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藍玉さんに、なります!
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「蒼玉さまがお目覚めになられました。藍玉さまをお呼びです。」
コンコンッと控えめなノックのあと、召使いと思われる女の人がそう告げた。
蒼玉が倒れたあと、私はすぐ春林さんにこの部屋に通されたから、蒼玉がどうなっていたのか知らない。私を読んでるとか…春林さんが立ち上がる。やっぱ行く、よね…どんな顔して会うのよ…仕方なく、とぼとぼと春林さんに続く。
「蒼玉さま。藍玉さまにございます。」
そっか、蒼玉は知らないのね。春林さんが、私は藍玉じゃないって知ってること。なんかややこしいことになってきたな。
「春林、下がれ。」
蒼玉の部屋の中は昨日に比べれば、明るかった。幽玄さんが犬のように…ごほん、保護者のように張り付いているせいかもしれない。春林さんの足音が遠ざかっていって、部屋は沈黙に包まれた。
「もっと近くへ来い。…そう。…悪かったな。さっきは。」
さっきって言っても、もう昼近いですけどね。
「春林から話は聞いたのか。」
頷くと、蒼玉は小さくため息をつく。かたくなに目を合わせてくれないのは、私を藍玉さんと重ねたくないんだろう。なんか申しわけなくなってくる。
「じゃあ、わかるだろう。藍玉の身体におまえが入っている…入れられたことの意味が。」
意味…?おばさんが私を使った目的は怪しげな薬を蒼玉に使わせることで、宮廷に怪しまれずに入ることができる藍玉さんが都合が良かった…ってことじゃないの?
「バカなのか?お前。穀雨宮がそんな幼児でも分かる手を使うと思うのかよ。」
たしかに私でも怪しいと思ったけどさ…この人、二重人格なの?ちょっとでも心配した私の心を返してほしい。
「穀雨宮の目的は、十中八九お前をコマとしてここに送り込むことだ。」
スパイってこと⁉︎
「大丈夫です!私、おばさんの手下なんかになりません!」
春林さんからあんたたちの話聞いちゃったんだから。そこまで血も涙もない人じゃないって。勢い込んで言ったのに、蒼玉は皮肉な笑いを返しただけ。嫌味なやつ。
「やっぱりバカだな。向こうがなんの手立てもなくお前を手放すと思うのか。たぶん、お前には逆らえない魔法がかかっているだろうな。」
うそ。じゃあ、待てよ。そこまで分かってるなら、白露宮にとって私はいつ爆発するかわからない爆弾なわけで。
「あのっ、私、ここを追い出されますか?」
「ん?…………いや。そうすればお前は殺される。あいつの体を傷つけたくはない。」
ほっ…でも、たぶんおばさんは、こうなることも読んでいたんだろう。大丈夫かな…
「代わりに、お前、藍玉として生活しろ。」
へ?開け放たれたままの窓から、潮の香りがした。
コンコンッと控えめなノックのあと、召使いと思われる女の人がそう告げた。
蒼玉が倒れたあと、私はすぐ春林さんにこの部屋に通されたから、蒼玉がどうなっていたのか知らない。私を読んでるとか…春林さんが立ち上がる。やっぱ行く、よね…どんな顔して会うのよ…仕方なく、とぼとぼと春林さんに続く。
「蒼玉さま。藍玉さまにございます。」
そっか、蒼玉は知らないのね。春林さんが、私は藍玉じゃないって知ってること。なんかややこしいことになってきたな。
「春林、下がれ。」
蒼玉の部屋の中は昨日に比べれば、明るかった。幽玄さんが犬のように…ごほん、保護者のように張り付いているせいかもしれない。春林さんの足音が遠ざかっていって、部屋は沈黙に包まれた。
「もっと近くへ来い。…そう。…悪かったな。さっきは。」
さっきって言っても、もう昼近いですけどね。
「春林から話は聞いたのか。」
頷くと、蒼玉は小さくため息をつく。かたくなに目を合わせてくれないのは、私を藍玉さんと重ねたくないんだろう。なんか申しわけなくなってくる。
「じゃあ、わかるだろう。藍玉の身体におまえが入っている…入れられたことの意味が。」
意味…?おばさんが私を使った目的は怪しげな薬を蒼玉に使わせることで、宮廷に怪しまれずに入ることができる藍玉さんが都合が良かった…ってことじゃないの?
「バカなのか?お前。穀雨宮がそんな幼児でも分かる手を使うと思うのかよ。」
たしかに私でも怪しいと思ったけどさ…この人、二重人格なの?ちょっとでも心配した私の心を返してほしい。
「穀雨宮の目的は、十中八九お前をコマとしてここに送り込むことだ。」
スパイってこと⁉︎
「大丈夫です!私、おばさんの手下なんかになりません!」
春林さんからあんたたちの話聞いちゃったんだから。そこまで血も涙もない人じゃないって。勢い込んで言ったのに、蒼玉は皮肉な笑いを返しただけ。嫌味なやつ。
「やっぱりバカだな。向こうがなんの手立てもなくお前を手放すと思うのか。たぶん、お前には逆らえない魔法がかかっているだろうな。」
うそ。じゃあ、待てよ。そこまで分かってるなら、白露宮にとって私はいつ爆発するかわからない爆弾なわけで。
「あのっ、私、ここを追い出されますか?」
「ん?…………いや。そうすればお前は殺される。あいつの体を傷つけたくはない。」
ほっ…でも、たぶんおばさんは、こうなることも読んでいたんだろう。大丈夫かな…
「代わりに、お前、藍玉として生活しろ。」
へ?開け放たれたままの窓から、潮の香りがした。
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