は奥様が神殿に向かう事、本音では賛成致しかねます。」
横たわるわたしの顔を覗き込んだイケメンなカチュアが、心配そうに言って、うっすらと汗ばむわたしの額に布を当てた。
「圧を感じたんでしょ?
それ、わたしが行く事が必須ってディアーナの忠告だと思うの。
わたしが行かなきゃならない理由は分からないけど。」
だから多少、身体がシンドくても頑張って行くわ。
神様の…ううん、大事な地キュ友(地球の友達)の忠告だものね。
それに…『聖女の祈り―月の輝く夜の帳に―』オタクとしては、このイベントの顛末を見届けておかないとね!
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「さぁ……カチュア様のために覚悟を決めて下さい……
オースティン様、いいえオリビア様!」
「ちょっと待て…本当にこれがカチュアの為になるのか?」
町の外れの一角にある民家の前で、貴婦人の姿のオースティンは、従者の青年にコソコソと小声で訊ねた。
数時間前にカチュアが邸を去り、意気消沈状態だったオースティンだが、カチュアの為に自分が出来る事をしようと自身を奮い立たせた。
「その意気です!
実はオースティン様にしか出来ない事がございます!
早速ですが、オリビア様になって下さい!」
と言われ、理由も分からぬままオリビアの姿になったオースティンは従者の青年に、しばし馬車に揺られて町に連れ出された。
賑やかな街から少し外れ、辿り着いた町の民家は異国情緒溢れる内装が施されており、そこには語り部と呼ばれる老人が居た。
オースティンは先ほど、その老人に「昔話を聞きたいなら、チチを触らせろ」と言われた。
「チチって…俺のは詰め物の偽チチじゃないか!
バレたら、どうするんだ!」
「かと言って、胸を触らせる為だけに女性を用意するなんて出来ませんし。
それにご家族の方に伺いましたが、あのご老人は服の上から撫でて触るだけだそうなんで。
揉んだり吸ったり、生を見せろとは言わないらしいんで!
バレやしませんて!」
━━カチュアの為に…自分が出来る事ならば、多少無理をしてでも何とかしようと決意をしたのだが……
決意して一番最初の協力が老人に偽物のチチを触らせるって…
偽チチでも恥ずかしく感じるのは何なんだ…
いや、カチュアの為だから我慢するけどなっ!━━
オースティンは下唇を噛み、恥じらいを含みつつも老人を騙している罪悪感も有り、何とも複雑な面持ちで民家に入り、老人の前に胸を突き出すように座った。
「おお、中々に大きなチチじゃの!
孫娘もデカかったが、これもまた……
まさか貴族令嬢のチチに触れる機会が来るとは…」
『貴族令息の偽チチだがな…』と考えつつ胸に触れられながら、老人の昔語りの歌を聞いたオースティンの脳裏に、神殿への道がポンっと思い出した様に浮かんだ。
「え……?今……
行った事も無い場所の地図が頭に浮かんで……??
あと、変な女の声も………」
━━おめでとう!
あなたは神殿イベントへの参加が決定しました!
つか、変な女の声ってテメェこら!━━
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◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
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