8 / 30
藍玉さんのお務め
しおりを挟む
私が、藍玉さんとして…?無理無理!話したこともない人の役を演じるなんて、プロ女優でも出来っこない!真っ青になった私に、蒼玉が追い討ちをかける。
「じゃあ、宮廷のものにどう説明しろっていうんだ。穀雨宮と繋がっていると知られれば、命はないぞ。ただでさえ…」
ただでさえ、何よ。反論しようとしたけど、いちいち正論だからできない。ちぇっ…
「分かりました。でも、バレても文句言わないでくださいね。」
「お前の命がなくなるだけだからな。」
んぐっ…
「じゃあ、せめて、バレないように、ヒトに会わなくていいようにしてください!」
ーーーーーーーーー数時間後ーーーーーーーーーーー
…って、言ったはずだったんだけど。なぜか私は、着せ替え人形のように飾り立てられていた。
「藍玉さまがお戻りになって、私どもは大変安堵しておりました。どうかお顔だけでもお見せいただきたく…」
とのことらしい。宮廷で開かれる、貴族たちのパーティー。聞いた話では数十人が参加するとか…さっそくバレる気しかしない。
「藍玉さま。ご準備が整いましたので、こちらへ。」
春林さんがいいなあ、なんて甘い期待はあっさりと裏切られる。部屋を出るとスタンバイしていたのは17.18くらいの女の人だった。
しずしずって言葉がこの上なく似合う彼女に連れられることしばらく。到着したのは、中学校の運動場なんてメじゃないくらい広い中庭だった。まだ人はちらほらって感じ。
「うわぁ!すっごーい!」
あちこちに植えられた木々の花々は、赤、ピンク、白、青…なんとも言えない香りがほわほわと立ち上っている。芝生の緑とあわさってすごく鮮やか!真っ白なテーブルとイスも高級感漂ってるんですけど!
「…藍玉さま…おかわりになられましたね。」
げっ!背の高い木を見上げた格好のまま、私は固まった。もうバレそう…
「前はもっと、悲壮感が漂っていらした…あ、申し訳ございません。つい…」
あれ、なんか思ってたのと違う…春林さんの話だと、蒼玉にべったりな藍玉さんが召使いたちに嫌われて、恨まれてる…みたいなイメージだったんだけど。
目の前のこの召使いさんは、恨んでるというより私を恐がってるみたい。指先が小刻みに震えている。
「さ、さぁ、藍玉さま。お席に参りましょう。」
気がついたら周りにはたくさんの人たち。蒼玉も幽玄さんに付き添われて席に着いていた。よ、よし。藍玉さんのことは、とりあえず後回しだ!
「それでは、皆さま、乾杯といきましょう。」
幽玄さんがグラスを持ち上げた。
「じゃあ、宮廷のものにどう説明しろっていうんだ。穀雨宮と繋がっていると知られれば、命はないぞ。ただでさえ…」
ただでさえ、何よ。反論しようとしたけど、いちいち正論だからできない。ちぇっ…
「分かりました。でも、バレても文句言わないでくださいね。」
「お前の命がなくなるだけだからな。」
んぐっ…
「じゃあ、せめて、バレないように、ヒトに会わなくていいようにしてください!」
ーーーーーーーーー数時間後ーーーーーーーーーーー
…って、言ったはずだったんだけど。なぜか私は、着せ替え人形のように飾り立てられていた。
「藍玉さまがお戻りになって、私どもは大変安堵しておりました。どうかお顔だけでもお見せいただきたく…」
とのことらしい。宮廷で開かれる、貴族たちのパーティー。聞いた話では数十人が参加するとか…さっそくバレる気しかしない。
「藍玉さま。ご準備が整いましたので、こちらへ。」
春林さんがいいなあ、なんて甘い期待はあっさりと裏切られる。部屋を出るとスタンバイしていたのは17.18くらいの女の人だった。
しずしずって言葉がこの上なく似合う彼女に連れられることしばらく。到着したのは、中学校の運動場なんてメじゃないくらい広い中庭だった。まだ人はちらほらって感じ。
「うわぁ!すっごーい!」
あちこちに植えられた木々の花々は、赤、ピンク、白、青…なんとも言えない香りがほわほわと立ち上っている。芝生の緑とあわさってすごく鮮やか!真っ白なテーブルとイスも高級感漂ってるんですけど!
「…藍玉さま…おかわりになられましたね。」
げっ!背の高い木を見上げた格好のまま、私は固まった。もうバレそう…
「前はもっと、悲壮感が漂っていらした…あ、申し訳ございません。つい…」
あれ、なんか思ってたのと違う…春林さんの話だと、蒼玉にべったりな藍玉さんが召使いたちに嫌われて、恨まれてる…みたいなイメージだったんだけど。
目の前のこの召使いさんは、恨んでるというより私を恐がってるみたい。指先が小刻みに震えている。
「さ、さぁ、藍玉さま。お席に参りましょう。」
気がついたら周りにはたくさんの人たち。蒼玉も幽玄さんに付き添われて席に着いていた。よ、よし。藍玉さんのことは、とりあえず後回しだ!
「それでは、皆さま、乾杯といきましょう。」
幽玄さんがグラスを持ち上げた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる