少女マンガの当て馬キャラと入れ替わったらしいんだが。

翡翠

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天才数学者

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 f(x)=x+∑kを1∞(2k)!!とすると…kは…

「氷室さーん?」

ああそうか、この公式が使えて…

「氷室さんっ!」

渋々顔を上げると、見慣れた同僚がいた。長い前髪に黒縁メガネ、よくわからないアニメキャラのTシャツ。『キラキラ⭐︎きらりの恋』の文字が痛い。
三宅拓人。これでも、変人揃いの研究室ではまともな方だ。

「何?」
「ここの計算なんですけど、どうしてもあわなくて…」
「ああ。これは…」
「…なるほど!さすがミス・パーフェクトですね!できないことはないって感じです」

ポンと手を打つ三宅を、眉をひそめて睨む。

「初歩中の初歩だ。こんなくだらないことで私の研究の邪魔をするな」

ミス・パーフェクト。それは若き天才数学者と謳われる私の通り名だ。
何がパーフェクトだ。
数学界にはまだまだわからないことがたくさんある。だから私たちがいると言うのに。
ため息をついて、私はコンピュータに向き直った。

***

「…ん。帰るか」

顔を上げた時、外はもう真っ暗だった。他の研究員はとっくに帰ったらしい。気がつかなかった。鍵を手に、立ち上がった、そのとき。

『ねぇ。ほんとになんでもできるの?』

…え?幼い女の子の声。ここには誰もいないはずだ。そもそも子供の立ち入りは禁止されている。
もちろん、怪奇現象なんて、私は信じない。注意深く辺りを見回すと、隣の机に開かれた少女マンガが目に入った。
三宅拓人の机だ。その、マンガの1ページが…動いていた。マンガの中、ツインテールの女の子が手を振っている。
そろそろと近づく。数学的に立証できない事態が起こっている。好奇心が止まらない。

『じゃあさ、あたしの恋、叶えてよ』

ぶわっと、世界が歪んだ気がした。例のツインテールの女の子が、一息にマンガから飛び出したと思うと、私の腕を掴む。
あっと思った時には、引き摺り込まれていた。
見えない壁の向こう、氷室冬子わたしがいた。何が起こってる?

『お願い。私、すばるくんと付き合いたいの。大好きなのよ。このままじゃ、ダメ、きらりに取られちゃう!』

女性にしては低めの、慣れ親しんだ私の声。ヒステリックに喚かれても、違和感しかない。
しかもちょっと待った。なんだそれ。意味がわからない。混乱する私に構わず、彼女は悲壮な表情で訴える。

『昴くんと付き合ってよ。そしたら体、返してあげる。あなた、なんでもできるんでしょ?ねえ。ミス・パーフェクトさん?』
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