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少女マンガ的設定
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「お嬢さま。お目覚めですか」
ヒッ!突然、にゅっと視界に入り込んできたのは、しわくちゃの顔だった。
シワひとつないスーツとは見事に対照的だ。そう。ちょうど執事、と呼ぶのがピッタリの装い。
見ればこの部屋自体も嫌に豪華だ。フリフリの天蓋付きベッド。ピンクで統一された小物。うっっわ、拒否反応が出そう。
「では、お着替えのお手伝いをさせていただきますね」
…は?しずしず、その執事風老紳士が近づいてくる。ちょっと待った。着替え?
「この変態がっ!」
手元にあったクッションを引っ掴み、力の限り投げつける。
「これはこれは。出過ぎたことを申しました。セイラさまももう12歳になられたのでしたね。大きくなられたことで」
そういうと、なぜか嬉しそうに、去っていく。
セイラ…セイラというのか、この体は。豪華なドレッサーを覗き込むと、予想通り、そこに映っていたのはピンク色の髪をもつ、気の強そうな女の子だった。
ツインテールではないものの、間違いなくあの子だ。
無愛想な研究者の面影は、どこにもない。
どうやら本当に、私とマンガキャラの星羅とやらは、入れ替わったらしい。
今更ながら、サッと血の気が引く。これは大変だ。
数学研究ができないってことじゃないか!
***
ひらひらフリフリのワンピース。色はド派手なピンク。部屋を引っ掻き回して探したのに、まともな服がないなんて。
「それではセイラさま。いってらっしゃいませ」
星野と言うらしい執事に送られて、私は校門に降り立った。
『流れ星学園中等部』
…吐き気がする。
「セイラちゃーん!おはよっ!」
ぼふっと肩に衝撃。ふわんと甘い香り。
中学生のくせに、香水でもつけてるんだろうか。ポニーテールのザ・イケ女子。何を話すべきなんだろう。この歳の子と関わる機会なんて皆無だ。
「…えっと…名前聞いてもいいか?」
こぼれ落ちそうなほど目を見開いて、彼女が首を傾げる。
「朱里だよー!忘れちゃったの?記憶喪失?まじ?」
うるさい。面倒だけど、この子がいないと教室の場所もわからないんだから、仕方ないか。適当あしらっておく。どうやらセイラとやらは人気者らしい。
教室にたどり着くと、あっという間に女子に囲まれてしまった。
「セイラちゃん、今日の服かわいいね。どこの?」
さあ。てか、この服がかわいいとか正気か?
「セイラちゃん、快星くんに告白したんだけど振られちゃったあー…」
知らん。快星って誰だよ。
「でもやっぱり昴くんよねー?」
来た。こいつだ。思わず、声の主の腕を掴んでいた。
「昴って、誰だ?」
「え…セイラちゃん、どうしちゃったの?ほら、あそこにいるじゃない」
言われたとおり目をやると、窓際、端の席に、一際目立つ少年がいた。
涼しげな目元、きめの細かい肌、サラサラの黒髪。なるほど、これが少女マンガ的イケメン…なのか?
「かっこいいよねぇー…あ、みて」
ガララっと教室がドアが開く。
入ってきたのはごく普通にかなりかわいい女の子。あの黄色い髪はたぶん、染めてるわけじゃないんだろう。またまた少女マンガ補正に違いない。
「『キラキラ⭐︎きらりの恋』か」
「セイラちゃん、何言ってるの?」
主人公、きらりに間違いなかった。席は、昴の隣。
こんなことなら、もう少し拓人のオタク全開マシンガントークに付き合っておくんだった。髪の色と顔面偏差値くらいしか、主要キャラを見分ける方法がない。
まずは、ターゲットと接触してみるか。
ため息をついて、私は立ち上がった。
***
ツカツカ近づいていくと、昴が訝しげに顔を上げる。さて何を言えばいいのか。数学的に考えれば、まずは現状把握だろう。どんなに難しい問題でも、条件の確認が第一歩である。
この場合の条件といえば…
「昴。お前、今、好きなやついるのか?」
突然、教室が水を打ったように静まり返った。ん?何か変なこと言ったか?
困ったようにわずかに眉を下げて、昴が口を開く。
「別にいないけど」
ふうん、そうか。なら話が早い。
「じゃあ、私と付き合え」
ヒッ!突然、にゅっと視界に入り込んできたのは、しわくちゃの顔だった。
シワひとつないスーツとは見事に対照的だ。そう。ちょうど執事、と呼ぶのがピッタリの装い。
見ればこの部屋自体も嫌に豪華だ。フリフリの天蓋付きベッド。ピンクで統一された小物。うっっわ、拒否反応が出そう。
「では、お着替えのお手伝いをさせていただきますね」
…は?しずしず、その執事風老紳士が近づいてくる。ちょっと待った。着替え?
「この変態がっ!」
手元にあったクッションを引っ掴み、力の限り投げつける。
「これはこれは。出過ぎたことを申しました。セイラさまももう12歳になられたのでしたね。大きくなられたことで」
そういうと、なぜか嬉しそうに、去っていく。
セイラ…セイラというのか、この体は。豪華なドレッサーを覗き込むと、予想通り、そこに映っていたのはピンク色の髪をもつ、気の強そうな女の子だった。
ツインテールではないものの、間違いなくあの子だ。
無愛想な研究者の面影は、どこにもない。
どうやら本当に、私とマンガキャラの星羅とやらは、入れ替わったらしい。
今更ながら、サッと血の気が引く。これは大変だ。
数学研究ができないってことじゃないか!
***
ひらひらフリフリのワンピース。色はド派手なピンク。部屋を引っ掻き回して探したのに、まともな服がないなんて。
「それではセイラさま。いってらっしゃいませ」
星野と言うらしい執事に送られて、私は校門に降り立った。
『流れ星学園中等部』
…吐き気がする。
「セイラちゃーん!おはよっ!」
ぼふっと肩に衝撃。ふわんと甘い香り。
中学生のくせに、香水でもつけてるんだろうか。ポニーテールのザ・イケ女子。何を話すべきなんだろう。この歳の子と関わる機会なんて皆無だ。
「…えっと…名前聞いてもいいか?」
こぼれ落ちそうなほど目を見開いて、彼女が首を傾げる。
「朱里だよー!忘れちゃったの?記憶喪失?まじ?」
うるさい。面倒だけど、この子がいないと教室の場所もわからないんだから、仕方ないか。適当あしらっておく。どうやらセイラとやらは人気者らしい。
教室にたどり着くと、あっという間に女子に囲まれてしまった。
「セイラちゃん、今日の服かわいいね。どこの?」
さあ。てか、この服がかわいいとか正気か?
「セイラちゃん、快星くんに告白したんだけど振られちゃったあー…」
知らん。快星って誰だよ。
「でもやっぱり昴くんよねー?」
来た。こいつだ。思わず、声の主の腕を掴んでいた。
「昴って、誰だ?」
「え…セイラちゃん、どうしちゃったの?ほら、あそこにいるじゃない」
言われたとおり目をやると、窓際、端の席に、一際目立つ少年がいた。
涼しげな目元、きめの細かい肌、サラサラの黒髪。なるほど、これが少女マンガ的イケメン…なのか?
「かっこいいよねぇー…あ、みて」
ガララっと教室がドアが開く。
入ってきたのはごく普通にかなりかわいい女の子。あの黄色い髪はたぶん、染めてるわけじゃないんだろう。またまた少女マンガ補正に違いない。
「『キラキラ⭐︎きらりの恋』か」
「セイラちゃん、何言ってるの?」
主人公、きらりに間違いなかった。席は、昴の隣。
こんなことなら、もう少し拓人のオタク全開マシンガントークに付き合っておくんだった。髪の色と顔面偏差値くらいしか、主要キャラを見分ける方法がない。
まずは、ターゲットと接触してみるか。
ため息をついて、私は立ち上がった。
***
ツカツカ近づいていくと、昴が訝しげに顔を上げる。さて何を言えばいいのか。数学的に考えれば、まずは現状把握だろう。どんなに難しい問題でも、条件の確認が第一歩である。
この場合の条件といえば…
「昴。お前、今、好きなやついるのか?」
突然、教室が水を打ったように静まり返った。ん?何か変なこと言ったか?
困ったようにわずかに眉を下げて、昴が口を開く。
「別にいないけど」
ふうん、そうか。なら話が早い。
「じゃあ、私と付き合え」
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