1 / 5
天才数学者
しおりを挟む
f(x)=x+∑kを1∞(2k)!!とすると…kは…
「氷室さーん?」
ああそうか、この公式が使えて…
「氷室さんっ!」
渋々顔を上げると、見慣れた同僚がいた。長い前髪に黒縁メガネ、よくわからないアニメキャラのTシャツ。『キラキラ⭐︎きらりの恋』の文字が痛い。
三宅拓人。これでも、変人揃いの研究室ではまともな方だ。
「何?」
「ここの計算なんですけど、どうしてもあわなくて…」
「ああ。これは…」
「…なるほど!さすがミス・パーフェクトですね!できないことはないって感じです」
ポンと手を打つ三宅を、眉をひそめて睨む。
「初歩中の初歩だ。こんなくだらないことで私の研究の邪魔をするな」
ミス・パーフェクト。それは若き天才数学者と謳われる私の通り名だ。
何がパーフェクトだ。
数学界にはまだまだわからないことがたくさんある。だから私たちがいると言うのに。
ため息をついて、私はコンピュータに向き直った。
***
「…ん。帰るか」
顔を上げた時、外はもう真っ暗だった。他の研究員はとっくに帰ったらしい。気がつかなかった。鍵を手に、立ち上がった、そのとき。
『ねぇ。ほんとになんでもできるの?』
…え?幼い女の子の声。ここには誰もいないはずだ。そもそも子供の立ち入りは禁止されている。
もちろん、怪奇現象なんて、私は信じない。注意深く辺りを見回すと、隣の机に開かれた少女マンガが目に入った。
三宅拓人の机だ。その、マンガの1ページが…動いていた。マンガの中、ツインテールの女の子が手を振っている。
そろそろと近づく。数学的に立証できない事態が起こっている。好奇心が止まらない。
『じゃあさ、あたしの恋、叶えてよ』
ぶわっと、世界が歪んだ気がした。例のツインテールの女の子が、一息にマンガから飛び出したと思うと、私の腕を掴む。
あっと思った時には、引き摺り込まれていた。
見えない壁の向こう、氷室冬子がいた。何が起こってる?
『お願い。私、昴くんと付き合いたいの。大好きなのよ。このままじゃ、ダメ、きらりに取られちゃう!』
女性にしては低めの、慣れ親しんだ私の声。ヒステリックに喚かれても、違和感しかない。
しかもちょっと待った。なんだそれ。意味がわからない。混乱する私に構わず、彼女は悲壮な表情で訴える。
『昴くんと付き合ってよ。そしたら体、返してあげる。あなた、なんでもできるんでしょ?ねえ。ミス・パーフェクトさん?』
「氷室さーん?」
ああそうか、この公式が使えて…
「氷室さんっ!」
渋々顔を上げると、見慣れた同僚がいた。長い前髪に黒縁メガネ、よくわからないアニメキャラのTシャツ。『キラキラ⭐︎きらりの恋』の文字が痛い。
三宅拓人。これでも、変人揃いの研究室ではまともな方だ。
「何?」
「ここの計算なんですけど、どうしてもあわなくて…」
「ああ。これは…」
「…なるほど!さすがミス・パーフェクトですね!できないことはないって感じです」
ポンと手を打つ三宅を、眉をひそめて睨む。
「初歩中の初歩だ。こんなくだらないことで私の研究の邪魔をするな」
ミス・パーフェクト。それは若き天才数学者と謳われる私の通り名だ。
何がパーフェクトだ。
数学界にはまだまだわからないことがたくさんある。だから私たちがいると言うのに。
ため息をついて、私はコンピュータに向き直った。
***
「…ん。帰るか」
顔を上げた時、外はもう真っ暗だった。他の研究員はとっくに帰ったらしい。気がつかなかった。鍵を手に、立ち上がった、そのとき。
『ねぇ。ほんとになんでもできるの?』
…え?幼い女の子の声。ここには誰もいないはずだ。そもそも子供の立ち入りは禁止されている。
もちろん、怪奇現象なんて、私は信じない。注意深く辺りを見回すと、隣の机に開かれた少女マンガが目に入った。
三宅拓人の机だ。その、マンガの1ページが…動いていた。マンガの中、ツインテールの女の子が手を振っている。
そろそろと近づく。数学的に立証できない事態が起こっている。好奇心が止まらない。
『じゃあさ、あたしの恋、叶えてよ』
ぶわっと、世界が歪んだ気がした。例のツインテールの女の子が、一息にマンガから飛び出したと思うと、私の腕を掴む。
あっと思った時には、引き摺り込まれていた。
見えない壁の向こう、氷室冬子がいた。何が起こってる?
『お願い。私、昴くんと付き合いたいの。大好きなのよ。このままじゃ、ダメ、きらりに取られちゃう!』
女性にしては低めの、慣れ親しんだ私の声。ヒステリックに喚かれても、違和感しかない。
しかもちょっと待った。なんだそれ。意味がわからない。混乱する私に構わず、彼女は悲壮な表情で訴える。
『昴くんと付き合ってよ。そしたら体、返してあげる。あなた、なんでもできるんでしょ?ねえ。ミス・パーフェクトさん?』
0
あなたにおすすめの小説
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
妹の身代わりだった私に「本命は君だ」――王宮前で王子に抱き潰され、溺愛がバレました。~私が虐げられるきっかけになった少年が、私と王子を結び付
唯崎りいち
恋愛
妹の身代わりとして王子とデートすることになった私。でも王子の本命は最初から私で――。長年虐げられ、地味でみすぼらしい私が、王子の愛と溺愛に包まれ、ついに幸せを掴む甘々ラブファンタジー。妹や家族との誤解、影武者の存在も絡み、ハラハラと胸キュンが止まらない物語。
悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み
転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?
朱音ゆうひ@『桜の嫁入り』発売中です
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!
「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」
王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。
不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。
もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた?
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。
しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。
断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる